振り向いてください、シャノン王子。

夜のトラフグ

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chapter11 一生分の幸せ

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 散歩道を歩きながら、夜空を眺めた。見える星々は、エレノアの故郷から見るのと違いが分からなかった。

(天文に明るいわけじゃないけど…)

 エレノアが得意なのは戦いの指揮や小細工だ。そんな自分を自嘲した。
 そのとき、行く手の向こうに咳き込んで蹲る人が見えた。目を凝らして驚く。あれはシャノン王子だ。

「王子。いかがしましたか、御加減は」
「……! 貴様はっ……!」
「しかし」

 抵抗しながら、なおも体調の優れない様子の王子にエレノアは目線を合わせてしゃがみ込んだ。そして気付く。

「これは……」

 エレノアは当初、医師として士官したため医術の心得もあった。

「はなせ……!」
「……王子。失礼ですが、ちゃんと休息をとられていますか。食事を召し上がっていますか」
「……」
「夜は眠れていますか。あなたは……その身を粗末に扱ってはいけない」
「っ、放っておけ!」

 息も絶え絶えに怒鳴られるが、ここで引くわけにはいかない。

「できません」
「何のつもりだ………!」
「簡単なことです。私たちにとってあなたは……価値がある」

 エレノアはそう答えた。

「あなたに今、倒れられると、私たちは困ります。あなたも同じでしょう」
「………同じなものか」

 ズル、と力の抜けた彼を、そっと抱え上げた。エレノアが鍛えていることを差し引いても、あまりに軽い身体だった。

「……わたしは……まだ、するべきことがある。よそものにそのことが、わかるか……わかってたまるか」

 そのまま彼は意識を失った。

 彼を抱き、このままにしておくわけにはと部屋までゆっくりゆっくり足を進める。温もりが腕に伝わってきた。先程の夜空が、さっきの何倍も輝いて見える。

 一生分の幸せをここで得たような気がして、この時間が永遠に続いて欲しいとエレノアは思った。
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