7 / 13
Episode6 言えない言葉。
しおりを挟む
結局、幸也は本当の気持ちを言う勇気が出ず、ただ「よかった」とだけ伝えた。そんな幸也に佑ははにかんで笑い、「うれしい」と応えた。
その様子もなんだか普段と違っていて、幸也はドキリとした。
けれど殊勝だったのはそれまでで、幸也のエッセイの話になると、佑は途端に興奮して喋りだした。
「すごいね、幸也先輩! こことかこことか、読んでて腹が捻れるかと思ったよ」
無いハズの尻尾をブンブン振って、必死に感想を伝える佑に、自然と幸也の頬が緩んだ。
「そうか。楽しんで貰えたならよかった」
正面から作品を褒められるのは照れ臭かった。けれど悪い気もしない。そそくさと原稿を仕舞いながら、幸也はふと思い付いたように提案した。
「そうだ。おれ、今日はもう帰ろうと思うんだけど」
「えっ。もう帰っちゃうの?」
幸也の言葉に、佑がションボリと眉を八の字にする。なんだか本当に飼い犬みたいだ、と幸也は思う。こんなでっかいわんこを飼った覚えはないが。
「うん。今日公開の映画があってさ。学校近くの映画館なら、この時間帯空いてるし」
「そう……」
「よかったらお前も来るか? おごるぞ?」
「!!」
放課後に堂々と映画館に行けるのも、部活もどきの特権だ。ずっと公開を楽しみにしていた映画なのだし、たまにはいいだろ、と誰に言うでもなく心のなかで言い訳をする。
ついでとばかりに佑も誘ってみると、彼はシューンとした顔から一転、雨上がりの太陽みたいにパアッと顔を輝かせた。
「いく!!」
その笑顔に、幸也はなんだかのまれそうになった。明るくて眩しくて、この笑顔を曇らせたくはないなと思った。
「……そーか」
しかし、そんな動揺は押し隠して幸也は素っ気なく返事をする。さっさと自分の鞄を引っ掻けて部室の部屋の鍵を掴むと、佑も慌てたように鞄を持って追い掛けてきた。
「ねーねー、それで何の映画見るの?」
「ん? お前も知ってると思うよ。ほら、原作があの有名な少年漫画の」
「あっあれ! 今日公開だったんだー。
ねえホントにお金出してくれるの? コーラとポップコーンも?」
「さりげに増やしてんじゃねーよ。それは自分で買え」
「えー? じゃあチケットの代わりに、飲み物とポップコーンはおれが幸也先輩におごってあげる!」
機嫌よく笑いながら二人連れ合って歩く。遠くから見ると彼らは、長い付き合いの友人のような、深い信頼で結ばれた恋人のような関係に見えた。
「ね、楽しみだね。幸也先輩!」
「……そうだな」
その様子もなんだか普段と違っていて、幸也はドキリとした。
けれど殊勝だったのはそれまでで、幸也のエッセイの話になると、佑は途端に興奮して喋りだした。
「すごいね、幸也先輩! こことかこことか、読んでて腹が捻れるかと思ったよ」
無いハズの尻尾をブンブン振って、必死に感想を伝える佑に、自然と幸也の頬が緩んだ。
「そうか。楽しんで貰えたならよかった」
正面から作品を褒められるのは照れ臭かった。けれど悪い気もしない。そそくさと原稿を仕舞いながら、幸也はふと思い付いたように提案した。
「そうだ。おれ、今日はもう帰ろうと思うんだけど」
「えっ。もう帰っちゃうの?」
幸也の言葉に、佑がションボリと眉を八の字にする。なんだか本当に飼い犬みたいだ、と幸也は思う。こんなでっかいわんこを飼った覚えはないが。
「うん。今日公開の映画があってさ。学校近くの映画館なら、この時間帯空いてるし」
「そう……」
「よかったらお前も来るか? おごるぞ?」
「!!」
放課後に堂々と映画館に行けるのも、部活もどきの特権だ。ずっと公開を楽しみにしていた映画なのだし、たまにはいいだろ、と誰に言うでもなく心のなかで言い訳をする。
ついでとばかりに佑も誘ってみると、彼はシューンとした顔から一転、雨上がりの太陽みたいにパアッと顔を輝かせた。
「いく!!」
その笑顔に、幸也はなんだかのまれそうになった。明るくて眩しくて、この笑顔を曇らせたくはないなと思った。
「……そーか」
しかし、そんな動揺は押し隠して幸也は素っ気なく返事をする。さっさと自分の鞄を引っ掻けて部室の部屋の鍵を掴むと、佑も慌てたように鞄を持って追い掛けてきた。
「ねーねー、それで何の映画見るの?」
「ん? お前も知ってると思うよ。ほら、原作があの有名な少年漫画の」
「あっあれ! 今日公開だったんだー。
ねえホントにお金出してくれるの? コーラとポップコーンも?」
「さりげに増やしてんじゃねーよ。それは自分で買え」
「えー? じゃあチケットの代わりに、飲み物とポップコーンはおれが幸也先輩におごってあげる!」
機嫌よく笑いながら二人連れ合って歩く。遠くから見ると彼らは、長い付き合いの友人のような、深い信頼で結ばれた恋人のような関係に見えた。
「ね、楽しみだね。幸也先輩!」
「……そうだな」
1
あなたにおすすめの小説
好きです、今も。
めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。
ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
懐いていた後輩はどうやら俺のことが好きらしい
光野凜
BL
バレー優先の毎日に気がつけば、恋もしないままあっという間に高校3年生になった湊。自分に恋愛は縁のない話だと思っていたが......
居残り練習の体育、後輩・高良の口からこぼれたのはまさかの「好きですよ、湊先輩」
冗談みたいなその言葉に、思わず笑い返したのに――本人は本気のようで?
まっすぐな瞳、近すぎる距離、熱を帯びた空気。
ただの後輩だと思っていたのに、もう視線を逸らせない。
恋愛初心者な先輩と真っ直ぐな後輩の、心乱れる青春BL。
「俺があと二年早く生まれてればよかったのに」
「抱きしめてもいいですか?」
「......先輩が頑張ってんの、俺は知ってますから」
後輩からの一途な思いが止まらない!!
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる