溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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普通のβな僕の普通の恋愛感覚

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あれから何となく晴と気まずくて、メールのやり取りはするものの晴は晴で神戸関係の事情で忙しくしていたので、高校の入学式直前まで会うことはなかった。

メールでなら普通に話しできるのになぁ。
会うとなると胸がぐるぐるしてなんとなく足が向かなくなってしまう。

凌ちゃんは鬼の扱きに耐え、何とか高校を優秀な成績で入学を果たしたみたい。

もう、終始機嫌良く
”また会おうな”
と言って大阪に帰って行った。

4月1日の朝、入寮の為晴が車で迎えに来た。
荷物などはすでに配送済み。
久しぶりに会った晴はなんだか身長も伸び、大人っぽくなっていた。
あれから2度、婚約者のヒートに付き合っているはずで、僕には見えない大人の階段、みたいなものを登っているのだろう、そう思った。
その事を考えるたび胸がチクチクするけど…

車から降りてきた晴は、玄関でじいちゃんとばあちゃんに挨拶をし、深々と頭を下げた。
「必ず守ります」と言って。

学校までの道のりはあまり会話もなく、終始タブレットで何かをしている晴を横目に、窓の外を覗きながら時間を潰した。

昼過ぎに学校に到着した時、いつの間にか寝ていた僕は、晴に起こされる事もなく、気付いたら寮の部屋のベットで目が覚めた。

「あれ?僕…」

起き上がると、晴はベットの枕を背に座って本を読んでいた。
本を閉じ僕を見た晴は、ボサボサになった僕の髪を撫で、その手をそのまま頬まで下ろした。

「よく寝ていたよ、疲れが溜まったんじゃないか?」
「ここまで晴が運んでくれたの?重くなかった?」
そっと手を添えて晴を見る。

「大丈夫だ、智、やっと俺を見てくれた。」

何も言えず視線を逸らし下を向いた。

「…晴、僕…」
「智、智が好きだ。お前だけが好きだ。」
「………」

「嘘はつきたくない、どんなことも。智が辛くても嘘はつかない、それが智にできる俺からの精一杯の誠意なんだ」
僕の頬を両手で上にあげ、言い聞かせるように僕をみる。

「好きだ、好きなんだ。」
「僕も晴が好きだよ、でも好きな人が誰かといるなんて耐えられないんだ…嫌なんだ!!嫌でいやで気が変になりそう…」
布団を握りしめた。

手の上に流れ落ちる涙か止まらず布団にシミを作っていく。
「知り合った時からお前だけなんだ、俺のここを埋められるのは」
そう言って胸に手を当てた。
「わかってくれとは言わない、けど信じて欲しい、お前だけが大切なんだ…」
あれ以来まともに話しもしていなかった、僕が話したくなくて逃げたんだ。
僕以外の人と会って寝ている事実なんて知りたくもない。
晴と一緒にいると言うことはその事実を容認しなきゃいけないだよ、そんなの辛すぎるでしょ、僕は何にも悪くないのに…
「自分勝手な事言わないでよ、僕はどうなるの?この先もずっと正式に横にいるのは彼で、僕は影に徹しなきゃいけないんでしょ?晴が好きだよ、でも無理だよ、ぼくはただのベータで、ただ普通に幸せになりたいだけなんだ。普通に恋愛して、普通にデートして、普通に一緒にいたい。それだけなんだ…」

「少しの枷を背負って俺と生きてくれ、お願いだ」

その言葉に胸を動かされる。
何度悩んでも同じなんだよ、結局晴の思い通りになっちゃう。
僕が晴を好きすぎるからだめなんだよね、きっと。

「…背負えるかどうかはわかんない、けど、今はまだ少しだけ我慢する。」

ゆっくり顔が近付いて晴が僕のおでこに軽いキスをした。
親指で涙を拭いまたそこにキスをする。

「悲しませてばかりでごめんな、手放せなくてごめん」
そう言って強く…強く抱きしめて来た。
ずるいよ、そーゆーとこなんだよ、僕がダメになっちゃうのは…

「腹減ってない?」

本当にずるいよ、優しくして…

「いちご、いちごのショートケーキが食べたい」
「エフロのじゃないけどいい?」
「うん」


入寮1日目、泣いて喚いてショートケーキを食べて、晴に抱きしめられて眠りについた。

明日はいい事あるといいな…辛くて悲しいのはもういらないや…







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