溺愛αの初恋に、痛みを抱えたβは気付かない

桃栗

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お姫様抱っこはもっと違う形でお願いします

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式が終わり、張り詰めていた緊張感がとれ、凄く疲れた僕は早々に寮まで戻って来た。
部屋着に着替え、冷蔵庫の中にあるペットボトルを取り出し一気に飲み干した。

ソファに深く腰掛けると、どっと疲れが出てきた。

疲れたな…

新しい事ばかりだし、初めはこの学校でやって行く自信がなかったけど、翼君がいるだけで心強い。

新しい友達も出来そうだし、見た感じぼくが晴といることを何か言いたげにしている人もいないみたい。

色々安心したら緊張の糸がほぐれちゃった。

ソファの上でだらしなく座り込んでいると晴が帰って来た。
「おかえり」
声を掛けると僕に近づき頭にキスをして「ただいま」と言った。
「晴、疲れた…」
少し微笑んで頭を撫でられる。
「ちょっと待ってて、着替えてくるから」
そう言って部屋に向かった。
明日から授業が始まるけど、こんなので僕大丈夫かな?
両足を抱え膝に顔を押し付けた。
エフロのケーキ食べたいな…こんな遠くじゃ買いに行けない、生活環境が違うとこんなに状況も変わっちゃう。

「いちご…いちごのショートケーキ…」

「エフロのショートケーキだよな?」

晴の手が髪を撫で、僕は顔を上げた。
テーブルの上にエフロの箱が置いてあってキッチンから持って来たケーキ皿とフォークも用意されていた。

「岡本さんに頼んで買って来てもらった、食べたいだろうと思って、夕食前だけどこれくらいなら大丈夫だろ?」
自分勝手だけど、僕にはいつも優しい。
こういうとこなんだ、晴を嫌いになれない所は。

箱を開けケーキを乗せたお皿とフォークを僕に渡す。
「ありがとう」
「どういたしまして」
お皿に乗ったケーキを見ていたら晴がフォークで切り分けたケーキを差し出し
「ほら」
三角の尖った所は僕が一番最初に食べ始めるところ。
口を開けてそれを食べる。
「甘い…」
僕の口元についた生クリームを晴は親指で取りそれを舐めとった。
「美味いな…」
「うん」
同じように差し出されたフォークのケーキをまた口に含んだ。

「晴、嫌い」
「うん」
「…何で嫌いか訊かないの?」
「…………」
「自分勝手」
「うん」
「横暴」
「うん」
「好きな時にエフロのケーキ…食べれない」
「うん」

「…いちご食べさせて」

ケーキの上に乗ったいちごを指で摘み僕に差し出した。
晴の指が僕の口の中まで入ってきて、いちごを半分だけ食べる。
その半分を晴が食べる。

「やっぱ嫌い」

なんだか恥ずかしくてまた足を抱えて膝に突っ伏した。

「ケーキ残ってるぞ」

「いらない」

「全部食べてもいいんだな」

「………」

「いただきます」
「やっぱダメ!!」
顔を上げ晴からお皿を奪って手でケーキ全部食べた。

「やっはり…はるはきはいら…」

「智、顔グチャグチャ」
と言いながら晴がお腹を抱えて笑い出した。

なんだよ、もう、頭がグチャグチャになってたのがどうでも良くなってくる。
ムカつくな!!
ムカつくからケーキいっぱいつけた手で晴の顔になすりつけてやった。

「ちょ…っ何すんだよ!」
「イケメン滅べ!」

おりゃって晴に馬なりになって顔や頭にケーキをつけまくってやった。
「こら智、何やってんだ、おい」

手を取られベットに組み伏せられ、人差し指を僕に見せつける様に目線を合わせて舌を這わせる。
「俺はこれが1番美味い」
咄嗟に手を引っ込めた僕は顔を背けた。
何これ、何これ、何これ!!
い、いやらしいんですけど?!
「お、お風呂、お風呂入ってくる!!」
でも押さえつけられて動けず晴の方を見たら顔が近付いてきてキスをされた。
「一緒に入ろ」

もうやだ、家に帰りたい、誰か助けて!!
イケメン恐るべし。

それからお姫様抱っこでお風呂に連れて行かれ泡まみれにされいろんな所を綺麗にされた。

もう、何でもいっか、そう思った。






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