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「慶輔君、もしよかったら私達のテントで一泊していきなさいよ」
「え、本当にいいんですか? ありがとうです!」
慶輔とムニエルは、尼子柚希と名乗った少女に導かれ、大きなテントへと誘導された。そこで慶輔とムニエルを迎えたのは、椅子に座っている3人の少女であり、柚希が3人を簡単に紹介した。
「じゃあ私達の仲間を紹介するわね。茶髪のツインテールが竜造寺奏、両サイドの輪っか付のウェーブがかかったエメラルドグリーン色のロングヘアーが西園寺七星、マゼンタのワンサイドアップが北畠沙綾よ」
「大細田慶輔です。皆さんよろしくです!」
慶輔が自己紹介した後に、紗綾と呼ばれた少女の言葉の中に、なにやら慶輔に対する質問の言葉が出てきた。
「ところで慶輔君は何の目的で館山に来たんですか?」
「僕はムニエルと一緒に館山観光へとやって来たんです。ちょうど今、僕が通っている学園が創立記念日で休校だったんです」
慶輔は柚希達のテントでくつろいていると、音楽が流れてきた。その流れている曲は、アリエルとテスラの歌声が聞こえてきた。
「慶輔君、ココアでいいかしら?」
七星はココアの入ったコーヒーカップを持ってきて、それを慶輔に差し出す。
「このジュークボックスはね、私達がアイドルグループ『ステラツィオ』のメンバーとして活躍していた時の曲なんだ。今は訳ありで脱退を考えてるの……」
「脱退!?」
聞こうと思っていたキーワードを耳にした慶輔とムニエルは、目を見開いたその瞬間に、七星はテーブルの椅子に腰かけた後に、自分達の過去の話を始めた。
「私達ね、ステラツィオのメンバーの中で唯一バストが100以上あるから、ファンに『胸がきもい』だの『化け物』だの言われ続けたんだ……。それに耐えられなかった私達、援助交際や飲酒喫煙パーティーに参加して、ステラツィオの呪縛から逃げたかったんだ……」
「そうすれば、世間は私達の事を忘れるから……」
数分の沈黙に七星はその言葉に答える事はなかった。うつむくばかりの彼女達にとって、その出来事は言いたくない記憶なのだろうかと考える慶輔。
「ひょっとして、これって尼子さん達のトラウマなのかな?」
「慶輔君?」
口を開いた慶輔の言葉に、奏は顔を上げた。
「柚希さん、もしかしてアリエルさん達の影におびえてるんじゃないの? 心の傷を言い訳にしてさ」
「慶輔君、貴方は……!」
慶輔の指摘に対して柚希の表情がより一層険しくなった。
「本当の事を言いますね。僕達、ずっとアリエルさん達に頼まれて柚希さん達にガルドリース学園の退学を考え直すように説得するために来たんです。僕もこの学園の生徒なんですよ」
慶輔の口から放たれた真実、それは柚希達にとってのNGワードだった。言い知れぬ息苦しさを感じた沙綾は、居ても立ってもいられなったのか、不意に立ち上がった。
「酷い、私達の事騙したのね!」
声を荒くしてきつく言い放った言葉に慶輔は少しびびったが、穏やかなイメージを持つ彼女達の裏の顔を見たような雰囲気に駆られる様子を見せずにずっと柚希を見つめる。
「騙そうとしたわけじゃないんです。ただ、言うのがつらかったんです……」
「最低!」
言い切った沙綾は平手で慶輔を殴ろうとしたその時、何者かがその手を取った。
「あんたたちええ加減にせえよ! いつまで自分達の不幸さに負けて引きこもっとんのや!」
その開放と共に聞こえた、聞き覚えのある女の子の大きな怒声の先に見えた人物、慶輔にとってありえない人物だった。
「セシルさん、一体どうしてここに!?」
その人物の正体はセシルだった。
「セシル、いったいどうしてここに来たのよ!」
「決まっとるやろ。あんたたちの甘ったれた根性を叩きなおしに来たんよ! いつも辛い事があったからってそうやって逃げてばかりやないの!」
甘ったれた根性を叩きなおす。古傷を背負っている人間に対するNGワードだった。
「セシルこそ、私達の事なんか何もわかってないくせに!」
大抵はそうするパターンだが、忘れようとすればするほどだんだん切り離せなくなってくるものだってでてくるはずだ。
「お願いだから黙っててよ!」
「いいえ黙らないわ! そういう腐った根性を持った人間は許せないのよ!」
「アリエルさん!?」
突如駆けつけてきたアリエルは、奏の否定の言葉をピシャリと遮った。アリエルは立ち上がって後ろから歩み寄り、奏と七星の手をとってそれを硬く握った。
「まだわからないの!? あなた達の事を必要としている人達が今でもガルドリース学園で待ってるんだよ? 決して駒として使うためじゃなく、同じ学園の生徒としてだよ! それでも私達や慶輔君の事、信じられないの!?」
悲しそうなアリエルの顔を見た途端、自分の心すらも苦しくなった奏。耐えられなくなったのか、彼女達は尻餅をついてしまった。
「柚希さん、奏さん、七星さん、沙綾さん。僕はもうこれ以上、大切な友達を失う悲しみを広げたくありません。だからちゃんとアリエルさん達と話してください」
---to be continued---
「え、本当にいいんですか? ありがとうです!」
慶輔とムニエルは、尼子柚希と名乗った少女に導かれ、大きなテントへと誘導された。そこで慶輔とムニエルを迎えたのは、椅子に座っている3人の少女であり、柚希が3人を簡単に紹介した。
「じゃあ私達の仲間を紹介するわね。茶髪のツインテールが竜造寺奏、両サイドの輪っか付のウェーブがかかったエメラルドグリーン色のロングヘアーが西園寺七星、マゼンタのワンサイドアップが北畠沙綾よ」
「大細田慶輔です。皆さんよろしくです!」
慶輔が自己紹介した後に、紗綾と呼ばれた少女の言葉の中に、なにやら慶輔に対する質問の言葉が出てきた。
「ところで慶輔君は何の目的で館山に来たんですか?」
「僕はムニエルと一緒に館山観光へとやって来たんです。ちょうど今、僕が通っている学園が創立記念日で休校だったんです」
慶輔は柚希達のテントでくつろいていると、音楽が流れてきた。その流れている曲は、アリエルとテスラの歌声が聞こえてきた。
「慶輔君、ココアでいいかしら?」
七星はココアの入ったコーヒーカップを持ってきて、それを慶輔に差し出す。
「このジュークボックスはね、私達がアイドルグループ『ステラツィオ』のメンバーとして活躍していた時の曲なんだ。今は訳ありで脱退を考えてるの……」
「脱退!?」
聞こうと思っていたキーワードを耳にした慶輔とムニエルは、目を見開いたその瞬間に、七星はテーブルの椅子に腰かけた後に、自分達の過去の話を始めた。
「私達ね、ステラツィオのメンバーの中で唯一バストが100以上あるから、ファンに『胸がきもい』だの『化け物』だの言われ続けたんだ……。それに耐えられなかった私達、援助交際や飲酒喫煙パーティーに参加して、ステラツィオの呪縛から逃げたかったんだ……」
「そうすれば、世間は私達の事を忘れるから……」
数分の沈黙に七星はその言葉に答える事はなかった。うつむくばかりの彼女達にとって、その出来事は言いたくない記憶なのだろうかと考える慶輔。
「ひょっとして、これって尼子さん達のトラウマなのかな?」
「慶輔君?」
口を開いた慶輔の言葉に、奏は顔を上げた。
「柚希さん、もしかしてアリエルさん達の影におびえてるんじゃないの? 心の傷を言い訳にしてさ」
「慶輔君、貴方は……!」
慶輔の指摘に対して柚希の表情がより一層険しくなった。
「本当の事を言いますね。僕達、ずっとアリエルさん達に頼まれて柚希さん達にガルドリース学園の退学を考え直すように説得するために来たんです。僕もこの学園の生徒なんですよ」
慶輔の口から放たれた真実、それは柚希達にとってのNGワードだった。言い知れぬ息苦しさを感じた沙綾は、居ても立ってもいられなったのか、不意に立ち上がった。
「酷い、私達の事騙したのね!」
声を荒くしてきつく言い放った言葉に慶輔は少しびびったが、穏やかなイメージを持つ彼女達の裏の顔を見たような雰囲気に駆られる様子を見せずにずっと柚希を見つめる。
「騙そうとしたわけじゃないんです。ただ、言うのがつらかったんです……」
「最低!」
言い切った沙綾は平手で慶輔を殴ろうとしたその時、何者かがその手を取った。
「あんたたちええ加減にせえよ! いつまで自分達の不幸さに負けて引きこもっとんのや!」
その開放と共に聞こえた、聞き覚えのある女の子の大きな怒声の先に見えた人物、慶輔にとってありえない人物だった。
「セシルさん、一体どうしてここに!?」
その人物の正体はセシルだった。
「セシル、いったいどうしてここに来たのよ!」
「決まっとるやろ。あんたたちの甘ったれた根性を叩きなおしに来たんよ! いつも辛い事があったからってそうやって逃げてばかりやないの!」
甘ったれた根性を叩きなおす。古傷を背負っている人間に対するNGワードだった。
「セシルこそ、私達の事なんか何もわかってないくせに!」
大抵はそうするパターンだが、忘れようとすればするほどだんだん切り離せなくなってくるものだってでてくるはずだ。
「お願いだから黙っててよ!」
「いいえ黙らないわ! そういう腐った根性を持った人間は許せないのよ!」
「アリエルさん!?」
突如駆けつけてきたアリエルは、奏の否定の言葉をピシャリと遮った。アリエルは立ち上がって後ろから歩み寄り、奏と七星の手をとってそれを硬く握った。
「まだわからないの!? あなた達の事を必要としている人達が今でもガルドリース学園で待ってるんだよ? 決して駒として使うためじゃなく、同じ学園の生徒としてだよ! それでも私達や慶輔君の事、信じられないの!?」
悲しそうなアリエルの顔を見た途端、自分の心すらも苦しくなった奏。耐えられなくなったのか、彼女達は尻餅をついてしまった。
「柚希さん、奏さん、七星さん、沙綾さん。僕はもうこれ以上、大切な友達を失う悲しみを広げたくありません。だからちゃんとアリエルさん達と話してください」
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