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大店会議 7
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首の皮が一枚繋がった。
明日の再決定。まあ、先延ばしになった程度ではあるが、それでも一応、繋がったのだ。
とはいえ、俺はちょっと気落ちしていた。
最後に手を挙げた後継二人……俺、二人の意見に介入してしまったのだろうか……言わないと言ったって、俺が何を望んでるかなんて明々白々だったのだから。
退室する一同を見送りつつ、そんな風に考えてしまう。
最後の会話が全く関係なかったとは、思えないのだ。あの二人と話し、あの二人が賛成票を挙げた。その事が引っ掛かってしまう。
かと言って、あの時あれ以上何を言えたのかと考えると……思い浮かばない。
頬杖ついて溜息を溢していると、サヤが「お疲れ様でした」と声を掛けて来た。
「お疲れの所、申し訳ないのですけれど、商業会館のレブロン様が、お待ちです」
「ああ、そうだった。ありがとう、行くよ」
サヤに促され、会議室を退室して、斜め向かいの部屋に案内される。
ここは確か、同じく商談用の、小部屋であった筈だ。
サヤが扉を開けると、レブロンとマルが何か雑談を交わしていたのだが、立ち上がって礼の体制になる。良い、顔を上げてくれと声を掛け、席に着いた。レブロンとマルも、自身の席に座り直す。
「レブロン、わざわざ済まない。待たせてしまったか?」
「いえいえ、私も案内されたばかりです。マルの件でのお話だと伺いましたが、会議の席でもお伝えした通りの契約を交わしております。わざわざ宜しいのですよ?」
「それなんだがな……。私はそのような契約が交わされていたのを、先程初めて聞いた。
どういう事だ、マル。まずそちらから説明してくれ」
半眼でそう聞くと、えーっ、と、嫌そうな顔をされた。
駄目だ。誤魔化されないからな。
先程も、なんだか言いたくなさそうにしてたし、何か良からぬ理由が隠れているのではと、勘ぐってしまう。言うまで引き下がるつもりはないと見据えていると、仕方ないと諦めたのか、渋々といった風に、口を開いた。
「あのですねぇ。僕は、レイ様が思ってるよりは、レイ様に感謝してるんですよ」
「……は?」
全く理由になってないことを言うので、つい棘のある言い方で聞き返した。
その俺に、今度はマルが半眼になった。そしてまた、要領を得ないことを聞くのだ。
「僕、何年学舎にいたと思います?」
マルって、幾つだったかな……。確か、三十路よりは手前だったような……?
俺に質問したくせに、マルは俺より先に、答えをあっさり口にした。
「十八年です。必ずと言っていいほど留年しましたからねぇ。同じことを複数回学べば、当然成績も優秀です。武術は二年やっても、全然でしたけどねぇ」
答えさせる気が無いなら聞くなと言いたい……。
それに、お前のはそれで得られた成績じゃないだろ……座学は常にほぼ満点じゃないか、どの年も。
そう思うが、マルの話はまだ続くようなので、とりあえず黙っておく。
「その間にねぇ、レイ様ほど、僕に関わった人はいないですよ。
どちらかというと、僕は最初、倦厭してたんです。貴方のこと。
ごちゃごちゃした貴族の厄介ごとには関わりたくなかったし……」
言葉を濁したのは、俺の境遇を誤魔化す為だろう。
だけど、関わりたくなかったというのは少し、びっくりした。まさかそんな風に、思っていたなんて……俺は、マルに余計なことをしてたのか……?
つい眉が下がってしまう俺に、マルが溜息をつく。
「そんな顔しないで下さいよ。感謝してるって言ったじゃないですか。
初めはそうでしたけど、途中からはそんな風に思ってませんでしたって。
とにかくね、レイ様は、十八年いた中で、誰よりも一番僕と関わって下さったんですよ。僕がどんな風でも、普通に受け入れてくれたでしょう?
意味の分からないことを言っても、奇行に走っても、全然気にしない。その後も普通に、接して下さるんです。
ほんと、凄い胆力だと思いますよ。家族だって、たまに、僕にお手上げなんですからねぇ」
ちょっと頭が緩いのかなって思っちゃいましたよ。そう言って肩を竦める。褒めたいのか、貶したいのか、分からない。
その横で、レブロンはニコニコと俺たちを見比べていた。
「だから、レイ様にここを紹介された時、恩を返すのに丁度良いかなって思ったんです。
しかも僕にとって最高の仕事場だ。更に恩が上塗りされちゃいました。
なので、レイ様の為に働こうかなって。
僕が思うに、貴方は多分、このままでは済まないですよ。男爵家の次男坊、妾の子で日陰者。そんな立場で終われるはずがありません。
レイ様は優秀です。学術的な意味で言ってるんじゃないですよ?
卒業資格は得られませんでしたけど、あと半月あそこに居れば、貴方は絶対に、お声を掛けられていた。そんな方がここで燻ってていいわけ……」
「ちょっ、お、落ち着けマル、なんか、変なこと言ってるよ! お声なんて、掛かるわけないだろ?」
マルが奇怪な発言を始めたので慌てて止める。
そんな恥ずかしい勘違いよしてくれ。お声が掛かるなんて、あるわけないじゃないか。俺の成績は至って平凡だったぞ。
そんな俺に対し、マルはあえて不敬にも、言葉を遮ってきた。
「掛かってますよ。僕が保証します。貴方を一番知らないのはレイ様自身ですよ」
呆れた風にため息をつきつつ言うマルに、サヤがこてんと首を傾げる。
「…………あの、お声が掛かるとは?」
「ああ、学舎はねぇ、立身出世の場なんですよ。
お声がかかるというのは、王族の目に留まり、引き抜かれることです。
この方は自分を知りませんからね。もしくは凄まじく高望みです。結構な高成績を凡庸と言い、自分の優秀さを認めないんですよ」
肩を竦めてそんな風にいうマルに、俺は顔面に血が上ってくるのを自覚する。恥ずかしい勘違いを、サヤに話さないでくれ!
「万年首位を独走してた奴に言われたくないな! 俺みたいな成績なんてゴロついてる!」
「はぁー、これだから……。そりゃね、レイ様くらいの成績の人は、それなりに居ましたよ。貴方は二年も若かったけれど、どうせそのことは考慮しないんでしょう?
僕の言う優秀は、学業だけじゃないですよ。人望です。そして、人を繋ぐ技術です。
貴方は優秀ですよ。なんで貴方が挟まると身分関係なく人が繋がるんですかねぇ、不思議です」
僕も繋がれちゃってんですけど、手管は解析できてません。と、マルは言う。
俺は、その辺にものを手当たり次第放り投げたい衝動にかられた。居た堪れないというのはこのことだ!
俺が何かしてたか⁉︎ いや、してない! 皆と同じように学業に励み、日々を過ごしていただけだ。そりゃ、仇名は奇姫だったが、それは孤児を拾ったり、町人とつるんだり、貴族らしからぬ行動が多かったからだ。
それ以外は極々普通に、日々を過ごしていただけだぞ⁉︎
「そもそもね、レイ様が学舎を去った後、どれ程の貴族や町人が涙に濡れたと思ってるんですか。
貴方が決めたことだからと、言い含めて落ち着かせるのに苦労したんですよ。
ちょっかい出すなって、クリスタ様が一喝しなければ、暴走してるのが何人もいましたよ絶対」
初めて聞かされたことに、唖然とした。
え? なんで? なんで涙に濡れるの、なんで暴走するの? 意味が分からないって。
俺は別に、そんな風に思ってもらえるような何かを、した覚えなんて無い。
そんな俺の態度に、マルはまた溜息をつくのだ。
「ほらねぇ、無自覚なんですよ。
簡潔に説明しますとね、レイ様は人たらしなんです。かなりの。しかも保護欲を唆るんです。ものすごくタチが悪いんですよ。
そんなのに僕は膨大な恩を感じてるんです。どうやって返せばいいんでしょう。とりあえず紹介して頂いた仕事を全力でこなしつつ、なかなか人に頼ろうとしない、貴方の貴重なお願い事に、答えていくしか無いかなと思ったんですよ。だから、その様な契約をしました。レイ様が僕を必要とする時が来れば、それを最優先にすると、決めてたんです」
「なんで?お前今までそんな素振りなんて……」
欠片だって見せやしなかった……。
そう呟く俺に、見せるわけないでしょと、怯えつつマルは言う。
「そんなことしたら、ハインの独占欲刺激してろくなことになりませんよ。
消されますよ、ええ。自信もって言い切りますよ。ハインに消されます!
あれはギルだから均衡を保ててるだけですよ」
「ええっ? そんなにヤバいか⁉︎」
「ハインはヤバイですよ。むしろ何故ハインと普通に接してられるんですかね貴方は。
その辺も含めて、僕は貴方をかなり評価してるんですよ。
あ、これぶっちゃけたの内緒にして下さいよ。二人とも居ないなんて滅多にないから言ったんです。女中の貴女もね……組合長もですよ当然」
挙動不審気味に言うマルに、レブロンは「はいはい。重々承知してますよ」とニコニコ温和な笑顔で答える。
そして、会話が途切れたのを見計らって言葉を添えた。
「そんなわけでしてね。マルクスはうちの仕事をきちんとこなしてくれてますし、それが出来るならばいくらだってうちを空けてもらっても大丈夫なんですよ。
その辺の匙加減はマルクスに任せますので、ご子息様はご子息様側の都合で、マルクスを使っていただいて構いません。給与も、マルクスが仕事をこなせているなら発生して当然ですから、気にされなくても結構です」
「あ……いや……何か、思わぬ手間を掛けさせてしまっていた様で……すまないな」
「いえいえ、何も掛かっておりません。むしろ、本当に助かってるのですよ。有り難い限りです。マルクスのお陰でうちは回っている様なものなのでね。
それに、何も言わずとも引き戻せるのにそれをせず、こうしてこちらとの都合を考えてくださる。それがどれ程有り難いことか。本当にご子息様は、人たらしだと思いますよ」
えええぇぇぇ⁉︎
赤面する俺に、レブロンは人好きのする笑顔で「良い意味ですよ」と付け足す。
な、なんか……変なこと言われすぎて、何をどう考えれば良いのか、分からなくなってきた……。
マルを借り受けるための話し合いの席はそんな感じのまま、なし崩しで終了した。
頭を抱える俺に、サヤはただ、いつもの柔らかい笑みを向けていた。
明日の再決定。まあ、先延ばしになった程度ではあるが、それでも一応、繋がったのだ。
とはいえ、俺はちょっと気落ちしていた。
最後に手を挙げた後継二人……俺、二人の意見に介入してしまったのだろうか……言わないと言ったって、俺が何を望んでるかなんて明々白々だったのだから。
退室する一同を見送りつつ、そんな風に考えてしまう。
最後の会話が全く関係なかったとは、思えないのだ。あの二人と話し、あの二人が賛成票を挙げた。その事が引っ掛かってしまう。
かと言って、あの時あれ以上何を言えたのかと考えると……思い浮かばない。
頬杖ついて溜息を溢していると、サヤが「お疲れ様でした」と声を掛けて来た。
「お疲れの所、申し訳ないのですけれど、商業会館のレブロン様が、お待ちです」
「ああ、そうだった。ありがとう、行くよ」
サヤに促され、会議室を退室して、斜め向かいの部屋に案内される。
ここは確か、同じく商談用の、小部屋であった筈だ。
サヤが扉を開けると、レブロンとマルが何か雑談を交わしていたのだが、立ち上がって礼の体制になる。良い、顔を上げてくれと声を掛け、席に着いた。レブロンとマルも、自身の席に座り直す。
「レブロン、わざわざ済まない。待たせてしまったか?」
「いえいえ、私も案内されたばかりです。マルの件でのお話だと伺いましたが、会議の席でもお伝えした通りの契約を交わしております。わざわざ宜しいのですよ?」
「それなんだがな……。私はそのような契約が交わされていたのを、先程初めて聞いた。
どういう事だ、マル。まずそちらから説明してくれ」
半眼でそう聞くと、えーっ、と、嫌そうな顔をされた。
駄目だ。誤魔化されないからな。
先程も、なんだか言いたくなさそうにしてたし、何か良からぬ理由が隠れているのではと、勘ぐってしまう。言うまで引き下がるつもりはないと見据えていると、仕方ないと諦めたのか、渋々といった風に、口を開いた。
「あのですねぇ。僕は、レイ様が思ってるよりは、レイ様に感謝してるんですよ」
「……は?」
全く理由になってないことを言うので、つい棘のある言い方で聞き返した。
その俺に、今度はマルが半眼になった。そしてまた、要領を得ないことを聞くのだ。
「僕、何年学舎にいたと思います?」
マルって、幾つだったかな……。確か、三十路よりは手前だったような……?
俺に質問したくせに、マルは俺より先に、答えをあっさり口にした。
「十八年です。必ずと言っていいほど留年しましたからねぇ。同じことを複数回学べば、当然成績も優秀です。武術は二年やっても、全然でしたけどねぇ」
答えさせる気が無いなら聞くなと言いたい……。
それに、お前のはそれで得られた成績じゃないだろ……座学は常にほぼ満点じゃないか、どの年も。
そう思うが、マルの話はまだ続くようなので、とりあえず黙っておく。
「その間にねぇ、レイ様ほど、僕に関わった人はいないですよ。
どちらかというと、僕は最初、倦厭してたんです。貴方のこと。
ごちゃごちゃした貴族の厄介ごとには関わりたくなかったし……」
言葉を濁したのは、俺の境遇を誤魔化す為だろう。
だけど、関わりたくなかったというのは少し、びっくりした。まさかそんな風に、思っていたなんて……俺は、マルに余計なことをしてたのか……?
つい眉が下がってしまう俺に、マルが溜息をつく。
「そんな顔しないで下さいよ。感謝してるって言ったじゃないですか。
初めはそうでしたけど、途中からはそんな風に思ってませんでしたって。
とにかくね、レイ様は、十八年いた中で、誰よりも一番僕と関わって下さったんですよ。僕がどんな風でも、普通に受け入れてくれたでしょう?
意味の分からないことを言っても、奇行に走っても、全然気にしない。その後も普通に、接して下さるんです。
ほんと、凄い胆力だと思いますよ。家族だって、たまに、僕にお手上げなんですからねぇ」
ちょっと頭が緩いのかなって思っちゃいましたよ。そう言って肩を竦める。褒めたいのか、貶したいのか、分からない。
その横で、レブロンはニコニコと俺たちを見比べていた。
「だから、レイ様にここを紹介された時、恩を返すのに丁度良いかなって思ったんです。
しかも僕にとって最高の仕事場だ。更に恩が上塗りされちゃいました。
なので、レイ様の為に働こうかなって。
僕が思うに、貴方は多分、このままでは済まないですよ。男爵家の次男坊、妾の子で日陰者。そんな立場で終われるはずがありません。
レイ様は優秀です。学術的な意味で言ってるんじゃないですよ?
卒業資格は得られませんでしたけど、あと半月あそこに居れば、貴方は絶対に、お声を掛けられていた。そんな方がここで燻ってていいわけ……」
「ちょっ、お、落ち着けマル、なんか、変なこと言ってるよ! お声なんて、掛かるわけないだろ?」
マルが奇怪な発言を始めたので慌てて止める。
そんな恥ずかしい勘違いよしてくれ。お声が掛かるなんて、あるわけないじゃないか。俺の成績は至って平凡だったぞ。
そんな俺に対し、マルはあえて不敬にも、言葉を遮ってきた。
「掛かってますよ。僕が保証します。貴方を一番知らないのはレイ様自身ですよ」
呆れた風にため息をつきつつ言うマルに、サヤがこてんと首を傾げる。
「…………あの、お声が掛かるとは?」
「ああ、学舎はねぇ、立身出世の場なんですよ。
お声がかかるというのは、王族の目に留まり、引き抜かれることです。
この方は自分を知りませんからね。もしくは凄まじく高望みです。結構な高成績を凡庸と言い、自分の優秀さを認めないんですよ」
肩を竦めてそんな風にいうマルに、俺は顔面に血が上ってくるのを自覚する。恥ずかしい勘違いを、サヤに話さないでくれ!
「万年首位を独走してた奴に言われたくないな! 俺みたいな成績なんてゴロついてる!」
「はぁー、これだから……。そりゃね、レイ様くらいの成績の人は、それなりに居ましたよ。貴方は二年も若かったけれど、どうせそのことは考慮しないんでしょう?
僕の言う優秀は、学業だけじゃないですよ。人望です。そして、人を繋ぐ技術です。
貴方は優秀ですよ。なんで貴方が挟まると身分関係なく人が繋がるんですかねぇ、不思議です」
僕も繋がれちゃってんですけど、手管は解析できてません。と、マルは言う。
俺は、その辺にものを手当たり次第放り投げたい衝動にかられた。居た堪れないというのはこのことだ!
俺が何かしてたか⁉︎ いや、してない! 皆と同じように学業に励み、日々を過ごしていただけだ。そりゃ、仇名は奇姫だったが、それは孤児を拾ったり、町人とつるんだり、貴族らしからぬ行動が多かったからだ。
それ以外は極々普通に、日々を過ごしていただけだぞ⁉︎
「そもそもね、レイ様が学舎を去った後、どれ程の貴族や町人が涙に濡れたと思ってるんですか。
貴方が決めたことだからと、言い含めて落ち着かせるのに苦労したんですよ。
ちょっかい出すなって、クリスタ様が一喝しなければ、暴走してるのが何人もいましたよ絶対」
初めて聞かされたことに、唖然とした。
え? なんで? なんで涙に濡れるの、なんで暴走するの? 意味が分からないって。
俺は別に、そんな風に思ってもらえるような何かを、した覚えなんて無い。
そんな俺の態度に、マルはまた溜息をつくのだ。
「ほらねぇ、無自覚なんですよ。
簡潔に説明しますとね、レイ様は人たらしなんです。かなりの。しかも保護欲を唆るんです。ものすごくタチが悪いんですよ。
そんなのに僕は膨大な恩を感じてるんです。どうやって返せばいいんでしょう。とりあえず紹介して頂いた仕事を全力でこなしつつ、なかなか人に頼ろうとしない、貴方の貴重なお願い事に、答えていくしか無いかなと思ったんですよ。だから、その様な契約をしました。レイ様が僕を必要とする時が来れば、それを最優先にすると、決めてたんです」
「なんで?お前今までそんな素振りなんて……」
欠片だって見せやしなかった……。
そう呟く俺に、見せるわけないでしょと、怯えつつマルは言う。
「そんなことしたら、ハインの独占欲刺激してろくなことになりませんよ。
消されますよ、ええ。自信もって言い切りますよ。ハインに消されます!
あれはギルだから均衡を保ててるだけですよ」
「ええっ? そんなにヤバいか⁉︎」
「ハインはヤバイですよ。むしろ何故ハインと普通に接してられるんですかね貴方は。
その辺も含めて、僕は貴方をかなり評価してるんですよ。
あ、これぶっちゃけたの内緒にして下さいよ。二人とも居ないなんて滅多にないから言ったんです。女中の貴女もね……組合長もですよ当然」
挙動不審気味に言うマルに、レブロンは「はいはい。重々承知してますよ」とニコニコ温和な笑顔で答える。
そして、会話が途切れたのを見計らって言葉を添えた。
「そんなわけでしてね。マルクスはうちの仕事をきちんとこなしてくれてますし、それが出来るならばいくらだってうちを空けてもらっても大丈夫なんですよ。
その辺の匙加減はマルクスに任せますので、ご子息様はご子息様側の都合で、マルクスを使っていただいて構いません。給与も、マルクスが仕事をこなせているなら発生して当然ですから、気にされなくても結構です」
「あ……いや……何か、思わぬ手間を掛けさせてしまっていた様で……すまないな」
「いえいえ、何も掛かっておりません。むしろ、本当に助かってるのですよ。有り難い限りです。マルクスのお陰でうちは回っている様なものなのでね。
それに、何も言わずとも引き戻せるのにそれをせず、こうしてこちらとの都合を考えてくださる。それがどれ程有り難いことか。本当にご子息様は、人たらしだと思いますよ」
えええぇぇぇ⁉︎
赤面する俺に、レブロンは人好きのする笑顔で「良い意味ですよ」と付け足す。
な、なんか……変なこと言われすぎて、何をどう考えれば良いのか、分からなくなってきた……。
マルを借り受けるための話し合いの席はそんな感じのまま、なし崩しで終了した。
頭を抱える俺に、サヤはただ、いつもの柔らかい笑みを向けていた。
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