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後始末 5
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「だいぶん前、借金のカタに」
あぁ……、そっちのとばっちりかああぁぁ。
「最低限、身を守れる装備を整えてくれ……。何があるか分からないからさ」
村が襲撃されるなんてことがあったばかりだから、備えておくにこしたことはない。
ていうか、小剣一本の値段なんて、お前の借金からしたら微々たるものだぞ。
現在、なんとか集めた鍛治師が五人に増え、騎士の装備品や手押し式組み上げ機はその五人で製造されている。
本当は、手押し組み上げ機の鋳造試作実験をもっと行いたいのだけど、火力的にも、鋳型用の型的にも、量産できる状態には至っていないのが現状だ。
また、現在雇用が増えている衛兵や騎士らの装備品の製造を優先しているということもある。
どちらにせよ、木炭の買い付け話が上手く纏まってくれないと、色々が進められない。
また借金が増えるーっ。と、渋るテイクを連れて、鍛治場へ赴くことになった。
直接出向いてテイク用の小剣を整備してもらおうと思ったのだ。
あと、俺のお願いしておいた小刀も、ついでに取りに行こうかと。
王都に持って行く荷物の一部だし。
オブシズを連れ、総勢四名で鍛冶場に顔を出したら、先約がいた。
「ジェイド。アイルもなんて珍しいな」
「あぁ、新しい武具ができたって知らせが入ったンでな」
新しい武具?
ヨルグが、テイクの小剣選びに付き合ってくると言ってくれたから、そちらは任せることにして、ジェイドとアイルの持つ、新たな武具を見せてもらうことに。
「かなり特殊な形だな……片刃なんて初めて見た。こっち側、なんでこんなにギザギザしてるんだ?」
その武具は短剣だったのだけど、なんとも異様な形をしていた。
通常、我が国の剣は両刃だ。異国には片刃の剣もあるのだが、この国ではまず見かけない。
先の方に向かい、少し幅広になっていく刃。先端だけは、突けるように両刃となっていたが、背側の殆どは、沢山の切れ目が入っている。
「ここで剣を受け止め、刃を折ったりするンだとよ。折れないまでも、歪めたり刃こぼれさせたりできるらしい」
「短剣は、小剣、長剣を受け止めるには不向きだからな。
相手もそれを分かってる。だから力技で攻められる」
「それをなンとか上手くいなせるもンはねぇかって、相談したンだ」
誰に相談したか……。
言うまでもなく、サヤなのだろう。
「この短剣なら、そうやって来た奴の剣先をここで挟ンで、少々ひねるだけで歪めたり、折ったり、もしくは絡めて奪ったりできるらしい」
「まぁ、訓練がいるがな。使い慣れないうちはただの短剣だ」
そう言いつつも、二人は短剣の重みや振り心地を確認している。
「理には叶っている。短剣で小剣以上を受け止めれば、どうせすぐに刃こぼれする」
「こっち側で受けりゃ、刃の方は痛めねぇ上に、上手くすりゃ相手の武器を無効にできる……か。よく考えたもンだ」
「持ち替えが少々難儀か」
「それも慣れだろ」
なんて風にやりとりしている。
だけどなにより……。
「なんか、凄く格好良いな!」
無骨な感じがとても良い。実用重視って雰囲気で、妙な形なのに洗練されている。
「あぁ、悪くねぇな」
サヤの国、武器は携帯しないって話だったのに、こうして色々な武器がある。なんとも不思議だ。これもかつての、忍の武器だったのだろうか。
まぁ、サヤの世界はサヤの国が武器を持たないだけで、他の国では色々と違うらしいから、もしかしたら他国の武器なのかもしれない。
「御子息様、大変お待たせしました。小刀をお持ちしましたので、ご確認ください」
「あぁ、ありがとう。見せてもらう」
俺の小刀も、少々改良された。
通常、腰帯に挟むものは柄もあるし鞘もあるのだが、これは上着の内側で、ホルスター に収める仕様。なので鞘が必要無い。
だから柄の部分も金属を剥き出しにして、滑り止めを刻んだだけの形にした。
柄の先は少しだけ膨らんでおり、指に挟んで引き抜く際に、引っかかりやすいよう工夫してある。
同じ形を極力近い重さで量産できるように、形を簡略化したのだ。
「うん、滑り止めは良い感じだな。重さもこんなものか……」
ほぼ棒状だが、柄は細め。刃の方に重心がくるようにして、投げやすく調整した。
柄を取った分、違和感があるかと思ったんだが……そうでもない。これも後は、使い慣れていくだけだな。
手への馴染みを確認しながら、用意してくれた試験用の板に投げていたら、呆れの混じった声音でジェイド。
「お前、貴族辞めても兇手でやっていけンぞ。そンだけの投擲技術持ってりゃ食いっぱぐれねぇ」
「……喜んでいいのかなぁ、それ……」
弓と違い、この手の武器の射程は短い。だから当てやすいってだけだしな。
「俺も、その短剣欲しいな。俺の短剣は殆ど防御にしか使わないから、両面がそのギザギザでも良いくらいだし」
「…………いや、それはちょっと不格好すぎだろ……」
そんなやりとりをしている間に、テイクの小剣も決まったようだ。
柄は自分で革を巻くということで、小剣を受け取ってきた様子。
俺たちは、それぞれの得物を持ち帰り、後の時間は残りの準備に費やした。
◆
王都の会合へ参加するために連れていく配下。その人選には、ちょっと難航した。
まずナジェスタは留守番だ。父上が残るし、それは確定。だからその結果、ユストを連れていくことも確定。
アーシュは残り、雨季の資料を纏める役を一手に引き受けてくれる。これはクロードの手を空けるためだ。
つまり、クロードはついてくる。ヘイスベルトに、どっちが良い? と、確認したら、留守番の方でアーシュの手伝いをするとなり、彼も残る。
まぁ、文官はマルもついてくるし、二人いれば充分かな。
ハインとサヤは確定として、女従者見習いであるメイフェイアとセルマも今回同行する。とはいえ、王宮内には連れて行かない。彼女らは今回、女中の代わりを務める。
だから、女中で連れていくのは、女中頭と、古参からもう一人だけ。
問題は、武官……。
シザーは太腿の傷が癒えきっていないし、癒えたとしても、王宮内への立ち入りには申請が必要だ。貴族ではないし、何より外見が異国人風で、目立ちすぎる。
しかも手続きに相当時間がかかるのだよな……。かといって、オブシズはレイモンドがいると分かっている以上、王宮内に連れて行くべきではないだろう。
「いざとなれば、私が武官を務めますよ」
と、クロードは言ってくれたけれど、彼をそうやって使うのもどうかと思う……。
彼が文官として俺の元に来たことは、もうかなり知れ渡っているのだろうし、公爵二家の血を引く方を、都合良く使い倒しているというのも、外聞が悪い……。
「武官はほんと、なんとか確保しないとな……」
申し訳ないけどどこかの家に相談するべきか……。アギー……か、ヴァーリン? いやいや、公爵家はなぁ……、でも友好的にしている同等の家系っていうとヴァイデンフェラー? だけどあそこで武官って常に足りない状態だろうし……。
ダメ元でヘイスベルトの実家はどう? と、聞いてみたのだけど、彼の家系は武芸に秀でた者がいないと言われた。
正直、面識の無い家からの募集はしたくないのだよな……、どの家のどんな思惑が絡んでくるやらわからないし。うーん……。
そんな風に頭を悩ませていたのだけど。
「レイシール様」
オブシズが、何やら堅苦しい感じに声を掛けてきた……。
「どうした? 何か、仕度に問題が出た?」
「いえ。少々変則的なことなので、まずはご報告と思いまして」
……変則的? 何がだ?
これといって思いあたらず、首を傾げるしかない。
そんな俺にオブシズは、居住まいを正し、静かともいえる口調ながら、キッパリと告げた。
「オブシズを名乗ることを辞め、ヴィルジールに戻ることに致しました」
……え?
あぁ……、そっちのとばっちりかああぁぁ。
「最低限、身を守れる装備を整えてくれ……。何があるか分からないからさ」
村が襲撃されるなんてことがあったばかりだから、備えておくにこしたことはない。
ていうか、小剣一本の値段なんて、お前の借金からしたら微々たるものだぞ。
現在、なんとか集めた鍛治師が五人に増え、騎士の装備品や手押し式組み上げ機はその五人で製造されている。
本当は、手押し組み上げ機の鋳造試作実験をもっと行いたいのだけど、火力的にも、鋳型用の型的にも、量産できる状態には至っていないのが現状だ。
また、現在雇用が増えている衛兵や騎士らの装備品の製造を優先しているということもある。
どちらにせよ、木炭の買い付け話が上手く纏まってくれないと、色々が進められない。
また借金が増えるーっ。と、渋るテイクを連れて、鍛治場へ赴くことになった。
直接出向いてテイク用の小剣を整備してもらおうと思ったのだ。
あと、俺のお願いしておいた小刀も、ついでに取りに行こうかと。
王都に持って行く荷物の一部だし。
オブシズを連れ、総勢四名で鍛冶場に顔を出したら、先約がいた。
「ジェイド。アイルもなんて珍しいな」
「あぁ、新しい武具ができたって知らせが入ったンでな」
新しい武具?
ヨルグが、テイクの小剣選びに付き合ってくると言ってくれたから、そちらは任せることにして、ジェイドとアイルの持つ、新たな武具を見せてもらうことに。
「かなり特殊な形だな……片刃なんて初めて見た。こっち側、なんでこんなにギザギザしてるんだ?」
その武具は短剣だったのだけど、なんとも異様な形をしていた。
通常、我が国の剣は両刃だ。異国には片刃の剣もあるのだが、この国ではまず見かけない。
先の方に向かい、少し幅広になっていく刃。先端だけは、突けるように両刃となっていたが、背側の殆どは、沢山の切れ目が入っている。
「ここで剣を受け止め、刃を折ったりするンだとよ。折れないまでも、歪めたり刃こぼれさせたりできるらしい」
「短剣は、小剣、長剣を受け止めるには不向きだからな。
相手もそれを分かってる。だから力技で攻められる」
「それをなンとか上手くいなせるもンはねぇかって、相談したンだ」
誰に相談したか……。
言うまでもなく、サヤなのだろう。
「この短剣なら、そうやって来た奴の剣先をここで挟ンで、少々ひねるだけで歪めたり、折ったり、もしくは絡めて奪ったりできるらしい」
「まぁ、訓練がいるがな。使い慣れないうちはただの短剣だ」
そう言いつつも、二人は短剣の重みや振り心地を確認している。
「理には叶っている。短剣で小剣以上を受け止めれば、どうせすぐに刃こぼれする」
「こっち側で受けりゃ、刃の方は痛めねぇ上に、上手くすりゃ相手の武器を無効にできる……か。よく考えたもンだ」
「持ち替えが少々難儀か」
「それも慣れだろ」
なんて風にやりとりしている。
だけどなにより……。
「なんか、凄く格好良いな!」
無骨な感じがとても良い。実用重視って雰囲気で、妙な形なのに洗練されている。
「あぁ、悪くねぇな」
サヤの国、武器は携帯しないって話だったのに、こうして色々な武器がある。なんとも不思議だ。これもかつての、忍の武器だったのだろうか。
まぁ、サヤの世界はサヤの国が武器を持たないだけで、他の国では色々と違うらしいから、もしかしたら他国の武器なのかもしれない。
「御子息様、大変お待たせしました。小刀をお持ちしましたので、ご確認ください」
「あぁ、ありがとう。見せてもらう」
俺の小刀も、少々改良された。
通常、腰帯に挟むものは柄もあるし鞘もあるのだが、これは上着の内側で、ホルスター に収める仕様。なので鞘が必要無い。
だから柄の部分も金属を剥き出しにして、滑り止めを刻んだだけの形にした。
柄の先は少しだけ膨らんでおり、指に挟んで引き抜く際に、引っかかりやすいよう工夫してある。
同じ形を極力近い重さで量産できるように、形を簡略化したのだ。
「うん、滑り止めは良い感じだな。重さもこんなものか……」
ほぼ棒状だが、柄は細め。刃の方に重心がくるようにして、投げやすく調整した。
柄を取った分、違和感があるかと思ったんだが……そうでもない。これも後は、使い慣れていくだけだな。
手への馴染みを確認しながら、用意してくれた試験用の板に投げていたら、呆れの混じった声音でジェイド。
「お前、貴族辞めても兇手でやっていけンぞ。そンだけの投擲技術持ってりゃ食いっぱぐれねぇ」
「……喜んでいいのかなぁ、それ……」
弓と違い、この手の武器の射程は短い。だから当てやすいってだけだしな。
「俺も、その短剣欲しいな。俺の短剣は殆ど防御にしか使わないから、両面がそのギザギザでも良いくらいだし」
「…………いや、それはちょっと不格好すぎだろ……」
そんなやりとりをしている間に、テイクの小剣も決まったようだ。
柄は自分で革を巻くということで、小剣を受け取ってきた様子。
俺たちは、それぞれの得物を持ち帰り、後の時間は残りの準備に費やした。
◆
王都の会合へ参加するために連れていく配下。その人選には、ちょっと難航した。
まずナジェスタは留守番だ。父上が残るし、それは確定。だからその結果、ユストを連れていくことも確定。
アーシュは残り、雨季の資料を纏める役を一手に引き受けてくれる。これはクロードの手を空けるためだ。
つまり、クロードはついてくる。ヘイスベルトに、どっちが良い? と、確認したら、留守番の方でアーシュの手伝いをするとなり、彼も残る。
まぁ、文官はマルもついてくるし、二人いれば充分かな。
ハインとサヤは確定として、女従者見習いであるメイフェイアとセルマも今回同行する。とはいえ、王宮内には連れて行かない。彼女らは今回、女中の代わりを務める。
だから、女中で連れていくのは、女中頭と、古参からもう一人だけ。
問題は、武官……。
シザーは太腿の傷が癒えきっていないし、癒えたとしても、王宮内への立ち入りには申請が必要だ。貴族ではないし、何より外見が異国人風で、目立ちすぎる。
しかも手続きに相当時間がかかるのだよな……。かといって、オブシズはレイモンドがいると分かっている以上、王宮内に連れて行くべきではないだろう。
「いざとなれば、私が武官を務めますよ」
と、クロードは言ってくれたけれど、彼をそうやって使うのもどうかと思う……。
彼が文官として俺の元に来たことは、もうかなり知れ渡っているのだろうし、公爵二家の血を引く方を、都合良く使い倒しているというのも、外聞が悪い……。
「武官はほんと、なんとか確保しないとな……」
申し訳ないけどどこかの家に相談するべきか……。アギー……か、ヴァーリン? いやいや、公爵家はなぁ……、でも友好的にしている同等の家系っていうとヴァイデンフェラー? だけどあそこで武官って常に足りない状態だろうし……。
ダメ元でヘイスベルトの実家はどう? と、聞いてみたのだけど、彼の家系は武芸に秀でた者がいないと言われた。
正直、面識の無い家からの募集はしたくないのだよな……、どの家のどんな思惑が絡んでくるやらわからないし。うーん……。
そんな風に頭を悩ませていたのだけど。
「レイシール様」
オブシズが、何やら堅苦しい感じに声を掛けてきた……。
「どうした? 何か、仕度に問題が出た?」
「いえ。少々変則的なことなので、まずはご報告と思いまして」
……変則的? 何がだ?
これといって思いあたらず、首を傾げるしかない。
そんな俺にオブシズは、居住まいを正し、静かともいえる口調ながら、キッパリと告げた。
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