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学園編

最終決戦と妖精1

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 街では邪神教の信者と見られる人たちが、叫びながら毒を飲んでいる。邪神教に関係のない人たちは、異様な光景に叫び、戸惑っている様子だ。


「王国騎士たち!できる限り信者は捕獲し、国民達を避難させるように!」

 ローレンはすぐさま指示を出し、騎士たちを動かす。ここにいる人数だけでは対処ができないため、王宮へ応援も呼ぶようだ。

「とにかく怪我人を助けよう!」

 リンとベルるんにそう言うと、私は目の前に転んだ状態で泣いている女の子へ近づいた。

 擦りむいたのか、両膝から血が出ていたため、ヒールをかけて治す。リンの方を見ると、彼女もヒールをかけて人たちを癒していた。

【愛しい子たちよ。あなたたちの力が必要です】

 女神の澄んだ声が響き渡る。混乱していた人たちも、邪神教徒も空を見上げた。

「え、もう?」

 聞き覚えのある女神のフレーズ。ゲームでは、この後攻略キャラとヒロインが女神に導かれ、ラスボスである邪神と戦う。

 まだ学園編1年目だよ!

 先ほど手に入れた水の珠をぎゅっと握りしめる。復活が早くなるとは聞いていたけれど、あまりにも早すぎる。

【さあ。疲れている者は、少しおやすみ。彼らが邪神に打ち勝つよう、祈りを捧げてください】

 女神の声がそう言うと、私やリン、ベルるんなどがその場から消えた。

 その女神の声が聞こえると同時に、邪神教徒は気を失ったようだ。

 私たちのいなくなった広場に残された人々は、空を見上げて祈り出した。









「ありさ。私の愛しい子たちよ。頼みましたよ」

 女神様の声に目を開けると、女神様とその隣には扉が1つ。この扉は邪神のいる空間へとつながっている。

「女神様!もう復活したんですか?」

「ええ。ありさ、残念なことに。邪神を信じる者たちの命によって、思った以上の早さで復活をしてしまったようです」

 ゲームではなかった邪神教徒たちの命を捧げる行為。その行為が早すぎる邪神復活へつながったようだ。

 私が振り返ると、その場にはベルるん、リン、ローレン、アーサー、パーシヴァル、タイロンが立っている。土の珠はないけれど、その他3つが揃っている。

 誰もが緊張した面持ちをしている。

「アリサ殿。拙者、微力ながらもあの時の恩を返させていただくでござる」

「俺も火龍を倒したんだ。少しは役に立つはずだぜ!」

 パーシヴァルとアーサーがにっこり笑って、私に言ってくれる。

「アリサ様。私たちならやれます!行きましょう!」

 リンがそう声をかけてくれて、隣にいるローレン、タイロンも頷いてくれた。

「アリサ。早く終わらせて、屋敷でのんびり年越ししよう」

 私の大好きなベルるんがそう言って、頭を軽く撫でてくれた。

 この中では私とベルるんが最もレベルが高い。けれど、私が1番邪神復活に動揺していたみたいだった。

「うん!みんな、ありがとう。行こう!」

 勇気づけてくれたみんなに笑顔を向けて、私は目の前の扉開けた。








 扉を開けた先は、暗く何もない広い空間が広がっていた。

 その中心には長い黒髪の、ヒョロリとした男性が座っている。下を見ているため、その顔は見えないけど…彼が邪神だ。

「みんな構えて!来るよ!」

 ゔああああああああ

 と気味の悪い声をあげて、ぐりんと邪神が人ではできない動きで顔を上げる。両目はぽっかりと穴が空いており、人の形をしているが人ではない。

 邪神の声が響くと同時に、地面からスケルトンたちが現れる。

 私は全員に補助魔法をかけて、指示を出す。

「パーシヴァル、アーサー、タイロンはスケルトンをお願い!リンは私と支援を!ローレンはベルるんと邪神を!」

 簡潔にそう言うと、みんなはさっと動き出してくれた。

 人型の邪神はまだ能力値が低いため、ローレンでも問題なく対処ができる。ベルるんと二人で、一気に人型の写真倒す!

 倒しても倒しても湧き出るスケルトンと戦う三人を気にしながら、私も邪神へ魔法で攻撃を飛ばす。

「ライトニング」

 邪神の顔面に向かって、光の攻撃魔法を投げる。パンっと弾けて体制を崩す邪神に、両サイドからベルるんとアーサーが斬りかかる。

「ヒール」

 その隙に攻撃を喰らっていたローレンを、リンが素早く回復する。

 私たち4人の連携がうまくはまり、ローレンに吹き飛ばされた邪神が、その場にはくたりと座り込んだ。

「倒したのか?」

「違うよ!身構えて!」

 私は邪神の目の前まで飛んでいき、水の珠を持った手をかかげる。

 座り込んだ邪神がぱかり、と口を開けて黒いモヤを吸い込み出した。そして、モヤに包まれた邪神は、黒く禍々しい黒龍の姿に変化した。

 ふうっと吐き出した冷たい吐息。死の吐息だ!水の珠の効果がうまく発動しますように。

 ぎゅっと水の珠を握る手に力が入る。そのまま黒龍が息を吐き終わるまで、水の珠をかかげて耐え続ける。

 ほんの10秒ほどだろうか。体感的にはもっと長く感じたけれど、黒龍の死の吐息が終わる。

「みんなは?」

 振り返ると警戒した体制のままのみんなが、私と黒龍を見ている。

「邪神は私とベルるんに任せて、みんなは下がって!リン!バリアでみんなを守ってて!」

「はい!」

 私の言葉を聞いて、すぐにみんなは後ろの方に集まり、リンが魔法でバリアをはる。

 私とベルるん以外が、黒龍化した邪神の攻撃を1撃でも喰らってしまうと即死してしまう。私とベルるんのレベル上げが間に合ってなかったら、私たちだって1撃で即死だろう。

「ベルンハルト殿!」

「ベルンハルト!」

 パーシヴァルとアーサーが、ベルるんに何かを投げつける。風の珠のネックレスと、火の珠のブレスレットだ。

「ありがとう」

 ベルるんはその二つをさっと身につけると、私の隣に立った。

「さぁ。第二ラウンドだよ!」
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