手帳の運び屋

彩葉

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───碧side

5___過去

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常に比較されてきた。
常に誰かを演じていた。
“ 良い子 ”というタグが欲しかった。

どれだけ渇望しても手に入る事はなかった。誰かを蹴落としたい訳じゃなかった。
その対象を超えたい訳じゃなかった。
その視界に入りたかっただけだったんだ。


姉は “初めての子供” だった。
兄は “跡継ぎ” として生まれてきた。
あの人達は生まれながらにして絶対的な人気タグを持っていた。

どこに居ても目を惹いて、何もしても気にかけてもらえて、褒められて、心配されて。だからこそのプレッシャーとか、それが故の悩みとか、純粋に僕は羨ましかったんだ。
同じ家に居ながら、ただ一人僕だけが “無” の様な存在だったから。


───同じ人間から生まれて来たはずなのにどうして……。


僕も絶対的なタグが欲しかった。
どうしたら僕を見てくれるのか、どのタグを付けるのが正解なのか。


───見出した答えが “良い子” だった。


常にニコニコ笑っていた。
どれだけ痛くても、哀しくても、腹が立っても、苦しくても。
常に “大丈夫” で蓋をした。

成績は学年でトップを維持した。
スポーツは個人で出来る陸上部に所属していたし、そこでも成績を残すことが出来ていたので大学の推薦も決まっていた。


───常に上を目指した。


盲目的だと誰かが言った。


それでも───。


それでも。


結果として僕は沢山の人を蹴落とした。
勝手に誰かの目標だったり、恨みをかって嫌がらせも受けた。
僕は比較されるのが嫌だった。なのに自ら比較されるべく行動していたんだ。


結局僕は誰かの上に立ちたかったんだろうか。
自分と同じ誰かを作って、安心感を得たかったんだろうか。

違ったのに───。
僕はタグが欲しかっただけなのに。


僕がどれだけ頑張ったつもりでいても、
 “良い子” のタグは僕に付かなかった。


───まだ足りない。
───何が足りない?


振り返ると、姉はたかが80点の答案用紙で褒めちぎられている。
兄はバスケ部の部長に推薦されたと胸を張っている。


ねえ───。
───僕は?

僕はまだ頑張っていなきゃいけないの?
僕はどうして褒めて貰えないの?
こっちを見てよ。僕はここに居るよ。ねぇ僕も褒めてよ。良い子だねって頭を撫でてよ。笑い掛けてよ。狡いよ。偉いねって。よく頑張ったねって。出した結果位は認めてくれたって………。


───ねえ。
僕の事が見えないの───?
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