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第1章:辺境の村、カウニカ
第12話:白騎士の実力
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のどかな村に似合わない険呑な雰囲気がナハトとグレースと名乗った少女騎士の間に立ち込める。
グレースは両手でハルバードを握りしめ、鋭い視線をナハトに浴びせる。対するナハトはと言うと困惑していた。この騎士様はドラセナを連れ戻すために来た騎士? そして、俺がドラセナの誘拐犯? 明らかに誤解をしている。そう思ったナハトは「ちょ、ちょっと、待ってくれ」と声をかけた。
「俺がドラセナの誘拐犯だなんて誤解だ」
しかし、グレースの鋭い視線は一向に弱まろうとしない。
「なにが誤解なものか。昨日もドラセナ様を連れ歩いていたではないか」
その言葉にイーニッドが言った村に入った時、誰かに見られているような気がするという言葉を思いだす。なるほど。あれはこの騎士の視線だったのか。「そ、そうだけど」としどろもどろにナハトは言葉を続ける。
「むしろ逆だよ、逆。俺はゴルドなんとか傭兵団とか言う奴らにドラセナが捕まっていたのを助けたんだ。それでドラセナを首都まで送り届けようと思って一緒に旅をしているんだ」
これで誤解も解けるだろう。そう思ってのナハトの言葉だった。
しかし、目の前の騎士は誤解を解くどころかさらに険しい表情を浮かべナハトを見る。「良くもそう、口からでまかせをペラペラと言えるものだ」と冷淡に呟かれたのを聞き、全く誤解が解けていないことをナハトは悟った。
「でまかせなんかじゃないって! 本当なんだよ!」
「ええい、黙れ! そのような口八丁に騙されるグレース・アルミナではないぞ!」
グレースは激昂してそう叫ぶ。全く取り付く島もなかった。
「な、なんならドラセナに直接聞いて……この近くの宿屋にいるから……」
「そんなことはさせん。そう言って、ドラセナ様を人質に取るつもりだろう? そうさせないために私は貴様がドラセナ様から離れる隙を狙っていたのだからな」
「人質だなんて……そんなつもりはないって!」
必死で自分の無実を訴えるナハトであったが、目の前のグレースという名の少女騎士は完全にナハトをドラセナを誘拐した犯人だと決めてかかっているようだった。
その証拠に、さっきからナハトを見る殺気すらこもった青い瞳の鋭さは一向に弱まる気配はない。業を煮やしたかのように「とにかく!」とグレースは叫んだ。
「貴様を倒し、ドラセナ様を取り戻す! 行くぞ、私の幻想具、ヴェントハルバードで斬り伏せてくれる!」
幻想具! その単語に思わずナハトの視線が彼女の持つハルバードに向く。
一見、ただの鉄製のハルバードに見えたが、あれは幻想具だったのか。だとすればこの騎士の戦闘力も相当なものだろう。一人でドラセナ奪還の任務を帯びていたのは伊達でもなんでもないということか。
そんなことをナハトが思っている内にグレースはハルバードを手に襲い掛かってくる。地を蹴り、ナハトとの距離を詰めてくる。
具足が幻想具だったイーニッド程の速度ではないが、幻想具の想力で身体能力の強化はしているのだろう。その速度は、速い。こちらに駆け出しながらグレースはハルバードを振りかぶる。
この分からず屋! 内心、苛立ちながらもナハトは腰にかけた聖桜剣を抜き放つ。
幻想具に対抗するには幻想具しかない。こんな勘違いで斬り殺される訳にもいかないのだ。振り下ろされるはハルバードの斧の部分。斧の一撃を薄紅色の刀身が受け止める。
ガキィィィン、と険呑な音がのどかな村に響き渡った。走ってくる勢いと長い柄を振り上げて弧を描いて振り下ろした渾身の斧の一振りだったのだから、それを受け止めた聖桜剣にかかる衝撃も相当なものだった。
ジンジンと聖桜剣を握る右手が痺れる。いってぇ……と内心で思っているとハルバードを受け止められたグレースが青い瞳を驚愕の色に染めて、自らのハルバードを受け止める聖桜剣とナハトを見ていた。「貴様……!」と呟く。
「その武器……幻想具か……!」
「幻想具も何も……伝説の武器、聖桜剣キルシェだよ」
「聖桜剣だと……?」
グレースはハルバードを引き、後ろに飛ぶ。そして、青い瞳に相変わらずの殺気を込めてナハトを睨んだ。
「あの伝説の剣がこんなところにあるはずがない。貴様のような人間が使い手に選ばれるはずもない。でまかせも大概にするのだな」
まぁ、たしかに。自分でもなんで自分なんかが伝説の剣に選ばれたのかは分からないんだけど……と思いつつも両手で聖桜剣を構える。
とにかくこの騎士様を黙らせることが先決だ。その上でドラセナを連れて来て事情を話せば騎士様も納得してくれるだろう。
そのためにもここで斬り伏せられる訳にもいかない。宿屋まで逃げ出そうかとも思ったが、この距離で背中を見せれば、そこにあのハルバードを叩き込まれるのがオチだろう。
グレースはハルバードを両手で構えて、再びこちらに迫る。
両手で長柄を握りしめ、渾身の突きを繰り出す。鋼鉄ですら貫通しそうな勢いの一突きをナハトは聖桜剣の薄紅色の刀身で受け流すようにする。
グレースはすぐさまハルバードを引き戻し、振りかぶり、斧の部分で斬り掛かってくる。その斧の一振りを聖桜剣の刀身で受け止める。ジリジリ、とその場で刃と刃をぶつけ合い、やがてどちらともなく離れる。
(もっと接近できれば……!)
長いリーチを持つハルバードだが、それは裏を返せば至近距離まで近付かれれば攻撃ができないということでもある。
その点に関しては獲物が剣であるナハトに分がある。だが、グレースはそんなことを容易にさせてくれる程、甘い相手でもなかった。
連続してハルバードの攻撃が振るわれ、リーチを詰める隙もない。突き、払い、振り下ろし、斬り上げ。暴風雨の如く勢いで多彩な攻撃が次々に繰り出される。
複合武器ならではの多彩な戦法にナハトは聖桜剣で必死にそれらを弾き返した。ナハトの武器が伝説の幻想具、聖桜剣キルシェでなければとっくにナハトの体はハルバードでズタズタに引き裂かれていたであろう。
これだけの技、幻想具の想力だけに頼ったものではない。昨日、森で戦ったイーニッドがそうであったように目の前の少女騎士もハルバードを使いこなすだけの鍛錬を積んでいるのだ。
何度目かの払いの一撃を聖桜剣で受け流す。次いでハルバードを引き、一気に前に突き出してくる。鋭い突きの一撃。聖桜剣で受けるのは間に合わない。そう判断したナハトは体を左に飛ばした。
つい先程までナハトがいたところを鋼鉄をも貫く勢いの槍の穂先が抜けていく。
大技の後に隙ができた。ナハトは聖桜剣で斬り掛かったが、グレースがハルバードを引き戻す速度もまた速い。聖桜剣の刀身を引き戻す途中のハルバードの長柄で受け止めるという芸当を見せられ、ナハトの攻撃は弾かれる。
再びグレースはハルバードを振りかぶり、ナハトも聖桜剣を振るう。ハルバードの斧と聖桜剣が真っ向からぶつかり合い、硬質な音を響かせる。
すぐにお互いの刃は離れ、グレースが神速の速度で攻撃を繰り出してくる。それを聖桜剣の力でなんとか弾き返す。突きは体ごと躱すか、刀身で受け、突きの方向を微かにズラし、躱す、払いは刀身で受け流し、振り下ろしは真っ向から刀身で受け止める。
嵐のような攻勢であったが、ナハトもグレースとの戦いを通じてハルバード相手の戦い方を身に着けつつあった。
攻勢に徹している分、一見、戦局はグレースの方が優位。とはいえ、攻撃をナハトの体に届かせるまでには至っていない。
ナハトも反撃はしている。総合的に見れば互角と言っていい二人の戦いであった。ナハトの方は必死であったが、グレースはその事態に苛立っている様子を見せた。
何合目かの聖桜剣とハルバードのぶつかり合いの末にグレースは後ろに飛び、ナハトとの距離を開けた。これまでになかった行動にナハトも目を見張る。
「どうやら、このまま打ち合っていてもなかなか勝負は付きそうにないな」
苛立ち混じりのグレースの言葉。ナハトは無言で聖桜剣を構え直した。
「貴様程度の相手に使うのは癪だが……このヴェントハルバードの想力を解放させてもらう!」
グレースはそう言い、ハルバードを構える。想力……! その言葉にハッとする。
そうだ。イヴも言っていた。幻想具には特別な力が宿ることもあると。
グレースはその力を解放しようとしているのだ。何をするつもりだ。そう思いながらグレースの一挙一動に睨みをきかせる。いざとなればナハトも聖桜剣の想力を解放し、イーニッドと戦った時のように黄金の光の剣として戦うつもりだった。
グレースの思いに答えるようにハルバードの周囲に風が渦巻く。
渦巻いた風はハルバードを包むように……いや、違う! 風がハルバードを包んでいるのではない。ハルバードが風を生み出しているのだ。そのことに気付き、ハッとする。ビュッとハルバードから生み出された風が一閃して走る。
ナハトから少し離れた位置に置かれていた樽に命中し、その樽を真っ二つに斬り裂いた。風の……刃……!
「風の刃……それがお前の幻想具の力か……!」
「そういうことだ。さっきまでのように行くとは思うなよ?」
風を纏ったハルバードを構えるグレース。これはこちらも手加減している余裕はなさそうだ。
そう判断したナハトは聖桜剣の想力を解き放つ。薄紅色の刀身が黄金の光を纏い、黄金の光刃になる。
グレースが目を見張る。「それが貴様の幻想具の力か……」とうめくように呟く。
「なかなかの幻想具のようだが……私のヴェントハルバードに勝てると思うなよ」
「そいつはどうかな?」
グレースの言葉にナハトがニヤリと笑う。光の刃と風の刃。激突一歩手前だった。
グレースは両手でハルバードを握りしめ、鋭い視線をナハトに浴びせる。対するナハトはと言うと困惑していた。この騎士様はドラセナを連れ戻すために来た騎士? そして、俺がドラセナの誘拐犯? 明らかに誤解をしている。そう思ったナハトは「ちょ、ちょっと、待ってくれ」と声をかけた。
「俺がドラセナの誘拐犯だなんて誤解だ」
しかし、グレースの鋭い視線は一向に弱まろうとしない。
「なにが誤解なものか。昨日もドラセナ様を連れ歩いていたではないか」
その言葉にイーニッドが言った村に入った時、誰かに見られているような気がするという言葉を思いだす。なるほど。あれはこの騎士の視線だったのか。「そ、そうだけど」としどろもどろにナハトは言葉を続ける。
「むしろ逆だよ、逆。俺はゴルドなんとか傭兵団とか言う奴らにドラセナが捕まっていたのを助けたんだ。それでドラセナを首都まで送り届けようと思って一緒に旅をしているんだ」
これで誤解も解けるだろう。そう思ってのナハトの言葉だった。
しかし、目の前の騎士は誤解を解くどころかさらに険しい表情を浮かべナハトを見る。「良くもそう、口からでまかせをペラペラと言えるものだ」と冷淡に呟かれたのを聞き、全く誤解が解けていないことをナハトは悟った。
「でまかせなんかじゃないって! 本当なんだよ!」
「ええい、黙れ! そのような口八丁に騙されるグレース・アルミナではないぞ!」
グレースは激昂してそう叫ぶ。全く取り付く島もなかった。
「な、なんならドラセナに直接聞いて……この近くの宿屋にいるから……」
「そんなことはさせん。そう言って、ドラセナ様を人質に取るつもりだろう? そうさせないために私は貴様がドラセナ様から離れる隙を狙っていたのだからな」
「人質だなんて……そんなつもりはないって!」
必死で自分の無実を訴えるナハトであったが、目の前のグレースという名の少女騎士は完全にナハトをドラセナを誘拐した犯人だと決めてかかっているようだった。
その証拠に、さっきからナハトを見る殺気すらこもった青い瞳の鋭さは一向に弱まる気配はない。業を煮やしたかのように「とにかく!」とグレースは叫んだ。
「貴様を倒し、ドラセナ様を取り戻す! 行くぞ、私の幻想具、ヴェントハルバードで斬り伏せてくれる!」
幻想具! その単語に思わずナハトの視線が彼女の持つハルバードに向く。
一見、ただの鉄製のハルバードに見えたが、あれは幻想具だったのか。だとすればこの騎士の戦闘力も相当なものだろう。一人でドラセナ奪還の任務を帯びていたのは伊達でもなんでもないということか。
そんなことをナハトが思っている内にグレースはハルバードを手に襲い掛かってくる。地を蹴り、ナハトとの距離を詰めてくる。
具足が幻想具だったイーニッド程の速度ではないが、幻想具の想力で身体能力の強化はしているのだろう。その速度は、速い。こちらに駆け出しながらグレースはハルバードを振りかぶる。
この分からず屋! 内心、苛立ちながらもナハトは腰にかけた聖桜剣を抜き放つ。
幻想具に対抗するには幻想具しかない。こんな勘違いで斬り殺される訳にもいかないのだ。振り下ろされるはハルバードの斧の部分。斧の一撃を薄紅色の刀身が受け止める。
ガキィィィン、と険呑な音がのどかな村に響き渡った。走ってくる勢いと長い柄を振り上げて弧を描いて振り下ろした渾身の斧の一振りだったのだから、それを受け止めた聖桜剣にかかる衝撃も相当なものだった。
ジンジンと聖桜剣を握る右手が痺れる。いってぇ……と内心で思っているとハルバードを受け止められたグレースが青い瞳を驚愕の色に染めて、自らのハルバードを受け止める聖桜剣とナハトを見ていた。「貴様……!」と呟く。
「その武器……幻想具か……!」
「幻想具も何も……伝説の武器、聖桜剣キルシェだよ」
「聖桜剣だと……?」
グレースはハルバードを引き、後ろに飛ぶ。そして、青い瞳に相変わらずの殺気を込めてナハトを睨んだ。
「あの伝説の剣がこんなところにあるはずがない。貴様のような人間が使い手に選ばれるはずもない。でまかせも大概にするのだな」
まぁ、たしかに。自分でもなんで自分なんかが伝説の剣に選ばれたのかは分からないんだけど……と思いつつも両手で聖桜剣を構える。
とにかくこの騎士様を黙らせることが先決だ。その上でドラセナを連れて来て事情を話せば騎士様も納得してくれるだろう。
そのためにもここで斬り伏せられる訳にもいかない。宿屋まで逃げ出そうかとも思ったが、この距離で背中を見せれば、そこにあのハルバードを叩き込まれるのがオチだろう。
グレースはハルバードを両手で構えて、再びこちらに迫る。
両手で長柄を握りしめ、渾身の突きを繰り出す。鋼鉄ですら貫通しそうな勢いの一突きをナハトは聖桜剣の薄紅色の刀身で受け流すようにする。
グレースはすぐさまハルバードを引き戻し、振りかぶり、斧の部分で斬り掛かってくる。その斧の一振りを聖桜剣の刀身で受け止める。ジリジリ、とその場で刃と刃をぶつけ合い、やがてどちらともなく離れる。
(もっと接近できれば……!)
長いリーチを持つハルバードだが、それは裏を返せば至近距離まで近付かれれば攻撃ができないということでもある。
その点に関しては獲物が剣であるナハトに分がある。だが、グレースはそんなことを容易にさせてくれる程、甘い相手でもなかった。
連続してハルバードの攻撃が振るわれ、リーチを詰める隙もない。突き、払い、振り下ろし、斬り上げ。暴風雨の如く勢いで多彩な攻撃が次々に繰り出される。
複合武器ならではの多彩な戦法にナハトは聖桜剣で必死にそれらを弾き返した。ナハトの武器が伝説の幻想具、聖桜剣キルシェでなければとっくにナハトの体はハルバードでズタズタに引き裂かれていたであろう。
これだけの技、幻想具の想力だけに頼ったものではない。昨日、森で戦ったイーニッドがそうであったように目の前の少女騎士もハルバードを使いこなすだけの鍛錬を積んでいるのだ。
何度目かの払いの一撃を聖桜剣で受け流す。次いでハルバードを引き、一気に前に突き出してくる。鋭い突きの一撃。聖桜剣で受けるのは間に合わない。そう判断したナハトは体を左に飛ばした。
つい先程までナハトがいたところを鋼鉄をも貫く勢いの槍の穂先が抜けていく。
大技の後に隙ができた。ナハトは聖桜剣で斬り掛かったが、グレースがハルバードを引き戻す速度もまた速い。聖桜剣の刀身を引き戻す途中のハルバードの長柄で受け止めるという芸当を見せられ、ナハトの攻撃は弾かれる。
再びグレースはハルバードを振りかぶり、ナハトも聖桜剣を振るう。ハルバードの斧と聖桜剣が真っ向からぶつかり合い、硬質な音を響かせる。
すぐにお互いの刃は離れ、グレースが神速の速度で攻撃を繰り出してくる。それを聖桜剣の力でなんとか弾き返す。突きは体ごと躱すか、刀身で受け、突きの方向を微かにズラし、躱す、払いは刀身で受け流し、振り下ろしは真っ向から刀身で受け止める。
嵐のような攻勢であったが、ナハトもグレースとの戦いを通じてハルバード相手の戦い方を身に着けつつあった。
攻勢に徹している分、一見、戦局はグレースの方が優位。とはいえ、攻撃をナハトの体に届かせるまでには至っていない。
ナハトも反撃はしている。総合的に見れば互角と言っていい二人の戦いであった。ナハトの方は必死であったが、グレースはその事態に苛立っている様子を見せた。
何合目かの聖桜剣とハルバードのぶつかり合いの末にグレースは後ろに飛び、ナハトとの距離を開けた。これまでになかった行動にナハトも目を見張る。
「どうやら、このまま打ち合っていてもなかなか勝負は付きそうにないな」
苛立ち混じりのグレースの言葉。ナハトは無言で聖桜剣を構え直した。
「貴様程度の相手に使うのは癪だが……このヴェントハルバードの想力を解放させてもらう!」
グレースはそう言い、ハルバードを構える。想力……! その言葉にハッとする。
そうだ。イヴも言っていた。幻想具には特別な力が宿ることもあると。
グレースはその力を解放しようとしているのだ。何をするつもりだ。そう思いながらグレースの一挙一動に睨みをきかせる。いざとなればナハトも聖桜剣の想力を解放し、イーニッドと戦った時のように黄金の光の剣として戦うつもりだった。
グレースの思いに答えるようにハルバードの周囲に風が渦巻く。
渦巻いた風はハルバードを包むように……いや、違う! 風がハルバードを包んでいるのではない。ハルバードが風を生み出しているのだ。そのことに気付き、ハッとする。ビュッとハルバードから生み出された風が一閃して走る。
ナハトから少し離れた位置に置かれていた樽に命中し、その樽を真っ二つに斬り裂いた。風の……刃……!
「風の刃……それがお前の幻想具の力か……!」
「そういうことだ。さっきまでのように行くとは思うなよ?」
風を纏ったハルバードを構えるグレース。これはこちらも手加減している余裕はなさそうだ。
そう判断したナハトは聖桜剣の想力を解き放つ。薄紅色の刀身が黄金の光を纏い、黄金の光刃になる。
グレースが目を見張る。「それが貴様の幻想具の力か……」とうめくように呟く。
「なかなかの幻想具のようだが……私のヴェントハルバードに勝てると思うなよ」
「そいつはどうかな?」
グレースの言葉にナハトがニヤリと笑う。光の刃と風の刃。激突一歩手前だった。
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