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第1章:辺境の村、カウニカ
第13話:光の刃、風の刃
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光の剣を構えたナハトと風の矛を構えたグレースが睨み合う。
暴風がグレースの体の周りを纏い近寄るもの全てを斬り裂かんとする。
聖桜剣の黄金の光が朝の村をさらに明るく照らし、その輝きで暴風に対抗しようとする。二人の激突は直前。
「吼えろ! ヴェントハルバード!」
グレースの声が響き、ハルバードが唸りを上げる。
勢い良くハルバードが振り下ろされる。それはリーチの遥か外の相手に対する一振り。
普通ならばただの酔狂。されど、幻想具であればそれは酔狂ではなくなる。
振り下ろされたハルバード。そこから無数の風の刃が放たれ、その不可視の刃はナハトを八つ裂きにせんとする。
通常であれば見切ることは困難。何故なら風の刃は見えないのだ。不可視の刃。普通なら見切ることも躱すことも困難なそれらを前にしてナハトは聖桜剣からもたらされる想力を頼った。
聖桜剣に底上げされた身体能力。それを持って空気の波動を読み取る。
風の刃、ということは空気を震わせて襲い来る、ということだ。それならばその空気の流れさえ読み取れば、その刃の軌跡を読み取ることも不可能ではない。
そして、聖桜剣がもたらす身体能力の強化は、五感の強化はそれさえも可能なレベルにまで達している。
見えない刃。それをナハトは見切り、黄金に輝く光刃を振るう。
光刃は不可視の刃をことごとく斬り払い、払い飛ばされた空気の流れがナハトの周りを渦巻く。
おそらくは必勝を期して放った風刃の嵐だったのだろう。それが全て防がれた。そのことにグレースは驚愕の表情を隠し切れなかった。
「馬鹿な……!? 防いだ、だと……あれだけの風刃を……」
「それがこの剣……聖桜剣の力だ」
「くっ、聖桜剣などとデタラメを……!」
ニヤリと笑ったナハトに、グレースは舌を打つ。
ナハトの持つ剣が聖桜剣であれそうでないにせよ、自分の必殺がしのがれたのは事実なのだから。相当な力を持った幻想具であることは認めざるを得なかった。
グレースはなんとか我を取り戻し、眼前の敵を睨む。グレースの鋭い一瞥を受けてナハトは苦笑いする。やれやれ、憎まれたもんだ……。
グレースはハルバードを突きの形に構える。ハルバードの先端の槍の穂先が真っ向からナハトに向けられる。
「これならば……どうだ!」とグレースの気合の一声と共にハルバードが突き出される。その穂先から風の刃が放たれ、真っ直ぐにナハトに向かう。
その刃の鋭さをナハトは本能的に理解する。この刃は普通の剣なら到底、受けきれない。受け止めたところで剣の刀身がへし折られる。
それだけの力がこもった突きの風刃。もっとも、普通ならば剣で受けることすらできず、不可視の突きに串刺しにされてしまっているだろうが。
しかし、ナハトが持っているのは聖桜剣である。世界最古の幻想具にして四大至宝の一つ。伝説の聖剣、聖桜剣キルシェ。それが想力を放ち、黄金の光を纏った剣と化している。ならば受けきれない道理はない。
普通の剣ならへし折れる勢いの突きもこの剣ならばなんなく受けきれる。
先程と同様、風の流れで迫り来る風刃の突きを見切り、「はあっ!」と一声と共に聖桜剣を振るう。黄金の光刃が描いた軌跡は必勝を期された風刃の突進を真っ向から斬り払った。
堅牢。聖桜剣は普通の剣が受ければへし折れる風刃の突進を真っ向から受け止めてなお、健在。それも聖桜剣ならば、当然のことである。
払われた風が周囲に舞い、砂埃を上げる。必殺を二度も防がれて、グレースは驚愕を通り越して狼狽に近い表情を見せる。
「貴様……本当に、何者だ!?」
この期に及んでも目の前の白騎士はナハトのことをドラセナを誘拐した悪漢だと思い込んでいるようだ。
ナハトはやれやれ、とため息をつきたい気分を堪えて、「桜の勇者だよ」と答える。その言葉にグレースは呆然としたように目を見開き、ナハトを見、そして、やはりその瞳を鋭くし、ナハトを睨む。
「ふざけたことを……!」と苛立ち混じりの言葉を呟く。ハルバードが再び振るわれる。そこから無数の風刃が飛ぶも、最初の風刃の嵐ほどの量でも勢いでもない。ならば、聖桜剣を持つナハトにとって、それを対処するのは容易いことだった。
黄金の光刃を振るい、風の刃たちをことごとく斬り払う。戦局は自分が有利だな、とナハトは思っていた。一見すれば距離を取り、一方的に風刃を放って攻撃しているグレースの方が有利に見えるかもしれないが、その風刃による攻撃は全てが聖桜剣の前に防ぎきられている。
攻勢に出ているはずのグレースが焦り、防衛に徹しているはずのナハトが余裕を浮かべるという逆転現象が起こっているのだ。
これくらいの攻撃ならばどれだけやられようと防げる。その自信がナハトにはあった。聖桜剣にはそれだけの力がある。
(とはいえ、一方的にやられっぱなしってのも面白くないよな)
新たに飛来した風刃を弾き返しながら、ナハトはそんなことを思う。このまま延々と防衛に徹していても何にもならない。ならば、自分がやるべきことは一つ。
こちらの剣の間合いに相手を捉えること。すなわち、接近。「はあっ!」とグレースがハルバードを振り下ろす。そこから風刃が放たれるのとタイミングを同じくして、ナハトは地面を蹴った。
駆けながら自分に迫り来る風刃を叩き落とし、一気にグレースに接近する。
これまで遠距離での防御に徹していたナハトの出た攻勢にグレースは驚愕の表情を浮かべる。接近される前にもう一度、風刃を放とうとしたようだが、それは遅すぎた。
先程の風刃をはたき落とした時点で既にナハトとグレースの間の距離は詰まっており、既にグレースはナハトの間合い、聖桜剣の剣筋が届く位置にいる。グレースも騎士の称号を持っているだけあって、それが分からない程、愚かではない。
既に風刃による一方的な遠距離攻撃は諦め、接近戦に対応しようと頭を切り替えていた。
ハルバードに風刃を纏わせ、真っ向から斬り合おうとする。ナハトの聖桜剣の黄金の光刃が振るわれる。黄金の一撃をハルバードが真っ向から受け止める。
それを受けてグレースは再び驚愕する羽目になった。ナハトの聖桜剣とは先程も近距離での打ち合いをしていた。だからある程度の力も分かっているつもりだった。
だが、想力を解放し、黄金の光刃と化した聖桜剣の一撃は先程の比ではないくらいに力を増していた。一撃受けただけなのに完全に押されている。なんという威力だ、と驚愕せざるを得なかったのだ。
勿論、一撃だけで終わるナハトの攻撃ではない。その後も一太刀二太刀と聖桜剣が振るわれ、それをなんとかハルバードで受け止める。
しかし、一撃受ける度にグレースの足が後ろに下がる。黄金の光刃と化した聖桜剣の剣圧は尋常なものではなかった。
グレースの持つ幻想具ヴェントハルバードとて普通の武器ではない。普通の武器を遥かに凌駕する硬度に加え、風の刃をも纏って自身を強化しているのだ。それでも受け切れない。
グレースの武器が幻想具でなければ最初の一撃を受けた時点で木っ端微塵に砕け散っていただろう。光刃が振るわれる。それを受ける度にグレースは焦りの表情を浮かべる。
一撃一撃受ける度に自分が敗北に近付いているような、そんな錯覚を抱かされる。否、それは錯覚ではない。真実だ。
黄金の光刃と化した聖桜剣の暴威。それはもはや、ハルバードを操る小手先の技量云々でどうにかなるような生易しいものではなかった。
この幻想具は、黄金の剣は何なのだ、とグレースは思う。
同じ幻想具のはずなのに自分の幻想具、ヴェントハルバードを遥かに凌駕しているとしか言いようがない。まさか、本当に伝説の聖桜剣? そんなことがあるはずがない! そんなグレースの思いをよそに戦局は既に、ナハトの圧倒的優位にして、グレースの圧倒的不利。
こうなればいずれそうなるのは必然だったのであろう。何合目かの激突。
それを受けて、グレースの手元からヴェントハルバードが弾き飛ばされた。グレースはしまった、と思うがもう遅い。
手元を離れたハルバードは地面を転がる。終わりだ……。グレースは死を覚悟した。風刃を纏った幻想具ヴェントハルバード。それを持ってしても対抗できなかった黄金の光刃相手に素手で何かできるはずがない。
黄金の光刃が自分の体を真っ二つに斬り裂く光景を幻視する。事実、無防備になったグレースに対して黄金の光刃が振り下ろされようとして……。
「勝負あったな。これでこっちの話を少しは聞いてくれるとありがたいんだけどな」
黄金の光刃はグレースを斬り裂くことはなく、首筋に突き付けられるだけだった。
暴風がグレースの体の周りを纏い近寄るもの全てを斬り裂かんとする。
聖桜剣の黄金の光が朝の村をさらに明るく照らし、その輝きで暴風に対抗しようとする。二人の激突は直前。
「吼えろ! ヴェントハルバード!」
グレースの声が響き、ハルバードが唸りを上げる。
勢い良くハルバードが振り下ろされる。それはリーチの遥か外の相手に対する一振り。
普通ならばただの酔狂。されど、幻想具であればそれは酔狂ではなくなる。
振り下ろされたハルバード。そこから無数の風の刃が放たれ、その不可視の刃はナハトを八つ裂きにせんとする。
通常であれば見切ることは困難。何故なら風の刃は見えないのだ。不可視の刃。普通なら見切ることも躱すことも困難なそれらを前にしてナハトは聖桜剣からもたらされる想力を頼った。
聖桜剣に底上げされた身体能力。それを持って空気の波動を読み取る。
風の刃、ということは空気を震わせて襲い来る、ということだ。それならばその空気の流れさえ読み取れば、その刃の軌跡を読み取ることも不可能ではない。
そして、聖桜剣がもたらす身体能力の強化は、五感の強化はそれさえも可能なレベルにまで達している。
見えない刃。それをナハトは見切り、黄金に輝く光刃を振るう。
光刃は不可視の刃をことごとく斬り払い、払い飛ばされた空気の流れがナハトの周りを渦巻く。
おそらくは必勝を期して放った風刃の嵐だったのだろう。それが全て防がれた。そのことにグレースは驚愕の表情を隠し切れなかった。
「馬鹿な……!? 防いだ、だと……あれだけの風刃を……」
「それがこの剣……聖桜剣の力だ」
「くっ、聖桜剣などとデタラメを……!」
ニヤリと笑ったナハトに、グレースは舌を打つ。
ナハトの持つ剣が聖桜剣であれそうでないにせよ、自分の必殺がしのがれたのは事実なのだから。相当な力を持った幻想具であることは認めざるを得なかった。
グレースはなんとか我を取り戻し、眼前の敵を睨む。グレースの鋭い一瞥を受けてナハトは苦笑いする。やれやれ、憎まれたもんだ……。
グレースはハルバードを突きの形に構える。ハルバードの先端の槍の穂先が真っ向からナハトに向けられる。
「これならば……どうだ!」とグレースの気合の一声と共にハルバードが突き出される。その穂先から風の刃が放たれ、真っ直ぐにナハトに向かう。
その刃の鋭さをナハトは本能的に理解する。この刃は普通の剣なら到底、受けきれない。受け止めたところで剣の刀身がへし折られる。
それだけの力がこもった突きの風刃。もっとも、普通ならば剣で受けることすらできず、不可視の突きに串刺しにされてしまっているだろうが。
しかし、ナハトが持っているのは聖桜剣である。世界最古の幻想具にして四大至宝の一つ。伝説の聖剣、聖桜剣キルシェ。それが想力を放ち、黄金の光を纏った剣と化している。ならば受けきれない道理はない。
普通の剣ならへし折れる勢いの突きもこの剣ならばなんなく受けきれる。
先程と同様、風の流れで迫り来る風刃の突きを見切り、「はあっ!」と一声と共に聖桜剣を振るう。黄金の光刃が描いた軌跡は必勝を期された風刃の突進を真っ向から斬り払った。
堅牢。聖桜剣は普通の剣が受ければへし折れる風刃の突進を真っ向から受け止めてなお、健在。それも聖桜剣ならば、当然のことである。
払われた風が周囲に舞い、砂埃を上げる。必殺を二度も防がれて、グレースは驚愕を通り越して狼狽に近い表情を見せる。
「貴様……本当に、何者だ!?」
この期に及んでも目の前の白騎士はナハトのことをドラセナを誘拐した悪漢だと思い込んでいるようだ。
ナハトはやれやれ、とため息をつきたい気分を堪えて、「桜の勇者だよ」と答える。その言葉にグレースは呆然としたように目を見開き、ナハトを見、そして、やはりその瞳を鋭くし、ナハトを睨む。
「ふざけたことを……!」と苛立ち混じりの言葉を呟く。ハルバードが再び振るわれる。そこから無数の風刃が飛ぶも、最初の風刃の嵐ほどの量でも勢いでもない。ならば、聖桜剣を持つナハトにとって、それを対処するのは容易いことだった。
黄金の光刃を振るい、風の刃たちをことごとく斬り払う。戦局は自分が有利だな、とナハトは思っていた。一見すれば距離を取り、一方的に風刃を放って攻撃しているグレースの方が有利に見えるかもしれないが、その風刃による攻撃は全てが聖桜剣の前に防ぎきられている。
攻勢に出ているはずのグレースが焦り、防衛に徹しているはずのナハトが余裕を浮かべるという逆転現象が起こっているのだ。
これくらいの攻撃ならばどれだけやられようと防げる。その自信がナハトにはあった。聖桜剣にはそれだけの力がある。
(とはいえ、一方的にやられっぱなしってのも面白くないよな)
新たに飛来した風刃を弾き返しながら、ナハトはそんなことを思う。このまま延々と防衛に徹していても何にもならない。ならば、自分がやるべきことは一つ。
こちらの剣の間合いに相手を捉えること。すなわち、接近。「はあっ!」とグレースがハルバードを振り下ろす。そこから風刃が放たれるのとタイミングを同じくして、ナハトは地面を蹴った。
駆けながら自分に迫り来る風刃を叩き落とし、一気にグレースに接近する。
これまで遠距離での防御に徹していたナハトの出た攻勢にグレースは驚愕の表情を浮かべる。接近される前にもう一度、風刃を放とうとしたようだが、それは遅すぎた。
先程の風刃をはたき落とした時点で既にナハトとグレースの間の距離は詰まっており、既にグレースはナハトの間合い、聖桜剣の剣筋が届く位置にいる。グレースも騎士の称号を持っているだけあって、それが分からない程、愚かではない。
既に風刃による一方的な遠距離攻撃は諦め、接近戦に対応しようと頭を切り替えていた。
ハルバードに風刃を纏わせ、真っ向から斬り合おうとする。ナハトの聖桜剣の黄金の光刃が振るわれる。黄金の一撃をハルバードが真っ向から受け止める。
それを受けてグレースは再び驚愕する羽目になった。ナハトの聖桜剣とは先程も近距離での打ち合いをしていた。だからある程度の力も分かっているつもりだった。
だが、想力を解放し、黄金の光刃と化した聖桜剣の一撃は先程の比ではないくらいに力を増していた。一撃受けただけなのに完全に押されている。なんという威力だ、と驚愕せざるを得なかったのだ。
勿論、一撃だけで終わるナハトの攻撃ではない。その後も一太刀二太刀と聖桜剣が振るわれ、それをなんとかハルバードで受け止める。
しかし、一撃受ける度にグレースの足が後ろに下がる。黄金の光刃と化した聖桜剣の剣圧は尋常なものではなかった。
グレースの持つ幻想具ヴェントハルバードとて普通の武器ではない。普通の武器を遥かに凌駕する硬度に加え、風の刃をも纏って自身を強化しているのだ。それでも受け切れない。
グレースの武器が幻想具でなければ最初の一撃を受けた時点で木っ端微塵に砕け散っていただろう。光刃が振るわれる。それを受ける度にグレースは焦りの表情を浮かべる。
一撃一撃受ける度に自分が敗北に近付いているような、そんな錯覚を抱かされる。否、それは錯覚ではない。真実だ。
黄金の光刃と化した聖桜剣の暴威。それはもはや、ハルバードを操る小手先の技量云々でどうにかなるような生易しいものではなかった。
この幻想具は、黄金の剣は何なのだ、とグレースは思う。
同じ幻想具のはずなのに自分の幻想具、ヴェントハルバードを遥かに凌駕しているとしか言いようがない。まさか、本当に伝説の聖桜剣? そんなことがあるはずがない! そんなグレースの思いをよそに戦局は既に、ナハトの圧倒的優位にして、グレースの圧倒的不利。
こうなればいずれそうなるのは必然だったのであろう。何合目かの激突。
それを受けて、グレースの手元からヴェントハルバードが弾き飛ばされた。グレースはしまった、と思うがもう遅い。
手元を離れたハルバードは地面を転がる。終わりだ……。グレースは死を覚悟した。風刃を纏った幻想具ヴェントハルバード。それを持ってしても対抗できなかった黄金の光刃相手に素手で何かできるはずがない。
黄金の光刃が自分の体を真っ二つに斬り裂く光景を幻視する。事実、無防備になったグレースに対して黄金の光刃が振り下ろされようとして……。
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