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第4章:交易都市ペルトーセ
第52話:アウトロ
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「さあ、お兄ちゃん。楽しいダンスを踊りましょう」
メリクリウスが挑発するように笑う。いつも通りの不愉快なメリクリウスの笑み、に見える。しかし、その笑みから余裕は感じられなかった。
ナハトがさらなる聖桜剣の力を引き出したことに関して脅威に感じていることの証だ。
ナハトは無言で黄金の光刃を、聖桜剣を構えると、床を蹴り、一気にメリクリウスに迫った。
走りながら剣を振るう。そこから黄金の波動が放たれ、メリクリウスに向かう。
メリクリウスも虹の短剣を振るい、極太の虹色の光線で迎え撃つ。
お互いが放った閃光がぶつかり合い、相殺される。
光が晴れた時にはもうナハトはメリクリウスのすぐ側まで接近していた。
両手で構えた聖桜剣を振り下ろす。右手に持った虹の短剣が迎撃する。
以前は真っ向から受け止められた攻撃。だが、今度は? 振り下ろされた聖桜剣が虹の短剣の刀身を滑るようにして方向をそらされ、弾かれる。
受け流された? ナハトは自分の攻撃の勢いをそらされたことを感じた。それで終わるナハトではない。二撃、三撃と連続して攻撃を振るう。
逆袈裟に振り上げた剣筋、横払いに振るわれた剣筋。その二つ共、虹の短剣に受け流された。
メリクリウスの巧妙な短剣捌きがナハトの聖桜剣の一撃を無力化する。やはり実力はメリクリウスの方が上なのか? そう思ったナハトはいや、違うな、と思った。
「どうした、メリクリウス。そんな風に攻撃を受け流して。以前みたいに俺の剣を受け止めないのか?」
ナハトの言葉にメリクリウスは「…………ッ!」と反応する。
そうして振るわれた聖桜剣の一撃。今度はメリクリウスはそれを虹の短剣で受け流すことはせず、短い刀身で受け止めようとした。
挑発に乗ったな、と思った。
以前は真っ向から受け止められた。全力を持って振り下ろされた聖桜剣は虹の短剣に受け止められ、宙空で静止した。だが今度は。
ガキン、と音。虹の短剣の刀身を弾き、メリクリウスがたたらを踏む。
受け止め、切れなかったのだ。さらなる力を引き出された聖桜剣。その全力の一撃をメリクリウスは受け止めることが、できなかった。
それが分かっているからさっきから受け流していたのだろう。「どうやら、今の俺の剣を受けることはできないみたいだな」とナハトが言うとメリクリウスは一瞬、笑みが崩れ、苦虫を噛み潰したような顔になったが、
すぐに笑顔の仮面を取り戻す。
「悔しいけど、どうやらそうみたいね。……でも、それでもお兄ちゃんとダンスを踊ることになんら問題はないのよ?」
その言葉通り。再度、ナハトが放った剣撃のことごとくをメリクリウスは虹の短剣で受け流してみせた。
大した腕前だ、と感心せざるを得ない。真っ向からぶつかり合えないのなら、力の流れをそらしてしまえばいい。それで十分に防御し切れている。
メリクリウスは防御に専念する訳ではなく、虹の短剣を振るい、こちらに攻撃まで繰り出して来た。
蛇のような曲線美を描き、虹の短剣が振るわれる。それも恐ろしい速度で。
以前からパワーはナハトに分があり、スピードにはメリクリウスに分があったが、それは今も変わっていない。
超高速の剣さばき。それでも、ナハトの剣技も、聖桜剣の力も以前と比べれば向上している。
以前はなんとか必死で迫り来る短剣に聖桜剣の刀身をあてがって防御していたが、今はある程度の余裕を持って、聖桜剣で防御できる。
お互いにお互いの攻撃を脅威に思いながらも、お互いに防御し切る。一見すると互角の戦いに思える。しかし、その実、ナハトが押していた。
メリクリウスの攻撃を弾くことはナハトにとっては余裕でできているのに、ナハトの攻撃に対し、メリクリウスはいつもの笑みも崩れる勢いで必死で短剣を振るい防御する。 以前、対決した時とはお互いの立場が完全に逆転していた。
(このまま押し込む……!)
ナハトはそう思い、メリクリウスに休む間も与えないように連続して聖桜剣を振るう。
さらに激しさを増したナハトの攻勢を前に、メリクリウスは笑みを浮かべている余裕すらなくしていた。「くっ……!」と小さな苦悶の声さえついにはもらすようになる。
苦し紛れに繰り出された短剣の一撃を弾き返す。その一瞬、メリクリウスに最大の隙が生まれる。
その瞬間を見逃す程、ナハトは愚かではなかった。この世界に召喚されてから、聖桜剣を握ってから、ドラセナを守るために戦い抜いた経験の全てが今が好機だ、と告げている。
ナハトは聖桜剣に思いを込めた。全ての想力を解放しろ。今、この瞬間に勝負を決める。
聖桜剣の黄金の輝きがさらに強く、強く強く輝き、聖桜剣が振り下ろされる。虹の短剣による防御は……間に合わなかった。
黄金の光刃はメリクリウスの体を袈裟懸けに斬り裂き、メリクリウスの悲鳴が響く。
その勢いでメリクリウスは真後ろに吹き飛ばされ、壁に激突した。光芒剣の想力で肉体の防御力は上げていただろうが、それでも聖桜剣の一振りをまともに喰らったのだ。
無事で済む訳がなかった。胸を斬り裂かれたメリクリウスはおびただしい量の真っ赤な血を流し、壁にもたれ込む。
「そ、そんな……馬鹿な……こ、この、わたしが……」
自分の体から流れる血に手を当てて、真っ赤に染まった手を呆然として眺めながら、メリクリウスが信じられないとばかりに口にする。
勝負あったな、とナハトは思った。メリクリウスの元までナハトは足音を鳴らし、歩いていき、「降伏しろ」と言葉をかける。
「その状態じゃ、もう戦えない」
「ふ、ふふ……やってくれるじゃない……お兄ちゃん……わたしを、こんな……」
「大人しく縛に就け」
ナハトの言葉。それに対し、おかしくてたまらないという風にメリクリウスは笑った。
「あははははははははは! わたしが縛に就く? このわたしが? 面白い冗談ね」
相変わらず、この少女は何故、こんなに笑えるのか。不思議に思いながらナハトが「冗談だと思うか?」と続ける。
「本気で言ってるの? でも、残念。わたしはこんなところで終わる女じゃないの」
クスクスクス、と自らから流れる血のことなどまるで気にしていないようにメリクリウスは笑う。
「けれど、今回はわたしの負けね。それは認めてあげる。ドラセナ・エリアスのことは、諦めてあげるわ」
そう言い、メリクリウスは控えていた部下二人の方を見る。
メリクリウスがやられたのを見て、二人の傭兵は顔面蒼白になっている。 その内、一人、ドラセナを抱えている方にメリクリウスは「ドラセナ・エリアスを離しなさい」と声をかける。傭兵はためらいながらも、しかし、メリクリウスの指示には逆らえず、ドラセナを解放する。
手足を縛る縄をほどかれ、解放されたドラセナが「ナハト!」と名を呼びながら、ナハトの元まで走ってくる。「ドラセナ!」とナハトもそんな彼女の名を呼ぶ。
「ごめんな、ドラセナ。恐かっただろう? ドラセナのことを放っておいて……ほんとにごめん」
ナハトはそう言って謝罪する。ドラセナは「ううん、いいの」と言って、笑みを見せてくれた。メリクリウスの笑みとは違う。見ている者を安心させるその微笑み。
「ナハトはこうして、わたしを助けに来てくれたんだから……それでいいの……」
そう言って、ドラセナは自らの体をナハトの体に寄せる。ナハトも右手で聖桜剣を構えたまま、左手でドラセナの体を抱き寄せた。そんな二人の様子を見ていたメリクリウスが哄笑をもらした。
「あはははははははは! 全く、イチャついてくれるわねぇ!」
その笑い声にナハトはドラセナの方に向けていた優しい視線を一変、鋭い視線でメリクリウスの方を一瞥する。
メリクリウスは自暴自棄気味に笑っていた。
「全く……今回は完全にわたしの失態ね。やれやれ……わたしとしたことが……流石はお兄ちゃん、桜の勇者様ね」
そう言うとメリクリウスはふらつきながらもなんとか体を立ち上がらせる。その側に二人の傭兵が駆け寄る。
「想獣使いのあの女の協力まで得ておいてこの有り様じゃ何も言い訳できないわ……はぁ、やれやれ……」
メリクリウスは光芒剣ステラをかざす。まだ抵抗する気か、と思ったナハトだったが、それは違った。「それじゃあね、お兄ちゃん」とメリクリウスが言葉を残す。
「しばらくはわたしたちも手を出せないわ。つかの間の平穏を楽しみなさい」
光芒剣ステラから光が放たれる。「待て!」と言ったナハトの声をかき消し、光は広まり、それが晴れた先には傷ついたメリクリウスの姿も、その部下たちの姿もなかった。床にたれたメリクリウスの血液だけが、彼女がいたことを物語っている。
逃げられたか。そう悔しく思いつつも、なんとか追い返すことができた、という安堵が胸元に訪れる。「ナ、ナハト……」とドラセナが恥ずかしそうな声を発する。何だろう、と思ってみると、自分の体にピッタリくっついたドラセナが赤い顔をしていた。
「い、いつまで抱きしめてるの……?」
「あ、ああ、悪いっ!」
慌てて、ドラセナを離す。ドラセナは赤い顔のままナハトの元を離れる。少しの名残惜しさを感じながらその姿を見ていると、ドラセナは笑みを浮かべて、ナハトの方を見た。
「ありがとう、ナハト。わたしを助けてくれて」
ドラセナの微笑み。ナハトもまた微笑を浮かべると言った。
「当たり前だろ? 守るって、約束したからな」
「うん。それでも、ありがとう、ナハト」
この屋敷を襲ったメリクリウス率いてるゴルドニアース傭兵団は去った。まだ町に迫り来る想獣の群れを全て撃退した訳ではないのだが、とりあえず一つの危機を乗り越えたことを感じ、ナハトは安堵の息を吐くのだった。
メリクリウスが挑発するように笑う。いつも通りの不愉快なメリクリウスの笑み、に見える。しかし、その笑みから余裕は感じられなかった。
ナハトがさらなる聖桜剣の力を引き出したことに関して脅威に感じていることの証だ。
ナハトは無言で黄金の光刃を、聖桜剣を構えると、床を蹴り、一気にメリクリウスに迫った。
走りながら剣を振るう。そこから黄金の波動が放たれ、メリクリウスに向かう。
メリクリウスも虹の短剣を振るい、極太の虹色の光線で迎え撃つ。
お互いが放った閃光がぶつかり合い、相殺される。
光が晴れた時にはもうナハトはメリクリウスのすぐ側まで接近していた。
両手で構えた聖桜剣を振り下ろす。右手に持った虹の短剣が迎撃する。
以前は真っ向から受け止められた攻撃。だが、今度は? 振り下ろされた聖桜剣が虹の短剣の刀身を滑るようにして方向をそらされ、弾かれる。
受け流された? ナハトは自分の攻撃の勢いをそらされたことを感じた。それで終わるナハトではない。二撃、三撃と連続して攻撃を振るう。
逆袈裟に振り上げた剣筋、横払いに振るわれた剣筋。その二つ共、虹の短剣に受け流された。
メリクリウスの巧妙な短剣捌きがナハトの聖桜剣の一撃を無力化する。やはり実力はメリクリウスの方が上なのか? そう思ったナハトはいや、違うな、と思った。
「どうした、メリクリウス。そんな風に攻撃を受け流して。以前みたいに俺の剣を受け止めないのか?」
ナハトの言葉にメリクリウスは「…………ッ!」と反応する。
そうして振るわれた聖桜剣の一撃。今度はメリクリウスはそれを虹の短剣で受け流すことはせず、短い刀身で受け止めようとした。
挑発に乗ったな、と思った。
以前は真っ向から受け止められた。全力を持って振り下ろされた聖桜剣は虹の短剣に受け止められ、宙空で静止した。だが今度は。
ガキン、と音。虹の短剣の刀身を弾き、メリクリウスがたたらを踏む。
受け止め、切れなかったのだ。さらなる力を引き出された聖桜剣。その全力の一撃をメリクリウスは受け止めることが、できなかった。
それが分かっているからさっきから受け流していたのだろう。「どうやら、今の俺の剣を受けることはできないみたいだな」とナハトが言うとメリクリウスは一瞬、笑みが崩れ、苦虫を噛み潰したような顔になったが、
すぐに笑顔の仮面を取り戻す。
「悔しいけど、どうやらそうみたいね。……でも、それでもお兄ちゃんとダンスを踊ることになんら問題はないのよ?」
その言葉通り。再度、ナハトが放った剣撃のことごとくをメリクリウスは虹の短剣で受け流してみせた。
大した腕前だ、と感心せざるを得ない。真っ向からぶつかり合えないのなら、力の流れをそらしてしまえばいい。それで十分に防御し切れている。
メリクリウスは防御に専念する訳ではなく、虹の短剣を振るい、こちらに攻撃まで繰り出して来た。
蛇のような曲線美を描き、虹の短剣が振るわれる。それも恐ろしい速度で。
以前からパワーはナハトに分があり、スピードにはメリクリウスに分があったが、それは今も変わっていない。
超高速の剣さばき。それでも、ナハトの剣技も、聖桜剣の力も以前と比べれば向上している。
以前はなんとか必死で迫り来る短剣に聖桜剣の刀身をあてがって防御していたが、今はある程度の余裕を持って、聖桜剣で防御できる。
お互いにお互いの攻撃を脅威に思いながらも、お互いに防御し切る。一見すると互角の戦いに思える。しかし、その実、ナハトが押していた。
メリクリウスの攻撃を弾くことはナハトにとっては余裕でできているのに、ナハトの攻撃に対し、メリクリウスはいつもの笑みも崩れる勢いで必死で短剣を振るい防御する。 以前、対決した時とはお互いの立場が完全に逆転していた。
(このまま押し込む……!)
ナハトはそう思い、メリクリウスに休む間も与えないように連続して聖桜剣を振るう。
さらに激しさを増したナハトの攻勢を前に、メリクリウスは笑みを浮かべている余裕すらなくしていた。「くっ……!」と小さな苦悶の声さえついにはもらすようになる。
苦し紛れに繰り出された短剣の一撃を弾き返す。その一瞬、メリクリウスに最大の隙が生まれる。
その瞬間を見逃す程、ナハトは愚かではなかった。この世界に召喚されてから、聖桜剣を握ってから、ドラセナを守るために戦い抜いた経験の全てが今が好機だ、と告げている。
ナハトは聖桜剣に思いを込めた。全ての想力を解放しろ。今、この瞬間に勝負を決める。
聖桜剣の黄金の輝きがさらに強く、強く強く輝き、聖桜剣が振り下ろされる。虹の短剣による防御は……間に合わなかった。
黄金の光刃はメリクリウスの体を袈裟懸けに斬り裂き、メリクリウスの悲鳴が響く。
その勢いでメリクリウスは真後ろに吹き飛ばされ、壁に激突した。光芒剣の想力で肉体の防御力は上げていただろうが、それでも聖桜剣の一振りをまともに喰らったのだ。
無事で済む訳がなかった。胸を斬り裂かれたメリクリウスはおびただしい量の真っ赤な血を流し、壁にもたれ込む。
「そ、そんな……馬鹿な……こ、この、わたしが……」
自分の体から流れる血に手を当てて、真っ赤に染まった手を呆然として眺めながら、メリクリウスが信じられないとばかりに口にする。
勝負あったな、とナハトは思った。メリクリウスの元までナハトは足音を鳴らし、歩いていき、「降伏しろ」と言葉をかける。
「その状態じゃ、もう戦えない」
「ふ、ふふ……やってくれるじゃない……お兄ちゃん……わたしを、こんな……」
「大人しく縛に就け」
ナハトの言葉。それに対し、おかしくてたまらないという風にメリクリウスは笑った。
「あははははははははは! わたしが縛に就く? このわたしが? 面白い冗談ね」
相変わらず、この少女は何故、こんなに笑えるのか。不思議に思いながらナハトが「冗談だと思うか?」と続ける。
「本気で言ってるの? でも、残念。わたしはこんなところで終わる女じゃないの」
クスクスクス、と自らから流れる血のことなどまるで気にしていないようにメリクリウスは笑う。
「けれど、今回はわたしの負けね。それは認めてあげる。ドラセナ・エリアスのことは、諦めてあげるわ」
そう言い、メリクリウスは控えていた部下二人の方を見る。
メリクリウスがやられたのを見て、二人の傭兵は顔面蒼白になっている。 その内、一人、ドラセナを抱えている方にメリクリウスは「ドラセナ・エリアスを離しなさい」と声をかける。傭兵はためらいながらも、しかし、メリクリウスの指示には逆らえず、ドラセナを解放する。
手足を縛る縄をほどかれ、解放されたドラセナが「ナハト!」と名を呼びながら、ナハトの元まで走ってくる。「ドラセナ!」とナハトもそんな彼女の名を呼ぶ。
「ごめんな、ドラセナ。恐かっただろう? ドラセナのことを放っておいて……ほんとにごめん」
ナハトはそう言って謝罪する。ドラセナは「ううん、いいの」と言って、笑みを見せてくれた。メリクリウスの笑みとは違う。見ている者を安心させるその微笑み。
「ナハトはこうして、わたしを助けに来てくれたんだから……それでいいの……」
そう言って、ドラセナは自らの体をナハトの体に寄せる。ナハトも右手で聖桜剣を構えたまま、左手でドラセナの体を抱き寄せた。そんな二人の様子を見ていたメリクリウスが哄笑をもらした。
「あはははははははは! 全く、イチャついてくれるわねぇ!」
その笑い声にナハトはドラセナの方に向けていた優しい視線を一変、鋭い視線でメリクリウスの方を一瞥する。
メリクリウスは自暴自棄気味に笑っていた。
「全く……今回は完全にわたしの失態ね。やれやれ……わたしとしたことが……流石はお兄ちゃん、桜の勇者様ね」
そう言うとメリクリウスはふらつきながらもなんとか体を立ち上がらせる。その側に二人の傭兵が駆け寄る。
「想獣使いのあの女の協力まで得ておいてこの有り様じゃ何も言い訳できないわ……はぁ、やれやれ……」
メリクリウスは光芒剣ステラをかざす。まだ抵抗する気か、と思ったナハトだったが、それは違った。「それじゃあね、お兄ちゃん」とメリクリウスが言葉を残す。
「しばらくはわたしたちも手を出せないわ。つかの間の平穏を楽しみなさい」
光芒剣ステラから光が放たれる。「待て!」と言ったナハトの声をかき消し、光は広まり、それが晴れた先には傷ついたメリクリウスの姿も、その部下たちの姿もなかった。床にたれたメリクリウスの血液だけが、彼女がいたことを物語っている。
逃げられたか。そう悔しく思いつつも、なんとか追い返すことができた、という安堵が胸元に訪れる。「ナ、ナハト……」とドラセナが恥ずかしそうな声を発する。何だろう、と思ってみると、自分の体にピッタリくっついたドラセナが赤い顔をしていた。
「い、いつまで抱きしめてるの……?」
「あ、ああ、悪いっ!」
慌てて、ドラセナを離す。ドラセナは赤い顔のままナハトの元を離れる。少しの名残惜しさを感じながらその姿を見ていると、ドラセナは笑みを浮かべて、ナハトの方を見た。
「ありがとう、ナハト。わたしを助けてくれて」
ドラセナの微笑み。ナハトもまた微笑を浮かべると言った。
「当たり前だろ? 守るって、約束したからな」
「うん。それでも、ありがとう、ナハト」
この屋敷を襲ったメリクリウス率いてるゴルドニアース傭兵団は去った。まだ町に迫り来る想獣の群れを全て撃退した訳ではないのだが、とりあえず一つの危機を乗り越えたことを感じ、ナハトは安堵の息を吐くのだった。
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