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第7章:リアライド王国・冒険編
第71話:迷う心
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そうして一晩が明けた。泊まっていた宿屋の食堂に朝食兼今後の話し合いをするべくナハトたち一行は集まっていた。パンの上に炙った薄切り肉を乗せたサンドイッチとコーヒーが出され、一同がそれを食べ終わったのを見るとナハトは口を開いた。
「それじゃあ、今後の予定だけど……今日中にはこの町を出るってことでいいかな?」
みんな異論はないようだった。ナハトの言葉に一様に頷く。
「順当に行くのなら、次の目的地はトレリカね。こっからだと二晩も歩けば着くはずよ」
アイネがそう言う。この世界の地理にはうといナハトはそれにそうなのか、と頷くしかない。
「またゴルドニアース傭兵団やヴァルチザンの刺客が襲ってくるかもしれませんね……」
イヴのその懸念はもっともなものだった。既に自分たちはヴァルチザンからは遠く離れたところにいるが、そんなことは関係なしに襲って来るというのは昨日の剣鬼ルゼの襲撃で実証済みだ。「なぁに」とイーニッドが気楽そうな声を出す。
「ヤツらが襲って来たのなら撃退するだけだ! わたしたちはそう簡単にやられるほどやわではない!」
意気揚々と言うその口ぶりからはむしろ襲って来て欲しいという思いさえ見え隠れしたが、ナハトの気のせいだと思うことにする。
とはいえ、たしかにイーニッドの言う通りだ。どんな敵が襲って来ても、それを撃退するだけのこと。
ドラセナは俺が、俺たちが守るんだ。その思いを込めてドラセナを見る。
「ナハト……何……?」
ドラセナは怪訝そうな顔をナハトに見せた。ちょっと顔を見るつもりだったが、思いの外、長時間眺めてしまったようだ。ナハトは気恥ずかしい思いを隠して、「い、いや……」と呟く。
「絶対に守ってやるって思って……」
「そ、そう……」
ナハトの言葉にドラセナは頬を紅潮させた。「あーはいはい、ごちそうさま、ごちそうさま!」とアイネが言う。
「ナハト、ドラセナ、アンタらイチャつくなら二人きりの時にしてよね。こんなみんなが揃っているところでイチャつかれたらこっちも反応に困るのよ」
呆れた様子のアイネ。「別にイチャついてなんかいないっての」とナハトは言葉を返した。ドラセナは赤い顔でうつむいている。
「と、とにかく、早いところ出発しよう。この町で他に用事はないしな」
誤魔化すような言葉になってしまったが、言っていることは間違ってないはずだ。このマインダースを出て次の町、トレリカに向かう。リアライド王国の首都までそうして辿り着く。そして、その後は……。
(………………)
ナハトはその後を考えて、思わず沈黙する。
ドラセナをリアライドの研究機関に預け、その力を研究する。
それだけだ。だが、それは本当にいいのだろうか、という思いが飛来する。クラフトシティでも思ったことだった。その思いが再びナハトの中でふくれあがる。
まるでドラセナを実験動物のように扱う、そんなことを許していいのか。そう思えば、考えは止まらない。
大体、リアライド王国だって信用できるのか、アインクラフト王は信用しているようだったが、その王を自分は信用できていないのだから安心させる材料にはなりはしない。
急に黙り込んだナハトを怪訝に思ってか、「どうした、ナハト殿」とグレースが声をかけてくる。
「いや……リアライドの研究機関にドラセナを預けることが本当にいいことか、って思ってさ……」
その言葉でナハトが今、思っていたことは大体は一同に伝わったのだろう。一同は黙り込み、沈黙が場を支配する。
以前もクラフトシティでナハトが口にした疑問だった。
その時はそんなに酷いことをされることはないだろう、とみんなが言ってくれて納得したが、やはり、気になるものは気になるものだ。
そんな不安を払拭するように「心配なかろう」とグレースが言った。
「以前もアイネ殿が言ったが、ドラセナ様はアインクラフト王家が保護されてきたお方、そんなお方を実験動物のような扱いをするなどということはまずあり得ない」
「そのアインクラフト王家自体が俺には今ひとつ信用できないんだけどなぁ……」
ナハトの言葉にグレースは気分を害したようだった。ムッと眉根を寄せてナハト見る。
まぁ、グレースからしたら自分が仕えている主のことをそう言われてしまってはいい気分ではないだろう。「悪い」とナハトは言う。気まずい雰囲気が場に漂い、そんな雰囲気を払うようにドラセナが口を開く。
「ナハト、わたしのことを心配してくれるのは嬉しい。だけど、大丈夫。リアライド王国もわたしに対してはそうそう変なことはしないと思う。わたしが自分の力を使いこなすための手助けをしてくれるだけだから」
当事者であるドラセナにそう言い切られてしまっては何も文句などつけようがなかった。ナハトは黙り込む。
「……ですが、ドラセナさんが自分の力を使いこなせるようになるとますます国のために、アインクラフトのために力を利用されるのではないでしょうか?」
そんな時、イヴがそう言う。
言われてみればたしかにそうだ。アインクラフトがドラセナを保護しているのはその力を他の者たちに安易に悪用されないようにするためではあるが、そのドラセナが自分の力を使いこなせるようになれば、自分たちの国のために力を使うことを強要するのは十分有り得る事態だと言えた。
だが、それでもドラセナは笑みを浮かべていた。
「その時はその時だよ。わたしも一方的に保護されるだけなのは歯がゆく思っていた。アインクラフト王国に対して何か恩返しができるのならわたしの力を使ってもいい」
「ドラセナ……本当にいいのか?」
ナハトは再度、訊ねる。
ドラセナにとって自分の力とはどういうものなのだろう、とも思う。
普通の人間にはない特別な力。それを持っていることは果たしてドラセナにとって忌むべきことかそうではないのか。
自分の力を嫌っているのか、いないのか。それさえも分からない。
「ナハトにはクラフトシティで言ったよね? わたしはアインクラフトのためならこの力を利用されてもいいって」
「ああ」
それはたしかにクラフトシティのアインクラフトの王城でドラセナから聞いた話だ。
自分を守ってくれた人たちに恩返しがしたい。そのためなら自分の力を利用されてもいい。
今も、その考えには変わりはないのだろう。
「その思いは今も変わっていない。わたしが自分の力を使いこなせるようになることでアインクラフトのために何かを強いられたとしてもわたしはそれを受け入れる」
ドラセナは穏やかな笑みを浮かべて、そう言った。少しも気負いもない、気分を害した様子もない。
ただ、それが当然のことだと受け入れるように。それが自分の天命であると、受け入れるように。ドラセナはそう言う。
もはや、ナハトたちには何も言えることはなかった。
「分かった。……変な話題を切り出してすまなかった。ドラセナがそう言うんなら俺には何も言うべきことはない」
ナハトはそう言い、頭を下げる。「ううん」とドラセナはそんなナハトに声をかける。
「ナハトやみんながわたしのことを心配してくれたっていうのは十分に伝わってきたから、謝ることじゃないよ。ありがとう、ナハト、みんな」
「……でも、もし本当にリアライド王国がドラセナに対して変なことをしようとしたら……」
アイネが口を挟む。先を促された気配を感じ、ナハトは口を開いた。
「ああ、その時はドラセナを連れてリアライドを出る。それでドラセナもいいな?」
「うん。まぁ、そんな変なことはされないと思うけどね」
ドラセナは過保護な親を持った子供がするように困ったように笑う。
過保護……なのだろうか? そうかもしれない、とナハトは思ったが、それでもドラセナが大切な存在なのだから過保護なくらいで丁度いいか、と思い直す。
そうして、この話題は終わる。各々は自分の部屋に戻り、このマインダースを発つ準備を整える。
それから、宿屋の前で全員で集合して、正門の前を通り、マインダースを出た。
アインクラフトから招かれたアインクラフト王の直筆の書状を持った人間という情報が伝わっているのだろう。見張りの門番は敬礼して、ナハトたちを見送ってくれた。
さあ、後はリアライド王国本国を目指して進むだけだった。
そんなナハトたちの様子を伺っている者たちがいた。ナハトたちからある程度の距離を取り、彼らがマインダースを、出るのを見送る。 その中にいる一人の男は昨晩、ドラセナが、リアライド国内に来たとの報告を受けていた男だった。「マインダースを出たか」と呟く。
その言葉に集団は頷く。その集団の中にはなんと、想獣使いの女、リリアーヌ・ブラーヌもいた。リリアーヌは呟く。
「では、手はず通り、私が想獣をけしかけます。ドラセナ・エリアスの身柄を確保すれば我々に引き渡す。その約束に違いはありませんね?」
リリアーヌの言葉にリーダー格の男は頷く。
「ああ。我々としてはドラセナ・エリアスがリアライド王都に行かなければそれでいい。死のうが、貴殿らの国に連れていかれようがどちらでもいい」
「分かりました。……ですが、奇妙な話ですね。貴方達はリアライドの人間でしょう? それがヴァルチザンの私に協力を持ちかけてくるとは……」
リリアーヌの言葉に男は眉根を寄せて不快感を示したが、「これも国を憂いるが故だ」と答えた。
「我々は自分たちの国が、リアライドがよりよき国になるべく行動している。そのためには貴殿の力を借りることも必要だと思ったまでだ」
「なるほど……国のため、ですか」
リリアーヌは答える。
その感情は歪なものだろうと思う。
国のために敵対国の人間の力を借りて、友好国の人間を襲う算段を立てる。
その理由は自国のため。明らかに歪であるがそういう愛国心もあるだろう、とリリアーヌは理解する。
「我々の最高戦力の剣鬼ルゼも今は傷を癒やしている最中、力を借りられるのは我々としても望ましいところです。必ずや、計画を成功させましょう」
リリアーヌの言葉に男は神妙に頷く。
「うむ。これもリアライドのため。我々、憂国の士は立つのだ」
憂国の士を名乗る者が一人の少女を目当てに襲い掛かる。少しおかしなものだとリリアーヌは思ったが表情には出さなかった。
ドラセナ・エリアスと桜の勇者一行。これまで何度も苦汁をなめさせれて来た相手だが、今回こそは必ずドラセナ・エリアスの身柄を確保する。
そう硬い決意で、正門を出ていく桜の勇者一行の背をリリアーヌは見送るのだった。
「それじゃあ、今後の予定だけど……今日中にはこの町を出るってことでいいかな?」
みんな異論はないようだった。ナハトの言葉に一様に頷く。
「順当に行くのなら、次の目的地はトレリカね。こっからだと二晩も歩けば着くはずよ」
アイネがそう言う。この世界の地理にはうといナハトはそれにそうなのか、と頷くしかない。
「またゴルドニアース傭兵団やヴァルチザンの刺客が襲ってくるかもしれませんね……」
イヴのその懸念はもっともなものだった。既に自分たちはヴァルチザンからは遠く離れたところにいるが、そんなことは関係なしに襲って来るというのは昨日の剣鬼ルゼの襲撃で実証済みだ。「なぁに」とイーニッドが気楽そうな声を出す。
「ヤツらが襲って来たのなら撃退するだけだ! わたしたちはそう簡単にやられるほどやわではない!」
意気揚々と言うその口ぶりからはむしろ襲って来て欲しいという思いさえ見え隠れしたが、ナハトの気のせいだと思うことにする。
とはいえ、たしかにイーニッドの言う通りだ。どんな敵が襲って来ても、それを撃退するだけのこと。
ドラセナは俺が、俺たちが守るんだ。その思いを込めてドラセナを見る。
「ナハト……何……?」
ドラセナは怪訝そうな顔をナハトに見せた。ちょっと顔を見るつもりだったが、思いの外、長時間眺めてしまったようだ。ナハトは気恥ずかしい思いを隠して、「い、いや……」と呟く。
「絶対に守ってやるって思って……」
「そ、そう……」
ナハトの言葉にドラセナは頬を紅潮させた。「あーはいはい、ごちそうさま、ごちそうさま!」とアイネが言う。
「ナハト、ドラセナ、アンタらイチャつくなら二人きりの時にしてよね。こんなみんなが揃っているところでイチャつかれたらこっちも反応に困るのよ」
呆れた様子のアイネ。「別にイチャついてなんかいないっての」とナハトは言葉を返した。ドラセナは赤い顔でうつむいている。
「と、とにかく、早いところ出発しよう。この町で他に用事はないしな」
誤魔化すような言葉になってしまったが、言っていることは間違ってないはずだ。このマインダースを出て次の町、トレリカに向かう。リアライド王国の首都までそうして辿り着く。そして、その後は……。
(………………)
ナハトはその後を考えて、思わず沈黙する。
ドラセナをリアライドの研究機関に預け、その力を研究する。
それだけだ。だが、それは本当にいいのだろうか、という思いが飛来する。クラフトシティでも思ったことだった。その思いが再びナハトの中でふくれあがる。
まるでドラセナを実験動物のように扱う、そんなことを許していいのか。そう思えば、考えは止まらない。
大体、リアライド王国だって信用できるのか、アインクラフト王は信用しているようだったが、その王を自分は信用できていないのだから安心させる材料にはなりはしない。
急に黙り込んだナハトを怪訝に思ってか、「どうした、ナハト殿」とグレースが声をかけてくる。
「いや……リアライドの研究機関にドラセナを預けることが本当にいいことか、って思ってさ……」
その言葉でナハトが今、思っていたことは大体は一同に伝わったのだろう。一同は黙り込み、沈黙が場を支配する。
以前もクラフトシティでナハトが口にした疑問だった。
その時はそんなに酷いことをされることはないだろう、とみんなが言ってくれて納得したが、やはり、気になるものは気になるものだ。
そんな不安を払拭するように「心配なかろう」とグレースが言った。
「以前もアイネ殿が言ったが、ドラセナ様はアインクラフト王家が保護されてきたお方、そんなお方を実験動物のような扱いをするなどということはまずあり得ない」
「そのアインクラフト王家自体が俺には今ひとつ信用できないんだけどなぁ……」
ナハトの言葉にグレースは気分を害したようだった。ムッと眉根を寄せてナハト見る。
まぁ、グレースからしたら自分が仕えている主のことをそう言われてしまってはいい気分ではないだろう。「悪い」とナハトは言う。気まずい雰囲気が場に漂い、そんな雰囲気を払うようにドラセナが口を開く。
「ナハト、わたしのことを心配してくれるのは嬉しい。だけど、大丈夫。リアライド王国もわたしに対してはそうそう変なことはしないと思う。わたしが自分の力を使いこなすための手助けをしてくれるだけだから」
当事者であるドラセナにそう言い切られてしまっては何も文句などつけようがなかった。ナハトは黙り込む。
「……ですが、ドラセナさんが自分の力を使いこなせるようになるとますます国のために、アインクラフトのために力を利用されるのではないでしょうか?」
そんな時、イヴがそう言う。
言われてみればたしかにそうだ。アインクラフトがドラセナを保護しているのはその力を他の者たちに安易に悪用されないようにするためではあるが、そのドラセナが自分の力を使いこなせるようになれば、自分たちの国のために力を使うことを強要するのは十分有り得る事態だと言えた。
だが、それでもドラセナは笑みを浮かべていた。
「その時はその時だよ。わたしも一方的に保護されるだけなのは歯がゆく思っていた。アインクラフト王国に対して何か恩返しができるのならわたしの力を使ってもいい」
「ドラセナ……本当にいいのか?」
ナハトは再度、訊ねる。
ドラセナにとって自分の力とはどういうものなのだろう、とも思う。
普通の人間にはない特別な力。それを持っていることは果たしてドラセナにとって忌むべきことかそうではないのか。
自分の力を嫌っているのか、いないのか。それさえも分からない。
「ナハトにはクラフトシティで言ったよね? わたしはアインクラフトのためならこの力を利用されてもいいって」
「ああ」
それはたしかにクラフトシティのアインクラフトの王城でドラセナから聞いた話だ。
自分を守ってくれた人たちに恩返しがしたい。そのためなら自分の力を利用されてもいい。
今も、その考えには変わりはないのだろう。
「その思いは今も変わっていない。わたしが自分の力を使いこなせるようになることでアインクラフトのために何かを強いられたとしてもわたしはそれを受け入れる」
ドラセナは穏やかな笑みを浮かべて、そう言った。少しも気負いもない、気分を害した様子もない。
ただ、それが当然のことだと受け入れるように。それが自分の天命であると、受け入れるように。ドラセナはそう言う。
もはや、ナハトたちには何も言えることはなかった。
「分かった。……変な話題を切り出してすまなかった。ドラセナがそう言うんなら俺には何も言うべきことはない」
ナハトはそう言い、頭を下げる。「ううん」とドラセナはそんなナハトに声をかける。
「ナハトやみんながわたしのことを心配してくれたっていうのは十分に伝わってきたから、謝ることじゃないよ。ありがとう、ナハト、みんな」
「……でも、もし本当にリアライド王国がドラセナに対して変なことをしようとしたら……」
アイネが口を挟む。先を促された気配を感じ、ナハトは口を開いた。
「ああ、その時はドラセナを連れてリアライドを出る。それでドラセナもいいな?」
「うん。まぁ、そんな変なことはされないと思うけどね」
ドラセナは過保護な親を持った子供がするように困ったように笑う。
過保護……なのだろうか? そうかもしれない、とナハトは思ったが、それでもドラセナが大切な存在なのだから過保護なくらいで丁度いいか、と思い直す。
そうして、この話題は終わる。各々は自分の部屋に戻り、このマインダースを発つ準備を整える。
それから、宿屋の前で全員で集合して、正門の前を通り、マインダースを出た。
アインクラフトから招かれたアインクラフト王の直筆の書状を持った人間という情報が伝わっているのだろう。見張りの門番は敬礼して、ナハトたちを見送ってくれた。
さあ、後はリアライド王国本国を目指して進むだけだった。
そんなナハトたちの様子を伺っている者たちがいた。ナハトたちからある程度の距離を取り、彼らがマインダースを、出るのを見送る。 その中にいる一人の男は昨晩、ドラセナが、リアライド国内に来たとの報告を受けていた男だった。「マインダースを出たか」と呟く。
その言葉に集団は頷く。その集団の中にはなんと、想獣使いの女、リリアーヌ・ブラーヌもいた。リリアーヌは呟く。
「では、手はず通り、私が想獣をけしかけます。ドラセナ・エリアスの身柄を確保すれば我々に引き渡す。その約束に違いはありませんね?」
リリアーヌの言葉にリーダー格の男は頷く。
「ああ。我々としてはドラセナ・エリアスがリアライド王都に行かなければそれでいい。死のうが、貴殿らの国に連れていかれようがどちらでもいい」
「分かりました。……ですが、奇妙な話ですね。貴方達はリアライドの人間でしょう? それがヴァルチザンの私に協力を持ちかけてくるとは……」
リリアーヌの言葉に男は眉根を寄せて不快感を示したが、「これも国を憂いるが故だ」と答えた。
「我々は自分たちの国が、リアライドがよりよき国になるべく行動している。そのためには貴殿の力を借りることも必要だと思ったまでだ」
「なるほど……国のため、ですか」
リリアーヌは答える。
その感情は歪なものだろうと思う。
国のために敵対国の人間の力を借りて、友好国の人間を襲う算段を立てる。
その理由は自国のため。明らかに歪であるがそういう愛国心もあるだろう、とリリアーヌは理解する。
「我々の最高戦力の剣鬼ルゼも今は傷を癒やしている最中、力を借りられるのは我々としても望ましいところです。必ずや、計画を成功させましょう」
リリアーヌの言葉に男は神妙に頷く。
「うむ。これもリアライドのため。我々、憂国の士は立つのだ」
憂国の士を名乗る者が一人の少女を目当てに襲い掛かる。少しおかしなものだとリリアーヌは思ったが表情には出さなかった。
ドラセナ・エリアスと桜の勇者一行。これまで何度も苦汁をなめさせれて来た相手だが、今回こそは必ずドラセナ・エリアスの身柄を確保する。
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