桜の勇者~異世界召喚されたら聖剣に選ばれ、可憐な少女が自分を頼ってくるので守ることにした~

和美 一

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第7章:リアライド王国・冒険編

第74話:ゴーレムとの戦い

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「このおっ!」



 イーニッドは幻想具のガントレットを振るった。ゴーレムの腕がそれを受け止める。

 並の人間相手なら防御ごと打ち砕いていく一撃だったが、ゴーレムの頑強な腕はイーニッドの拳の一撃にも耐えきってみせた。

 一旦、腕を引くと今度はゴーレムの方が攻撃を仕掛けてくる。

 ゴーレムの腕が振り上げられ、降ろされる。その勢いの凄まじさに思わずイーニッドは後退してそれを避けた。

 地面をこすった一撃が衝撃波を巻き起こし地面をえぐる。直接、地面にぶつかった訳でもないのに、大地はえぐれ、その腕の一撃の威力を物語っているというものだった。

 どうやら、加減して戦える相手ではないらしい。人間という訳でもない。相手は土から作られた人形だ。ならば、遠慮も必要ない。

 そう判断したイーニッドは両手のガントレットの想力を解放する。青いオーラが巨大な拳の形になり、両腕を覆う。

 その状態で連続して拳を振るう。巨大な拳がゴーレムの体に命中し、ゴーレムの体を吹っ飛ばす……かと思われた。だが、ゴーレムは二本の足で地面に踏み止まると巨大な拳の命中にもさして堪えた様子を見せなかった。



(馬鹿な!? わたしの一撃を受けて!?)



 イーニッドは内心で舌打ちする。土人形風情がどこまで耐久力があるというのだ。

 そう考えている内にもゴーレムは腕を振るい、こちらに繰り出してくる。イーニッドは拳をもって、それを受け止めた。

 イーニッドの拳とゴーレムの拳がぶつかり合う。押し合う力はほぼ互角。お互いに腕を引く。

 その直後、想獣がイーニッドに迫り来るが、これを拳の一撃で蹴散らすと、イーニッドは一旦、後ろにジャンプして下がった。

 「ならば、これはどうだ!」と言いながら駆け出し、飛び上がる。

 両足の具足の幻想具の想力を解放してのジャンプ。それは飛び上がるだけではない。

 両足に想力を込めて、渾身の蹴りを放つ。これをゴーレムは両腕をクロスして受け止めたが、両腕のガードがはじけ飛んだ。

 その隙に着地したイーニッドは再び前進。両腕で連続して攻撃を放つ。

 一撃、二撃、三撃。ゴーレムの体に拳が命中する。「おおおおお!」と雄叫びを上げながら、最後の一撃を繰り出すとそれを受けたゴーレムはついに耐えきれなくなり、真後ろに吹っ飛ばされた。

 森の樹木に激突し、その体が崩れていく。本来ならゴーレムを相手にするのであればその原核を狙うのが定石ではあるのだが、そんなことを無視した力づくでの勝利だった。

 だが、どんな形であれ、勝利は勝利。イーニッドは勝利の味を噛みしめるのだった。







 グレースはヴェントハルバードを振るい、ゴーレムと戦っていた。

 ハルバードに風刃を纏わせた一撃をゴーレムはいとも簡単に受け止めてくる。

 少し距離を取り、不可視の風刃を放って攻撃するも、それが命中しても大したダメージを与えられていないのであれば意味はなかった。

 接近して直接、斧の刃と槍の刃を使って攻撃を放つ。ゴーレム相手は原核を狙うのが定石。このゴーレムの原核は胸部。ならばそこに狙いを絞って攻撃を仕掛けるも、ゴーレムも自分の弱点は承知の上。

 両腕でガードし、なかなか胸に一撃を加えさせてくれない。

 風刃を全開で放ち、風の刃を纏わせ、ハルバードを振り下ろす。それをゴーレムの腕が受け止める。

 人間の腕であればズタズタに引き裂ける風の刃もゴーレムの土の腕相手には効果が薄い。

 その瞬間を狙って雑魚の想獣が駆け寄ってくる。一旦、後ろに飛び、迫り来る雑魚の想獣をハルバードで蹴散らす。

 その間、自由になったゴーレムが拳を繰り出してくるがこれはハルバードで受け止めた。

 グレースは少し考え、ゴーレムの足元目掛けてハルバードを突き出した。相手は人間ではないとはいえ、人型。二本の足で踏み止まるというのなら、その二本の足を狙えばいい。

 このグレースの目論見は見事、成功した。足元にハルバードが突き刺さり嵐が巻き起こる。これにゴーレムは体勢を崩した。

 その隙を狙いハルバードを手元に戻すと胸ぐら目掛けて叩き下ろす。

 よろけたゴーレムはそれを腕で受け止めることはできず、胸部の、原核目掛けてハルバードが深々と喰い込んだ。

 ハルバードの刃が原核を砕く。心臓に値する部分を失ったゴーレムの体はボロボロと崩れ落ち、次第にただの土へと戻って行った。







「ちょっと、なんなのよ、こんな土人形が相手なんて!?」



 アイネは不平不満を呟きながらもゴーレム相手に氷雪剣を振るう。

 一同の中でアイネは比較的、ゴレーム相手に相性が良かった。氷雪剣から放たれる氷雪の波動はゴーレムの強固なタフネスを無視して、その体の動きを止めることができるからだ。

 それをすぐに見切ったアイネは氷雪の波動を連続して放つ。

 ゴーレムの土の肉体に吹雪が襲い掛かりその体の表面を凍り付かせる。既にゴーレムは体の大部分を氷漬けにされていて、動きは鈍っている。

 そこにアイネは容赦せず氷雪剣で斬り掛かった。凍り付いた腕をもって、ゴーレムは防御しようとするが氷漬けの腕の動きは鈍い。

 氷雪剣の斬撃が次々にゴーレムの肉体に命中していく。しかし、ゴーレムのタフネスもなかなかのもの。それだけではまだ倒れてくれない。



「土人形風情が、生意気なのよ!」



 アイネは苛立ちを込めてそう叫ぶと氷雪剣の想力を完全に解放する。

 氷雪剣の青い刀身を吹雪が纏い、その吹雪が真っ直ぐにゴーレムに向けて放たれる。

 この直撃を受けて、ゴーレムはついに体の全てを氷漬けにされた。巻き添えにゴーレムと一緒に襲いかかろうとしていた想獣たちも氷漬けになる。

 カチンコチンに凍り付いたゴーレムがその場で停止するも、まだ、とどめをさせた訳ではない。

 アイネは氷雪剣を振るうとゴーレムの原核がある胸に目掛けて突きを繰り出した。凍り付いたゴーレムの体の上から氷雪剣の刃が的確に原核を突き貫く。

 原核を失ったゴーレムは崩れ落ちることはしなかった。全身が氷漬けになっていたからだが、再び動き出すこともせず、その場で土人形から氷人形に変わり、静止するのであった。







 ナハトは黄金の光刃を振るい、自分に迫り来る想獣を蹴散らした。

 雑魚の想獣などもはや相手ではないとはいえ、ゴーレム相手に戦っているこの状況に茶々を入れられるのは不快だった。

 ひとまず想獣を倒し、再びゴーレムと向かい合う。ゴーレムはその豪腕を振るって攻撃を仕掛けてくるが、これを聖桜剣で受け止める。

 聖桜剣の想力でナハト自身の筋力を強化しているが、それでも互角の押し合いになる。

 ゴーレムの力は侮れるものではなかった。それでも、引き下がる訳にはいかない。自分の後ろにはドラセナがいるのだ。

 ナハトはむしろ前に出る勢いで聖桜剣を振るい続けた。連続して斬撃を繰り出し、前へ前へと突き進む。

 その攻勢にゴーレムといえども防御に回らずを得ない。

 このゴーレムはたしかに強い。だが、自分は桜の勇者だ。聖桜剣を振るい、想獣王やメリクリウス、剣鬼ルゼ、そして、竜をも倒したことがあるのだ。

 そんな自分がこんなところで負ける訳にも不覚を取る訳にもいかなかった。

 これまでの強敵との戦いで得た自負を武器に変えて、連続して聖桜剣を振るう。

 その攻勢の凄まじさにゴーレムは防御に徹しざるを得ない。やがて、ナハトが気合いの一声と共に振り下ろした聖桜剣がゴーレムの片腕を切断した。

 ゴーレムの肉体は人間や雑魚の想獣の肉体や鋼などを遥かに超える硬度を持っている。それこそ竜の鱗にも匹敵するのだが、それを切断した。

 黄金の光刃と化した聖桜剣の圧倒的な力とその力を使いこなすナハトの力あってこそできる芸当だった。



「うおおおおおおおお!」



 気合いの雄叫びを上げて、聖桜剣を振るう。ゴーレム相手はその原核を狙うなんてセオリーはナハトは知らない。ただ、斬り伏せるのみである。

 黄金の光刃が横薙ぎにゴーレムの体に食い込み、その肉体を斬る。腰から真っ二つに肉体を斬り裂かれたゴーレムはもはや、動くこともできず、その場で地面に倒れ込み、再び立ち上がることはなかった。



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