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第46話:マジック・カウンター・シールド
しおりを挟む魔物が増えれば魔法を使ってくる魔物も増える。
冒険者ビルはそんな魔物に悩ませられる身であった。
剣と軽鎧に身を包んだ姿は俊敏な動きができるが、代償に防御力を捨てている。
普通の攻撃なら躱せば良いのだが、魔法攻撃となるとなかなか回避しづらい。
爆裂魔法の直撃をモロに喰らって軽鎧を吹っ飛ばされたこともあり、魔法対策は何かないかと思い、噂の店を訪れた。
コーラル王国王都の外れ、森に少し踏み入った所にあるその店に入る。
「いらっしゃい」
赤髪を肩まで垂らした店主がそんなビルを出迎えてくれる。
胡散臭い男だな、とビルは思ったが、顔には出さず、注文をする。
「魔法攻撃が防げるものはないか?」
「ああ、お客さんもかい」
「も?」
「前に来たお客も魔法攻撃対策を求めてのご来店だったよ。その時に対魔のマントは売っちゃったんだがね」
「そうか……ではもうないのか?」
ガックリくる。既に魔法対策品は売れた後ということだろうか。
この魔物の大量発生でみんな考えることは同じか、とも思う。そんなビルに店主は笑みを見せた。
「お慌てなさんな。ちょっと待っててくれ」
店主は店の奥に引っ込んでいくと、しばらく経って、また帰って来た。手には小柄の盾を持っている。
「マジック・カウンター・シールド。魔法攻撃を跳ね返す効果のある盾だ」
「おお! そんないい物があったのか!」
これにはたまらずビルも喜んでしまう。
普段は盾を使わない戦いをしているビルであるが、盾を持って戦えない訳ではない。
この盾が魔法を跳ね返すというのなら喜んで装備してやろう。
「店主。それをくれ。いくらだ?」
「金貨2枚に銀貨20枚ってとこだね」
「分かった」
ビルは代金を払い、マジック・カウンター・シールドを受け取る。
思っていた程の重さでもなく、これなら左腕に付けることが可能であろう。
それならば放たれた魔法を跳ね返すことができるようになる。
「ありがたい。それでは店主、さらばだ」
「毎度あり」
早速、マジック・カウンター・シールドを左腕に付けて店の外に出る。
これなら魔法を使う魔物が相手でも不利を背負わず戦える。
王都の冒険者ギルドに行くと魔法を使う魔物相手の討伐依頼が出ていた。
まさにこの盾を試すのに相応しい。ビルはその依頼を受け、現場に赴いた。
四本脚の蜘蛛のような魔物たちがたむろしている。
ビルは剣を引き抜き、斬りかからんとするが、蜘蛛のような魔物は魔法を唱えた。氷の波動がビルに向かって飛ぶ。
「ふん!」
だが、それは左腕のマジック・カウンター・シールドで受ける。
氷の波動が向きを逆にして蜘蛛のような魔物たちに襲い掛かり、その身を氷漬けにする。
そこにビルはすかさず剣で斬り掛かり、蜘蛛のような魔物を倒していく。
魔法が使える割にあまり賢くはないのか、何度か氷の魔法を放ってきたが、その度に左腕の盾で跳ね返し、逆に相手を氷漬けにし斬り裂いていく。
そうしていると怪鳥型の魔物も現れた。怪鳥型の魔物は風の刃を放つ魔法を放ってきたが、これもマジック・カウンター・シールドで受け止める。
受け止められた風刃は跳ね返り、怪鳥型魔物の肌を裂く。そこにすかさず剣で斬り掛かり、怪鳥型魔物も落としていく。
「ありがたいな、この盾は」
実戦で使ってみてマジック・カウンター・シールドの性能にビルは感激していた。
魔法攻撃を跳ね返し、相手を倒す盾。これがあれば魔法を使う魔物とて敵ではない。
言っている間に怪鳥型魔物の援軍だ。風の刃の魔法が放たれ、それらを盾で受け止め、跳ね返す。そして剣で斬り掛かる。
片手で剣を振るうのは普段のビルの戦闘スタイルと違うがどうということはない。
魔法を跳ね返され、ダメージを受けた敵にとどめを刺すのには充分。
怪鳥型魔物も次々に討ち取っていく。残っていた蜘蛛型魔物が懲りずに氷の魔法を放ってくるがそれを盾で受け止め、弾き返す。蜘蛛型魔物は氷漬けになり、ビルの剣の餌食となった。
ビルはそれからも盾と剣を振るい、魔物たちを倒していく。
難易度の高い依頼であるが、楽に戦うことができ、気が付けば全ての魔物を倒し終えていた。一息つく。
「ふぅ、この盾のおかげでさして苦戦することはなく勝てたな」
それが事実であった。この盾がなければ魔物たちの魔法にもっと苦戦していただろう。
ありがたい盾だ。これがあればもう魔法を使う魔物は敵ではない。
それを認識し、報酬を貰おうと冒険者ギルドに帰ることにする。
今後も魔法を使う魔物相手の依頼は積極的に受けよう。そう思いながら報酬に期待し、胸踊らせるビルであった。
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