80 / 80
最終話:魔王討伐 その4
しおりを挟む魔王は強い。討伐軍が総出で掛かっているというのに未だ傷一つ与えられていない。
全ては魔王を守る障壁の恩恵だ。あれがあるからこちらの攻撃は通用しない。あれをなんとか破らなければ。
しかし、あの障壁は硬い。ドラゴンの肌とも比べ物にならない程の硬さだ。オリハルコン・ソードで斬り付けてもまるでビクともしないのであるのだから。
ゲイルソードを振るうリバート、フラッシュソードを振るうイザベルが同時に斬り込むも、その連撃も魔王は障壁で防ぎ、反撃の魔法を繰り出し、二人を吹き飛ばす。
すぐに治癒師たちが治癒魔法をかけるが、このままではじり貧だ。
なんとか魔王の障壁を破らなければならない。遠距離攻撃ができる者たちで一斉攻撃してその後に一気に斬り込む。それで破れるか……? 自問するもやるしかないと思い、クルセイドは指示を飛ばす。
遠距離攻撃をする者たちが一斉に矢を魔法を放ち、それらが障壁にぶつかる。その後、接近戦担当班が一気に斬り込む。
「ぐ……!」
魔王が初めて苦悶の声を上げる。
遠距離攻撃の一斉攻撃でダメージを負った障壁に前衛がまとめて斬りかかり、ついに障壁を破壊することに成功した。
こうなればこっちのものだ。クルセイドはオリハルコン・ソードで斬りかかり、魔王を攻撃する。
アストラルソード、アストラルナイフの二刀流で挑むアルスも大地の大槌を振るうグラトンも攻撃を仕掛け、魔王はダメージを負う。
「無礼な!」
叫ぶものの魔王に対する手加減などしない。否、できない。
手加減していてはこっちがやられる。
前衛の面々は一気に斬りかかるドラゴンキラーを持つケイ、デーモンクラッシャーを持つラッシュ、バーニング・モーニングスターを振るうゴルドー。
他にも前衛を務める者たちが一気呵成に攻撃を仕掛け、魔王の体にダメージを与える。そうして、ついに。
「ぐ、は……!」
魔王は倒れた。全身を斬り裂かれ、叩きのめされ、全身から青い血を流しながら、地面にひれ伏す。
魔王撃破。その瞬間であった。
「魔王を討ち取ったぞーー!」
クルセイドは大声でそれを叫ぶ。このことに討伐軍の面々は湧き立つ。ついに魔王を撃破したのだ。
その喜びといったら比べるものがなかった。討伐軍に死者は出ていない。完全勝利と言って良かった。
傷を負った者たちも治癒師たちが治癒魔法で傷を治していく。
これで魔王は討ち取られ、世界に平和が戻って来る。
無論、魔物は健在だし、魔王を失ったことで弱体化するものの、相変わらず脅威であることに違いはないだろうが、それでも魔王を倒したのだ。
魔物の活発化・大量発生は防げるものだろう。
魔王討伐軍は意気揚々と魔王の城を後にし、コーラル王国王都に凱旋する。人々は歓迎をした。
魔王撃破。その成果は狂喜乱舞する程のものであるのだから仕方がない。
王城では宴の準備が催されていた。
魔王討伐。それを成し遂げた魔王討伐軍たちは宴に参加し、思い思いに飲み食べ、宴を謳歌する。コーラル王国国王も出席し、魔王討伐軍のリーダー・クルセイド騎士団長に称賛の言葉を授けた。
「私一人の力ではありません。討伐軍の皆の力あっての勝利です」
それは謙遜ではなく事実であった。
魔王を討伐できたのは討伐軍の面々あってこそのことだ。
そして、それだけではなく自分や討伐軍に優れた武器を売ってくれたあの赤髪の店主のおかげでもある、とクルセイドは思っていた。
あの赤髪の店主にこそ感謝しなければならない。彼の売ってくれた商品なしには魔王討伐はかなわなかったのだから。
「あの赤髪の店主は何者なんだろうなぁ」
思わずクルセイドはそう呟く。
それが不思議であった。魔王にも通用する程の武器を売ってくれる赤髪の店主。
彼こそまさに称えられるべき存在だと思うのだが。ともあれ、今は宴を楽しむか。
そう思い直し、酒を飲む。クルセイドはあまり酒を好んではいないのだが、今は飲んでもいいだろうと思えた。
勝利の喜びにひたる一同。これからもこの面々が冒険者たちがいるのなら魔物の出現も脅威ではないだろう。そう思えた。
・
赤髪の店主は自分の店で一人、酒を飲んでいた。
聞いた話によると魔王討伐軍が魔王の討伐を成し遂げ帰還したらしい。
それはいいことだと思う。
自分も祝杯を上げる気にはなる程度には。
酒を飲み、さて、これからどうなるかな、と思う。
魔王を倒しても魔物たちが絶滅した訳ではない。まだまだ客はこの店に来るだろう。
それに応える商品を用意しておかねばならない。そう思いながらも今は酒の味に浸るか、と酒を飲む。
コーラル王国王都の少し外れ。森に踏み入った所にその店はある。その店はどんな武器防具アイテムも揃い、客の注文に必ず応えるという。
その店は今日もひっそりと営業中。求める者がいる限りは……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
クラフト生活をしながら同級生にコスプレさせて異世界をスローライフします
春風
ファンタジー
クラスごとの異世界転移をした黒瀬海斗と白石彩音は、スキル測定で戦闘向けではないハズレスキル【クラフト】と【コスプレ】だと判明する。2人は勇者候補として相応しくないと小さな村へ追放されてしまう。
2人はハズレスキルを使って平和で楽しくスローライフ生活を目指すことにしたのである。
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~
namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。
父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。
だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった!
触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。
「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ!
「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ!
借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。
圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。
己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。
さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。
「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」
プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。
最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる