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出会いは突如として訪れる
しおりを挟む目の前が真っ暗だということは即ち俺にとっては人生までもが、真っ暗になってしまっていたような気がしていた。そんな大袈裟なと思われるかもしれないが、すっとこどっこいさっきあんなものに、仏壇の中にへと吸い込まれてしまったのだから、そう思ったってごく自然のこと。
それにだあの仏壇と俺の体格が合っていない以上仏壇の方が、俺の身体より小さかったのだから俺の身体はとりあえず無事ではない。何故だかこうして意識はあるのだが。それから何故だか痛みもない。不思議だ。
真っ暗なうえにしんと静まり返っていたこの空間だったのはほんの僅かなことで。そのうちまるでガタンゴトンと乗り物にでも、乗っているような感覚を体感することとなる。
(なんだ……!?)
本当に摩訶不思議なことばかり起こって思考が追いつかない。仏壇が運び出されている!?いや、でも、ここに人の気配はまったくなかった筈だというのに、一体全体これはどういうことだというのか。
一人困惑している中でしばらく揺れていた仏壇がピタリと止まる。
そして、すぐに仏壇の扉が開かれたものだから何がなんだかといった状況の中、すぐ様この目に飛び込んできたのは空高く浮かぶ得体の知れない黒い羽の生えた奇妙な生き物だった。
(よ、うかい!?)
発想が如何に日本人らしさを醸し出しているのかが分かるそれなのだが、よく目を凝らして見てみると、妖怪というよりももはや漫画やアニメなどに出てくるようなまるで、魔物のような姿であり。
羽根は悪魔のように漆黒の翼でもあるというのにその羽根がついている本体はというと、人間の頭蓋骨の姿であり。なんとも奇妙なと瞬きす出来ないほどに目が離せなくなっており。とんでもないことにそれは一体だけではなく、周囲には他に数匹、羽根の生えた骸骨たちが飛び回っているではないか。
(悪夢だ)
もはやすぐ様現実逃避してしまいたいほどの光景でもあり。これは夢に違いないと己に言い聞かせたところで、その骸骨たちがおれに近づいてくる。
「うわっ、なんだ、なんだぁ!?」
どうしておれに近づいてくるんだよ!としっしっと手で追い払おうとするも、その骸骨たちはまるでこのおれを中から引きずりだしてくる。骸骨の癖に歯が、しっかりと備わっているだなんて。
「一体どこに連れてく気だよ!?」
骸骨たちに腕がないことから歯で両手足をしっかりと、咥えられてしまえばおれの身体は徐々に徐々にと空高く持ち上がっていこうとした。
「ちょっ、さすがにこれはたんま!たんま!」
待ってくれって!展開が早すぎるんだって!と声を張り上げるが状況が変わらないうえに、おれのことを移動させていたであろう兵士のような人物たちも何ひとつ動じない。
一体本当にこれはどうなっているんだと奮起すらしたところで、ここでまた突如としておれの後方からドスの効いた低音ボイスが聞こえてくる。
「おいお前たちいい加減にしたらどうだ」
まるでお山の大将とでもいうような口振り。
(この人誰だよ!?)
すると、低い声色の男の声がまるで合図にでもなったかのように、その直後おれを掴んでいた骸骨たちが、途端におれの身体を解放した。
「うわ!?!?ーーっ、いっ、てぇ……!?」
まだそこまで空高く上げられていた訳ではなかったことから、地面に落とされたおれはというとかすり傷程度の衝撃だけで済んだ。ーーが、しかし無惨にも骸骨たちが、おれを地に落としたことでまだ会って、数分も経っていない男に少し不満は感じた。
(やめさせたんなら、おれを受け止めてくれるぐらいしてくれたっていいんじゃねぇの)
が、骸骨たちに攫われそうになったのを止めてくれた?のは事実。少し癪ではあるが一応礼は口にしておこうかと思ったタイミングで、未だ地面に尻餅ついているおれの前に、ザッと男が目の前にやって来る。
(なんだ?手でも貸してくれんの?)
てっきりそう思ったおれだったのだが次の瞬間の男の言葉により、おれのその淡い期待はまんまと裏切られる。
「フン、情けない。ーーこれが、次の王と言うのか」
「は?」
今の聞き間違えだろうか?と一瞬自分の耳を疑ったがまたその次の言葉によって、自分の耳が良く聞こえていたことを確信することになる。
「こんな未熟な王だとこれの下につく私たちが苦労させられる」
王だとかその辺のことはなにを言っているのかはさっぱりではあったが、確実に分かるのは明らかに目の前の男が、このおれのことを愚弄しているのだということ。
そんなものだから反射的に自ら地べたから立ち上がったおれはというと、ビシッと目の前の男を指差してはこう言ってやった。
「おい、初対面の相手に向かってそんな失礼なことが口に出来るなんて、よっぽど性格が捻じ曲がってる証拠じゃねぇかよッ」
ハァハァと思わず息切れまでしてしまいそうな勢いでそう啖呵を切ったわけだが、その直後じろりっと鋭い目線が突きつけられてしまう。
「この私に向かって指を刺すなんて笑わせる。こういうこともいちいち教えてやらねばならないというのか、はあ」
「た、ため、いき?」
盛大なため息とは正にこのことだろうとばかりに目の前の男は長いため息を吐いたあと、こうも口にしたのであった。
「お前が異世界からこちらの世界にやって来た理由はただひとつ、この世界の魔王陛下に任命されたからだ」
「はあーー!?!?」
きっと今の声がこれまでの人生の中でもっとも驚いた瞬間であったことはまず、間違いはなかった。
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