新米魔王、冷徹貴族閣下に躾けられます

寅次郎

文字の大きさ
4 / 14

ハインリヒ卿ヴァッハトという男②

しおりを挟む


「ど……どうして説明なんかしなきゃいけねぇんだよ」

 まだ、目覚めたばかりということもあり脳がはっきりと覚醒していない。だから視界に映るヴァッハトに対し、どうして魔王の寝室に入って来たのかだとか、どうしてそんな深刻な表情を浮かべているのかと、色々と問いただしたくなったところでヴァッハトからこう伝えられる。

「どうしてもこうしてもじゃない。新米魔王がこんな時間に魔力を部屋の外に漏らし、城内の家臣たちに不安を与えているからだ。お前は自分の魔力が他の魔族たちに、影響を与えてしまうということを自覚しろ」
「……は?魔力?」

 思ってもいなかったヴァッハトのその発言におれは目をぱちくりとし、唖然とさえしてしまっていればあからさまな大きなため息が、目の前の男から浴びせられてしまう。
 それにはムッとしキッと睨みつけようとしたところで突拍子もなく、顎をぐいっと掴まれてしまう始末。

「とにかくだ、そのだだ漏れの魔力を一旦私が吸収する」

 魔力を吸収?といくつもの疑問符が頭上に浮かび上がったところで、目の前のヴァッハトがおれの思いもよらない行動を実行し始める。と、いうのもーー

「んんっ!?!?」

 しっかりと顎を掴まれてしまっているものだからいきなり口を合わせられるーーもといキスされてしまっても、ろくに抵抗出来るわけもなく。どんどんどんとヴァッハトの分厚い胸板を叩くも、びくともしない。

(ありえねぇ!)

 別にこれがファーストキスだとは言わないが男同士でのキスはこれが初めてには間違いなく。おれの黒い瞳が瞳孔まで、しっかりと開き切っても尚〝魔力の吸収〟は終わらない。

「む……新米魔王の癖に前の魔王よりも、魔力が膨大だとは」

 何やら手こずってでもいるのか一旦口が離れたと思いきや、息継ぎなしにまたむちゅりと口を合わせられたものだから、それにはもうなんとも言えない気持ちになり。それに加えヴァッハトは〝手こずっている〟ことから、最終手段だとばかりに今度は無理矢理、おれの唇を舌でこじ開けてくるなりぬるりっと分厚い舌を入れ込んでくる。

「んンう!?」

 本当にこんなのが魔力の吸収なのか!?と疑いの気持ちすら膨れ上がる中で、目的とは裏腹にこの場にぴちゃぴちゃと、やらしい水音が響き渡っていく。
 それと同時に舌同士を絡められてしまっているものだから、相手が男で今のところ好印象なところがないヴァッハト相手であっても、おれのこの身体は欲に素直なことに、ピクンピクンと反応しており。
 次第に下半身の中心が熱くさえなってくる。

「ふっ、う、く、ぁ」

 はふっはふっと熱い吐息さえ漏れ始めたところでつうーっと、唾液の糸を引きながらもヴァッハトがゆっくりと口を引き離していけば、体温が上がってしまったおれとは違って、今の行為になんの影響も受けてないとばかりの余裕の表情に、おれの顔は忽ち、カッと熱くなってしまう。

「あ、アンタなぁ!」

 一体何をしてくれてんだ!と悪態をつこうとしたところで、「これで先ほどよりかは城内に充満した魔力が落ち着いたな」と、任務を果たし切ったとばかりの表情さえ浮かべては、謝罪のひと言もなしに、カツカツとこの場から立ち去ってしまってしまう。
 当然、おれの中でのハインリヒ卿ヴァッハトは今日をもって〝最悪の野郎〟というレッテルがはりついたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

処理中です...