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ハインの従兄弟
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城内の魔族たちは何処か余所余所しさが目立っていたのだが、ここ数日クロイツがおれに何かと接してくるようになってから、それに続くように他の人たちも、おれに声をかけてくるようになった。
『魔王陛下、陛下がいらっしゃった異世界とはどういったところなのですか?』
『陛下、もしよろしければ城下町に私たちと見回りに行きませんか?』
『陛下のお口にこの世界の食べ物は合いますでしょうか?』
『剣の腕はいかほどなのですか?』
どうやらクロイツが他の魔族たちとおれの距離を自然と近づけてくれたようで、この世界に来てようやく肩の力が抜けた気がした。
これまであの堅物のハインがぴったり魔王の教育にはこれが欠かせないと、何かとこの世界のことを一気に、詰めさせようとしていたものだからこういう息抜きは非常に、有り難いとさえ感じられていたのである。
「陛下、ちょっとこちらに」
「ん?クロイツ?どうしたんだ?」
おれの部屋にまで呼びに来たクロイツに誘われるように庭にへと足を運べば、クロイツは所謂ティータイムを設けてくれたようで。白い机に白い椅子があるその場所に腰を掛けると、クロイツは向かい側に座ることはせず、おれの隣にへとぐいっと距離を詰めて腰掛けてきた。
「ははっ、なんだよ」
「物理的な距離も近い方が陛下ともっとお近づきになれるでしょう?」
クロイツは実に話すのが上手い。魔族の騎士団の団長と聞けば想像出来るのはそれとなく、ゴリマッチョのガチムチ男性だったのだが、このクロイツはというと、茶色の明るめの髪色にくっきりと耳が見える短髪の爽やかな笑顔が似合う、細身の男であり。
その話し声もひとつひとつ柔らかみがあるものだからこちらも、話していて落ち着くものがある。
あの堅物の教育係とは天と地の差がある。
(従兄弟でもこうも差が出んだなー)
なんだかしみじみとした気持ちにさえなっていたところで、何やらクロイツがおれの口元にマフィンのくずがついていたのに気づいたのか、それを不意打ちにも、ぺろりとその舌で舐めとってきたものだから、それには思わず「ぎゃあ!」と変な声を出してしまった。
「急に何するんだよっ!クロイツ!」
「ははっ、すみません陛下。陛下があまりにも無防備だから貴方のここを奪ってしまった」
ちょいちょいと手招きされたものだから自然と耳を傾けると、そのままクロイツがおれの耳元でこう囁いてくる。
「ハインリヒ閣下もきっと貴方にこういうことをしたいと思っていますよ」
「は、はあ!?そんなことあのハインがするわけーー……って、ハイン?」
何を血迷ったことを!あのハインがそんなことするわけないだろ!と、そんな言葉も口にしたかったがそれより先に、背後で何やらジワリと黒い気配とこちらを穴が開くほどに、みつめてきていた視線に、ハッと気づきうしろを振り返り見上げれば何やら、おれたちを一点に見下ろしていたハインの姿が目に飛び込んできた。
それにはどうしてそこにーーと言葉が漏れそうになったところで、シャッとすぐにハインが居た窓のカーテンが閉められてしまったのである。
「な、んなんだよ、アイツ」
どうしてこんなに胸がもやもやとしてしまうのか。
今のおれにはその原因や答えを見出せる術はなかったのだった。
「そろそろ決心はつきましたか?」
「へ?」
とある日、ここ最近日課になっていた城下町を城の魔族たちと探索に出かけ、ちょうど今城に戻って来たところで、大きな門の前で馬から降りて来たクロイツに、突拍子もなくそう声をかけられたのである。
一瞬、どれのことを言っているのか分からなかったのだが、にこにこと微笑み続けるクロイツの姿に、あ!と思い出してしまえば顔がボッと赤くなってしまう。
「ん?どうしました、陛下?」
「え、いや、べ、別に……えーと……」
目の前のクロイツはおれとハインがおれの魔力のコントロールの為に、夜毎何をしているのかは存じてはいるが、具体的な行為は知らない筈。
そんなものだから目の前のクロイツにどう答えるべきなのかーーと迷っていれば、「ああ!」と何かを思い出したかのように、ぽんっと両手を叩いたクロイツが、またにこりっと微笑んだあとにおれの耳元でコソコソと、周りの魔族たちに聞こえないように耳打ちしてきた。
「ご安心下さい、お二人がどうやって魔力をコントロールしているのかはもう、下調べして存じておりますので」
「し、下調べぇ!?え、う、うそ、だろ、やべっ、あれ見られてたわけ!?」
「ええ、下調べはバッチリです」
「っ~~」
「ーーで、決断はどうされます?」
「う!!」
流石騎士団団長殿なだけある……とおれは隙を与えないとばかりのクロイツに、圧倒されてしまったわけだが。なんだか、ここで鉢合わせたのも偶然ではなかったらしく。今の状況が状況なだけに、なんだか逃げ場すらないように感じられる。
(……決断とか言われても……正直、毎夜毎夜のことだって言えど、別に慣れてきたわけでもねぇし。ハイン相手でも恥ずかしすぎて爆発しそうだってのに、ここでクロイツまで加わるとか)
この追い詰められているような状況で頭の中で悶々と色んなことが、頭に過ればパンク寸前のおれの手をそっと手に取るなり、クロイツは更に追い討ちをかけてきた。
「一人増えればもっと魔力の完璧なコントロールに繋がって、早くことを済ませられるかもしれませんよ」
「……え?ーーってことはつまり魔力のコントロールさえ完璧に出来るようになったら、もうあんなこと毎日しなくて良いってこと、だよな?」
「ええ」
正直そこまで先の考えがそれを聞くまでおれの中で思い浮かんでいなかったものだから、クロイツのその言葉に、おれの心が大きく揺れてしまう。
(早く魔力がコントロールが出来れば教育係のアイツだって嬉しいんじゃ?)
無愛想で堅物で冷徹で心のない男のイメージで凝り固まっているハインに対し、どうして彼が喜ぶんじゃないのか?といった考えが、浮かんでしまうのか。
その答えも今は思い浮かぶことは当然なく。うーんうーんと悩み続けるおれに、クロイツがここで最後の追い打ちだとばかりにおれの手に、ちゅっと軽い口付けを落とすなり、こう囁いてきたのである。
「それに目的は魔力のコントロールと言えど俺は貴方を気持ち良くさせてあげれることが、可能ですよ?」
「っ~~」
男相手に色気を感じてしまうーーだなんて。
咄嗟にそう思ってしまったおれの中で何やらドキドキといった感情が、芽生えそうになったところで更にクロイツとの距離が、縮まりそうになったところで、ヒヒーンと背後から大きな馬の鳴き声が聞こえて来たのと同時に、その馬に続き聞き慣れたあのドスの効いた低い声が、聞こえてくる。
「断る!」
『魔王陛下、陛下がいらっしゃった異世界とはどういったところなのですか?』
『陛下、もしよろしければ城下町に私たちと見回りに行きませんか?』
『陛下のお口にこの世界の食べ物は合いますでしょうか?』
『剣の腕はいかほどなのですか?』
どうやらクロイツが他の魔族たちとおれの距離を自然と近づけてくれたようで、この世界に来てようやく肩の力が抜けた気がした。
これまであの堅物のハインがぴったり魔王の教育にはこれが欠かせないと、何かとこの世界のことを一気に、詰めさせようとしていたものだからこういう息抜きは非常に、有り難いとさえ感じられていたのである。
「陛下、ちょっとこちらに」
「ん?クロイツ?どうしたんだ?」
おれの部屋にまで呼びに来たクロイツに誘われるように庭にへと足を運べば、クロイツは所謂ティータイムを設けてくれたようで。白い机に白い椅子があるその場所に腰を掛けると、クロイツは向かい側に座ることはせず、おれの隣にへとぐいっと距離を詰めて腰掛けてきた。
「ははっ、なんだよ」
「物理的な距離も近い方が陛下ともっとお近づきになれるでしょう?」
クロイツは実に話すのが上手い。魔族の騎士団の団長と聞けば想像出来るのはそれとなく、ゴリマッチョのガチムチ男性だったのだが、このクロイツはというと、茶色の明るめの髪色にくっきりと耳が見える短髪の爽やかな笑顔が似合う、細身の男であり。
その話し声もひとつひとつ柔らかみがあるものだからこちらも、話していて落ち着くものがある。
あの堅物の教育係とは天と地の差がある。
(従兄弟でもこうも差が出んだなー)
なんだかしみじみとした気持ちにさえなっていたところで、何やらクロイツがおれの口元にマフィンのくずがついていたのに気づいたのか、それを不意打ちにも、ぺろりとその舌で舐めとってきたものだから、それには思わず「ぎゃあ!」と変な声を出してしまった。
「急に何するんだよっ!クロイツ!」
「ははっ、すみません陛下。陛下があまりにも無防備だから貴方のここを奪ってしまった」
ちょいちょいと手招きされたものだから自然と耳を傾けると、そのままクロイツがおれの耳元でこう囁いてくる。
「ハインリヒ閣下もきっと貴方にこういうことをしたいと思っていますよ」
「は、はあ!?そんなことあのハインがするわけーー……って、ハイン?」
何を血迷ったことを!あのハインがそんなことするわけないだろ!と、そんな言葉も口にしたかったがそれより先に、背後で何やらジワリと黒い気配とこちらを穴が開くほどに、みつめてきていた視線に、ハッと気づきうしろを振り返り見上げれば何やら、おれたちを一点に見下ろしていたハインの姿が目に飛び込んできた。
それにはどうしてそこにーーと言葉が漏れそうになったところで、シャッとすぐにハインが居た窓のカーテンが閉められてしまったのである。
「な、んなんだよ、アイツ」
どうしてこんなに胸がもやもやとしてしまうのか。
今のおれにはその原因や答えを見出せる術はなかったのだった。
「そろそろ決心はつきましたか?」
「へ?」
とある日、ここ最近日課になっていた城下町を城の魔族たちと探索に出かけ、ちょうど今城に戻って来たところで、大きな門の前で馬から降りて来たクロイツに、突拍子もなくそう声をかけられたのである。
一瞬、どれのことを言っているのか分からなかったのだが、にこにこと微笑み続けるクロイツの姿に、あ!と思い出してしまえば顔がボッと赤くなってしまう。
「ん?どうしました、陛下?」
「え、いや、べ、別に……えーと……」
目の前のクロイツはおれとハインがおれの魔力のコントロールの為に、夜毎何をしているのかは存じてはいるが、具体的な行為は知らない筈。
そんなものだから目の前のクロイツにどう答えるべきなのかーーと迷っていれば、「ああ!」と何かを思い出したかのように、ぽんっと両手を叩いたクロイツが、またにこりっと微笑んだあとにおれの耳元でコソコソと、周りの魔族たちに聞こえないように耳打ちしてきた。
「ご安心下さい、お二人がどうやって魔力をコントロールしているのかはもう、下調べして存じておりますので」
「し、下調べぇ!?え、う、うそ、だろ、やべっ、あれ見られてたわけ!?」
「ええ、下調べはバッチリです」
「っ~~」
「ーーで、決断はどうされます?」
「う!!」
流石騎士団団長殿なだけある……とおれは隙を与えないとばかりのクロイツに、圧倒されてしまったわけだが。なんだか、ここで鉢合わせたのも偶然ではなかったらしく。今の状況が状況なだけに、なんだか逃げ場すらないように感じられる。
(……決断とか言われても……正直、毎夜毎夜のことだって言えど、別に慣れてきたわけでもねぇし。ハイン相手でも恥ずかしすぎて爆発しそうだってのに、ここでクロイツまで加わるとか)
この追い詰められているような状況で頭の中で悶々と色んなことが、頭に過ればパンク寸前のおれの手をそっと手に取るなり、クロイツは更に追い討ちをかけてきた。
「一人増えればもっと魔力の完璧なコントロールに繋がって、早くことを済ませられるかもしれませんよ」
「……え?ーーってことはつまり魔力のコントロールさえ完璧に出来るようになったら、もうあんなこと毎日しなくて良いってこと、だよな?」
「ええ」
正直そこまで先の考えがそれを聞くまでおれの中で思い浮かんでいなかったものだから、クロイツのその言葉に、おれの心が大きく揺れてしまう。
(早く魔力がコントロールが出来れば教育係のアイツだって嬉しいんじゃ?)
無愛想で堅物で冷徹で心のない男のイメージで凝り固まっているハインに対し、どうして彼が喜ぶんじゃないのか?といった考えが、浮かんでしまうのか。
その答えも今は思い浮かぶことは当然なく。うーんうーんと悩み続けるおれに、クロイツがここで最後の追い打ちだとばかりにおれの手に、ちゅっと軽い口付けを落とすなり、こう囁いてきたのである。
「それに目的は魔力のコントロールと言えど俺は貴方を気持ち良くさせてあげれることが、可能ですよ?」
「っ~~」
男相手に色気を感じてしまうーーだなんて。
咄嗟にそう思ってしまったおれの中で何やらドキドキといった感情が、芽生えそうになったところで更にクロイツとの距離が、縮まりそうになったところで、ヒヒーンと背後から大きな馬の鳴き声が聞こえて来たのと同時に、その馬に続き聞き慣れたあのドスの効いた低い声が、聞こえてくる。
「断る!」
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