新訳媚薬を拾った日

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クラスメイト・風紀委員八木歩美

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昼休み。
珍しく今日は不良グループの襲来は無く、朝から割と平穏に過ごせてはいたが僕の胸中は穏やかではなかった。

小瓶に入れ、制服の内ポケットに忍ばせた媚薬。
朝から、誰かに使おう、誰に使おうとそう思っていたのは良いものの、そもそもクラスメイトと自然な交流など出来ない僕には、その媚薬を誰かに飲ませる事も嗅がせる事も叶わなかった。

昼休み開けの授業は体育で、クラスメイト達は皆体育着に着替えて教室を出て行く。
そうだ、体育の授業中、この教室は無人になる。
ドクン、と心臓が脈打つ。
今日は日差しが強く、外で運動すればきっと喉が渇くだろう。
つまり、今日に帰ってきてまず何か飲み物を口にする可能性が極めて高い。

「……」

徐々に人がいなくなる教室。
決心の定まらない僕が机の上に突っ伏していると、忘れ物を取りに来たのか、隣の席の風紀委員、“八木歩美”が体育着姿で教室に入って来た。

八木歩美。
小学生の頃からの同級生だ。
……一度も会話をした事がないが。

成績は優秀だが、バスケ部での活動も力を入れたいという理由でこの学部を志望したらしい。
子供の頃から頭脳明晰で、生徒会長に任命されることもあった。

決して美人という評判が起こることは無いものの、色白で丸顔、そこにキリッとした目加わって、妙な色気がある。
何より特徴的なのは小学生の頃、既に“巨乳”と呼べる程成長していたその胸。

中学、高校と来てもその成長は止まっていないようで現在控えめに見てもEカップは下らないだろう。

そしてバスケに力を入れているとは言うものの、きっとその胸も体質が影響しているのだろうか、全体的に肉付きが良く、肌はしっとりとした質感を想像するに難しくない。

正義感が強く、真面目で、学内の問題に対しては真っ向から指摘し、立ち向かう。
そんな彼女はを慕う者は多いらしい。

……だが、それも僕という存在を除外した話だ。

コイツは、僕を空気のように扱って、何を正義ヅラしていやがるんだ。

僕が教室で誰かに殴られていると、いつもコイツはチラッとだけこちらを見る。
だがすぐに踵を返して、まるで何事もない、何も見ていないとでも言いたげに、わざとらしくせかせかと教室を出て行ったりもする。

また少し成長をしているのか、キツそうな体育着からコイツの胸のラインはみぞおちの辺りに影を作り、腰に少しだけ肉が乗っているのが見える。

当然のように僕に一瞥もくれないまま、そのだらしない体と胸を揺らして八木は教室を出て行った。

気が付けばもうここには僕一人しかいない。

八木の机の上には飲みかけのペットボトルが残されている。

(やるなら、今しかない)

もはや躊躇なんてすることも無く、ペットボトルの蓋を開ける。
僕は憎悪に身を任せ、数滴の“媚薬”を八木のペットボトルに垂らした。
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