新訳媚薬を拾った日

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クラスメイト・風紀委員八木歩美2

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体育の授業が終わり、教室に戻る。
八木があれを飲んだのかは見ていないが、ペットボトルは机の上から仕舞われていて、前の席の女子と談笑をしている。

効力がどれくらいの時間で発生するのかは詳しく目を通していないが、やはりあれは偽物だったのだろう。

途端に力が抜け、そしてもし本物であればもはや犯罪行為とも言える所業を行ったことが急に恐ろしくなり、とてもこの後の授業を受ける気にならなかった。

良かった、この小瓶も、後でもう捨てよう……

そう思いながら、僕は教師に体調が悪いと伝え、保健室のベッドで休んだ後、その後はもう帰ってしまおうと思った。

こんな思いまでしたのに、相変わらずの正義感と真面目さが浮き出た顔で澄ましている八木が、とても憎らしく見えた。

授業時間の保健室は、とても静かだった。
室内には誰もいなくて、ここなら憎らしいクラスメイトに精神をやられたり、不良グループにいびられることもない。

少し休むだけのつもりだったが、どうせなら授業時間の終わりまでゆっくりしていようか……とメガネを外して寝る体勢に入った時、誰かが保健室のドアを開けた。

(誰だ……?せっかく人が追い付けているのに……)

そう思い、メガネを外した為ボヤけた視界の中カーテンの下の隙間から気配の先に目をやると、何かふらふらとおぼつかない、女生徒の足が見えた。

風邪か何かで休みに来たのか……と気にせずいると、その女生徒はあまりにも大袈裟に、ドサッと隣のベッドに倒れ込んだ。

流石に少し不穏と不安に駆られた僕は、思わずカーテンに隔たれた隣のベッドの方を向き、体を起こす。

何やら吐息のような物が聞こえてきて、しかしそれは体調不良とはまた別の物のようで、だが妙にどこかで聞いた事のある、そう、これは……。

「はぁ……あ、ぅんっ……」

(まさか、ここで……“している”のか?アレを……)

まさかの事態に思わず体が固まる。
しかしその声が聞こえる為に“あの行為をしている”といつ疑いは確信に変わっていき、僕の股間は熱く、大きく盛り上がってしまう。

「ふぅっ……あっ……いぃ……」

声は徐々に艷を増し、もぞもぞとシーツの擦れる音も次第に激しくなり、更にはキィキィとベッドの軋む音も聞こえて来る。

(まさか学校でこんな事を……だ、誰だ?一体、こんなことをするのは……)

……と、そこでひとつの事が思い当たる。

無造作にベッドの横に脱ぎ捨てた制服の上着に目をやる。

……“媚薬”

もしかして……。

まさか、今隣で、俺の隣で“行為”に及んでいるのは……。

「はぁぁ……あぁんっ……くふぅっ……」

ぴちゃ……くちゅ……と、水音のような物も聞こえ出した。
あまりにも淫美な声に、その声の主が誰なのか最初は検討も付かなかったが、これは……。

『私が新しく生徒会長に任命されました、八木歩美です。生徒会長の任期の間、私はこの学校をより正しい方向に、不正は一切排除し、皆様に恵まれた学校生活を届けます』

あのキリッとした声が脳裏に浮かぶ。
あの正義感に溢れ、ツンとした生意気な喋り方が……。

『うちのクラスにいじめはありません』

僕を後目に、担任の前でそんな事を言いやがった事もある……。

そう、今隣のベッドでオナってるコイツは……。

ゆっくりとカーテンを開く。

ソイツはハッとしてこちらに目をやり、そして、一瞬の体裁を整える意志を見せるが……その目はすぐに溶けて、しかし、せめてもの抵抗か、「いや……」と僕に背を向けて丸まる。
丸まった背中からはその白い素肌が見え、緩んだスカートからは白い下着が丸見えになっている。

体になにか熱いものが激流するのを感じる。

媚薬。

あれは、本物だったのだ。
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