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「……いや、なんて言うか、うまく言えないけどさ」
考えはまとまらないけど、ぽつりぽつりと口を開く。
「マコトは、マコトだよ!
兄貴は兄貴で、別の人じゃん。
マコトが何かやったわけじゃないでしょ?
……ほんとに世間のクソみたいな流れはあるんだろうけどさ。
まあ、それでもクソみたいな考えのやつばっかじゃないのも分かってるでしょ?
だから今日、私たちに話してくれたんでしょ?
……マコト、ホントに私たちのこと大好きだよね!!
ねぇ!?」
思わず自分でも「……なに言ってんだろ私」と笑ってしまう。
ケンジは
「おいおい、頭大丈夫か!」
とテーブルを叩きながらツッコむ。
アヤカは
「……でも、分かるかも」
と微笑みつつ、マコトの背中に手を添える。
マコトは一瞬きょとんとした後、肩を震わせながらも、少し笑いをこらえている。
さっきまで泣きじゃくっていた彼の背中越しに、笑い声がぽつぽつと混ざって、重かった空気がほんの少し和らいだ。
「……ほら。マコトがここにいてくれたら、もうそれだけで安心っていうかさ」
「ほんとに大学も辞めなきゃいけないのかな?
辞めるんじゃなくて、辞めなくても済む方法を一緒に探せばいいじゃん。
マコトがここに居たいって思ってくれるなら、私たちなんだって力になるから」
ケンジとアヤカは私の言葉に大きく頷く。
2人の目を見て、思わず私はジョッキを軽く掲げた。
「え、なんで乾杯?……って感じだけど、まあ、今夜は特別ってことで!」
マコトは肩を震わせながら、少し笑いも混ざった困り顔で私を見る。
「……本当に変なやつだな、お前は。ジョッキ空だし」
と、吐き捨てるように小さく呟く。
「あっ…うるさいなぁ!変でも空でもいいんだよ! だって私たち、マコトがどんな過去だろうと、今ここにいるマコトが大事なんだから!」
言いながら、私はそっと彼の背中に手を置く。
ケンジもアヤカも、自然と手を重ねて、マコトの背を支える輪ができた。
マコトは小さく震える声で、けれど確かにまた
「ありがと」
と言った。
悲しみや悔しさの中にある、ほんの少しの安らぎ。
それを、私たちは手を重ねることでそっと伝えたのだ。
「……んー、ま、変な私がうるさくても、しばらく付き合ってもらうからね!」
メニューのタブレットで生ビールを4つ注文しながらふざけながら言った私に、ケンジが
「おいおい、お前弱いくせにふざけんな!」
と苦笑い。
アヤカも微笑み、マコトも小さく笑った。
笑い声が混ざって場の空気が少し柔らかくなる。
しばらくして、テーブルの空気が少し落ち着く。
私は小さく息をつき、マコトの方へ目をやった。
涙はもう止まっていたけれど、赤く残った目元がまだ彼の揺れを物語っている。
それでも、マコトはどこか無理にでも落ち着こうとするように、穏やかな表情をつくり、こちらを見渡した。
しばらく間を置いてから、まるで空気をやわらげるように、私たちへ問いかけた。
考えはまとまらないけど、ぽつりぽつりと口を開く。
「マコトは、マコトだよ!
兄貴は兄貴で、別の人じゃん。
マコトが何かやったわけじゃないでしょ?
……ほんとに世間のクソみたいな流れはあるんだろうけどさ。
まあ、それでもクソみたいな考えのやつばっかじゃないのも分かってるでしょ?
だから今日、私たちに話してくれたんでしょ?
……マコト、ホントに私たちのこと大好きだよね!!
ねぇ!?」
思わず自分でも「……なに言ってんだろ私」と笑ってしまう。
ケンジは
「おいおい、頭大丈夫か!」
とテーブルを叩きながらツッコむ。
アヤカは
「……でも、分かるかも」
と微笑みつつ、マコトの背中に手を添える。
マコトは一瞬きょとんとした後、肩を震わせながらも、少し笑いをこらえている。
さっきまで泣きじゃくっていた彼の背中越しに、笑い声がぽつぽつと混ざって、重かった空気がほんの少し和らいだ。
「……ほら。マコトがここにいてくれたら、もうそれだけで安心っていうかさ」
「ほんとに大学も辞めなきゃいけないのかな?
辞めるんじゃなくて、辞めなくても済む方法を一緒に探せばいいじゃん。
マコトがここに居たいって思ってくれるなら、私たちなんだって力になるから」
ケンジとアヤカは私の言葉に大きく頷く。
2人の目を見て、思わず私はジョッキを軽く掲げた。
「え、なんで乾杯?……って感じだけど、まあ、今夜は特別ってことで!」
マコトは肩を震わせながら、少し笑いも混ざった困り顔で私を見る。
「……本当に変なやつだな、お前は。ジョッキ空だし」
と、吐き捨てるように小さく呟く。
「あっ…うるさいなぁ!変でも空でもいいんだよ! だって私たち、マコトがどんな過去だろうと、今ここにいるマコトが大事なんだから!」
言いながら、私はそっと彼の背中に手を置く。
ケンジもアヤカも、自然と手を重ねて、マコトの背を支える輪ができた。
マコトは小さく震える声で、けれど確かにまた
「ありがと」
と言った。
悲しみや悔しさの中にある、ほんの少しの安らぎ。
それを、私たちは手を重ねることでそっと伝えたのだ。
「……んー、ま、変な私がうるさくても、しばらく付き合ってもらうからね!」
メニューのタブレットで生ビールを4つ注文しながらふざけながら言った私に、ケンジが
「おいおい、お前弱いくせにふざけんな!」
と苦笑い。
アヤカも微笑み、マコトも小さく笑った。
笑い声が混ざって場の空気が少し柔らかくなる。
しばらくして、テーブルの空気が少し落ち着く。
私は小さく息をつき、マコトの方へ目をやった。
涙はもう止まっていたけれど、赤く残った目元がまだ彼の揺れを物語っている。
それでも、マコトはどこか無理にでも落ち着こうとするように、穏やかな表情をつくり、こちらを見渡した。
しばらく間を置いてから、まるで空気をやわらげるように、私たちへ問いかけた。
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