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間話 或る生徒の妄想(会計×司)
定期的に見つかる同人誌
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※相変わらず謎時系列。登場人物は18歳以上です。
「今度はやけに分厚いな?」
机の上に置かれた、A5サイズの冊子。表紙に描かれたイラストには見覚えがあった。以前俺と生徒会長、美作とのエロ本と同じ絵柄だった。
「今回は小説本が見つかった」
ハァー、とクソデカ溜息をつきながら、腕を組んで龍次が言った。
「ちなみに僕が見つけました。いつも昼ごはんを食べるベンチの上に、紙袋の中に入ってまして。落とし物かと思って風紀の方に届けたんですけど……」
珍しいことに、紘川もこの場にいた。
まさか親切心で届けた紙袋の中身が、実在の人物を勝手に絡ませるエロ本だとは思うまい。
表紙で抱き合う俺と生徒会会計、五十嵐のイラストをチラッと見ながら、居心地悪そうにしていた。今度は五十嵐とかよ。
「小説なら、この前よりはエグくないってことか?」
「いや……そうとも限らない。イラストに出来ないようなことを言葉で表現している可能性はあるだろ」
「イラストに出来ないってどんなんだよ……」
試しに表紙を捲ってみると、そこにはアレコレ注意事項が書いてあった。ここにも「実在の人物とは一切関係ありません、登場人物は全員18歳以上です」と書いてあった。そういうものらしい。
「しかし厚いな……これ何ページあるんだ?」
「裏表紙を捲ったら、150ページとあった」
「すげー、大長編じゃん」
ちょっと興味が湧いてきた。注意書きをさらに読み進める。
「えーっと、なになに……この小説はオメガバースものです。オメガバースって何?」
聞き慣れない単語に、龍次も紘川も首を左右に振った。
さらにページを捲ると、そこには「オメガバース」の説明が載っていた。親切設計だ。
「オメガバースとは、男女とは別に存在する生物学上の性のことで、α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)という3つの性別が存在している。ふーん?」
「ややこしいですね」
「αはエリート階級で、社会的なヒエラルキーの頂点にいる人物。生まれながらにして優秀で、リーダー性やカリスマ性に優れている……なるほど」
「生徒会長とかイメージですね」
「んん……?Ωを孕ませられる……?」
紘川に相槌を打ってもらいながら、オメガバースとやらの説明を読み進めた。しかし不穏な単語が出てきた。
「βは人口の大半を占める凡人、そしてΩは……男女関係なく妊娠出産が可能な性で、一定期間に一度発情期がある。発情期中は社会生活に大きな影響が出るので、社会的弱者として扱われることが多い。フェロモンでαや、時にはβも誘惑してしまう」
「なんかすごい設定ですね」
「要は男でも子どもが産める設定にするために、ここまで壮大にするか……?」
恐るべし妄想力。というかちょっと待て、五十嵐と俺とでまた同人誌が作られているとして、このオメガバース設定……つまり、俺がオメガか!?
「えええ……俺、五十嵐に孕まされるの?」
「そういう創作物ってことだろう。あくまでも妄想の世界の産物だ」
「龍次お前、ちょっとめんどくさくなって来てるだろ」
「この前の本もまだ誰が書いたか特定出来ていないんだ。表紙を描いた人物が同じということは、この小説の作者と繋がっているのは間違いないんだが……」
「ど、どっかに手掛かりないか探してみるか」
「先輩すごいですね……自分の名前でラブシーンのある本読むんですか」
本文を読み始めた俺に、紘川が感心したように言う。
「マァ、これだけボリュームがあると、逆にどんな話なのか気になって」
「また痛い目に遭うだけだぞ」
「もうここまできたら覚悟してるから」
一周回って楽しくなってきたのだ。
読んでやろうじゃないか、このオメガバースとやらの世界で俺がどんな目に遭うことになるのか。
「今度はやけに分厚いな?」
机の上に置かれた、A5サイズの冊子。表紙に描かれたイラストには見覚えがあった。以前俺と生徒会長、美作とのエロ本と同じ絵柄だった。
「今回は小説本が見つかった」
ハァー、とクソデカ溜息をつきながら、腕を組んで龍次が言った。
「ちなみに僕が見つけました。いつも昼ごはんを食べるベンチの上に、紙袋の中に入ってまして。落とし物かと思って風紀の方に届けたんですけど……」
珍しいことに、紘川もこの場にいた。
まさか親切心で届けた紙袋の中身が、実在の人物を勝手に絡ませるエロ本だとは思うまい。
表紙で抱き合う俺と生徒会会計、五十嵐のイラストをチラッと見ながら、居心地悪そうにしていた。今度は五十嵐とかよ。
「小説なら、この前よりはエグくないってことか?」
「いや……そうとも限らない。イラストに出来ないようなことを言葉で表現している可能性はあるだろ」
「イラストに出来ないってどんなんだよ……」
試しに表紙を捲ってみると、そこにはアレコレ注意事項が書いてあった。ここにも「実在の人物とは一切関係ありません、登場人物は全員18歳以上です」と書いてあった。そういうものらしい。
「しかし厚いな……これ何ページあるんだ?」
「裏表紙を捲ったら、150ページとあった」
「すげー、大長編じゃん」
ちょっと興味が湧いてきた。注意書きをさらに読み進める。
「えーっと、なになに……この小説はオメガバースものです。オメガバースって何?」
聞き慣れない単語に、龍次も紘川も首を左右に振った。
さらにページを捲ると、そこには「オメガバース」の説明が載っていた。親切設計だ。
「オメガバースとは、男女とは別に存在する生物学上の性のことで、α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)という3つの性別が存在している。ふーん?」
「ややこしいですね」
「αはエリート階級で、社会的なヒエラルキーの頂点にいる人物。生まれながらにして優秀で、リーダー性やカリスマ性に優れている……なるほど」
「生徒会長とかイメージですね」
「んん……?Ωを孕ませられる……?」
紘川に相槌を打ってもらいながら、オメガバースとやらの説明を読み進めた。しかし不穏な単語が出てきた。
「βは人口の大半を占める凡人、そしてΩは……男女関係なく妊娠出産が可能な性で、一定期間に一度発情期がある。発情期中は社会生活に大きな影響が出るので、社会的弱者として扱われることが多い。フェロモンでαや、時にはβも誘惑してしまう」
「なんかすごい設定ですね」
「要は男でも子どもが産める設定にするために、ここまで壮大にするか……?」
恐るべし妄想力。というかちょっと待て、五十嵐と俺とでまた同人誌が作られているとして、このオメガバース設定……つまり、俺がオメガか!?
「えええ……俺、五十嵐に孕まされるの?」
「そういう創作物ってことだろう。あくまでも妄想の世界の産物だ」
「龍次お前、ちょっとめんどくさくなって来てるだろ」
「この前の本もまだ誰が書いたか特定出来ていないんだ。表紙を描いた人物が同じということは、この小説の作者と繋がっているのは間違いないんだが……」
「ど、どっかに手掛かりないか探してみるか」
「先輩すごいですね……自分の名前でラブシーンのある本読むんですか」
本文を読み始めた俺に、紘川が感心したように言う。
「マァ、これだけボリュームがあると、逆にどんな話なのか気になって」
「また痛い目に遭うだけだぞ」
「もうここまできたら覚悟してるから」
一周回って楽しくなってきたのだ。
読んでやろうじゃないか、このオメガバースとやらの世界で俺がどんな目に遭うことになるのか。
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