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昔の話 (※はR-18)
はじめての顔合わせ #1
しおりを挟む*かなりライン怪しめなワードが出てくるので注意です。
*次回R-18です
では
↓↓↓
*
「そろそろシアンに直接あげようか」
「そうだな。なら次にあいつの魔力が尽きたらにしよう」
兄たちは部屋を出て行く末の弟に聞こえないよう、小さな声で囁き合った。シアンは今日もまた、その可愛らしい顔をつらそうに歪ませて、兄たちのもとに助けを求めてきた。父より残酷なことに、彼らはシアンが限界まで魔力をすり減らさなければ、「薬」をくれないのだ。たくさんいるシアンの兄たちは交代で、シアンに飲ませる「薬」を作る。どうやら「薬」の正体に薄々勘づいているらしく、毎回シアンは目に涙を溜めて嫌がりながら必死で瓶の中身を飲み干していくのだ。
「今日はいい写真撮れたか?」
「ああ。おれの今までの最高傑作だ」
2人の悪魔はにやにやしながら、さっき現像されたばかりのものを含む数枚の写真を囲んだ。
まさに「薬」を飲んでいる瞬間を映したもの。シアンの胸元から上が画面の全てを占めている。小さな手が哺乳瓶を掴むように瓶を両手で握って口に含んでいる。目を閉じていたのがちょうどシャッターのタイミングで薄目を開き、恍惚と虚空を見つめていて、色気とは別の何かそそるものを感じさせる。一生懸命に兄の精液を啜っているシアンの喉の動きがリアルに想像できる。
その隣の写真は、シアンが兄上の作った「薬」をはじめて飲んだとき、つまりそれが肉親の体液だとはじめて知って飲んだときのものだ。
このときのシアンは完全に放心してベッドに倒れ込んでしまった。仰向けに脱力して、無防備な顔を晒している。目を閉じて、濃い睫毛が顔に影を落とす。魔力の満ち足りた頬は白黒でも想像できるくらい桃色に染まり、まるで発情した少女のよう。だらしなく半開きになった口の端からは、唾液か精液かはっきりしない何かがこぼれ、顎を伝っている。
この2枚が特に傑作のようで、食い入るように見ている。
「こっちも良いと思ったのだが」
「この前のこれはシアンが寝てしまっているからな。色味が分かればもっと素晴らしいものになるのだが、あいにくカラーフィルムの輸入品はまだあまり出回っていなくてね」
「ならおれたちで買ってしまえばいいじゃないか、兄貴」
兄貴と呼ばれた方は顎に手を当て少し黙考してから、ああとうなずいて指をパチンと鳴らした。
「おれたち兄弟のために是が非でも購入しよう」
シアンをもっと良く映せるようになるな、あの真っ赤な髪も、薔薇色の頬も......
残酷な悪魔の兄弟は楽しそうに思いをめぐらせた。
*
それから1週間ほどが経ち。
シアンはまた、兄からの「薬」の供給を焦らされていた。
「兄上......全然飲みたくないけど、これじゃオレまた苦しくて倒れちゃうよ......」
また屋敷の人たちの目を盗んで外へ出て、天使に頼ってしまおうか、とも考えた。しかし一度抜け出したことで警戒を強めたらしく最近は必ず屋敷の出入り口と庭と敷地外を繋ぐ門の前に警備がいた。
「どうしよう......どうすればまた、天使に会えるのかな」
「ばあっ」
「!!」
庭の花壇の前に座り込んでいたシアンの後ろから、突然大きな声で驚かされた。シアンは飛び上がり、背中の白い翼がつられて動いてしまう。そのうえ喉を詰まらせてむせた。
「ごほっ、こほこほっ......あ、兄上」
「そろそろ薬が欲しいだろ?こんなところにいて、探したぞ」
「薬」......その単語に、シアンは内臓がどんよりと重くなったような感覚に襲われた。反面兄はなんだか楽しそうな様子だ。
「う、ん......欲しい、です」
「よし。こっちに来いよ」
シアンはしぶしぶうなずいた。なかなか立ち上がらないシアンの手を強引に引っ張り上げ、兄は機嫌よく屋敷の中に連れていった。
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