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234、俺たちが偽物
「ところでスノウグラス、こいつ知り合いっぽいけど誰なんだ?」
「前にパーティーを組んでいた奴です。でも意見の相違でパーティーは解消しているんですけど」
「そうなのか。意見の相違なあ……」
プレイヤーの揉め事も街の揉め事も慣れているマルクスさんは、その意見の相違というのがどんなものなのかピンと来たようだった。
スノウグラスさんの肩にポンと手を置いて、ニヤリと笑った。
「それにしてもスノウグラスの支援魔法、すげえな。俺普段はあんな風に動けねえんだけど今日は俺超かっこよかったんじゃねえ?」
挑発するようなマルクスさんに、スノウグラスさんがすぐさま頷いた。
「すごかったです。俺の支援魔法なんかなくてもマルクスさんは強いですけど」
「自分の得意なことを、なんか、とか言うなよ。しかしマジであれは癖になりそうだな。あの動き、ついつい自分の実力と勘違いしそうになる。そしてついでにマックの回復薬も癖になりそうで怖いけどな」
だって味の追求をしましたから。そしてマルクスさんの意見には俺も同意する。ほんと、魔物の攻撃をかわすのがあんなに楽チンなんて、初めて。
スノウグラスさんは、マルクスさんの言葉に少しだけ嬉しそうに笑った。
「じゃあ急いで帰るか。日没までなんだろ」
「すいません」
「間に合うかどうかは運次第ってな」
三人で頷き合ってから、俺は鎧の人を振り返った。
「じゃあ二千ガルと剣」
そう言って手を差し出すと、鎧の人は思いっきり顔を顰めた。
「何で勝手にパーティーを抜けたんだよ! 支援魔導士でもちゃんと対等に接してやってただろ!」
「うわあ上から目線」
「おいこいつ何様だよ」
鎧の人の叫びに、俺とマルクスさんがすかさず突っ込む。
俺的に接してやってたとか言ってる時点でアウトなんだけど。
「確かに、報酬は対等だった。しかし貰うたびに舌打ちと「何で戦えねえ奴に同じように分けるんだよ」なんて文句を貰ってみろ。やめたくもなるだろ。採取物だって対等だとか言って持っていってただろうが。俺はせっかく始めたADOでつまらない思いをするのは嫌だから、もう搾取されるのはやめたんだ。と言いつつお前らの後で声を掛けられたパーティーも同じような奴らだったがな」
「お前が今日組んだ奴らはリーダーの頼みでお前と組んでやってたんだよ!」
つまり、同類の人たちが集まったってことか。スノウグラスさん、厄介な人たちに目を付けられてたんだなあ。最悪だあ。
目の前の鎧の人の話を聞いていて、マルクスさんもそう思ったらしい。隣にいたスノウグラスさんの肩に腕を置いた。
「スノウグラス、こいつらはあれか。お前の価値を全く分かってねえ奴らか」
「価値っていうか、そこまで価値があるとは思いませんけど、流石にここまで下の扱いも腹に据えかねたので抜けただけです」
「お前は正しい。もっと自分の存在価値を誇れよ。支援魔法、最高じゃねえか。普通は俺一人でなんてあの強さの魔物をこんなに簡単には倒せねえんだよ。それが、あれだけあっけなく倒せるってのは、間違いなくお前の力だろ」
「マルクスさん」
マルクスさんの言葉に、スノウグラスさんは戸惑ったような顔をしていた。
その顔に苦笑したマルクスさんは、ちらりと鎧の人に視線を向けた。
その視線を受けた鎧の人は、その視線に威圧されたように一度目を逸らし、今度はスノウグラスさんを見た。隣のマルクスさんは、あえて無視することに決めたようだった。
「スノウグラスはNPCに褒められて喜んでるのかよ」
嘲るようにそう嗤った鎧の人に、思わず目潰しを投げそうになった俺。
思いとどまったのは、マルクスさんの目が面白がっていたから。どうしてこういう状況でそんな顔を出来るんだろう。
「NPCは多分パーティー組んだプレイヤーを褒めるようにインプットされてるんだろ。そんなプログラムに喜んでどうするんだよ。これはゲームだし、そいつはNPCだろ」
「ふざけんな!」
思わず叫ぶと、鎧の人は今度は俺に視線を向けた。哀れむようなその視線が余計にカチンとくる。
インベントリから目潰しを取り出した瞬間、マルクスさんが「マック、落ち着け」と穏やかな声を掛けてくれる。
「お前もあれか、異邦人特有の「ゲーム」だの「NPC」だのと言って俺らを見下す奴らか。結構多いぜえ、異邦人には。言ったろ、マックみたいな方が珍しいってよ。ただ、異邦人がいることで周辺の魔物の数が減るし、ギルドが色々とまとめてくれてるから俺らも一応好意的に受け入れてはいるけどな」
スノウグラスさんの肩に腕を置いたまま、マルクスさんは鎧の人に話し始めた。
「俺らが「AI」とかいうので、インプットされた情報をもとにしか行動しねえ「NPC」だっていうのは聞き飽きたぜ。門番は門に立って「出かけるのか? 気を付けて行って来いよ」とかしか言わねえと思ってる奴らもいてよ、結構笑えるんだよ。異邦人は本気で俺らが生きてない物として見るからな。でもよ」
マルクスさんは一度言葉を止めると、さっきまで俺が向けられていたような憐みの表情を鎧の人に向けた。
「俺らに言わせりゃよ、お前らの方が「NPC」だ「AI」だと決まった文句しか言えねえ偽物に見えるんだよ。それこそ俺らを格下に見るようにインプットってのか? されて行動してるんじゃねえの、ってたまに思うぜ。行動に血が通ってねえっていうか、遊びで人を殺めて何とも思わねえ罪悪感のわかない人形みてえな感じな。ほんとにそれがお前らの本性だったとしたら、どこに行ってもまともに生きられねえと思うぜ。可哀そうによ。俺らはここで生きてるし、お前らに切られりゃ死ぬ。魔物に襲われてもな。喧嘩もするし、ちゃんとお前らと同じように物を考えてる。いいやつは気に入るし、いやな奴は嫌いだし、贔屓だってする。生きてるからな。お前らがどんな風に思ってようと、それが事実なんだよ。ここは無法地帯じゃねえし、何をしても咎められねえなんてこともねえ。少しは周りと接して考えろ。考える知恵はちょっとはあるんだろ? それもない様な人形じゃねえんだろ」
マルクスさんが口を閉じると、俺含めて誰も声を発することが出来なかった。
ちゃんと門番さんはそういうこともわかっていて、それでも俺たちにいつも挨拶してくれてたんだ。
でも確かにそうだよな。ここはゲームの世界じゃない、異世界って括りの場所で、ヴィデロさんの生まれた地で、そして、偽物の異物は俺達。何をしてもいいと思って行動しちゃう人はちゃんと消えてなくなる。それを弁えてこの世界を楽しもうって人は、ちゃんとここの人たちも自分たちと同じように接する。会話をすればすぐにわかるのに。生きてるって。きっとプレイヤーとしか交流しないんだろうなあ。
鎧の人はマルクスさんの言葉に絶句していた。
普通のAIのNPCはいくら何でもこんなセリフは出てこない、っていうのわかったのかな。
門番さんをしていて、俺達プレイヤーと接する機会も多いマルクスさんだからこそ出てくる言葉だ。
「エイシン、俺はもう、支援魔導士を使ってやるとか言う不愉快な奴らとは組む気はないし、支援もしない。フレンドも解除するから、もう二度と話しかけないでくれ」
スノウグラスさんは肩にマルクスさんの腕を置いたまま、静かにそう言って、宙で何かを操作した。多分さっきの人たちと、この人たちのフレンド解除をしてるんだと思う。
「パーティー申請を飛ばすな。迷惑だ」
「でも俺、お前を見つけたら連れて帰らないとリーダーに怒られるんだよ!」
「勝手に怒られていろ。迷惑だ」
鎧の人も宙に指を這わせる。すごく不機嫌そうな顔つきだった。もしかして何かやり合ってる?
ひたすらパーティー申請を飛ばし続けるとかいう迷惑行為してるのかな。
パーティーって、他の人と組んでると重複出来ないから申請自体飛ばせなくなるんだっけ。そういう事態に陥ったことがないからうろ覚えだけど。いつまでもこんな不毛なことをしてると時間が無くなるから、と俺は無言のままスノウグラスさんにフレンド申請を飛ばした。
それを見たスノウグラスさんが驚いたようにこっちを見る。
そして、すぐに申請を受理してくれる。よし、これでフレンドになった。
ってことで、すぐにパーティー申請を飛ばした。
「マック君……」
「よろしくお願いします」
ピコン、と通知が来る。
申請受理の通知だった。おお! パーティー欄にスノウグラスさんの名前が載った!
「はぁ?! 申請出来なくなった?! どうなってんだよ!」
よし、俺の記憶は正しかった。
ホッとしながら俺もスノウグラスさんの横に立った。
「たった今から俺とスノウグラスさんはパーティーだから、部外者は早くお金払ってとっとと消えてくれる? あ、素手じゃかわいそうだからその剣は売ってあげるよ。初期装備の剣だけど」
ほら、金をくれ、と手を差し出すと、マルクスさんが吹き出した。
「全部こみこみ二千ガルでいいからとっとと出せよ」
「払わねえと、踏み倒しってことで衛兵が来ちまうかもなあ?」
「捕まったら垢BANとか垢停止措置になるらしいよ。何なら運営に連絡しようか? マルクスさん、ここら辺、そろそろ衛兵が巡回する時間じゃない?」
「ああ、だな。そのまま突き出しちまうのも手だな」
俺たちの脅しに屈するように、鎧の人は地面にたたきつけるように二千ガルを出した。そして、お決まりの「次に会った時には覚えてろよ」という捨て台詞を残して、走り去っていってしまった。一緒の方向に帰ることになったら嫌だったから、自分から先に行ってくれてよかった。
そして、勢いでパーティー申請してしまったスノウグラスさんは。
「こんな内輪もめに巻き込んですまなかった。もうパーティー解除していいから」
「え、何でですか? せめてトレくらいまでは俺とパーティー組んでくださいよ」
すぐにパーティー解除されそうになったので、慌てて止める。
だって俺、助っ人みたいな感じでしかパーティー組んだことなかったんだもん。少しくらい堪能してもいいよね。
二人とも非戦闘要員だけど。
戸惑ったような顔で、スノウグラスさんはすぐにパーティー解除を取り消してくれた。
「じゃあ、帰りますか。ってもう、日没近いじゃん! 依頼間に合わない!」
傾く太陽を見ると、すでに山の間に姿を隠そうとしていた。
マルクスさんとスノウグラスさんは溜め息を吐いて、ほぼ諦めの表情をしていた。
でもこの距離なら三人でも行ける。
俺はインベントリからドイリーを取り出して腕にセットして、二人に手を差し出した。
「ちょっと二人とも掴まって。まだギリ間に合うかもだから!」
早く、と急かすと、マルクスさんが呆れたような表情を向けてきた。
「何言ってんだマック。これじゃ馬がいたとしても間に合わねえぜ」
「やってみないとわからないよ!」
「何をしようとしているんだ?」
訝しげに俺に視線を向けている二人の手を強引に握らせて、その上から手を重ねると、俺は宙に文字を描いた。
次の瞬間、俺達はトレの工房の前に跳んでいた。ここなら目立たないからね!
「ギルドまで走ろう!」
「え、は?!」
「ちょ、マックお前何しやがった?!」
「その説明はあとで!」
繋いだままの手を引っ張って、工房の囲いを出る。まだ戸惑いを隠せない二人を急かして、太陽の陽が山の間に吸い込まれるように消えていく中、三人でギルドまでダッシュした。
「前にパーティーを組んでいた奴です。でも意見の相違でパーティーは解消しているんですけど」
「そうなのか。意見の相違なあ……」
プレイヤーの揉め事も街の揉め事も慣れているマルクスさんは、その意見の相違というのがどんなものなのかピンと来たようだった。
スノウグラスさんの肩にポンと手を置いて、ニヤリと笑った。
「それにしてもスノウグラスの支援魔法、すげえな。俺普段はあんな風に動けねえんだけど今日は俺超かっこよかったんじゃねえ?」
挑発するようなマルクスさんに、スノウグラスさんがすぐさま頷いた。
「すごかったです。俺の支援魔法なんかなくてもマルクスさんは強いですけど」
「自分の得意なことを、なんか、とか言うなよ。しかしマジであれは癖になりそうだな。あの動き、ついつい自分の実力と勘違いしそうになる。そしてついでにマックの回復薬も癖になりそうで怖いけどな」
だって味の追求をしましたから。そしてマルクスさんの意見には俺も同意する。ほんと、魔物の攻撃をかわすのがあんなに楽チンなんて、初めて。
スノウグラスさんは、マルクスさんの言葉に少しだけ嬉しそうに笑った。
「じゃあ急いで帰るか。日没までなんだろ」
「すいません」
「間に合うかどうかは運次第ってな」
三人で頷き合ってから、俺は鎧の人を振り返った。
「じゃあ二千ガルと剣」
そう言って手を差し出すと、鎧の人は思いっきり顔を顰めた。
「何で勝手にパーティーを抜けたんだよ! 支援魔導士でもちゃんと対等に接してやってただろ!」
「うわあ上から目線」
「おいこいつ何様だよ」
鎧の人の叫びに、俺とマルクスさんがすかさず突っ込む。
俺的に接してやってたとか言ってる時点でアウトなんだけど。
「確かに、報酬は対等だった。しかし貰うたびに舌打ちと「何で戦えねえ奴に同じように分けるんだよ」なんて文句を貰ってみろ。やめたくもなるだろ。採取物だって対等だとか言って持っていってただろうが。俺はせっかく始めたADOでつまらない思いをするのは嫌だから、もう搾取されるのはやめたんだ。と言いつつお前らの後で声を掛けられたパーティーも同じような奴らだったがな」
「お前が今日組んだ奴らはリーダーの頼みでお前と組んでやってたんだよ!」
つまり、同類の人たちが集まったってことか。スノウグラスさん、厄介な人たちに目を付けられてたんだなあ。最悪だあ。
目の前の鎧の人の話を聞いていて、マルクスさんもそう思ったらしい。隣にいたスノウグラスさんの肩に腕を置いた。
「スノウグラス、こいつらはあれか。お前の価値を全く分かってねえ奴らか」
「価値っていうか、そこまで価値があるとは思いませんけど、流石にここまで下の扱いも腹に据えかねたので抜けただけです」
「お前は正しい。もっと自分の存在価値を誇れよ。支援魔法、最高じゃねえか。普通は俺一人でなんてあの強さの魔物をこんなに簡単には倒せねえんだよ。それが、あれだけあっけなく倒せるってのは、間違いなくお前の力だろ」
「マルクスさん」
マルクスさんの言葉に、スノウグラスさんは戸惑ったような顔をしていた。
その顔に苦笑したマルクスさんは、ちらりと鎧の人に視線を向けた。
その視線を受けた鎧の人は、その視線に威圧されたように一度目を逸らし、今度はスノウグラスさんを見た。隣のマルクスさんは、あえて無視することに決めたようだった。
「スノウグラスはNPCに褒められて喜んでるのかよ」
嘲るようにそう嗤った鎧の人に、思わず目潰しを投げそうになった俺。
思いとどまったのは、マルクスさんの目が面白がっていたから。どうしてこういう状況でそんな顔を出来るんだろう。
「NPCは多分パーティー組んだプレイヤーを褒めるようにインプットされてるんだろ。そんなプログラムに喜んでどうするんだよ。これはゲームだし、そいつはNPCだろ」
「ふざけんな!」
思わず叫ぶと、鎧の人は今度は俺に視線を向けた。哀れむようなその視線が余計にカチンとくる。
インベントリから目潰しを取り出した瞬間、マルクスさんが「マック、落ち着け」と穏やかな声を掛けてくれる。
「お前もあれか、異邦人特有の「ゲーム」だの「NPC」だのと言って俺らを見下す奴らか。結構多いぜえ、異邦人には。言ったろ、マックみたいな方が珍しいってよ。ただ、異邦人がいることで周辺の魔物の数が減るし、ギルドが色々とまとめてくれてるから俺らも一応好意的に受け入れてはいるけどな」
スノウグラスさんの肩に腕を置いたまま、マルクスさんは鎧の人に話し始めた。
「俺らが「AI」とかいうので、インプットされた情報をもとにしか行動しねえ「NPC」だっていうのは聞き飽きたぜ。門番は門に立って「出かけるのか? 気を付けて行って来いよ」とかしか言わねえと思ってる奴らもいてよ、結構笑えるんだよ。異邦人は本気で俺らが生きてない物として見るからな。でもよ」
マルクスさんは一度言葉を止めると、さっきまで俺が向けられていたような憐みの表情を鎧の人に向けた。
「俺らに言わせりゃよ、お前らの方が「NPC」だ「AI」だと決まった文句しか言えねえ偽物に見えるんだよ。それこそ俺らを格下に見るようにインプットってのか? されて行動してるんじゃねえの、ってたまに思うぜ。行動に血が通ってねえっていうか、遊びで人を殺めて何とも思わねえ罪悪感のわかない人形みてえな感じな。ほんとにそれがお前らの本性だったとしたら、どこに行ってもまともに生きられねえと思うぜ。可哀そうによ。俺らはここで生きてるし、お前らに切られりゃ死ぬ。魔物に襲われてもな。喧嘩もするし、ちゃんとお前らと同じように物を考えてる。いいやつは気に入るし、いやな奴は嫌いだし、贔屓だってする。生きてるからな。お前らがどんな風に思ってようと、それが事実なんだよ。ここは無法地帯じゃねえし、何をしても咎められねえなんてこともねえ。少しは周りと接して考えろ。考える知恵はちょっとはあるんだろ? それもない様な人形じゃねえんだろ」
マルクスさんが口を閉じると、俺含めて誰も声を発することが出来なかった。
ちゃんと門番さんはそういうこともわかっていて、それでも俺たちにいつも挨拶してくれてたんだ。
でも確かにそうだよな。ここはゲームの世界じゃない、異世界って括りの場所で、ヴィデロさんの生まれた地で、そして、偽物の異物は俺達。何をしてもいいと思って行動しちゃう人はちゃんと消えてなくなる。それを弁えてこの世界を楽しもうって人は、ちゃんとここの人たちも自分たちと同じように接する。会話をすればすぐにわかるのに。生きてるって。きっとプレイヤーとしか交流しないんだろうなあ。
鎧の人はマルクスさんの言葉に絶句していた。
普通のAIのNPCはいくら何でもこんなセリフは出てこない、っていうのわかったのかな。
門番さんをしていて、俺達プレイヤーと接する機会も多いマルクスさんだからこそ出てくる言葉だ。
「エイシン、俺はもう、支援魔導士を使ってやるとか言う不愉快な奴らとは組む気はないし、支援もしない。フレンドも解除するから、もう二度と話しかけないでくれ」
スノウグラスさんは肩にマルクスさんの腕を置いたまま、静かにそう言って、宙で何かを操作した。多分さっきの人たちと、この人たちのフレンド解除をしてるんだと思う。
「パーティー申請を飛ばすな。迷惑だ」
「でも俺、お前を見つけたら連れて帰らないとリーダーに怒られるんだよ!」
「勝手に怒られていろ。迷惑だ」
鎧の人も宙に指を這わせる。すごく不機嫌そうな顔つきだった。もしかして何かやり合ってる?
ひたすらパーティー申請を飛ばし続けるとかいう迷惑行為してるのかな。
パーティーって、他の人と組んでると重複出来ないから申請自体飛ばせなくなるんだっけ。そういう事態に陥ったことがないからうろ覚えだけど。いつまでもこんな不毛なことをしてると時間が無くなるから、と俺は無言のままスノウグラスさんにフレンド申請を飛ばした。
それを見たスノウグラスさんが驚いたようにこっちを見る。
そして、すぐに申請を受理してくれる。よし、これでフレンドになった。
ってことで、すぐにパーティー申請を飛ばした。
「マック君……」
「よろしくお願いします」
ピコン、と通知が来る。
申請受理の通知だった。おお! パーティー欄にスノウグラスさんの名前が載った!
「はぁ?! 申請出来なくなった?! どうなってんだよ!」
よし、俺の記憶は正しかった。
ホッとしながら俺もスノウグラスさんの横に立った。
「たった今から俺とスノウグラスさんはパーティーだから、部外者は早くお金払ってとっとと消えてくれる? あ、素手じゃかわいそうだからその剣は売ってあげるよ。初期装備の剣だけど」
ほら、金をくれ、と手を差し出すと、マルクスさんが吹き出した。
「全部こみこみ二千ガルでいいからとっとと出せよ」
「払わねえと、踏み倒しってことで衛兵が来ちまうかもなあ?」
「捕まったら垢BANとか垢停止措置になるらしいよ。何なら運営に連絡しようか? マルクスさん、ここら辺、そろそろ衛兵が巡回する時間じゃない?」
「ああ、だな。そのまま突き出しちまうのも手だな」
俺たちの脅しに屈するように、鎧の人は地面にたたきつけるように二千ガルを出した。そして、お決まりの「次に会った時には覚えてろよ」という捨て台詞を残して、走り去っていってしまった。一緒の方向に帰ることになったら嫌だったから、自分から先に行ってくれてよかった。
そして、勢いでパーティー申請してしまったスノウグラスさんは。
「こんな内輪もめに巻き込んですまなかった。もうパーティー解除していいから」
「え、何でですか? せめてトレくらいまでは俺とパーティー組んでくださいよ」
すぐにパーティー解除されそうになったので、慌てて止める。
だって俺、助っ人みたいな感じでしかパーティー組んだことなかったんだもん。少しくらい堪能してもいいよね。
二人とも非戦闘要員だけど。
戸惑ったような顔で、スノウグラスさんはすぐにパーティー解除を取り消してくれた。
「じゃあ、帰りますか。ってもう、日没近いじゃん! 依頼間に合わない!」
傾く太陽を見ると、すでに山の間に姿を隠そうとしていた。
マルクスさんとスノウグラスさんは溜め息を吐いて、ほぼ諦めの表情をしていた。
でもこの距離なら三人でも行ける。
俺はインベントリからドイリーを取り出して腕にセットして、二人に手を差し出した。
「ちょっと二人とも掴まって。まだギリ間に合うかもだから!」
早く、と急かすと、マルクスさんが呆れたような表情を向けてきた。
「何言ってんだマック。これじゃ馬がいたとしても間に合わねえぜ」
「やってみないとわからないよ!」
「何をしようとしているんだ?」
訝しげに俺に視線を向けている二人の手を強引に握らせて、その上から手を重ねると、俺は宙に文字を描いた。
次の瞬間、俺達はトレの工房の前に跳んでいた。ここなら目立たないからね!
「ギルドまで走ろう!」
「え、は?!」
「ちょ、マックお前何しやがった?!」
「その説明はあとで!」
繋いだままの手を引っ張って、工房の囲いを出る。まだ戸惑いを隠せない二人を急かして、太陽の陽が山の間に吸い込まれるように消えていく中、三人でギルドまでダッシュした。
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手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。