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370、聖剣……ゲット
出来上がった『滅呪の稀輝石』とルミエールダガーをインベントリに詰め込んで、俺たちは早速レガロさんの店に行くことにした。
馬で行くか魔法陣で行くかちょっとだけ二人で悩んだけど、結局魔法陣で行くことにした俺たち。帰り、時間があれば馬か馬車で帰ろうってことになった。
それよりも早く俺の身を守る物を手に入れたいってヴィデロさんが急かすから。
『呪術屋』のドアをノックすると、中からレガロさんの「どうぞ」という声が聞こえてきたので、ドアを開けて店に入る。
レガロさんは今日も笑顔で俺たちを迎え入れてくれた。
「聖なる短剣と石を持ってきたので、聖剣を作ってください」
「流石マック君。行動が早いですね。こちらへ」
レガロさんは俺たちを奥に案内すると、テーブルの上にトレイを置いて、その上に綺麗なクッションを載せた。
「ここに出してもらってもよろしいですか?」
「はい」
短剣用に用意してくれたらしい。
俺はルミエールダガーフィオレを取り出すと、そのきれいなふわふわのクッションの上に置いた。その隣に、出来立てほやほやの『滅呪の稀輝石』も。
途端に、二つが同時に淡く光りだす。え、どういうこと。
「お互いが惹かれ合っているようですね。……さすがマック君、そして、ヴィデロ君」
「俺は、ただ手伝いをしただけなので、これはマックの力です」
ヴィデロさんは、自分の名前が出た瞬間、そう言って否定した。いやこれ絶対ヴィデロさんの力が合わさった結果だと思うよ。
「ヴィデロ君は自身の特性をあまり理解していないようですね。この際なので、ヴィデロ君の力の特性をお教えしましょうか」
光る短剣と石をそのままに、レガロさんはまっすぐヴィデロさんを見た。
ヴィデロさんは少しだけ眉を寄せながらも、「ぜひ、お願いします」と頭を下げた。
小さい頃は忌々しいと思っていたらしいヴィデロさんの特性。『幸運』って他の人は言ってたけど、本当は違うのかな。そういえばサラさんは『エッジラック』とか言ってたっけ。
俺も詳しく聞きたくて、居住まいを正した。
「ヴィデロ君の、『幸運』と呼ばれている、特性スキルは、正式には『エッジラック』と言います。『幸運』というスキルとは似て非なるものです。『幸運』というスキルは、そのスキルを持っている者に対して有利になる様に働くスキルなのですが、ヴィデロ君の持つスキルは、ヴィデロ君に有利になる様に動くことはまずありません。ですが、ヴィデロ君にとても左右されるというなかなかに難しいスキルなのです。例えば、ヴィデロ君が心から満たされている時、その時はヴィデロ君の周りの者に『幸運』が向かうのです。逆にヴィデロ君が誰かをとても強く憎んだ時、『エッジラック』が刃となって、相手を切り裂きます。それは外見ではなく、中身、立場、持ち物、その者の存在、そういった目に見えないところを攻撃するのです。この特性は、ヴィデロ君が何も感じない、何も思わない場合は全くその力を発揮しないのが特徴です」
エッジ、というのは、刃、縁ふちを意味するんだとレガロさんは言った。
周りにラックの影響を与える場合も、その『刃』が鋭すぎて、本人に痛みが還る場合もある、と。
「でも、ヴィデロ君はちゃんとマック君と二人で『縁』を手にしました。これはとても大きなことです。マック君はどこで手に入れたかおわかりですか?」
「エルフの里で、ヴィデロさんといた時に『縁』をゲットしました」
俺の答えに、レガロさんはそうですねと頷いた。
「それのおかげで、『エッジ』の『縁』という言葉が『縁』に変わったのですね。今のヴィデロ君は、鋭い刃は残したまま、前よりも格段に強力に周りと繋がり『幸運』を与える者となっているということです。なので、こういう物も作れてしまうのでしょう」
レガロさんは光り輝く『滅呪の稀輝石』を手に取った。途端に光が収まる二つに顔を綻ばせると、これは、と石をそっと短剣の横に戻した。
「お二人が惹かれ合い、想い合って手を取らないと作れない、世界に二つとないものです。片方が欠けても絶対に世に生みだされては来なかったでしょう。ヴィデロ君がとても満たされているようで、私はとても嬉しく思います」
ようやく納得した。そっか。ヴィデロさんのスキルはヴィデロさんが幸せにならないと発動しないんだ。そっか。
ってことは、今、ちゃんと幸せを感じてくれているからこそ、あんなすっごいのが出来るんだ。そっか。
すごくホッとして、同時に嬉しくて、思わず隣のヴィデロさんの服の袖をきゅっと掴むと、ヴィデロさんも同じような顔をして振り返ってくれた。
じゃあ、いつもヴィデロさんと一緒だと作れるすごいものはすべて、ヴィデロさんとの愛の結晶ってことか。
なんてちょっと恥ずかしいことを考えてしまう。
あ、そうだ、ここには心を読む人がいるんだったとちょっと照れながら顔をあげると、レガロさんは笑ったり吹いたりはせずに、静かに頷いていた。
「では、今度は聖剣の出来る様をお見せしましょう」
だんだんと光の強くなっていってる短剣と石を見下ろし、レガロさんが一言そう言った。
作るんじゃなくて、出来る?
首を傾げながら、目の前に置かれたトレイを見つめていると、レガロさんが短剣の上に手をかざした。
「この二つはとても相性がいいので、素晴らしい性能の物が出来上がりそうです」
「相性なんて物もあるんですか?」
「もちろん。同じ物質、同じ技術で作っても、作る方の気持ちはその時その時に違いますよね。それが、武器や防具にも反映されるのですよ。この短剣には、「愛する気持ち」と「清廉なる祈り」が込められており、こっちの石にもやはりたくさんの「愛する気持ち」が込められています。最高の相性だと思います」
「へえ……」
話をする間にも、レガロさんの手がゆっくりと円を描く。
これ、ジャル・ガーさんが見たら手と剣の間に何か見えるのかな。俺には見えないけど。
ルミエールダガーと滅呪の稀輝石はススス……とまるで磁石の様に近付いていった。
ドキドキしながらその光景を見ていると、レガロさんの手が何かを引くかのようにくいっと持ち上がる。
それと同時に、短剣と石が重なった。
パッと辺りに光が飛び散り、次の瞬間には、短剣と石が一つになっていた。
ルミエールダガーフィオレの花の模様の中心に、ホワイトゴールドの石がまるで最初からそこに装飾されたかのように填め込まれていた。
作られた時より少しだけ小さくなった石は、まるで短剣に合わせたかのようにぴったりな大きさになり、プリマヴェルナを模った赤い花弁の模様に包まれるようにして、柄に収まっている。
「うわあ……綺麗」
「すごいな……」
俺たちが感嘆の声をあげると、レガロさんが「出来上がりです」と短剣を俺に差し出した。
恐る恐る手に取ると、短剣がとてもしっくりと手に馴染んだ。
武器が手に馴染むなんて初めてのことだったので、ちょっとだけ驚く。
「これ……本当に俺が持っていていいのかな」
そう言いつつも、なんか手放せない。ユキヒラが言ってた言葉が、ようやく理解できた気がした。
「その短剣はあなたを選びましたから。どうぞお持ちください。その子はあなたと共に成長します。ぜひ育ててあげてください」
「はい」
「もう一つ。戦うことだけがその子を育てるわけじゃありません。その子は誰かを傷つける物ではないようですので」
「確かに、祭典用とかなってた、はず……」
鑑定眼を使ってみて、俺は思わず言葉を止めた。
『ルミエールダガールーチェ【0】:闇を吸収変換し、聖を吸収しおのれの力とする聖なる短剣。闇属性以外のものを傷つけると少しずつ力を失っていくので注意が必要。祭典儀式用であり、装備したものは特有の聖魔法『サークルレクイエム』が使えるようになる』
「ルミエールダガー、ルーチェ……っていうんだ」
「ルーチェとは、光を示す言葉です。光、希望、道を指し示す明かり」
レガロさんの言葉を聞きながら、胸が痛くなった。
俺、「ルーチェ」っていう言葉、聞いたことある。知ってる。
この間、エミリさんが神殿で呼んでた。「ルーチェ」って。あの人のことを。
セイジさんの名前が『ルーチェ』だった。
なんかそれだけで、この短剣がとても意味のある物に思える気がする。
俺は短剣を胸に抱いて顔を上げると、「頑張る」と言葉にならない言葉を吐息と共に吐き出した。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。