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400、宝箱の秘密
「お、今日初めての宝箱だ」
ワームの巣穴をすぎてさらに進むと、一つの行き止まりの小部屋に古い箱がちょこんと置かれていた。
南京錠がかけられていて、普通では開きそうもないその箱は、壁の色と同化していて、一瞬見ただけでは気付けなかった。
っていうか宝箱!
「これが開けられたとして、これだけ大人数だと取り合いになったりしない?」
俺はあんまりダンジョン系は入ったことがなかったから、よく見ようと近くを陣取って思ったことを呟くと、ヴィデロさんが頭をわしっと撫でた。
「こういう物はな、大体はそこにいる人数分のアイテムが入っているんだ。どうしてかはあまり解明されていないが、この箱自体が魔素から出来上がってる説が濃厚だな。何かしらの魔素を感知して、そこから中にアイテムが形成されるんじゃないかと、昔聞いたことがある」
「へえ……」
ヴィデロさんの説明に、皆が驚きの声を上げる。
皆何気なく中の物を貰っていってたけど、じゃあもしかしてこの箱の方が珍しい物だったりして。
「あ、俺も父さんからそんな感じのことを聞いたことある。シグルドさんと母さんと三人で各地を回ってた時にこういう箱を見つけて持ちかえったら、ふと気付くと中に何かが入ってて、父さん一人の時は一つ、母さんがいる時は二つ、シグルドさんもいる時は三つ出てきてたとかって。昔俺たちが住んでたところには確かにこういう箱があったよ。今は壊れちゃってなくなっちゃったけど」
ああ、やっぱり箱の方が重要なんだ……。
クラッシュの話を聞いて、皆がそれぞれ「おお……」と手を地面について落ち込んでいた。
「俺は今まで、金の成る箱をそのまま見逃していたのか……」
「っていうか宝箱は宝箱としか認識しなかったから、普通に中だけ出して満足してたわ俺。外回りのエルフの里への道に、一個あるんだわ。アレ、持ち帰ってもいいのかな」
「なんか、目から鱗っていうかなんて言うか……おもしれえこと聞いた。サンキュ、クラッシュ君」
「とりあえず開けようよ。罠解除できる人いる? 結構複雑な罠ついてるっぽいけど、俺はそういうの無理だから」
クラッシュは急かすように早く早くと周りを見回した。
俺が、と名乗り出たブレイブが、南京錠を手に「リリース」と呟く。
カチッと音がして、南京錠が外れた。
「ブレイブすごい!」
「ユーリナさん直伝の罠解除スキルだからな」
俺が拍手すると、ブレイブはそう言ってウインクした。
ゆっくりとブレイブが蓋を開ける。
皆で中を覗くと、中にはいろんなアイテムが入っていた。
「取り出すぞ」
次々とブレイブがアイテムを取り出していく。そして地面に並べられたアイテムの数、13個。本当に全員分あった。宝箱すごい。
「なあなあ、この箱、持ち帰っちゃだめか?」
雄太がじっと宝箱を見下ろす。
もしかして予約した長光さんの鎧代、足りないとか?
雄太の言葉に、皆が苦笑した。
「いいんじゃねえの。インベントリに入るんなら持ち帰り大丈夫ってことだから、試してみろよ」
「うっす! あざっす!」
長光さんの言葉に体育会系のお礼をした雄太が、早速空になった宝箱に手を伸ばした。
次の瞬間パッと箱が消える。
「うおおお! 入った! 持ち帰りオッケーってことか!」
一人飛びあがりそうな勢いで喜んでいる雄太を放置して、出てきたアイテムを分けることにした。
すごく色々あってなかなか壮観だった。
「まずは『黒雷蛇の皮』。これは装備に使える素材だな。ほらよ、ブレイブ君。次、『黄金ピエラ』食材か? ほい、マック君。次『解毒蠍の殻』これも装備に使えるやつだな。ハルポン君か」
長光さんが次々アイテムを鑑定して、何の用途に使うのかを説明していく。そして欲しい人に次々渡していく。
ヴィデロさんは『蒼炎の石』というアクセサリーに加工できる素材を、クラッシュは『激震虎の牙』というやっぱりアクセサリーに加工できる素材を貰っていた。
俺が貰った『黄金ピエラ』は、その名の通り金色のピエラの実だった。鑑定すると『ピエラの澄果実』よりはやや劣る、って感じらしい。極々稀にピエラの木になる珍しい果実らしく、なかなか手に入らないんだって。今度タルトにしてヴィデロさんに食べてもらおう。絶対美味しいよこれ。
ちなみに雄太は最後の残り物だった『噛付蟻の下顎』という物を手にして、「売るしかねえ」と呟いた瞬間クラッシュに「それなら5800ガルで買い取るよ」と声を掛けられていた。ギルドで売ると5000ガルの素材だと長光さんにこっそり教えて貰った。雄太の手には、宝箱本体と5800ガルが残ったのは言うまでもない。
その後も順調に進んだ俺たちは、とうとう最後の場所と思われるところに来ていた。
マップには赤い表示。感知を使った瞬間鳥肌が立ち、ヴィデロさんは腰の剣に常に手をかけている状態。
そこの隙間を潜るとボスがいる。
ボスエリア手前の所でスタミナ回復した俺たちは、HPMP を回復させてから、気合を入れた。
「一人一人入ってくしかない入り口だな。他に道もないし」
「取り敢えず、ムコウダと俺が入ってこの場所をガードするから、次々来てくれ」
ハルポンさんが提案する。
それにみんなで頷いて、入る順番を決めた。
「んじゃ、ボス戦行くか」
「おー!」
気合いを入れたあと、ハルポンさんとムコウダさんが岩の隙間に身を躍らせていった。
次! と岩の間から声が聞こえて、次々入っていく。
ふと後ろから赤い魔物を示すマークが迫っているのが見えた。
ヴィデロさんは既に剣を構えて今来た道に向いている。
クラッシュもそっちを警戒していて、ヴィルさんも剣を手にしていた。
「結構デカいのが来たな」
現れた魔物は、途中で出てきた魔物だった。全員で相手した時は瞬殺されていたけど、今は4人。他の人たちはボス戦の方に行ってしまった。
クラッシュが詠唱を始めて、すぐさま魔法を飛ばす。まるでユイの魔法のような威力だった。魔物が怯んでいる間にヴィデロさんが素早く魔物に近付き、剣を揮う。それに負けないスピードでヴィルさんも飛び出し、ヴィデロさんとは反対側を切りつける。魔物が逃げるように跳躍した瞬間、またもクラッシュの魔法が当たり、魔物が苦痛の声を上げた。
肩で息をしてダラダラ涎を垂らし始めた魔物は、一声鳴くと、次の瞬間俺に向かって飛んだ。
うわ来た! と刀を抜いて魔物に刀を構える。
魔物は軌道を変えずに、そのまま刀に飛び込んできた。切っ先から一気に柄まで魔物の中に刀が埋まる。
ちょっとした抵抗に踏ん張っていると、魔物が刀をすり抜けていった。
え、と思って通り抜けていった魔物を見ると、丁度刀が埋まった場所から半分に切れていた。
キラキラと魔物の身体が宙に舞って消えていく。
うわ、止めを俺が刺しちゃった。
「マックの剣、ほんとすごいねえ」
クラッシュが感心したように呟く。
ほんとにね。
俺が魔物に襲われたと思って焦った顔をしたヴィデロさんも、刀の切れ味を思い出したらしく、ホッとした顔をしていた。
鞘に刀をしまうと、ようやく俺たちは雄太たちに合流すべく岩の隙間を通った。
勿論俺たち4人は誰一人回復を必要としなかった。
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