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499、リザもキラキラ……?
しおりを挟む「魔物は魔大陸に発生する魔素から生まれて、聖獣は聖なる山から生まれるとか言ってたよ」
「どこソースだよその情報」
「あっちの大陸から渡ってきた獣人さんの情報だから確かだよ。聖獣の声が聞こえる人だしね」
怪訝そうな顔をした『リターンズ』の皆に教えると、三人とも苦笑して、「こりゃ本格的に獣人の村に行くしかなくなってきたな」と肩を竦めた。
「でもリザが好きそうな聖水茶ならいつでも作れるから。今から作る? 高橋、作れるような場所ある? ここでもできないことはないけど往来だから邪魔だよね」
「邪魔ってより見物人がわんさか出そうな方が問題ありだな。アレだ。ギルドの個室を借りりゃいいんじゃねえのか?」
「なるほど」
ということでぞろぞろと8人でギルドに移動した俺たち。リザは人懐っこくて、ユイと海里の腕の上にもちょろっとだけお邪魔していた。
ユイこういうのは大丈夫なんだね。もし虫系の聖獣とかいたら、その街が火の海になりそうだよ。
「リザ可愛い。いいなあ聖獣。どこかでテイムできないかな」
ユイが目をキラキラさせてそんなことを言い始めると、雄太がゆっくりと肩に手を置いて、「大丈夫」といい笑顔を浮かべていた。
何が大丈夫なんだよ。と思っていると。
「ここにレアキャラがいるだろ。俺らはそのレアキャラと行動を共にすることが多いよな。大丈夫。そのうち聖獣が俺らを気に入ったらすぐに会える条件はそろってる」
「誰がレアキャラだ」
とりあえず雄太の後頭部にスパンと突っ込んでおく。
条件ってなんだ条件って。
そしてなぜ誰も突っ込まない。解せぬ。
口を尖らせながら歩いていると、リザがちょろりと肩に乗ってきた。
そして小さな手でぺとっと頬を触る。
……可愛すぎか。
一瞬にして気分が浮上した俺だった。
『リターンズ』の名前で部屋を借りて落ち着くと、俺は空になったティーポットを受け取った。
その中に前と同じ茶葉を入れて、魔法陣で熱湯を注ぐ。『リターンズ』から「マジかよ……」と声が上がったけれど、構わず蓋をして、祈る。
「天より私たちを見守ってくださる方々よ、この世のすべての穢れを祓い、私たちに平穏をもたらしてくださることに感謝します……」
リザが美味しく飲めるように心を込めて祝詞を唱える。
すると、透明なティーポットから見えるお茶と共に、リザもなんかキラキラし始めた。
目でリザのことをガン見しながら口を動かす。
必死で祝詞を唱え終わった時には、リザが手のひらサイズから腕サイズに成長していた。
「え、何で?」
皆も一様に驚いている顔をしていた。
リザはそんな周りを気にすることなく、エリモさんの袖を手でぴとぴと叩いて聖水茶を所望している。
「あ……ああ。やるから待て。冷ますから。てか何でいきなり育ったんだ?」
疑問符をこっちに投げないでほしい。俺もわからないから。
聖水茶ランクSをフーフーしてもらったリザは、目を細めておいしそうに聖水茶を飲んでいた。可愛い。
ちょっとだけその部屋で神殿の話で盛り上がって解散した俺たちは、今度こそ騎士団詰所に向かった。
ちょっとだけ魔法使いさんが青くなって震えてたのは気のせい気のせい。スライム嫌いスライム怖いとブツブツ呟いてなんていないよね……でもあのスライムは本当に凶悪だったから。雄太も鎧ひとつダメにされちゃったしね。雄太の目も死んでたよははは。
『リターンズ』の皆は予定を変更して、これからオランさんの所に向かうと言っていた。リザが何を言っているのかすごく知りたいらしい。ほんとは壁向こうでガンガンレベルを上げるつもりだったらしいけど。大丈夫、獣人の村の周りも同じくらい強い魔物がガンガン出てくるから。
今度こそ詰所に着いた俺たちは、雄太案内の元、居住区の奥に向かった。
「遅くなったけど連れてきたっすよ」
本棚があり、ソファが多めに置かれているリビングのような広間に通されて、俺は思わず周りをきょろきょろしてしまった。
中には数人の人がいて、皆寛いでいた。
その中の一人が立ち上がって、俺の前に来る。
すごくデカい人だった。
もしかして乙さんよりもデカいかも。
雄太の頭一つ分デカいその人は、俺の前にひざまづくと胸に手を当てて頭を下げた。
え、何。何でこんなことされてるの。挙動不審になってると、雄太が、「あの腕をなくした人」とそっと教えてくれた。
「いつか、直接礼を言いたいと思っていました。あなたのおかげで、何不自由なく暮らし、戦える日々を取り戻しました。なんとお礼を言ったらいいのかわかりませんが、一生この御恩は忘れません」
片手を地面につけて、もう片手を胸に。
そっか。ちゃんと治ったんだ。よかった。
「気にしないでください。高橋のたっての願いだったんです。俺は親友の願いをかなえたかっただけで、お礼は高橋にするべきです」
「おいマック」
「なんだよ。本当のことだろ」
「俺はもうお礼はしてもらったからいいんだよ」
「そうなんだ。そうだよな。毎日一緒にいるんだもんな」
ってことはこんな最上級っぽい礼をしてもらわなくていいってことだよ。
もう気にせずに、と声を掛けると、目の前の騎士さんはフッと表情を綻ばせながら立ち上がった。
「高橋の言った通りだったようだ。やはり用意しておいてよかった」
騎士さんはそういうと、少しだけ待っていてくれ、と部屋の隅にあった大きな白い袋を抱えてきた。
「これは、腕が治ってから手に入れた魔物の素材です。大した礼にはならないと思いますが、せめてこれだけは受け取ってください」
ってか袋が大きすぎて騎士さんの顔が見えないよ。どれだけ大量に入ってるんだ。こんなの貰えないよ。
そう呟くと、雄太が「お礼を受け取ってもらえないのはかなりしんどいからせめてこれくらいは受け取ってやれよ」とわき腹を突いてきた。
そういう物? だって売ればひと財産になる辺境の魔物の素材だよ。
俺は騎士さんをじっと見つめた。とはいえ顔は全然見えないんだけど。
「これをあなたに受け取ってもらえたら、ようやく私の中で区切りがつくんです。そこからはまた自分のために、愛する人のために剣を揮うので、どうか受け取ってください」
真剣な声に、俺はうううと唸ってからその袋に手を伸ばした。そんなこと言われたら受け取らないわけにはいかないじゃんか。最初の言葉を受け取っておけばよかった。
「ありがとうございます。でも、無理はしないでください」
手足くらいなら治せるけど、身体を食いちぎられたりしたら絶対に治せないから。
念を押すと、騎士さんは真摯な顔つきで頷いた。
「あなたにもらった騎士人生、大事にします」
では、とまたも騎士の礼みたいなピシッとした礼をして、騎士さんは部屋から出て行った。
残ったのは、周りで寛いでいた騎士団の人の視線と、大きな袋。
「律儀な人だね。腕生えたーやったーでいいのに」
白い大きな袋を見下ろしながらそう言うと、部屋にいた全員が笑った。
またヴィデロさんの身体が空いたとき釣りに行こうなという約束をして、俺はトレに帰ってきた。冒険者ギルドまでの移動はあるけど、MPが減ることなく転移できるっていうのは思った以上にアドバンテージがでかいと思う。
いちいち回復しなくて済むのはかなりありがたい。転移部屋から通路を通って依頼を受けるフロアに出てくると、講習の一覧が貼ってある場所に人が集まっていた。
何か新しい講習でも出てきたのかな。そう思って俺も人だかりに割り込んでいく。
「このコースト村ってどうやって行くんだ?」
「それ、講習申し込むと地図が貰えて行けるようになるぞ」
「よし、申し込むか」
「俺も」
コースト村の釣り講習が大人気だったんだ。なるほど。今まで釣りなんて実装してないと思ってたんだ。俺も前はそんなもんかなと思っていたけど。
申し込みに行った人が抜けたので大分前に出られた俺は、上から一覧表をじっくりと見ていった。俺、まだ前にもらった講義無料チケット使ってないんだよな。
ゆっくりと視線を下げて行くと、一つの講義で目が留まった。
『アクセサリ製作講座』
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