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548、浄化するよ
「一応さっきの気持ち悪さは消えたけど、後ろを警戒しながら進む?」
「そうね。でも、なんかここ清々しくなっちゃったわね」
振り返りながらそう言った俺に、海里が肩を竦める。
確かに清々しくなった。あのおどろおどろしかった木も、葉が生い茂って柳みたいな風流な感じになったしね。あ、生っていた木の実はほぼすべて俺たちで採りつくした。だってもったいないじゃん。ここ、入る度にマップが変わるって言ってたし。だったら、もしかしたらもう一度入ったら、また朽ち果てちゃってるかもしれないし。リセットされたみたいになって。でもそれだったらいつでも浄化しに来るのに。そして大量の木の実ゲット。
そして木の実は5人で山分けした。最初雄太たちは「マックが浄化したんだからマックの物だろ」って言って遠慮してたんだけど、俺今日は愉快な仲間だしと押し切って全員で分けた。だって一つ知能+5だよ。6個食べたら+30だよ。ステータス値でそんだけ上がるのはかなり美味しいだろ。ユイなんかきっともっとすごい魔法を使えるようになるだろうし。もっとさらなる転移魔法陣を勉強して、飛翔を使わないでほしいくらいだよ。
お墓を掘り返すなんてことをせず、俺たちは先に進むことにした。
歩いても歩いても、前からしか魔物は出てこない。
「嘘……こんなに楽に進めるなんて奇跡だ……」
「マック……お前奇跡の男だな! よ、奇跡!」
ブレイブと雄太が俺に拍手を送ってくれるけど、俺今聖魔法ひたすら唱えてるところだからね。
目の前に魔物5匹くらいいるんだけど! 呑気だな!
「至高の神よ、その気高き神気で魔を打ち倒し給え、『聖球』!」
「そのHPの減り自体奇跡だよな」
「ほんとにな。今日のマックはいつもより輝いてるな!」
「至高の神よ、その気高き神気で魔を包み込み聖なる炎で焼き尽くし給え、『聖火炎』!」
「すっげー! 今の炎白かったぜ! 温度高いのかな」
「聖なる炎だからだろ。マックかっこいい!」
「今戦闘中だから! 気が抜けるようなこと言うなよ!」
見物人とサポート役が煩いので思わず怒鳴ると、それにすらやんややんやと喝采が返って来る。
海里はひたすら俺を見ていて、もしかしてこれ動画撮られてたりするのかな、と思わず視線を逸らしてみたり。だから撮影係か。
ユイは純粋に範囲魔法で魔物を一緒に攻撃してくれていて、まともなのはユイだけだ、と苦笑が浮かぶ。
「私、前に闇魔法覚えちゃったから聖魔法覚えられないんだよね。悔しいから魔物に八つ当たりすることにするね!」
「そう言う宣言を朗らかに言わないの……」
魔法を網羅したい、というユイは、ひそかに聖魔法に対抗していたらしい。
っていうか俺、まともに使えるの聖魔法だけなんだけど。しかもそれもこの短剣がないと無理だっていうおまけつき。どこに対抗する要素があるんだよ。
でも闇魔法を覚えた人って、『祈り』も覚えられないのかな。今度ニコロさんに聞いてみよう。でも『祈り』は魔法じゃなくてスキル枠だった気がするんだけど、どうなんだろう。
最初に闇魔法覚えたらそれだけで聖魔法への道は閉ざされるってことだよな。
聖魔法を覚えてても闇魔法は覚えられるのになあ。なんていうか、人間の性が如実に表れてるよ。堕落したらもう純粋には戻れないって言われてるみたいだ。
「至高の神よ、その気高き神気で魔を包み込み聖なる炎で焼き尽くし給え、『聖火炎』!」
目の前の5匹の魔物は、俺の聖火炎を受けてキラキラと消滅していった。
ここに入ってから二度目になるレベルアップ音を聞いて、確かにここは普通は難易度高いんだろうな、なんて馬鹿みたいに入る経験値を見ながら口もとをほころばせた。
そして、二度目の墓地。
さっきと同じような雰囲気の場所だったけれど、今度は木の種類と墓の種類が違った。
今回は十字架。朽ち果ててボロボロになっている。木で出来た十字架がほとんどだけど、中には鉄みたいなので出来た十字架もあったり、十字架の掘られた墓石があったりと西洋風だった。
木はまるで人型の影が伸びたように指の様な腕の様な枝を伸ばし、木の幹は真っ黒。そして葉は付いておらず、幹に開いている穴にはよくわからないドロドロの液体が入っていた。これ、触ったらアウトなやつっぽい。
俺は真ん中まで移動すると、さっきの範囲を思い出して、端まで入るか測った。でもよくわからなかった。
「マック、もう少し右に移動。そうそう、あと一歩後ろ。そこで唱えたら全部の墓が一応さっきの魔法の範囲に入るから」
ブレイブが的確な位置を教えてくれたので、それに従う。あ、そういえばブレイブって部屋全体の図を見れるんだったっけ。鷹の目みたいな感じで。すごい。ブレイブ初めてサポートしてくれたよ。
「じゃ唱えるよ」
MP回復をしてから宣言すると、皆から拍手が上がった。何で拍手。
「この世界を見守る最上の神よ。その気高き聖なる神気でこの禍なる気を包みこみ給え。『円状鎮魂歌サークルレクイエム』」
またしてもおどろおどろしい空気は、光に包まれると同時に消滅していく。
今回は一発でその場所全体の墓を浄化することが出来てほっとしていると、ブレイブが首を傾げた。
「さっきよりも範囲が広がってるけど、何でだ?」
「レベルが上がってMPも上がったから、そのせいだと思う」
だって結局残ったMPはさっきと変わりないし。MPが増えたにも拘わらず。ってことは、やっぱりこれ、MP依存の魔法なんだ。どれだけMPが低い人でも唱えられるやつ。でも低すぎると浄化範囲が極小っていう、そういう魔法だ。すごいなあ。MPがないから使えないってことがない魔法って便利だな。
浄化された墓地は、空気まで清浄になった気がする。
朽ちていたはずの木の十字架もなぜか綺麗な十字架になって、『~ここに眠る』とか書かれてるのが読めるようになるし。古代魔道語だけど。
中には、十字架にアクセサリーがぶら下がっているのとかもあった。
きっと誰かがこの下で眠っている人に向けて掛けた物だろうから手に取らないけど。
ユイはインベントリからなぜか花を取り出して、一つ一つのお墓の前に置いては手を合わせている。いい子。
でもなんでインベントリにそんなにたくさん花が入ってるんだよ、と突っ込みたい。
つられるように俺たちも手を合わせて、墓の横を通った。
そして目に入る木。
今回は綺麗な黄色い葉が生い茂っていた。
そして木の実はなく、液体の溜まっていた木の幹の洞には、黄金色の液体が溜まっていた。
何だろう、と鑑定眼で見てみると、『アヌラーレの蜜:別名器用さの蜜と呼ばれる蜜。朽ち果ててなお憤怒の念に晒され続けたアヌラーレの木を浄化することで溢れ出た蜜。器用さ+5、レア度4』となっていた。うわ、器用さが上がる!
俺は早速瓶を取り出して、調薬器具の一つの柄杓みたいな物で木の蜜を掬った。全て瓶に収めると、瓶は全部で15個出来た。これも皆で山分けする。
ちょっと指で掬って舐めてみたけど、ほんとにハチミツみたいな味がしていて、これはお菓子にしてヴィデロさんに食べさせよう、と俺は密かに心に決めたのだった。
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