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549、ユイって実は家庭的?
「やっぱり二つ目も後ろから追ってこないね」
「そりゃ、マックが根こそぎ綺麗にしたから」
ユイがチラチラ後ろを見ながら足を進める。
やっぱり魔物は前からしか出てこない。
前からは出て来るし、最初の魔物よりも大きいんだけど、大きいだけで相変わらず聖魔法は効果抜群だしホーリーハイポーションを飲んでおけば攻撃を受けても軽度のダメージにしかならない。それでもダメージを受けるのは、やっぱり魔物が強いかららしい。普段だったら数回手をブチ当てられただけでHP削られちゃうんだとか。聖短剣にビビってる間に魔法を三回くらい立て続けに唱えると、攻撃を受ける間にキラキラするんだけどね。
「それにしても、ここの魔物のドロップ品って使えるんだか使えないんだかよくわからないね」
さっきからインベントリに入ってくるのは『ホロギガゴーストの端切れ布』とか『ホロゴーストの影』とか。影って何に使うんだよ。
「ほんとにね。端切れ布ってパッチワークとか? それともこれで装備でも作れるのかな」
「作っても聖魔法一撃でやられる装備が出来上がりそう」
「でも聖魔法を使える魔物はいないと思うよ」
それぞれがドロップ品を取り出してまじまじと見る。
本当に15センチ四方ぐらいの端切れで、しかもボロボロ。模様も入ってるように見えるけど、汚れすぎててどんな模様なのかもわからない。
ユイが水魔法を出して布を洗っていたけど、汚れは落ちなかった。っていうかここで洗濯するとか、実はユイって家庭的なのかな。
「ねえねえ、ユイ。これ、聖水で洗ってみたら?」
楽しそうに海里がそんなことを言い始める。
ユイも「なるほど。やってみるね」と自分で入手してきたらしい聖水を取り出して、布にかけ始めた。
布は聖水につかると、ようやく黒い汚れが少しだけ落ちたみたいだった。
「模様が見えるようになったよ。でも綺麗にはならないね。やっぱりこれ、外れドロップ品なのかな」
聖水の瓶と布をインベントリにしまって、2人でがっかりした顔をする。
っていうか綺麗になったところでゴーストが落とした布を何に使うんだよ。使い道あるのかな。それこそ、身に付けるのが怖い気がするんだけど。
先に進んでいくと、道が二手に分かれていた。今までも分かれ道はあったんだけど、ブレイブのスキルと俺の感知でだいたい迷わずここまでこれたんだ。
でも、今回は感知を使うと、どっちにもかなり大きな力の元があって、ブレイブもどっちの道も先を塞がれてると眉を顰めた。
海里は「どっちも100メートルくらい先に何かじっとしているわね」と距離を測り、俺たちはそこまで近いのかと驚いた。
でも塞がれてるってどういうことだろ。デカい魔物がぎゅうぎゅう詰めになってるとか、岩でふさがってるとかかな。
「どっちに行く?」
雄太が俺に振る。
皆が俺に視線を向ける。
「俺が決めてどうするんだよリーダー」
「今回リーダー役立たずだから肩身が狭いんだよ」
胸を張ってリーダーがそんなことを言う。
そして、「どっちに行ったところで俺は役立たずだって決まってるから、ここは役立ちすぎのマック隊員に進路を決めてもらおうと思う」と俺をビシッと指さした。
何だよその役立ちすぎって。言い方おかしい。
「じゃあ……右」
どっちをとっても強い魔物がいるのはわかっているので、適当に答えると、雄太たちが真顔で頷いて、本当に右の道に進んでいった。素直過ぎだよ。
俺も遅れないように足早に雄太の隣に立って先頭を歩く。
雄太は自分のことを役立たずだって言う割には、先頭を歩いている。そして、魔物の手が伸びてくると、サッと俺たちの前に立つ。盾役ってことで十分役立ってるリーダーだと思うんだけど。
狭くなった通路を進んでいくと、地図に赤い点が見えて来た。魔物がいるってことだ。
そして、暗い視界の中で何かもぞっと動いた気がした。
目の前には、真っ黒な壁。に見える、魔物。
これは有名妖怪かな。でも目も口も付いてないけど。
通路を完全にふさぐような形で、真っ黒で硬そうな魔物が立ちふさがっている。これ、マップに赤いマークがついてないとただ壁があるなってしか思わないよきっと。
「どうするの? これ」
「攻撃してこないわね」
「俺が剣で突いてみるか?」
「その途端潰されたらどうするんだよリーダー」
一応それが倒れてきても巻き込まれない程度には離れて、俺たちは動かない魔物をじっと見つめた。
赤いマークは敵対の印。ここを無理に通ろうとすると、何かされるのはわかる。
「じゃあとりあえず、攻撃しようか」
俺はそう言うと、聖短剣を構えて、詠唱をした。
通路が狭いから、聖火炎は使えない。だから、聖球をひたすら連打する。早口言葉スキルとかそのうち派生しそうだよ。
立て続けにボムが被弾すると、フッと壁の上にHPが現れた。現れた時点ですでに緑のバーが半分くらい減ってる。この壁も聖魔法は弱点なんだ。
続けざまに聖球を飛ばしていると、いきなり壁からすごい勢いで何かが飛んできた。咄嗟に雄太が大剣を使ってそれを打ち返す。
「うわあ……今の一撃で耐久値20落ちた」
そう言いつつも、飛んでくるものを剣で打ち返し続ける。
俺も負けずに聖魔法で対抗し、向こうのHPが削れるのが先か雄太の剣が壊れるのが先かという勝負になった。
「あ、マック、あれないのか、アレ」
「あれって?」
MPを回復するために手を止めた俺に、ブレイブが思い出したように声をかけた。
「ほら、あの起爆剤」
「あ、あるよ」
「あれなら範囲魔法になるからここでも使えるだろ。あるだけ寄越せよ。正確にブチ当ててやるから」
なるほど、と俺は嬉々として起爆剤をブレイブに渡した。
「タイミングはわかってるから、適当に詠唱しろよ」
何とも頼もしいことを言ってくれたので、その言葉を信じて俺は早速またも聖魔法を飛ばした。
俺の聖球と共に起爆剤も魔物の壁に届き、魔物の壁がデカい版聖球みたいな物に包み込まれる。そしてその球の中で何かがビシビシと音を立てている。辛うじて見えるHPバーは少しずつ減っていき、光が消えた時には、すでにHPバーは赤になる寸前だった。起爆剤聖攻撃『聖光曝射』だっけ。効きよすぎだろ。
もう一度同じことをすると、とうとう魔物のHPバーが赤くなった。ってことは、パワーアップするってことかな。
光が消えるのをゆっくりと詠唱しながら待っていると、光が消えた瞬間壁が崩れた。
と思ったら、本物の洞窟の壁にくっついていた魔物が剥がれて、形を変え始めた。
ゴーレム風魔物に変形した壁は、いきなりすごいスピードで俺の方に迫ってきた。避ける間もなく迫ってくる魔物に用意していた魔法を打つも、体当たりを食らって後ろに吹き飛ばされる。今まで動かなかった分、いきなり動き出した魔物のスピードに誰一人ついていけなかったのは、多分油断だったと思う。
聖球がぶち当たった分魔物の勢いも削がれていたからか、HPが一気に持っていかれることはなかった。でも実体があるよこの魔物。
いたた……と立ち上がってHP回復するころには、すでに『高橋と愉快な仲間たち』が魔物に反撃しているところだった。
雄太なんか、今まで攻撃できなかった分の鬱憤を晴らすかのように思いっきり大剣を振り回している。もっと狭い通路だったらここでも活躍できなかったんだろうなと思うと、良かったねというしかない。だって顔が。思いっきり楽しそうにというか邪悪そうに笑ってるんだもん。あの顔を見てユイドン引きしないかな。
俺の前にはブレイブが立ち、俺がHP回復すると、弓を引きながら「大丈夫か?」とこっちに視線を向けた。
「もう大丈夫。それにしても驚いた」
「俺もだ。でも、リーダーはすっげえ嬉しそうだぜ。今まで戦えなかったからな」
「生き生きしてるね。これは魔法を打って邪魔しない方がいいかな」
「ちょっと休んでろよ。こいつだけは物理も効くから」
そう言いつつもブレイブもちょっと楽しそうに弓を引いている。皆、結局は戦うの好きなんだよな。皆の顔を見ていてそう思う。撮影班と言っていた海里ですら、壁を蹴って魔法を駆使して空中戦を挑んでいるくらいだ。
本気になった『高橋と愉快な仲間たち』の手に掛かった魔物は、すぐにHPを削られて光になっていった。ここの魔物も物理無効だったらもう少し長持ちしたのに。それに、今の魔物はもしかしたらリザにとっては『ゴハン』に当たるかもしれないよね。持ちかえれないのが残念だ。
「そりゃ、マックが根こそぎ綺麗にしたから」
ユイがチラチラ後ろを見ながら足を進める。
やっぱり魔物は前からしか出てこない。
前からは出て来るし、最初の魔物よりも大きいんだけど、大きいだけで相変わらず聖魔法は効果抜群だしホーリーハイポーションを飲んでおけば攻撃を受けても軽度のダメージにしかならない。それでもダメージを受けるのは、やっぱり魔物が強いかららしい。普段だったら数回手をブチ当てられただけでHP削られちゃうんだとか。聖短剣にビビってる間に魔法を三回くらい立て続けに唱えると、攻撃を受ける間にキラキラするんだけどね。
「それにしても、ここの魔物のドロップ品って使えるんだか使えないんだかよくわからないね」
さっきからインベントリに入ってくるのは『ホロギガゴーストの端切れ布』とか『ホロゴーストの影』とか。影って何に使うんだよ。
「ほんとにね。端切れ布ってパッチワークとか? それともこれで装備でも作れるのかな」
「作っても聖魔法一撃でやられる装備が出来上がりそう」
「でも聖魔法を使える魔物はいないと思うよ」
それぞれがドロップ品を取り出してまじまじと見る。
本当に15センチ四方ぐらいの端切れで、しかもボロボロ。模様も入ってるように見えるけど、汚れすぎててどんな模様なのかもわからない。
ユイが水魔法を出して布を洗っていたけど、汚れは落ちなかった。っていうかここで洗濯するとか、実はユイって家庭的なのかな。
「ねえねえ、ユイ。これ、聖水で洗ってみたら?」
楽しそうに海里がそんなことを言い始める。
ユイも「なるほど。やってみるね」と自分で入手してきたらしい聖水を取り出して、布にかけ始めた。
布は聖水につかると、ようやく黒い汚れが少しだけ落ちたみたいだった。
「模様が見えるようになったよ。でも綺麗にはならないね。やっぱりこれ、外れドロップ品なのかな」
聖水の瓶と布をインベントリにしまって、2人でがっかりした顔をする。
っていうか綺麗になったところでゴーストが落とした布を何に使うんだよ。使い道あるのかな。それこそ、身に付けるのが怖い気がするんだけど。
先に進んでいくと、道が二手に分かれていた。今までも分かれ道はあったんだけど、ブレイブのスキルと俺の感知でだいたい迷わずここまでこれたんだ。
でも、今回は感知を使うと、どっちにもかなり大きな力の元があって、ブレイブもどっちの道も先を塞がれてると眉を顰めた。
海里は「どっちも100メートルくらい先に何かじっとしているわね」と距離を測り、俺たちはそこまで近いのかと驚いた。
でも塞がれてるってどういうことだろ。デカい魔物がぎゅうぎゅう詰めになってるとか、岩でふさがってるとかかな。
「どっちに行く?」
雄太が俺に振る。
皆が俺に視線を向ける。
「俺が決めてどうするんだよリーダー」
「今回リーダー役立たずだから肩身が狭いんだよ」
胸を張ってリーダーがそんなことを言う。
そして、「どっちに行ったところで俺は役立たずだって決まってるから、ここは役立ちすぎのマック隊員に進路を決めてもらおうと思う」と俺をビシッと指さした。
何だよその役立ちすぎって。言い方おかしい。
「じゃあ……右」
どっちをとっても強い魔物がいるのはわかっているので、適当に答えると、雄太たちが真顔で頷いて、本当に右の道に進んでいった。素直過ぎだよ。
俺も遅れないように足早に雄太の隣に立って先頭を歩く。
雄太は自分のことを役立たずだって言う割には、先頭を歩いている。そして、魔物の手が伸びてくると、サッと俺たちの前に立つ。盾役ってことで十分役立ってるリーダーだと思うんだけど。
狭くなった通路を進んでいくと、地図に赤い点が見えて来た。魔物がいるってことだ。
そして、暗い視界の中で何かもぞっと動いた気がした。
目の前には、真っ黒な壁。に見える、魔物。
これは有名妖怪かな。でも目も口も付いてないけど。
通路を完全にふさぐような形で、真っ黒で硬そうな魔物が立ちふさがっている。これ、マップに赤いマークがついてないとただ壁があるなってしか思わないよきっと。
「どうするの? これ」
「攻撃してこないわね」
「俺が剣で突いてみるか?」
「その途端潰されたらどうするんだよリーダー」
一応それが倒れてきても巻き込まれない程度には離れて、俺たちは動かない魔物をじっと見つめた。
赤いマークは敵対の印。ここを無理に通ろうとすると、何かされるのはわかる。
「じゃあとりあえず、攻撃しようか」
俺はそう言うと、聖短剣を構えて、詠唱をした。
通路が狭いから、聖火炎は使えない。だから、聖球をひたすら連打する。早口言葉スキルとかそのうち派生しそうだよ。
立て続けにボムが被弾すると、フッと壁の上にHPが現れた。現れた時点ですでに緑のバーが半分くらい減ってる。この壁も聖魔法は弱点なんだ。
続けざまに聖球を飛ばしていると、いきなり壁からすごい勢いで何かが飛んできた。咄嗟に雄太が大剣を使ってそれを打ち返す。
「うわあ……今の一撃で耐久値20落ちた」
そう言いつつも、飛んでくるものを剣で打ち返し続ける。
俺も負けずに聖魔法で対抗し、向こうのHPが削れるのが先か雄太の剣が壊れるのが先かという勝負になった。
「あ、マック、あれないのか、アレ」
「あれって?」
MPを回復するために手を止めた俺に、ブレイブが思い出したように声をかけた。
「ほら、あの起爆剤」
「あ、あるよ」
「あれなら範囲魔法になるからここでも使えるだろ。あるだけ寄越せよ。正確にブチ当ててやるから」
なるほど、と俺は嬉々として起爆剤をブレイブに渡した。
「タイミングはわかってるから、適当に詠唱しろよ」
何とも頼もしいことを言ってくれたので、その言葉を信じて俺は早速またも聖魔法を飛ばした。
俺の聖球と共に起爆剤も魔物の壁に届き、魔物の壁がデカい版聖球みたいな物に包み込まれる。そしてその球の中で何かがビシビシと音を立てている。辛うじて見えるHPバーは少しずつ減っていき、光が消えた時には、すでにHPバーは赤になる寸前だった。起爆剤聖攻撃『聖光曝射』だっけ。効きよすぎだろ。
もう一度同じことをすると、とうとう魔物のHPバーが赤くなった。ってことは、パワーアップするってことかな。
光が消えるのをゆっくりと詠唱しながら待っていると、光が消えた瞬間壁が崩れた。
と思ったら、本物の洞窟の壁にくっついていた魔物が剥がれて、形を変え始めた。
ゴーレム風魔物に変形した壁は、いきなりすごいスピードで俺の方に迫ってきた。避ける間もなく迫ってくる魔物に用意していた魔法を打つも、体当たりを食らって後ろに吹き飛ばされる。今まで動かなかった分、いきなり動き出した魔物のスピードに誰一人ついていけなかったのは、多分油断だったと思う。
聖球がぶち当たった分魔物の勢いも削がれていたからか、HPが一気に持っていかれることはなかった。でも実体があるよこの魔物。
いたた……と立ち上がってHP回復するころには、すでに『高橋と愉快な仲間たち』が魔物に反撃しているところだった。
雄太なんか、今まで攻撃できなかった分の鬱憤を晴らすかのように思いっきり大剣を振り回している。もっと狭い通路だったらここでも活躍できなかったんだろうなと思うと、良かったねというしかない。だって顔が。思いっきり楽しそうにというか邪悪そうに笑ってるんだもん。あの顔を見てユイドン引きしないかな。
俺の前にはブレイブが立ち、俺がHP回復すると、弓を引きながら「大丈夫か?」とこっちに視線を向けた。
「もう大丈夫。それにしても驚いた」
「俺もだ。でも、リーダーはすっげえ嬉しそうだぜ。今まで戦えなかったからな」
「生き生きしてるね。これは魔法を打って邪魔しない方がいいかな」
「ちょっと休んでろよ。こいつだけは物理も効くから」
そう言いつつもブレイブもちょっと楽しそうに弓を引いている。皆、結局は戦うの好きなんだよな。皆の顔を見ていてそう思う。撮影班と言っていた海里ですら、壁を蹴って魔法を駆使して空中戦を挑んでいるくらいだ。
本気になった『高橋と愉快な仲間たち』の手に掛かった魔物は、すぐにHPを削られて光になっていった。ここの魔物も物理無効だったらもう少し長持ちしたのに。それに、今の魔物はもしかしたらリザにとっては『ゴハン』に当たるかもしれないよね。持ちかえれないのが残念だ。
感想 555
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。