これは報われない恋だ。

朝陽天満

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560、掲示板に書き込んでみた

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 只今俺は、自分の掲示板をひたすら凝視している。

 場所は辺境の冒険者ギルド併設食堂。

 飲み物片手に3人に囲まれていた。

 既にブレイブと海里は手分けしていくつかの掲示板に端切れ布のことを書き込んでいる。手慣れた風なのが凄い。きっと今までも普通に書き込んできたんだろうなと思わせる。

 俺、すっごく綺麗に出来たタルトのスクショを食べ物系掲示板に言葉もなく貼り付けた事しかないんだよな。だってその掲示板、皆おいしそうな物を見つけたら場所を書き込んでスクショを貼るだけだったから、垣根が低くて。



「俺が書かないとだめ? だってさ、自分の掲示板とか……」

「私たちもあるわよ。大体の名が知れてるプレイヤーは、一つくらい掲示板あるわよ。諦めなさい」

「しがないトレの薬師なのに……」

「ほらほら、泣き言言わない。書き込んで」

「ううう……」



 読んでみると、ふらっと海里らしい人も書き込みをしている。しかもバレている。でもって、エリモさんもしっかりと『薬師マック掲示板』に書き込んでいる。

 っていうかエリモさん、俺とリザのスクショバンバンアップしてる。あとでこれ一枚貰おう。リザ可愛い。っていうか何してるんだよ二人とも。

 途中で貼ってあった動画は、撮影係がアップした物らしく、俺が聖魔法を唱えてゴーストを消し去っている所が見れる。やめて、恥ずかしい。

 これ、海里が上げればいいんじゃないかな。

 ジト目で海里を見ると、それに気付いた海里は可愛らしい笑顔を見せた。



「そんな目をしてもだめよ。マックが書き込んだ方がきっとこの掲示板に書き込んでる人たち嬉しいじゃない。物もたくさん集まるわよ。ほらほら、ここの名物スタミナシチュー奢るから」



 だってなんて書き込んだらいいのかわからないんだよ。

 と口を尖らせていると、海里が呆れた顔をしながら、「墓地ダンジョンでドロップした『ホロゴーストの端切れ布持っていたらください』って書けばいいだけよ」と溜め息を吐いた。

 掲示板とか、書き込んだことない人からしたらかなりハードルが高いんだよ。





 ほらほら、と海里に急かされている間に、雄太がギルドからこっちに戻ってきた。

 雄太はギルドに収集依頼をかけに行ってたんだ。



「手続き終わったぞ。品物はトレの冒険者ギルド経由でマックに集まるようにしてきたから。ところで書けたのか?」

「まだよ。マックったら恥ずかしがっちゃって」



 肩を竦める海里をじろりと睨むと、雄太に頭上から見下ろされた。



「早くしろよ。情報は大事だぞ。こういう収集物は手広く間口を広げた方が集まりがいいんだからな」



 もっともな意見に、俺は諦めて宙に指を這わせた。

 初文字書き込みである。



『突然すいません。今集めている物があるんですけど。『ホロゴーストの端切れ布』『ホロギガゴーストの端切れ布』があったら、ギルド経由で俺にくれないでしょうか』



 何とかそんな文章を書いて掲示板に参戦すると、すぐに誰かがコメントした。



『そういう収集系はそういう掲示板があるから』



 丁寧にURLまで貼ってくれる。親切だな、と思いつつ、そういえば名乗ってなかったことに気付いた。

 あと、報酬も何も考えてなかった。



「そういえば高橋。ギルドに依頼した時、報酬をどうした?」

「マック作ハイポーションランクSにしといた。流石にどこにも売れないアイテムがもっとすげえ回復薬になるってのはアレだし。ハイポーション一本でも過剰かなって思わなくもないけどな」



 雄太の言葉に驚いていると、周りがうんうん頷いていた。そ、そんな程度でいいの?

 同じ報酬を書き込まないとな、ともう一度画面に目を向けると、俺は必死で指を動かした。



『ありがとうございます。そっちは多分フレンドが書き込んでるので、ここでもと思って。布一枚に付き、俺作ハイポーションランクS一本報酬として渡したいと思ってるので、よければ協力お願いします。あ、俺、マックと言います』



 名前を入れて、特大の息を吐いてから、画面を閉じる。

 これで集まるといいな。どうせなら地図を全部埋めたい。



「今度俺たちで、もう一度あのダンジョンに入ってみて、前と違ってるか見てくるからさ。まだ布がドロップする様だったらマックに渡すよ」

「あ、うん。ありがとう。俺は一緒に行った方がいい?」

「そうだな。まだゴースト系魔物ばっかりだったら助っ人頼む。違ったら報告するよ」



 ブレイブが、な、と雄太に同意を求めると、雄太が頷く。

 男、って言っていいのか。男二人の連携に感心していると、「あのさ」と横から声が掛けられた。



「ごめん、薬師マックだろ。俺、『ホロゴーストの端切れ布』持ってるから、今渡してもいいか?」



 早速声を掛けられて顔を上げると、鎧を着た人が横に立っていた。

 手には汚い布の束。



「20枚くらいだけど」

「ありがとうございます」



 差し出されて、反射的に受け取っていると、海里が自分のカバンから、その分のハイポーションの瓶を取り出していた。



「枚数数えていい? マック、ほら。数えて」



 海里に急かされて慌てて数えると、全部で21枚だった。それを見ていた海里が、自分で出したハイポーションを布をくれたプレイヤーに渡していた。



「え、何で海里が報酬出すの?」

「だって言い出しっぺは私達だもの。言い出したのにマックに報酬を払わせるとかありえなくない?」

「俺が布を集めてるのに?」

「それはたまたま、この布を綺麗に洗濯できるのがマックだけだったってだけでしょ。マックだって自分で言い出したら自分で報酬払うじゃない」

「そうだけどさ。俺が払うよ。俺だって地図完成させたいもん」



 インベントリを操作して今渡した分のハイポーションを海里の目の前に積み上げると、海里は「じゃあこうしましょ」と積み上がったハイポーションの間から俺を見た。



「されるがままじゃ私の気が済まないから、またその聖剣のレベル上げ付き合うわ。こっちの都合の許す限りいつでも。それでどう?」

「それは嬉しいけどいいの? 負担じゃない?」

「マック君とパーティー組むと高橋と海里が楽しそうだから私はいつでもいいよ」

「俺もいつでも。何せいつも何かしら面白いことやらかしてくれるからな」

「俺は追加で最終テストの勉強を教えてやってもいい」



 最後雄太が真顔でそんなことを言うので、ヴィルさんに教わっている俺は丁寧に固辞した。









 その後、俺が海里に『スタミナシチュー』を奢ってもらって、しっかりと食べてトレに帰るまでに、布は50枚くらい集まった。皆ほんとにあんな壁向こうのダンジョンに行ってるんだ。すごいな。

 ちなみに、『ホロゴーストの影』もどこでも買い取ってもらえないから一緒にやるよ、という人まで出てきたので、ありがたく受け取った。お礼にマジックハイポーションを付けたら、喜んでくれた。

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