文字の大きさ
大
中
小
462 / 706
連載
583、守護樹の役目
マップを開きながら、魔物がいる場所に向かう。
魔物の樹はところどころに生えていて、それを皆が剣で倒していく。
俺とヨシューさんは浄化。
時間ギリギリまで『リターンズ』と共に行動して、ようやく10%になった。なかなか進まない。
俺がログインできないときも、工房を拠点としてヒイロさんヨシューさんとヴィデロさんは少しずつ魔物を駆逐しているらしい。
ケインさんは一日一回家に帰るんだって。ユイルに顔を忘れられるのが嫌だからって。そんな一日二日で忘れないって。
俺はバイトをしつつ、夜はログインして皆にご飯を食べさせる係。
どうも夜の方が力が強くなって、かなり危ないらしいから、日中に行動する方がいいらしい。どこから根っこが攻撃してくるかわからないんだそうだ。
そして週末。
来週からは自由登校だから、実質週に一度くらい学校に顔を出せばいいらしいから、その分はバイトとADOに明け暮れようと思う。
朝からログインした俺は、目の前にあった垂涎の筋肉にドキッとしながら、そっと身を起こした。
それと同時にヴィデロさんの目が開く。
「……もう、朝か……?」
「うんでももっと寝てていいよ。朝ご飯を作ってくる」
何せヒイロさんとヨシューさんは獣人の村に帰らずに隣に泊まってるから。
ヴィルさんに交渉して、こっちの国にいる時はヴィデロさんの部屋を貸し出してるらしい。二人で仲良くあの広いベッドに寝るのかな。ちょっと覗き見てみたい気がする。絶対に癒される。
起き上がろうとした俺の腰にヴィデロさんの腕が回る。
ぐい、と抱き寄せられて、俺はヴィデロさんの胸筋にダイブした。
「おはようのキス……」
半分目を閉じながらそんなことを要求してくるヴィデロさん滅茶苦茶可愛い。好き。
俺は自らヴィデロさんの形のいい唇にキスをした。
朝ご飯を用意していると、ヨシューさんとヒイロさんが隣の建物への連絡通路から現れた。
「飯はー?」
「腹減ったー」
開口一番発した言葉に、リザの『オイシイノ』を思い出した俺は、苦笑しながら朝ご飯をテーブルに載せた。
ヴィデロさんもすっかり目を覚ましてテーブルについている。
4人で朝ご飯を食べた俺たちは、早速行動を開始した。
エミリさんに頼まれてるのは、その日の進み具合を照らし合わせたいから、一日終わりにはギルドに報告すること、それのみ。
あとは好きにやっていいらしい。
タタンさんガレンさんケインさんとは後ほど合流予定だそうなので、工房から直接昨日魔物を駆逐した場所に跳ぶと、既に『リターンズ』が魔物駆逐を開始していた。
そして、見慣れない熊も。
白い大きな熊が、プレイヤーと一緒になって戦っていた。
も、もしかして、あれが三匹目の聖獣か……? アバターチェンジしたアリッサさん並にデカい。
「ようマック。先にやらせてもらってたぜ。そっちが、前に言ってた『トランス』。前衛の閃光と魔導士のユーカリ、そして鍛冶師の鉄骨だ」
「よろしくお願いします」
「噂は耳にしてる。よろしくな。俺は鉄骨。得物はハンマーだ」
「ユーカリです。よろしくね。アバターは女の子だけど、ネカマよ」
「ユーカリ、自己紹介で毎回それいうのはどうかと思うぞ。ほら、薬師殿がドン引きしてるから。俺は閃光。エリモとはテイマー仲間だ」
『ディーという。主をよろしく頼む』
白い熊さん、ディーも、大きな身体を丸めるように、頭をぺこりと下げた。わ、可愛い。
思わず顔を緩ませながら、俺も自己紹介をした。
「俺は薬師のマックです」
「よろしく」
「俺はマックの師匠その一だ」
「あ、ヒイロてめえ、何一番になってるんだよ。俺がマックの師匠だ!」
「お前は三番目だろ。ほら、ニコロだってマックの師匠じゃねえか。あ、順番的に言ったら、ニコロが一番目の師匠か? 何にせよ、お前は三番だ」
「畜生ヒイロ! お前生意気だぞ」
「大丈夫、お前よりはましだ」
「師匠たち!」
よりによって初対面の人たちの前で喧嘩を始めてしまった師匠ズを止めるため二人の間に割って入った俺は、じっと皆に見られてることに気付いて、居たたまれなくなった。
皆、生暖かい目でこっちを見ている。
「なんか、噂以上に濃いキャラだな……」
鉄骨さんの呟きに、がっくりしたのだった。
とりあえず固まることなく、ばらけて魔物を倒していこうと、その場で解散する。
マップを見ると、中央の山脈に向かって魔物が点在してるので、それを順に潰して行くことにする。それにしても範囲広いなあ。
ヒイロさんもどこからか手に入れてきたこの国の地図を開いて、何かを書き込んだ。
「マックが言うには、こことウノって街がやべえんだろ。この流れで行くと、聖域付近をぐるっと、川を跨いでこっちの街に行くのかもな」
そう言って、トレから中央山脈に沿う様にくの字にウノに向かう様に斜線を引いた。
「もしほんとにこんな風に魔物が来てるんなら、ちょいとエルフの里の守護樹は頑張ってもらわねえとやべえな。聖域が狙われてるっぽいかもしれねえ」
「聖域?」
俺が首を傾げると、ヒイロさんは大きな山をまるっと指で囲んで、ここ、と教えてくれた。
この山は聖なる魔素が充満していて、魔物が入っていけないほどきれいなんだそうだ。それにつられるようにして、山裾には強い魔物が出て来るとか。聖域からはみ出しても、魔素は山に近いほど濃いからって。だからこそ境界線の向こうは強い魔物が出るんだね。初めて知った。
そして、その山から生まれたものが、聖獣なんだとか。
ヒイロさんは遠ざかる白い熊を見ながら、「すっげえ綺麗だなあ」と嘆息していた。
もちろん俺たちには聖なる魔素も穢れた魔素も関係なく、見分けたり嗅ぎ分けたりすることもできないわけで。
ヒイロさんたちが聖獣をすっげえ深呼吸したくなるような匂い、とか言ってるのも意味が解らなかった。あれかな、猫のお腹に顔をポスッとして匂いを嗅ぐと至福、とか言ってた同級生と同じような気持なのかな。やってみたい。
「聖域付近にこの魔物がいると、守護樹が頑張らないといけないって、どういうことですか?」
「あそこの樹はまだ樹齢がかなり若いんだよ。だから、本来なら、この国全体の守護をするにはまだ未熟なんだ。でも、他の守護樹は枯れちまった。他の大陸にあったからな。ここら一帯を守ってた守護樹は確か海を挟んだ向こう側にあったってのは聞いてきたから、もう枯れちまってるのは一目瞭然。あの若木も頑張ってるんだけど、ここいらまで守護するのに、大分力を使ってるらしいな。たまにふと気を抜くと、こんな風に魔大陸の魔物が蔓延っちまう。でも、若いし力不足だからしょうがねえ、なんては言えねえんだ。だって魔物は容赦なくここも狙ってるんだから。そして、その守護樹は聖域の魔素がねえと枯れちまう。この魔物にこのまま聖域を侵されたら、この大陸の未来は見えちまったようなもんだな。わかるか? 何であの守護樹に頑張ってもらわねえといけねえのかってのが」
「わかりました。それ、どうにかすることは出来ないんですか?」
「エルフたちの失った技能を使えば守護樹を支えてやるくらいはできるんだろうけど」
「その失った技能って」
「『錬金術』」
ああ……なるほど。そう来るか。
俺は、ヒイロさんの話に耳を傾けながら、エルフの里があると思われる方向に視線を向けた。
錬金術……って、俺しか守護樹を手伝えないってことじゃん! 長老様何で何も言わないんだよ。
感想 555
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結済。
おまけのお話を時々更新したりしています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
ふたりの動画をつくりました!
もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!
表紙や動画にはAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
【8月書籍化♡】キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
※表紙その他のイラストはAIにて作成致しております。(文字指定のみで作成しております)
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】憧れの先輩アルファに告白されたんだがどうやら罰ゲームだったらしい
ある日の放課後、校舎裏で花壇の手入れをしていた上田凛斗に告白してきたのは、憧れの先輩であり校内の人気者でもある上條蘭世だった。
目付きの悪さと暗い性格のせいで恋人どころか友達もいない凛斗は、戸惑いながらもお試しで蘭世との交際をはじめたのだが……
美形溺愛アルファ×三白眼平凡オメガ
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました
ごく普通のベータとして生きてきた村井圭太(むらいけいた)は、ある日突然、希少な「後天性オメガ」に転化してしまう。
不安な日々が始まる……かと思いきや、幼馴染アルファの白河泰雅(しらかわたいが)とはまさかの両思い。
早々に『番(つがい)』となり、幸せな日々を送っていた。
「オメガになっても俺は俺」と持ち前のポジティブさで新しい生活に向き合っていく圭太。
だが、晴れて番となった泰雅は、今まで以上に過保護になっていく。
どんなトラブルも二人なら大丈夫!
過保護で執着強めなスパダリ幼馴染攻め(α) × ポジティブで男前な元ベータ受け(β→Ω)
明るくて幸せいっぱいオメガバース!
私の大好きなオメガバース。
愛をたくさん詰め込んだので、みなさまにも楽しんでいただけますように。
辺境食堂の隠れΩなのに、拾った皇帝陛下が嫁になれと迫ってくる
元宮廷料理人で隠れΩの青年レオは、帝国の辺境で小さな食堂兼農園を営みながら、誰にも縛られない平穏なスローライフを送っていた。
ある日、レオは裏庭の不思議な洞窟で、血まみれになって倒れていた大柄な青年アレクを拾う。
彼の正体は、お忍びで辺境を訪れていた帝国最強のα皇帝だった。
身分を隠してレオの家に居候することになったアレクは、レオの作る絶品の手料理と、彼から漂う穏やかな香りに冷え切った心を溶かされていく。
一緒に土を耕し、美味しいご飯を分け合ううちに、相反するはずの二人のフェロモンは心地よく調和していくが、やがて帝都からの追手が迫り……。
手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。