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599、魔法陣見つけちゃった
そのまま二人で同じ手触りのベッドに移動して、安らかに就寝した俺たち。
朝ご飯を一緒に食べて、ヴィデロさんを仕事に送り出して、俺は徐にうさ耳ローブを羽織った。
自分から羽織る羽目になるとは思わなかったけど。これ、調薬にすごくいいんだもん。
これなら『蘇生薬ランクS』だってそれほど苦労することなく作れるかもしれない。
ランクSがたんまり作れたら、たとえサラさんの意識が戻らなくてセイジさんたちに不意の出来事が起きても何らかの対処が出来る、筈。
ぐっと手を握りしめると、未だクリアのついていないセイジさんのクエストを開いた。
『蘇生薬を精製しよう
蘇生薬のレシピの断片が見つかった
断片の一つ一つを繋ぎ合わせて、できることを駆使して「蘇生薬」を作り、それを必要としている人物に使おう
クリア報酬:「世の理」 錬金術師 世界の恒久的平和 時の調べ
クエスト失敗:蘇生薬の精製失敗 錬金術師消失 魔の復活 時の完全消失』
これを見る限り、最悪でもサラさんを助けられた場合は魔王がちゃんと弱体化するんじゃないかなって思う。でも、錬金術師に使おう、じゃなくて必要としている人物に使おうっていうのが引っかかる。もしかして、サラさんに使うわけじゃないのかな。でも、誰に使うにしても、たくさんあれば全員に使うことも出来るし、死に戻ってリスポーン場所から魔王対戦の所まで戻ってくる時間が省ける。悪いことはないよね。俺がそばにいる場合にやられた時はランクSじゃなくてもすぐに蘇生薬を使えば何とかなるけど。あのランクっていうのは倒れてから復活するまでの時間が関係してくるから。あとは復活後のHPの状態と。よし、今日は少しだけ調薬しよう。エアインズ工房に行こうと思ったけど、なんか調薬したい気分だから。
いきなり誰かが来て、うさ耳を見られるのも嫌だからと、俺はこの工房を建て増ししてから初めて、キッチンと工房の間にあるアコーディオンカーテンを閉めた。
いきなり部屋が狭くなった気がする。そして、閉めてみて初めて気付く、カーテンに付いた魔法陣。これ、クラッシュが描いたやつだ。寝室の扉にある魔法陣とはまた別の。
「ええと、成功確率アップの魔法陣……? 『運上昇』『器用度上昇』『確率上昇』『必勝』『安定』と、なんだこの単語。まだ読めないのあるなあ。もしかして、今までここを閉めなかったからこの魔法陣って発動してなかったりして」
それにしてもクラッシュらしいことをするな、と顔をにやけさせながら、調薬器具をセットしていく。
まだまだある蘇生薬の素材を並べていって、ちらりと魔法陣に目を向ける。どう見ても発動してるようには見えない。寝室のは常時発動中みたいで、ほんのり光ってるのに。全然光ってないってことは魔力が流れてないってことかな。
カーテンの魔法陣は、ただただそこに落書きの様に描かれてるだけのような感じだった。
もしかして、と思って席を立ち、魔法陣に近付く。そして、指先を魔法陣に伸ばした。
途端にMPを渡す選択肢が出てくる。ああ、やっぱり。
上限いっぱいまでMPを渡すと、魔法陣は明るく光り輝いた。
「……これが視界に入ったら集中できなそう……」
MPを渡しすぎたのか、魔法陣は眩しいくらいに存在を主張してくる。
俺は諦めて、カーテンを背に調薬を開始した。
結論を言おう。
蘇生薬を作っていて、「あ、今の行動遅い」と明らかに普段だったら黒い物体になるはずの失敗は、ある程度だったら取り返しがついた。魔法陣の作用半端ない。
無事、蘇生薬の素材は全て蘇生薬に変わった。ランクSだけは出来なかったけれど、オールAだったのは僥倖だ。サラさん以外には使えるってことだ。魔法陣凄い。
ヴィデロさんに渡す分を選り分けて、残りをインベントリに突っ込む。
そういえばウル老師はどこまで出来るようになったかな。
前に渡したレシピ、二つともランクSを作れるようになったら、チラッと講習を開いてもいいかもしれないし、ヒイロさんにシックポーションのレシピ講習を開いてもらってもいいかもしれない。それがちゃんとできるようだったら、蘇生薬もランクが低い物だったら出来るかもしれない。薬師たちが蘇生薬を作れるようになったら、こっちの店にも蘇生薬が並ぶんだろうな。そしたらきっと、プレイヤーたちが買い占めてたりして……。プレイヤー以外に出回らなくなりそうだからそれはちょっと考えものかな……商売のことはクラッシュたちに任せよう。
調薬キットをしまうと、俺はカーテンを開けた。解放感が凄い。けど、カーテンが畳まれた瞬間魔法陣の光が霧散したのはちょっと残念だった。また閉めてやろうかな。でも調薬の時はヴィデロさんってキッチンにいるんだよな。邪魔しちゃいけないとか思ってるのかな。錬金の場合は手伝ってくれるつもりなのかすぐそばにいるのに。
広くなった部屋に一つ伸びをして、俺は錬金の部屋に向かった。
エアインズ工房から頼まれてる依頼の品をインベントリに入れて、その他の長光さんが鎧に合わないからと貰っていかなかった錬金鉱石を詰め込んで、俺はギルドに向かった。
のみとか全然使ってないんだけど、大丈夫かな。家でアクセサリーを作れればいいのに、なかなか時間をかけることが難しいっていうのが辛い。一日48時間くらいあればいいのに。
ギルド受付で、『エアインズ工房』に取次ぎをお願いする。何度か品物のやり取りをしてるから、慣れたもので、エアインズ工房直通の通信の魔道具でギルドは連絡を取ってくれることになった。これ、料金かかるんだけどね。俺からの連絡の場合、エアインズ工房がその連絡料を持ってくれることになっている。断ったんだけど、俺が作った鉱石はすぐ欲しいから、連絡を惜しむなってエアインさんに言われてしまって。今日は品物を送るんじゃなくて、直接行って一緒に作りたいと伝えて貰うと、エアインさんは快く了承してくれた。
そのままギルドの転移魔法陣からノヴェの街に移動する。
工房までの道を進みがてら、途中で売ってる串焼きの匂いが凄く美味しそうで、工房の人たちの分までまとめて買った。今日は何人いるかわからないから、とりあえず大量に。
その店の人はプレイヤーで、出店を極めるんだとか。肉も自分でゲットして、いい肉を使うんだとか。そのせいで食に偏った魔物知識が豊富だとか自慢してる出店のプレイヤーは、とても輝いて見えた。楽しそう。ほぼ全部買い取っちゃった形になったけど、大丈夫かな、と声を掛けると、プレイヤーさんは「物がなくなったら狩りに行く、これ基本」とインベントリに屋台をするっとしまっていた。なるほど、移動便利。いつでもどこでも出店を出せる人でありたいんだそうだ。
美味しそうな匂いを漂わせながら『エアインズ工房』に辿り着く。
ノックすると、すぐに中からドアが開いた。
「おう、いらっしゃいってかなに美味そうな匂いさせてるんだよ俺ら飯食う暇すらなく彫金してるってのによ」
最後恨み言になってた気がするけど、とりあえずドアを押さえて入れよと迎え入れてくれたので、ありがたく工房に足を踏み入れる。そして、ドアを開けてくれたエアインさんに、手に持っていた串焼きの袋をどんと渡す。
「あんまりにも美味しそうな匂いをさせてたんで、差し入れに買ってきました」
「マジか! 今日はここの通りに出てたのかあ。異邦人のやつがやってる屋台だろ。あの屋台な、神出鬼没で、どこに店を出すかわからねえんだよ。会えたらラッキー。もちろんその場で買うんだけどな、なかなか会えなくてよ。すぐに売り切れちまうし。売り切れるとすぐに店畳んでどっか行っちまうし」
「あ、あの肉は自分で魔物を倒して手に入れるらしいので、売り切れたら肉をゲットしに行くらしいですよ」
「ほお……一人でノヴェ周辺の魔物を狩るのか……腕っぷしも確かなんだな、異邦人。なんにせよ、マックのラッキーのおこぼれ貰えて、俺らもラッキーって感じだな。ありがたくいただく」
「ぜひぜひ」
頬を緩ませながら、エアインさんが鼻をヒクヒクさせる。その香ばしい匂いはすぐに工房内を満たしていって……ゾンビのような風体の工房の人たちがフラフラとエアインさんに襲い掛かっていった。俺は巻き込まれないように端に移動してそのゾンビ集団を見守ることにした。もしかしてこれ、俺の分は残らないかもね。
-・-・-・-・-・-・-
※マックお着換えしてません
朝ご飯を一緒に食べて、ヴィデロさんを仕事に送り出して、俺は徐にうさ耳ローブを羽織った。
自分から羽織る羽目になるとは思わなかったけど。これ、調薬にすごくいいんだもん。
これなら『蘇生薬ランクS』だってそれほど苦労することなく作れるかもしれない。
ランクSがたんまり作れたら、たとえサラさんの意識が戻らなくてセイジさんたちに不意の出来事が起きても何らかの対処が出来る、筈。
ぐっと手を握りしめると、未だクリアのついていないセイジさんのクエストを開いた。
『蘇生薬を精製しよう
蘇生薬のレシピの断片が見つかった
断片の一つ一つを繋ぎ合わせて、できることを駆使して「蘇生薬」を作り、それを必要としている人物に使おう
クリア報酬:「世の理」 錬金術師 世界の恒久的平和 時の調べ
クエスト失敗:蘇生薬の精製失敗 錬金術師消失 魔の復活 時の完全消失』
これを見る限り、最悪でもサラさんを助けられた場合は魔王がちゃんと弱体化するんじゃないかなって思う。でも、錬金術師に使おう、じゃなくて必要としている人物に使おうっていうのが引っかかる。もしかして、サラさんに使うわけじゃないのかな。でも、誰に使うにしても、たくさんあれば全員に使うことも出来るし、死に戻ってリスポーン場所から魔王対戦の所まで戻ってくる時間が省ける。悪いことはないよね。俺がそばにいる場合にやられた時はランクSじゃなくてもすぐに蘇生薬を使えば何とかなるけど。あのランクっていうのは倒れてから復活するまでの時間が関係してくるから。あとは復活後のHPの状態と。よし、今日は少しだけ調薬しよう。エアインズ工房に行こうと思ったけど、なんか調薬したい気分だから。
いきなり誰かが来て、うさ耳を見られるのも嫌だからと、俺はこの工房を建て増ししてから初めて、キッチンと工房の間にあるアコーディオンカーテンを閉めた。
いきなり部屋が狭くなった気がする。そして、閉めてみて初めて気付く、カーテンに付いた魔法陣。これ、クラッシュが描いたやつだ。寝室の扉にある魔法陣とはまた別の。
「ええと、成功確率アップの魔法陣……? 『運上昇』『器用度上昇』『確率上昇』『必勝』『安定』と、なんだこの単語。まだ読めないのあるなあ。もしかして、今までここを閉めなかったからこの魔法陣って発動してなかったりして」
それにしてもクラッシュらしいことをするな、と顔をにやけさせながら、調薬器具をセットしていく。
まだまだある蘇生薬の素材を並べていって、ちらりと魔法陣に目を向ける。どう見ても発動してるようには見えない。寝室のは常時発動中みたいで、ほんのり光ってるのに。全然光ってないってことは魔力が流れてないってことかな。
カーテンの魔法陣は、ただただそこに落書きの様に描かれてるだけのような感じだった。
もしかして、と思って席を立ち、魔法陣に近付く。そして、指先を魔法陣に伸ばした。
途端にMPを渡す選択肢が出てくる。ああ、やっぱり。
上限いっぱいまでMPを渡すと、魔法陣は明るく光り輝いた。
「……これが視界に入ったら集中できなそう……」
MPを渡しすぎたのか、魔法陣は眩しいくらいに存在を主張してくる。
俺は諦めて、カーテンを背に調薬を開始した。
結論を言おう。
蘇生薬を作っていて、「あ、今の行動遅い」と明らかに普段だったら黒い物体になるはずの失敗は、ある程度だったら取り返しがついた。魔法陣の作用半端ない。
無事、蘇生薬の素材は全て蘇生薬に変わった。ランクSだけは出来なかったけれど、オールAだったのは僥倖だ。サラさん以外には使えるってことだ。魔法陣凄い。
ヴィデロさんに渡す分を選り分けて、残りをインベントリに突っ込む。
そういえばウル老師はどこまで出来るようになったかな。
前に渡したレシピ、二つともランクSを作れるようになったら、チラッと講習を開いてもいいかもしれないし、ヒイロさんにシックポーションのレシピ講習を開いてもらってもいいかもしれない。それがちゃんとできるようだったら、蘇生薬もランクが低い物だったら出来るかもしれない。薬師たちが蘇生薬を作れるようになったら、こっちの店にも蘇生薬が並ぶんだろうな。そしたらきっと、プレイヤーたちが買い占めてたりして……。プレイヤー以外に出回らなくなりそうだからそれはちょっと考えものかな……商売のことはクラッシュたちに任せよう。
調薬キットをしまうと、俺はカーテンを開けた。解放感が凄い。けど、カーテンが畳まれた瞬間魔法陣の光が霧散したのはちょっと残念だった。また閉めてやろうかな。でも調薬の時はヴィデロさんってキッチンにいるんだよな。邪魔しちゃいけないとか思ってるのかな。錬金の場合は手伝ってくれるつもりなのかすぐそばにいるのに。
広くなった部屋に一つ伸びをして、俺は錬金の部屋に向かった。
エアインズ工房から頼まれてる依頼の品をインベントリに入れて、その他の長光さんが鎧に合わないからと貰っていかなかった錬金鉱石を詰め込んで、俺はギルドに向かった。
のみとか全然使ってないんだけど、大丈夫かな。家でアクセサリーを作れればいいのに、なかなか時間をかけることが難しいっていうのが辛い。一日48時間くらいあればいいのに。
ギルド受付で、『エアインズ工房』に取次ぎをお願いする。何度か品物のやり取りをしてるから、慣れたもので、エアインズ工房直通の通信の魔道具でギルドは連絡を取ってくれることになった。これ、料金かかるんだけどね。俺からの連絡の場合、エアインズ工房がその連絡料を持ってくれることになっている。断ったんだけど、俺が作った鉱石はすぐ欲しいから、連絡を惜しむなってエアインさんに言われてしまって。今日は品物を送るんじゃなくて、直接行って一緒に作りたいと伝えて貰うと、エアインさんは快く了承してくれた。
そのままギルドの転移魔法陣からノヴェの街に移動する。
工房までの道を進みがてら、途中で売ってる串焼きの匂いが凄く美味しそうで、工房の人たちの分までまとめて買った。今日は何人いるかわからないから、とりあえず大量に。
その店の人はプレイヤーで、出店を極めるんだとか。肉も自分でゲットして、いい肉を使うんだとか。そのせいで食に偏った魔物知識が豊富だとか自慢してる出店のプレイヤーは、とても輝いて見えた。楽しそう。ほぼ全部買い取っちゃった形になったけど、大丈夫かな、と声を掛けると、プレイヤーさんは「物がなくなったら狩りに行く、これ基本」とインベントリに屋台をするっとしまっていた。なるほど、移動便利。いつでもどこでも出店を出せる人でありたいんだそうだ。
美味しそうな匂いを漂わせながら『エアインズ工房』に辿り着く。
ノックすると、すぐに中からドアが開いた。
「おう、いらっしゃいってかなに美味そうな匂いさせてるんだよ俺ら飯食う暇すらなく彫金してるってのによ」
最後恨み言になってた気がするけど、とりあえずドアを押さえて入れよと迎え入れてくれたので、ありがたく工房に足を踏み入れる。そして、ドアを開けてくれたエアインさんに、手に持っていた串焼きの袋をどんと渡す。
「あんまりにも美味しそうな匂いをさせてたんで、差し入れに買ってきました」
「マジか! 今日はここの通りに出てたのかあ。異邦人のやつがやってる屋台だろ。あの屋台な、神出鬼没で、どこに店を出すかわからねえんだよ。会えたらラッキー。もちろんその場で買うんだけどな、なかなか会えなくてよ。すぐに売り切れちまうし。売り切れるとすぐに店畳んでどっか行っちまうし」
「あ、あの肉は自分で魔物を倒して手に入れるらしいので、売り切れたら肉をゲットしに行くらしいですよ」
「ほお……一人でノヴェ周辺の魔物を狩るのか……腕っぷしも確かなんだな、異邦人。なんにせよ、マックのラッキーのおこぼれ貰えて、俺らもラッキーって感じだな。ありがたくいただく」
「ぜひぜひ」
頬を緩ませながら、エアインさんが鼻をヒクヒクさせる。その香ばしい匂いはすぐに工房内を満たしていって……ゾンビのような風体の工房の人たちがフラフラとエアインさんに襲い掛かっていった。俺は巻き込まれないように端に移動してそのゾンビ集団を見守ることにした。もしかしてこれ、俺の分は残らないかもね。
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※マックお着換えしてません
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。