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637、緊急告知!
あけましておめでとうございます。
今年こそは完結したいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたら幸いです。
皆さまにとって今年一年『LUCK』が上がりますように。皆さまにエッジラックの相乗効果がありますように。
そしてもうすぐムーンの方に追い付いてしまいますので、追い付いたら毎日更新とはいかなくなります。ご了承ください。
-・-・-・-・-・-・-
ヴィルさんに伝えてから一週間後。
ギアを被ってログインしようとしたら、目の前に『緊急告知!』という文字が浮かび上がってきた。
その内容は。
『緊急告知! 上級職求む!
プレイヤー一丸となって来たる脅威から国を守るため、上級職に就くプレイヤーはすぐにギルドに向かえ! 詳細は各街冒険者ギルドにて!』
ということなので、俺はトレの冒険者ギルドに向かった。
何かあったのかな。
足早にギルドに向かって、中に入ると、かなりのプレイヤーが詰めかけ、ごった返していた。でもここはトレ。最初の街から三番目の街だ。半分くらいは「上級職じゃないけど俺も緊急クエしたい!」という人たちが詰めかけている。
そんなプレイヤーの間を縫って先に進もうとして、目の前の壁たちに断念する。なんていうか、体格のいい人たちに押し負ける……。前に行きたいのに。
と肉壁の後ろで困っていると、職員さんと思われる声が響いた。
「まだ上級職ではない皆さん! ごめんなさい、この依頼は上級職の人たちじゃないと受けられない物なんです。受けても失敗して違約金を支払うことになりますので、今回はひとまず引いてください! その代わり、ドゥエの街で近く『上級職になるための講座』を開きますので、参加される方はこちらが落ち着いたら手続きをお願いします!」
職員さんの声に、溜まっていた人だかりの半分は移動を開始した。すっごい猛者っぽい外見の人もいる。あの人もまだ上級職になれてないのか。
残りの半分は、職員さん先導の元、奥の部屋に案内される。
そこには、職種別窓口が設置されていた。
『戦闘職』『支援職』『生産職』『その他』。その他の職業がものすごく気になるけど、そこにも数人向かっていた。ヴィルさんの職業はその他なんだろうな、なんて思いながら、生産職の窓口に行って列に並ぶ。
前に並んでいる人は、背中に大きな金槌を背負っている。これも生産職なのかな。と思っていると、そのプレイヤーが振り返った。
「緊急って何があったんだろうな」
「ほんとにね。しかも上級職だけとかこんなこと今までなかったよね」
「な。でも、こういうイベントワクワクするよな!」
すごいテンションが高かった。
俺もなんとなくワクワクはするけど、でもそれ以上に何かあったのかってドキドキする。
俺の番になると、職員さんは俺のギルドカードを受け取って名前を確認して、数枚の依頼書を差し出してきた。
「こちらのどれかを受けていただけると助かります。ただしマックさんには指名依頼も来ていますので、それを受けてくださるのなら、これを受けなくても後ほどギルドからの報酬は出ます」
あとから取り出した一枚は、指名依頼用の依頼書だった。依頼人はエミリさんとクラッシュ連名。あ、これ、断れないやつだ。
「指名受けます」
内容は、魔大陸で使えるポーション各種、大量納品。
期限は三日後。結構シビア。やるよ頑張るよ。
他の依頼書を見て、どれも期限が三日後だということに気付いた俺は、素直に指名依頼だけ受けた。ピロンとクエスト欄にびっくりマークがつく。
受付窓口を離れて、俺はまず農園に向かった。薬草大量に欲しいからね。
カイルさんが快く沢山の良質の薬草を売ってくれたので、それを持って工房に帰ると、雄太からチャットが来ていた。
『クエスト受けたか?』
『受けたよ』
素材を確認しながら返事を返すと、すぐにまたチャットが飛んできた。
『とうとう魔大陸に人を送るらしい。俺たちも魔物討伐の依頼を受けた。緊急の』
『マジ? あの村に人入るのかな。守護樹、弄られないかな』
『あ、あの村は入っちゃいけない枠になってる。その隣の村が拠点らしい。クエスト期間の一週間後から10日間で、出来る限り魔物を殲滅することってなってる。倒した数に応じてギルドの貢献度が上がるとかなんとか、お前のは?』
『俺のは、ホーリーハイポーション大量納品。これから忙しくなる』
『なるほど薬師の上位職か』
雄太のチャット内容を読んで、少しだけ驚いた俺。上位職ってだけで魔大陸は早くない?
すぐに死に戻って終わるんじゃないかな。なんて思ってチャットで返すと、『神殿で上限突破した人が魔大陸に行くらしい』という情報をくれた。なるほど。上位職でも神殿に行ってない人は魔大陸じゃないクエストなんだ。
『辺境のギルドはなんだかヤバいことになってるぜ』
調薬キットを準備していると、ギルドにいるらしい雄太からそんなチャットが飛んできた。
『『夕凪』とその周辺のやつら、ほとんどが上位職になってねえからギルドに猛抗議してるよ。あれ、下手したらギルドの人に殴りかかるんじゃねえかな』
え、とチャットを読んで動きを止める。『夕凪』とか、上位職じゃないって。ああ、そうか。上位職になるためのクエストって、こっちの国の人から出されるんだった。仲良くならないと上位職のクエストって貰えないんだよね。
そう考えると、あれだけ上位職がいるってことは、皆こっちの人たちと仲良くしてるってことなんだよなあ。
雄太とのチャットを閉じて、俺はホーリーハイポーション大量生産をすることにした。
この緊急告知、なんか、なんか引っかかる。
そんなことを思いながら。
ヴィデロさんは、俺の調薬缶詰状態を知って、すぐにご飯を買ってきてくれた。作り置きとかもあるんだけど、という間もない早業だった。手を止めなくてもいいように、串焼き。
俺が素材の下ごしらえをしている横から、ヴィデロさんが串焼きを差し出してくれる。美味しいし幸せ。ほんとは二人で食卓を囲んでゆっくりしたいけど、たまにはこんなのもいいかも。
ヴィデロさんも笑いながら「餌付けしてるみたいだな」なんて言ってるし。餌付けされちゃうよ。懐いちゃうよ。もう懐いてるけど。
次の日、会社に行くと、ヴィルさんが「カレーが食べたい」と言い出したので、めちゃくちゃ大きい鍋にカレーを作った。ルーは市販だけど、野菜は色々具沢山。そして大量のご飯を炊くと、ヴィルさんに今日は上がっていい旨を伝えられた。え、何で。
「健吾は今、指名依頼を受けてるんだろ」
そう言われて、昨日引っかかってたことがピンときた。
「もしかしてこの緊急告知、ヴィルさんが」
「俺はそっちには携わってないよ。ただし、助言はしたけどな」
「……」
「健吾はどうやって上位職に就くのか知ってるだろ。でも、ああいうことを平気でする奴らは、知らない、もしくは、知っててもクエストは絶対に来ない。そしてな、これを機に、ちょっと溜まっていたギルドの難易度が高い依頼を消化してもらおうと思って、統括と母と宰相閣下で密談をしたらしい。まあ、健吾も楽しめ。というわけで、今日はこれで上がり」
犯人はヴィルさんだった。
「それとな、健吾。上位職に就くためのクエストってのは、貰うのはそんなに難しくないんだよ。ダンジョンサーチャーが基盤を作ってくれている。彼は凄いな。とことんまで自分を侮るプレイヤーを締め出すだろ。あのせいで、オーブの魔法が欲しい人たちは、自然と街の人たちと仲良くなっていくんだ。そして、自分もダンジョンサーチャーに誘われたいと、無意識に努力してるんだ」
「あ……なるほど」
セイジさんは、NPCって自分のことを言う人には、絶対に声を掛けないっていうのは聞いたことがある。雄太とか俺とか、一緒に行ったことのある人は、ほぼ何の問題もなくいつの間にか上位職用クエストを貰ってたから。
「でも、雄太が辺境のギルドで下位職のトップランカーが暴れそうな勢いだったって。問題にならないんですか?」
「救済は用意してるよ。もちろん、クエスト依頼じゃない。考えを改めるためのね」
あ、だからこそ、上位職になるための講座。それに行けば、いやでもあんな酷いことは出来なくなる。出来れば、皆がそうなって欲しい、と思いながら、俺は帰る用意をしたのだった。調薬調薬。
今年こそは完結したいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたら幸いです。
皆さまにとって今年一年『LUCK』が上がりますように。皆さまにエッジラックの相乗効果がありますように。
そしてもうすぐムーンの方に追い付いてしまいますので、追い付いたら毎日更新とはいかなくなります。ご了承ください。
-・-・-・-・-・-・-
ヴィルさんに伝えてから一週間後。
ギアを被ってログインしようとしたら、目の前に『緊急告知!』という文字が浮かび上がってきた。
その内容は。
『緊急告知! 上級職求む!
プレイヤー一丸となって来たる脅威から国を守るため、上級職に就くプレイヤーはすぐにギルドに向かえ! 詳細は各街冒険者ギルドにて!』
ということなので、俺はトレの冒険者ギルドに向かった。
何かあったのかな。
足早にギルドに向かって、中に入ると、かなりのプレイヤーが詰めかけ、ごった返していた。でもここはトレ。最初の街から三番目の街だ。半分くらいは「上級職じゃないけど俺も緊急クエしたい!」という人たちが詰めかけている。
そんなプレイヤーの間を縫って先に進もうとして、目の前の壁たちに断念する。なんていうか、体格のいい人たちに押し負ける……。前に行きたいのに。
と肉壁の後ろで困っていると、職員さんと思われる声が響いた。
「まだ上級職ではない皆さん! ごめんなさい、この依頼は上級職の人たちじゃないと受けられない物なんです。受けても失敗して違約金を支払うことになりますので、今回はひとまず引いてください! その代わり、ドゥエの街で近く『上級職になるための講座』を開きますので、参加される方はこちらが落ち着いたら手続きをお願いします!」
職員さんの声に、溜まっていた人だかりの半分は移動を開始した。すっごい猛者っぽい外見の人もいる。あの人もまだ上級職になれてないのか。
残りの半分は、職員さん先導の元、奥の部屋に案内される。
そこには、職種別窓口が設置されていた。
『戦闘職』『支援職』『生産職』『その他』。その他の職業がものすごく気になるけど、そこにも数人向かっていた。ヴィルさんの職業はその他なんだろうな、なんて思いながら、生産職の窓口に行って列に並ぶ。
前に並んでいる人は、背中に大きな金槌を背負っている。これも生産職なのかな。と思っていると、そのプレイヤーが振り返った。
「緊急って何があったんだろうな」
「ほんとにね。しかも上級職だけとかこんなこと今までなかったよね」
「な。でも、こういうイベントワクワクするよな!」
すごいテンションが高かった。
俺もなんとなくワクワクはするけど、でもそれ以上に何かあったのかってドキドキする。
俺の番になると、職員さんは俺のギルドカードを受け取って名前を確認して、数枚の依頼書を差し出してきた。
「こちらのどれかを受けていただけると助かります。ただしマックさんには指名依頼も来ていますので、それを受けてくださるのなら、これを受けなくても後ほどギルドからの報酬は出ます」
あとから取り出した一枚は、指名依頼用の依頼書だった。依頼人はエミリさんとクラッシュ連名。あ、これ、断れないやつだ。
「指名受けます」
内容は、魔大陸で使えるポーション各種、大量納品。
期限は三日後。結構シビア。やるよ頑張るよ。
他の依頼書を見て、どれも期限が三日後だということに気付いた俺は、素直に指名依頼だけ受けた。ピロンとクエスト欄にびっくりマークがつく。
受付窓口を離れて、俺はまず農園に向かった。薬草大量に欲しいからね。
カイルさんが快く沢山の良質の薬草を売ってくれたので、それを持って工房に帰ると、雄太からチャットが来ていた。
『クエスト受けたか?』
『受けたよ』
素材を確認しながら返事を返すと、すぐにまたチャットが飛んできた。
『とうとう魔大陸に人を送るらしい。俺たちも魔物討伐の依頼を受けた。緊急の』
『マジ? あの村に人入るのかな。守護樹、弄られないかな』
『あ、あの村は入っちゃいけない枠になってる。その隣の村が拠点らしい。クエスト期間の一週間後から10日間で、出来る限り魔物を殲滅することってなってる。倒した数に応じてギルドの貢献度が上がるとかなんとか、お前のは?』
『俺のは、ホーリーハイポーション大量納品。これから忙しくなる』
『なるほど薬師の上位職か』
雄太のチャット内容を読んで、少しだけ驚いた俺。上位職ってだけで魔大陸は早くない?
すぐに死に戻って終わるんじゃないかな。なんて思ってチャットで返すと、『神殿で上限突破した人が魔大陸に行くらしい』という情報をくれた。なるほど。上位職でも神殿に行ってない人は魔大陸じゃないクエストなんだ。
『辺境のギルドはなんだかヤバいことになってるぜ』
調薬キットを準備していると、ギルドにいるらしい雄太からそんなチャットが飛んできた。
『『夕凪』とその周辺のやつら、ほとんどが上位職になってねえからギルドに猛抗議してるよ。あれ、下手したらギルドの人に殴りかかるんじゃねえかな』
え、とチャットを読んで動きを止める。『夕凪』とか、上位職じゃないって。ああ、そうか。上位職になるためのクエストって、こっちの国の人から出されるんだった。仲良くならないと上位職のクエストって貰えないんだよね。
そう考えると、あれだけ上位職がいるってことは、皆こっちの人たちと仲良くしてるってことなんだよなあ。
雄太とのチャットを閉じて、俺はホーリーハイポーション大量生産をすることにした。
この緊急告知、なんか、なんか引っかかる。
そんなことを思いながら。
ヴィデロさんは、俺の調薬缶詰状態を知って、すぐにご飯を買ってきてくれた。作り置きとかもあるんだけど、という間もない早業だった。手を止めなくてもいいように、串焼き。
俺が素材の下ごしらえをしている横から、ヴィデロさんが串焼きを差し出してくれる。美味しいし幸せ。ほんとは二人で食卓を囲んでゆっくりしたいけど、たまにはこんなのもいいかも。
ヴィデロさんも笑いながら「餌付けしてるみたいだな」なんて言ってるし。餌付けされちゃうよ。懐いちゃうよ。もう懐いてるけど。
次の日、会社に行くと、ヴィルさんが「カレーが食べたい」と言い出したので、めちゃくちゃ大きい鍋にカレーを作った。ルーは市販だけど、野菜は色々具沢山。そして大量のご飯を炊くと、ヴィルさんに今日は上がっていい旨を伝えられた。え、何で。
「健吾は今、指名依頼を受けてるんだろ」
そう言われて、昨日引っかかってたことがピンときた。
「もしかしてこの緊急告知、ヴィルさんが」
「俺はそっちには携わってないよ。ただし、助言はしたけどな」
「……」
「健吾はどうやって上位職に就くのか知ってるだろ。でも、ああいうことを平気でする奴らは、知らない、もしくは、知っててもクエストは絶対に来ない。そしてな、これを機に、ちょっと溜まっていたギルドの難易度が高い依頼を消化してもらおうと思って、統括と母と宰相閣下で密談をしたらしい。まあ、健吾も楽しめ。というわけで、今日はこれで上がり」
犯人はヴィルさんだった。
「それとな、健吾。上位職に就くためのクエストってのは、貰うのはそんなに難しくないんだよ。ダンジョンサーチャーが基盤を作ってくれている。彼は凄いな。とことんまで自分を侮るプレイヤーを締め出すだろ。あのせいで、オーブの魔法が欲しい人たちは、自然と街の人たちと仲良くなっていくんだ。そして、自分もダンジョンサーチャーに誘われたいと、無意識に努力してるんだ」
「あ……なるほど」
セイジさんは、NPCって自分のことを言う人には、絶対に声を掛けないっていうのは聞いたことがある。雄太とか俺とか、一緒に行ったことのある人は、ほぼ何の問題もなくいつの間にか上位職用クエストを貰ってたから。
「でも、雄太が辺境のギルドで下位職のトップランカーが暴れそうな勢いだったって。問題にならないんですか?」
「救済は用意してるよ。もちろん、クエスト依頼じゃない。考えを改めるためのね」
あ、だからこそ、上位職になるための講座。それに行けば、いやでもあんな酷いことは出来なくなる。出来れば、皆がそうなって欲しい、と思いながら、俺は帰る用意をしたのだった。調薬調薬。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。