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659、待ってるから
「マック、俺、街門騎士団を辞めたから」
夜、ログインしてヴィデロさんの帰りを待っていた俺は、帰って来たヴィデロさんのその一言で、ハッとなった。
「円満に辞めれたの? 確か、騎士団を辞めるのってかなり大変だったはずじゃ」
「ああ。説得に時間はかかったけれど、最終的には俺の意志を尊重するって」
ソルブさんとブロッサムさんの顔が浮かぶ。
門番さんたち、すごくいい人がいっぱいいたから、ヴィデロさんは辞めるの辛くないかな。
そう思ってヴィデロさんを見上げると、ヴィデロさんはにこっと笑って俺にキスをした。
「これで、心置きなくマックの世界に渡れる」
嬉しそうな顔で、ヴィデロさんは俺が贈った指輪にもキスをした。
「マックは、向こうで待っててくれ。必ずマックの……いや、ケンゴの元に行くから」
「ヴィデロさん……」
とうとうか、という気持ちと、本当に? という気持ちが交錯する。
「今日は一緒に寝ようか。明日、一人でジャル・ガーの元に向かうから、マックはこっちに来ないで向こうで待っていてくれないか」
「朝食は……?」
「大丈夫。マックが作ってくれたものが沢山カバンに入ってる」
「ジャル・ガーさんの所まで送るよ」
「いや、一人で行くから。マック、そんな不安そうな顔をしないでくれ」
ヴィデロさんは俺の顔を覗き込むようにして、俺の頬を撫でた。
そんなに不安そうな顔をしてたのかな、俺。
「待ってる」
すぐ来れるの? とか、危なくないの? とかいう言葉は、飲み込んだ。
一言呟くと、ヴィデロさんは「ああ」と頷いて、チュッとキスをした。
ヴィデロさんに抱きかかえられてベッドに拉致され、夜ご飯は、と問う声を口でふさがれて、俺も気分が高まる。
二人で裸になってベッドに転がると、ヴィデロさんが覆いかぶさるようにして俺を見下ろした。
大好き。
そうなると、こっちで生身のヴィデロさんとこういうことをするのは、最後になるのかな。
次は生身のヴィデロさんと、生身の俺で。
想像して、余計に煽られた。
「ヴィデロさん、大好き」
「俺も。愛してる」
ヴィデロさんの背中に腕を回して抱き着くと、硬くなったお互いのものが擦れて思わず変な声が出た。
ヴィデロさんのヴィデロさんが俺の中を擦る度に、ぞくぞくぞく、と背中を快感が駆け抜ける。
思わずしがみつく手に力を込めると、宥めるようなキスが降ってくる。
もっと奥に欲しい、と足を絡めると、ヴィデロさんが俺の背中に腕を回して、俺の身体を持ち上げた。
自分の体重でさらに奥までヴィデロさんを感じて、目の前が白くなる。
くっついた二人のお腹が、俺が出した物で汚れたけれど、そんなことは関係ないとばかりに、ヴィデロさんは俺を揺すった。
「あ、は……っ、ふか、深い……っ」
「マック……っ」
奥の奥までぐ、ぐ、とヴィデロさんのヴィデロさんが埋められて、そこで腰を揺すられる。抜き差しされるよりも更に気持ちいいその動きに、俺の身体が仰け反る。
倒れ込みそうになる身体を腕で支えられて、更に押し込まれるように腰を押し付けられて、目の前に星が飛ぶ。
「グリグリ……や……」
「でも、こうするとマックが気持ちよさそう」
「良すぎて、や……っ、う、んっ」
良すぎてどうにかなりそうで、ヴィデロさんの身体にしがみつくと、更にヴィデロさんが中をぐりぐりと掻き回す。
力の入る身体をどうすることもできなくて、俺はヴィデロさんに抱っこされた状態のまま、奥をひたすら愛された。
何度か体位を変えても、全てがくっつきあってする体位だと気付いたのは、ヴィデロさんが俺から身体を離したときだった。
ずっとヴィデロさんに包まれて、ずっとヴィデロさんの体温を感じながら愛し合ってたんだと、スッと冷えた身体が教えてくれる。
もしかして、ヴィデロさんも不安なのかな。そりゃそうだよな。初めての試みで、しかも片道だし。今まで生まれ育ってきた地を離れて、未知の世界に向かうわけだし。
怠い身体を起こして、ベッドに座って衣類を身に着けているヴィデロさんの背中にへばりつく。
「ヴィデロさん、愛してる。俺がこの姿じゃなくても、嫌いにならないでね」
「ケンゴの顔はもう知ってるよ。絶対に嫌いになんてならない。でも、もし、直接ケンゴに会って、いざ愛し合おうとしたときに、罪悪感に駆られたらどうしような」
笑いながらふざけてそんなことを言うヴィデロさんに、俺は頬を膨らます。
あり得そうで笑えない! 幼すぎて同学年に思えないとか、同じクラスの女子に何度か言われたことある俺としては、笑えない。多分隣にいたのがもりもりデカくなった雄太だから余計になんだろうけど。
「その時は俺が襲うからいいもん。誰とも何もしたことないから、全部初めてをヴィデロさんに渡すもん。キスとか、全部」
ふてくされながら背中にくっついてそう言うと、ヴィデロさんが肩を震わせた。
「冗談だよ。きっと我慢できなくて攫ってしまいたくてどうにかなりそうになるよ。キスとか、何度も何度も全部貰える俺は、絶対に世界一の幸せ者だ」
優しい響きの声に、俺はギュッとヴィデロさんのかっこいい背中にしがみついた。なんだかよくわからないけど、胸がきしんで泣きそうだった。
ヴィデロさんの顔はここから見えないけれど、ヴィデロさんはどんな顔をしてこんなことを言ってるんだろう、と背中にくっついたことに、ちょっとだけ後悔した。
次の日、俺は出社時間より大分早く会社に向かった。
見送りはいらない、こっちで待ってて、と言われたから、ヴィデロさんの言葉は守りたくて、俺は今朝はログインしていない。
朝起きてベッドがもぬけの殻とかだったりすると、ジャル・ガーさんのところに向かったんだということはわかっててもきっと心配するから。
心配するよりもどっしりと構えて待っていた方が、絶対にいいよね。
自転車を漕いで、急いで会社のあるビルに行くと、俺はエレベーターが着くのも待ちきれなくて、階段を駆け上がった。
会社のドアを開けると、そこには既にヴィルさんがいた。
「健吾、おはよう。今日は早いんだな」
「おはようございます! だって、ヴィデロさんが!」
俺の言葉ですべてを察したらしいヴィルさんは、まつげを伏せて「そうか」と一言、呟いた。
「健吾、ちょっとだけ、俺の昔話に付き合ってくれないか?」
「昔話?」
ヴィルさんは、首を傾げた俺を、応接ソファに促して、自らお茶を淹れ始めた。
程なくして、目の前には、綺麗なカップに注がれた紅茶が出された。
「母が、向こうの世界から、こっちに来るという連絡を俺にくれた時の話をしよう」
一口紅茶を飲んで口を潤したヴィルさんは、そう言うとカップを受け皿に置いた。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。