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673、混ぜるな危険!
魔王の攻撃は青ゲージになってからさらに苛烈さを増した。
俺も何度必死で逃げた事か。魔法中断させられるなんてざら。まともに聖魔法を撃つことも難しくなった。
詠唱を始めた瞬間魔王の魔法が俺に集中し始めるんだもん。ユキヒラの時は、剣が5、6本同時に繰り出されて、口を噤まざるを得なくなる。
とにかく、聖魔法が撃ちにくくなっちゃったんだ。そうなると、ブレイブに渡していた大量の起爆剤も聖魔法で爆発させることが出来なくなる。
ブレイブは諦めてサラさんとユイの連携魔法の時に起爆剤を投入したら、とんでもなく恐ろしい現象が起こってしまった。
どうやったのかわからないけれど、氷と炎の連携魔法超特大を二人が繰り出し、白と青のコラボレーションにうわあって恐怖を感じていたら、起爆剤でそれが魔王を包み込み、魔王の周りを竜巻の様に白いダイヤモンドダストと青い炎が立ち上って暴れまわって魔王に悲鳴を上げさせていたんだ。見てるだけで怖いし、そのたくさんの魔法の柱が魔王を包み込んでいるうちは誰も手出しできなくてただ見物をしていたんだけど。
皆魔王の頭上に視線を向けていた。だって。あれだけ減りの悪かったHPゲージがぐいぐい減ってくんだもん。魔王の声は咆哮、って感じじゃなくて、本当に悲鳴に聞こえて。
雄太は大笑いしてるし、勇者とセイジさんは唖然としてるし、エミリさんは肩を揺すってるしでもう大変。ヴィデロさんも驚いたように上の方を見てたから、HPゲージを見てたのかもしれない。
それにしても恐ろしすぎる。あの二人。並んでハイタッチをしているサラさんとユイは、無邪気にやったねとはしゃいでいた。最強オブ最強はこの二人じゃないかな。
それにしても二人の連携魔法と起爆剤の相性が怖すぎる。ブレイブは味を占めたらしく、2人が揃って詠唱を始めると起爆剤をいそいそと用意して、構えていた。っていうかこの三人で普通に魔王を倒せるんじゃないかな、と俺は本気で思った。
そして青ゲージが順調になくなり、緑ゲージに突入した瞬間。
またも魔王が手を広げて天を仰いだ。
ああ、咆哮が来る。来るとわかってても防ぎようがない。
サッと手にハイパーポーションを用意して、その瞬間を待った俺は、次の瞬間覇王の剣を構えたヴィルさんが何かスキルを繰り出したのを見た。
「『威圧消滅』!」
覇王の剣と盾がその声に反応して、キィィィィィィンと共鳴音みたいなものを出し始める。
すると、天を仰いで口を開いた魔王が、咆哮を出さずに震え出した。『ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”』なんて震える声で呻いてたから、咆哮は空振りしちゃったらしい。ヴィルさんはここぞとばかりに走り込み、魔王に剣を突き立てていた。
ヴィルさんの攻撃を見て我に返った皆も一斉に震える魔王に攻撃を開始し、復活した魔王の攻撃を躱しながらまた距離を取る。今の一斉攻撃ですでにHPが5分の1くらい減ってるのは、震えてる時は防御力も低下してるからなのかな。ゲージが変わる瞬間がピンチになるんじゃなくて、ヴィルさんが来たことでその瞬間がチャンスになった。
覇王の剣は共鳴をしたことで気合いを入れたらしく、なんだか薄っすら光っていた。
「ねえ、その剣……」
サラさんが目を見開いてヴィルさんを見ている。魔法詠唱も止まってるのは、よほど覇王の剣が気になったのか。
「これは覇王の剣と盾。アレとは物凄く因縁がある物です。縁があって俺の元に舞い込んできた剣ですが、あなたは近寄ると危ないかもしれない。錬金釜を使われるとお聞きしました」
「今はもう所持していないわ。でもそうね……こんなことってあるのかしら……この戦い、私達の勝ちよ」
「もちろん勝つ気で来ましたから」
ヴィルさんは頼りになるお兄ちゃんの笑顔でにっこり微笑んだあと、剣に向かって「待てって。今話をしてるんだから」と剣を叱っていた。なんかもう、覇王の剣も弟ポジのような気がして来た。
俺はヴィルさんの声を聞きながら、必死で聖魔法を唱えた。魔王が今度は覇王の剣に集中しだしたから、俺とユキヒラに来ていた攻撃が甘くなったんだ。よかった。というわけで、ブレイブとの連携開始。
魔王に傷つけられた人たちは、すかさずドレインさんが完璧に治しちゃうから薬師の出番はない。皆にも配ってるしね。ヴィデロさんは、沢山詰め込んだ各種詰め合わせ、持ってるのかな。持ってなかったらヴィルさんがおすそ分けしてるだろうからあんまり心配はしてないけど。
それにしてもヴィデロさんの動き凄いなあ。
片手に大剣を持つ雄太が動だとすると、ヴィデロさんはシュッと動いてスッと攻撃してっていう静って感じの動きをしてる気がする。あんまり知識がないから上手く説明できないけれど、動きが洗練されてるようなそんな綺麗さがある。
見惚れる俺の耳に、ブレイブの「マック手が止まってる」という呟きが入って来て、俺はハッと我に返った。こんな時にヴィデロさんに見惚れてしまった。だってかっこいいから。
慌てて詠唱を唱えると、それに合わせたようにブレイブが起爆剤を構えた。
「『聖火炎獄!』」
唱えた瞬間魔王の周りに青い炎の柱が上がった。そこに起爆剤が投入されて、魔王が聖なる炎の檻に閉じ込められる。
またしても魔王が悲鳴を上げる。順調にHPを削れることにホッとしていると、まだ起爆剤が効いているところにサラさんとユイの連携魔法が飛んだ。
その魔法が、起爆剤を聖魔法で爆破させたときに起こる『聖光曝射』と反応し、円状だった魔法が竜巻状になり、バチバチと電気を帯び始める。
「お、おいおい、ヤバいんじゃないか……」
「これ、フレンドリーファイアないよな……?」
前衛が一斉に数歩下がる。
それくらい魔王の周りの魔法は恐ろしい状態になっていた。バチバチ凄い音がして、バチィン! という雷が落ちたような破壊音が竜巻の中から聞こえてくる。待って。ねえ、起爆剤ってそんなアイテムじゃないんだけど。こんなカオス魔法を作り出すようなアイテムじゃないよ。サラさん、「もっと魔法を追加したら相乗効果ないかしら』ってやめて! 周りに被害が出そうだから! ユイもノリノリで次何の魔法を連携するか相談しないの! 勇者の言ってたことは正しかった……! この二人を一緒にしたら怖いことしか起きなそうだよ……!
誰も手を出せず、ただ荒れ狂う魔法を見学しているしかないこのカオスな状況は、起爆剤効果が切れるまで続いた。ブレイブ、面白いからまたやろうぜっていい笑顔で言わないでくれないかな。HPゲージは減ったけど。
なんていうか、魔術師たちが大活躍しているから、前衛の剣士たちが活躍できないじゃん。
それにしても、魔王は何であの場所から一歩も動かないんだろう。
大量に魔法を出して、沢山の剣を繰るのは凄いと思うけど、動かないのはこっちにとってすごく有利だと思うんだ。でも、オープニングの魔王って、普通に足を動かしてた様な気が。
と思ったのは気のせいじゃなくて。
緑から黄色ゲージに変わった時の咆哮をヴィルさんに打ち消された後にそれは起こった。
咆哮が不発に終わった魔王は、またしても動きを止め、前衛たちにフルボッコにされていた。けれど、次の瞬間、魔王の手がいきなり実体を持ったように見えた。そして、足も、身体も。
剣だったものは全てが鋭くて長い爪に変わり、まるでローブを着ていたようにずるっとしていた身体に何かが生え始め、それは全体を覆う鎧になり、魔王の周りに生えていた樹が、サラサラと黒い灰のような物になり、それが魔王の身体に纏わりついてさらに屈強な鎧と化していく。
長い布のような物だった下半身も鎧を身に纏い、とても巨大な漆黒の鎧を着た何者かが出来上がった。
HPゲージが変わって、強化された魔王が現れた瞬間だった。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。