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676、最終局面でもピンチ
総勢17人というかなりの人数で対峙したはずなのに、それでも魔王は強かった。
最初に回復を一手に担っていたドレインさんが死に戻った。歩いてここまでくるとどれくらいの時間かかるのか全くわからない隣の村まで。
そして次にユーリナさんがキラキラと消えていった。後方支援の人たちを先に攻撃する辺り、魔王の知能は馬鹿に出来ない。
それを阻止しようとしたエミリさんが今かなりギリギリの状態で戦線離脱している。クラッシュが魔王の攻撃の当たらない場所までエミリさんを避難させて戻って来た。と思ったら、クラッシュも思いっきり弾き飛ばされて。
雄太がまず大剣を折られてそのまま飛ばされて気絶している。ユイはまだ戦場で魔法を飛ばしまくっているけれど、サラさんを庇う形で立っているせいか、かなりギリギリ。ハイパーポーション渡したい。サラさんはそんなユイを諭そうとしているけれど、ユイは結構頑固なせいか、サラさんが死んじゃうのやだ、と絶対庇う構えでいて、雄太を放置中。高橋は強いから、すぐに気付くはずだからって。
勇者は大分切り傷が増えていたけれど、魔王と互角に打ち合える状態なのが勇者だけなのか、その場所をガンとして譲ろうとしない。強いけどちょっと後ろに引いて回復して欲しい。
セイジさんは防御系の魔法陣を描くのが忙しすぎて、自ら攻撃に出ることが出来ないでいる。一瞬でもその魔法陣が解かれると勇者が思いっきり致命傷を受けるのがわかっているから。
俺はひたすら聖魔法を繰り出すけれど、俺への攻撃は全てヴィデロさんが受けていて、辛い。でも俺が受けると一撃で致命傷なのはわかってるからか、ヴィデロさんもユイ同様頑として俺の前から動かない。
ヴィルさんはクラッシュと連携で攻撃をしているけれど、やっぱりというかレベルが一回り違うせいか、通常攻撃はあんまり効いていない。そして、魔王からのアクションがあるときはやっぱりクラッシュの前にサッと出ている。
魔王のHPバーは、まだ3分の2までしか削れていない。
魔王は勇者と打ち合い、後ろや横からくる直接攻撃に片腕の爪で対処しながら、詠唱もなく魔法を繰り出してくる。
今までと攻撃方法はそれほど変わりないのに、一定時間ごとにパッと瞬間移動するのが怖い。一度するとタイムラグがあるみたいで、移動直後が狙い時なんだけれど、そういうときは大抵後衛の物理攻撃に弱い方に行くからえげつない。
だからこそヴィデロさんは直接攻撃に参加できないでいる。でも俺を庇っている位置だから、通常は魔法しか飛んでこないから俺的にはちょっとホッとする。
魔王がフッと姿を消し、ブレイブの真ん前に現れる。
弓を構えていたその腕を掴み、爪で切り裂き、直後海里の双剣で左腕をぶった切られた魔王は、腕ごとブレイブを離した状態で海里に向きなおり様、ブレイブを引き裂いた爪で海里をも引き裂いた。
二人ともキラキラしてないからまだHPは残ってるみたいだけど、傷が凄いから今もHPは減り続けているかもしれない。
回復役は一番最初に姿を消しているから、とヴィデロさんに「向こうに行くから」と声をかけて魔法陣の転移で二人の近くに跳ぶと、慌ててハイパーポーションを二人に掛けた。途端に背中からギン! と金属音が響く。
ヴィデロさんが俺に対する攻撃を防いでくれたらしい。
そこに勇者とクラッシュとヴィルさんの剣が届き、遅れてガンツさんの槍が魔王の胸に突き刺さる。海里にぶった切られた腕は実体化したからかそのまま地面に落ちていて、身体に戻ることはなかった。
必死でハイパーポーションを片手に走り回る。俺に出来ることって本当に少なすぎて辛い。
既に俺の攻撃パターンは読まれてるみたいで、聖短剣を手にした瞬間ロックオンされるのが辛い。でもこれがないと発動しないのが痛い。だったら、と回復役に回る。今度こそ薬師の出番だ。とはいえ、手持ちのアイテムを使って回るだけ。そばに行かないとかけることも出来ないから、更にリスクは上がるし、ヴィデロさんも振り回される状態になる。
剣で斬られるとヴィデロさんもしっかりとHPは減るから、切られた瞬間回復をして、次の人の元に走る。
絶対聖魔法での回復の方が速いのに!
と走りながら短剣を握った瞬間、目の前に魔王が現れた。無意識で短剣を構えてしまったせいか、その短剣が魔王の身体に吸い込まれていった。
短剣で攻撃しちゃった……!
一瞬パニックに陥って、思わず詠唱を唱えてしまう。自分でも何の詠唱なのか自覚しないまま口から出てくる詠唱を唱え終わると同時に魔王の剣が脇腹に刺さる。切り刻まれたら一発でHPなくなってたはずだから、刺されただけでよかった、と思ったのもつかの間、目の前の魔王が本当に間近で咆哮を上げた。
「うわ……っ!」
圧に負けて後ろに弾かれた俺は、ヴィデロさんに受け止められて顔を上げた。
すると手元の短剣からパキっと小さな音がした。
見下ろすと、刃の所に絡まっていた蔦の模様の一つにひびが入っていた。
もしかして、直接攻撃しちゃったから。
魔王はさっきの聖魔法が効いたのか、少しだけ鈍くなった動きで追い打ちをかけようとこっちに向かったところ、まだ戦える皆に攻撃されて俺に止めを刺すことを断念したようだった。
その頃には雄太も復活してきたけれど、両手剣を両手で持っていたので、さっきの剣はもうだめなんだってことが分かった。真っ二つだったもんね。
ヴィルさんはクラッシュに死に戻った人たちがそろそろ復活してるから迎えに行ってきて欲しい旨を伝えている。
クラッシュは頷いて魔法陣を描いていた。
と思った瞬間に今度はユキヒラがHPを削られていた。
セイジさんが蘇生の魔法陣を飛ばしてたけれど、その後ふらついてたから、あれはとんでもなく魔力を食う魔法陣だってことがわかる。そういえばさっき俺とユーリナさんを生き返らせた後回復する余裕あったっけ。今度はセイジさんが魔力欠乏でヤバいかも。マジックハイパーポーションは持ってるかな。一本や二本じゃ絶対に足りないのはわかってるけど。
隙を見てハイパーポーションを飲んで腹にかけて復活した俺は、魔法陣魔法を使ってセイジさんの所に移動しようとして、ブワッと膨れ上がる魔王からの圧力に足を止めた。
咆哮上げてないのに何で足が進まないんだ。
まるでスローモーションの様な自分の動きに歯噛みしていると、片腕の魔王の姿がぶれた。
呻きと共に勇者の身体が飛ぶ。そして、ユイの身体も。雄太は堪えたけれど、手に持った大剣はまたしてもひびが入っていた。
ヴィルさんは盾で防いでいたけれど、その後ろには膝をついているセイジさんがいた。そして。
目の前に頽れるヴィデロさんが、俺の目に入った。
俺自身も魔王に攻撃を受けてて、HPギリギリになってたけど。
そんなことはもうどうでもよかった。
チラリと視界の端っこにあるパーティーメンバーのHPに視線を向ける。ヴィルさんももう半分を切っていて、ほぼ全員満身創痍だった。魔王のHPは残りHPバー半分を切っている。こんなところで全滅って勿体なさ過ぎる。
どうしたら。どうしよう。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。