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681、今までのこと、これからのこと
ヴィルさんが行ってしまうと、俺とヴィデロさんは顔を見合わせた。
変わらずかっこいいヴィデロさんはじっと俺を見下ろすと、そっと俺の頬に手を添えた。優しく撫でるようなしぐさは良くマックにもやっていたしぐさで、ちょっとじわっとする。
「ヴィデロさん、大変だったんでしょ。怪我しなかった? どこもなんともない? こっちにはポーションとかああいう便利な薬はないし魔法もないから、治すのは大変なんだよ」
「ああ、大丈夫だ」
「道、どんなだった? サラさんにちょっとだけ聞いたけど、サラさんが手助けしたんだって?」
「ああ。彼女が支えてくれなかったら奈落に落ちていたな」
こともなげにさらっとそんなことを言うヴィデロさんに青くなっていると、ヴィデロさんはスッと目を細めた。
「途中、頻繁に俺を気遣うマックの声が聞こえていたんだ。あの道を歩いていると、時間の概念がなくなってしまって、どれだけの時間あの道を進んでいるのか、さっぱりわからなくなりそうになっていて。進んでも進んでも暗い中で光の道のみで、もう最後までたどり着けないんじゃないかという考えすら浮かんできた。でも、マックの声で意識を保てた。それに途中闇の魔物が出て来たけれど、あれはいい気晴らしになったし、自分はまだ生きてるんだと実感できて逆によかった」
ヴィデロさんはすっかり冷めてしまったヴィルさんの淹れてくれたお茶を口に含むと、ふわっと目元を和ませた。
「マックの声が聞こえていたから、ああ、俺は今まさにマックの元に行こうとしているんだと意識が持てた。そして、叫び声のような泣き声のような「逢いたい」という声があの空間に響いた瞬間、道が二つに分かれたんだ。一つは、今まで通り平坦で長い道、もう一つは近道だっていうのが感覚でわかった。もちろん、すぐにでも辿り着きたいから近道を選んだんだけど。闇の魔物の出現頻度が格段に上がって、更に道は消えたり険しい坂道になったりと、今度は感覚が狂う程の平和な道とは程遠い物になったんだ。そこで、突然消えた道で、彼女に助けてもらって、あの時……」
ふとヴィデロさんは、背中の方に首を巡らせた。
肩甲骨付近を気にしてるみたいに腕を後ろに回して、首を傾げる。
「いきなり背中が熱くなって、良く知っている温かい魔力に包まれたと思ったら、翼が生えたんだ。これはと思って彼女と共に道に戻ったんだろうな」
「ヴィデロさん、それ、多分俺の胸にあった刺青だよ」
「刺青? あの綺麗な?」
「うん。魔王討伐に出る直前さ、胸がいきなり熱くなったんだけど、その後刺青がないことに気付いてさ。海里とブレイブがあの愛情ゲージ付きのアクセサリーでスキルのやり取りがあったことを教えてくれたから、もしかしてヴィデロさんの所に行ったのかなって」
ブレイブはここに蔦みたいな刺青が出来てたんだよ、と腕を上げると、ヴィデロさんはそうかとすごく素敵に微笑んだ。好き。
「じゃあ、離れていても俺はマックに助けられていたってことだな。ありがとう。愛してる」
直に生身で聞く「愛してる」が胸に刺さる。致命傷だ。俺、今マックじゃないんだよ。健吾なんだよ。
思わず顔を押さえて悶えると、ヴィデロさんが下から覗き込むようにして「嫌か?」と訊いてきた。
「嫌じゃない……! 胸が苦しいくらい嬉しい……俺も好き……」
「ケンゴ……可愛い」
この姿で! 可愛い貰っちゃったよ! ああああ、ヴィデロさん、好き。
「そう、道の話の続きだな。あの後はすぐに抜けられて、気付いたら訳の分からない魔道具……ではなくて、コンピュータ、が沢山ある部屋にいたんだ。そこには、目の前には、兄がいて」
「ヴィルさんはヴィデロさんをお出迎えで来たんだ……羨ましい」
「ケンゴは魔王の討伐に行くという大変な時だっただろ」
「そうだけど」
ちょっとだけ口が尖ってしまった俺に、ヴィデロさんが優しく微笑む。そして、肩に腕を回して、俺の身体をそっと抱き寄せた。
「間に合ってよかった。どうしても、マックと一緒に魔王の所に行きたかったんだ。ちょっと遅刻してしまったけどな」
ごめんな、とヴィデロさんは謝って、俺の頭にキスをした。マックとしてならいつも受けてるキスだけど。なんか、なんか。
顔が熱くなる。今ログインしてないんだよ。健吾としては、誰とも何もしたことないんだよ。それを、ヴィデロさんにキス! 頭にだけど!
もう一度可愛いというヴィデロさんの声が聞こえてきたので、俺可愛くないよ、と反論と共に顔を上げると、ちゅ、と軽く唇にキスをされた。
ブワッと顔が赤くなる。
向こうでは何度も深いものから浅いものまでしてるけど!!
俺、俺、ヴィデロさんにファーストキス捧げちゃった!
顔を覆って熱い頬を隠して悶えると、ヴィデロさんもまた、さっきみたいに顔を片手で覆ってしまった。
「……ケンゴが本当に動いて喋って……キスで真っ赤に……くそ、可愛い」
小さく呟かれたヴィデロさんの言葉は、めちゃくちゃくっついてる俺にはしっかりと聞こえてしまって、俺はさらに悶えたのだった。俺、許容範囲だった! よかった! ほんとよかった!
こっちに着いた後、ヴィルさんは早速ヴィデロさんを部屋に連れて来て、ギアを被せて有無を言わさずログインさせたらしい。自分が使ったような裏技を使って、トレに出れるように。
ヴィルさんの家の前にログインすると、ヴィルさんは早速ヴィデロさんに色々とレクチャーしたらしい。ちなみにアバター製作時は『スキャンした状態でログイン』にYESを押せとだけ言ったらしい。文字は英語なら読めるからと、ヴィデロさんのものは英語表記だって。俺は英語力は学校のテストが50点から70点に上がったくらいしか身についてなかったから、溜め息も出なかった。でもヴィデロさんの荷物の中には、アリッサさんの手記がちゃんとあるのは知ってる。全部英語なのも。それをヴィデロさんがちゃんと読めるっていうのは教えてもらってたし。もう、ヴィデロさんもアリッサさんの子だよね。優秀な血は争えない。
スキルを確認したり、フレンド登録したり、アイテムの出し方とかスキルの出し方とか、地図の見方とか色々教わったんだって。
そうこうしている間にクラッシュが二人を迎えに来たから、一度ジャル・ガーさんの所に預けていた荷物を取りに行って、そこから魔王の所に跳んだんだとか。二人は死に戻ったらトレに戻ることになるところだったんだって。だから死んだら面倒だから死んでも死ぬなよ、とわけのわからないことをヴィルさんに言われたんだとヴィデロさんは苦笑した。何その無理難題。
鎧はヴィルさんが取りに行って、入れない自分の家にヴィデロさんはちょっとだけ落ち込んだんだとか。ごめんなさい。そういうところ、全然思い至らなかったよ。逢ってもいなかったからフレンド登録もできなかったんだけどね。
それよりも。
これからのことだよ。
「ヴィルさんに言われてたけど、これからヴィデロさんは俺が借りてる部屋に住……」
むんだよね、と続けようとして、ヴィデロさんに「いや」と首を振られた。
「兄のこの部屋に置いてもらう。ここではまだ、俺とケンゴは婚姻の儀を上げていないし、ここにはケンゴのご両親がいるんだろ。それに、今は兄がケンゴの身柄を預かっているっていうじゃないか。そんな中、気付いたら一緒に住んでいたなんてけじめのないことは出来ない。だから、少し待っててくれないか? ちゃんとケンゴと婚姻できる身分になったら、今度こそしっかりと話し合おう」
「ヴィデロさん……」
簡単にこれからはずっと一緒にいれるんだ、なんて思ってた俺はなんて浅はかなんだろ。
ちょっと反省しつつ頷くと、ヴィデロさんはもう一度俺の頭にキスを落とした。
あ、でも待って。じゃあ、ヴィデロさんと愛し合うのは……もしかして、全部手続きとか色々が済んでから……?
もし欲求不満になったら、ヴィデロさんにギアを被ってもらうしかないな。
変わらずかっこいいヴィデロさんはじっと俺を見下ろすと、そっと俺の頬に手を添えた。優しく撫でるようなしぐさは良くマックにもやっていたしぐさで、ちょっとじわっとする。
「ヴィデロさん、大変だったんでしょ。怪我しなかった? どこもなんともない? こっちにはポーションとかああいう便利な薬はないし魔法もないから、治すのは大変なんだよ」
「ああ、大丈夫だ」
「道、どんなだった? サラさんにちょっとだけ聞いたけど、サラさんが手助けしたんだって?」
「ああ。彼女が支えてくれなかったら奈落に落ちていたな」
こともなげにさらっとそんなことを言うヴィデロさんに青くなっていると、ヴィデロさんはスッと目を細めた。
「途中、頻繁に俺を気遣うマックの声が聞こえていたんだ。あの道を歩いていると、時間の概念がなくなってしまって、どれだけの時間あの道を進んでいるのか、さっぱりわからなくなりそうになっていて。進んでも進んでも暗い中で光の道のみで、もう最後までたどり着けないんじゃないかという考えすら浮かんできた。でも、マックの声で意識を保てた。それに途中闇の魔物が出て来たけれど、あれはいい気晴らしになったし、自分はまだ生きてるんだと実感できて逆によかった」
ヴィデロさんはすっかり冷めてしまったヴィルさんの淹れてくれたお茶を口に含むと、ふわっと目元を和ませた。
「マックの声が聞こえていたから、ああ、俺は今まさにマックの元に行こうとしているんだと意識が持てた。そして、叫び声のような泣き声のような「逢いたい」という声があの空間に響いた瞬間、道が二つに分かれたんだ。一つは、今まで通り平坦で長い道、もう一つは近道だっていうのが感覚でわかった。もちろん、すぐにでも辿り着きたいから近道を選んだんだけど。闇の魔物の出現頻度が格段に上がって、更に道は消えたり険しい坂道になったりと、今度は感覚が狂う程の平和な道とは程遠い物になったんだ。そこで、突然消えた道で、彼女に助けてもらって、あの時……」
ふとヴィデロさんは、背中の方に首を巡らせた。
肩甲骨付近を気にしてるみたいに腕を後ろに回して、首を傾げる。
「いきなり背中が熱くなって、良く知っている温かい魔力に包まれたと思ったら、翼が生えたんだ。これはと思って彼女と共に道に戻ったんだろうな」
「ヴィデロさん、それ、多分俺の胸にあった刺青だよ」
「刺青? あの綺麗な?」
「うん。魔王討伐に出る直前さ、胸がいきなり熱くなったんだけど、その後刺青がないことに気付いてさ。海里とブレイブがあの愛情ゲージ付きのアクセサリーでスキルのやり取りがあったことを教えてくれたから、もしかしてヴィデロさんの所に行ったのかなって」
ブレイブはここに蔦みたいな刺青が出来てたんだよ、と腕を上げると、ヴィデロさんはそうかとすごく素敵に微笑んだ。好き。
「じゃあ、離れていても俺はマックに助けられていたってことだな。ありがとう。愛してる」
直に生身で聞く「愛してる」が胸に刺さる。致命傷だ。俺、今マックじゃないんだよ。健吾なんだよ。
思わず顔を押さえて悶えると、ヴィデロさんが下から覗き込むようにして「嫌か?」と訊いてきた。
「嫌じゃない……! 胸が苦しいくらい嬉しい……俺も好き……」
「ケンゴ……可愛い」
この姿で! 可愛い貰っちゃったよ! ああああ、ヴィデロさん、好き。
「そう、道の話の続きだな。あの後はすぐに抜けられて、気付いたら訳の分からない魔道具……ではなくて、コンピュータ、が沢山ある部屋にいたんだ。そこには、目の前には、兄がいて」
「ヴィルさんはヴィデロさんをお出迎えで来たんだ……羨ましい」
「ケンゴは魔王の討伐に行くという大変な時だっただろ」
「そうだけど」
ちょっとだけ口が尖ってしまった俺に、ヴィデロさんが優しく微笑む。そして、肩に腕を回して、俺の身体をそっと抱き寄せた。
「間に合ってよかった。どうしても、マックと一緒に魔王の所に行きたかったんだ。ちょっと遅刻してしまったけどな」
ごめんな、とヴィデロさんは謝って、俺の頭にキスをした。マックとしてならいつも受けてるキスだけど。なんか、なんか。
顔が熱くなる。今ログインしてないんだよ。健吾としては、誰とも何もしたことないんだよ。それを、ヴィデロさんにキス! 頭にだけど!
もう一度可愛いというヴィデロさんの声が聞こえてきたので、俺可愛くないよ、と反論と共に顔を上げると、ちゅ、と軽く唇にキスをされた。
ブワッと顔が赤くなる。
向こうでは何度も深いものから浅いものまでしてるけど!!
俺、俺、ヴィデロさんにファーストキス捧げちゃった!
顔を覆って熱い頬を隠して悶えると、ヴィデロさんもまた、さっきみたいに顔を片手で覆ってしまった。
「……ケンゴが本当に動いて喋って……キスで真っ赤に……くそ、可愛い」
小さく呟かれたヴィデロさんの言葉は、めちゃくちゃくっついてる俺にはしっかりと聞こえてしまって、俺はさらに悶えたのだった。俺、許容範囲だった! よかった! ほんとよかった!
こっちに着いた後、ヴィルさんは早速ヴィデロさんを部屋に連れて来て、ギアを被せて有無を言わさずログインさせたらしい。自分が使ったような裏技を使って、トレに出れるように。
ヴィルさんの家の前にログインすると、ヴィルさんは早速ヴィデロさんに色々とレクチャーしたらしい。ちなみにアバター製作時は『スキャンした状態でログイン』にYESを押せとだけ言ったらしい。文字は英語なら読めるからと、ヴィデロさんのものは英語表記だって。俺は英語力は学校のテストが50点から70点に上がったくらいしか身についてなかったから、溜め息も出なかった。でもヴィデロさんの荷物の中には、アリッサさんの手記がちゃんとあるのは知ってる。全部英語なのも。それをヴィデロさんがちゃんと読めるっていうのは教えてもらってたし。もう、ヴィデロさんもアリッサさんの子だよね。優秀な血は争えない。
スキルを確認したり、フレンド登録したり、アイテムの出し方とかスキルの出し方とか、地図の見方とか色々教わったんだって。
そうこうしている間にクラッシュが二人を迎えに来たから、一度ジャル・ガーさんの所に預けていた荷物を取りに行って、そこから魔王の所に跳んだんだとか。二人は死に戻ったらトレに戻ることになるところだったんだって。だから死んだら面倒だから死んでも死ぬなよ、とわけのわからないことをヴィルさんに言われたんだとヴィデロさんは苦笑した。何その無理難題。
鎧はヴィルさんが取りに行って、入れない自分の家にヴィデロさんはちょっとだけ落ち込んだんだとか。ごめんなさい。そういうところ、全然思い至らなかったよ。逢ってもいなかったからフレンド登録もできなかったんだけどね。
それよりも。
これからのことだよ。
「ヴィルさんに言われてたけど、これからヴィデロさんは俺が借りてる部屋に住……」
むんだよね、と続けようとして、ヴィデロさんに「いや」と首を振られた。
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「ヴィデロさん……」
簡単にこれからはずっと一緒にいれるんだ、なんて思ってた俺はなんて浅はかなんだろ。
ちょっと反省しつつ頷くと、ヴィデロさんはもう一度俺の頭にキスを落とした。
あ、でも待って。じゃあ、ヴィデロさんと愛し合うのは……もしかして、全部手続きとか色々が済んでから……?
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手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。