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682、いつもあんな顔させちゃうんだ
それほど間を置かずに、ヴィルさんが俺たちを迎えに来た。
ヴィルさんに連れられて、職場に行くと、佐久間さんがよ、と手を上げた。それにヴィデロさんが同じようにして応えたのを見て、すでに佐久間さんと仲良くなってるヴィデロさんはやっぱり門番さんが天職だったのかなとかふと思う。
俺のせいで職場どころか住む世界まで変わっちゃって、ほんとによかったのかな、とヴィデロさんを見上げると、ヴィデロさんは俺の視線に気付いたのか、俺を見下ろしてフワッと笑った。
「おーおー顔緩めちゃって。イケメンが台無しだぞ」
「ケンゴの前だから仕方ない」
佐久間さんの揶揄いにきりっと答えたヴィデロさん。ヴィルさんは楽しそうに笑って、佐久間さんもヴィデロさんの答えに吹き出した。
「聞きしに勝るラブラブっぷりで。まあ、普段の健吾の言動からわかってたけどな。独り身には堪えるよな、ヴィル」
「俺に振らないでくれ。俺は別に一人でも問題ないからな」
「お前ら足して二で割ったら丁度いいんじゃねえの?」
取り合えずこっち来いよ、と佐久間さんに先導されて、比較的広い机のモニターの前に移動すると、佐久間さんがモニターを起動した。
「とりあえず健吾がやられたあとの映像を見せてやるから。ほんと健吾面白いくらいいいところ見逃してるぞ」
「言わないでください!」
映された画面の中では、ヴィデロさんがめちゃくちゃ焦った顔をしていた。
そして、ヴィルさんが宥める声と、クラッシュが宥める声が入っている。
『ヴィデロ、落ち着きなよ! マックはすぐ生き返るんだろ!』
『っ、そうだけど……っ!』
『ヴィデロ、もう勇者が止めを刺した。ここで君まで離脱したら、君まで経験値とドロップアイテムが手に入らなくなる。経験値は仕方ないにしても、せめて健吾に魔王討伐のドロップアイテムを渡したくはないか? 迎えに行くよりもよほど有意義だ』
『……っ、くそ、何でこんな平然と……!』
『君だってもう死に戻り出来るんだ。君よりよほど健吾は慣れているから、大丈夫だ』
『迎えに』
『マックは一人で転移できるから。ヴィデロ、見てよ。この光景、マックに教えてあげなくていいの? 魔王が、斃れたよ』
クラッシュが指さした方向には、ブワッと黒い靄になる魔王と、クリアオーブを取り出したセイジさんが映っていた。
勇者が覇王の剣を振り抜き、魔王の身体が真っ二つになる。
途端に黒い霧になった魔王は、セイジさんの魔法陣魔法により、宙に消えることはなかった。そして、光を纏いながら宙に浮くクリアオーブに吸い込まれていく。
まるで雲の切れ間から光が溢れる様に、靄がかすんでいく。
透明だったクリアオーブは、段々と黒くなり、最後は黒曜石のオーブみたいに真っ黒な球になった。
光り輝いてクリアオーブを包み込んでいた魔法陣がゆっくりと光を失い、オーブもまた、静かに光を消していった。
そこからは、俺が見た光景だった。この時すでに経験値とドロップアイテム貰ってたんだね。それにしても三人のやり取りが。
めちゃくちゃ凄い光景だった。
あの魔法陣の光とオーブの光が、なんかどこかのテーマパークのプロジェクションマッピングみたいだった。経験値とかそんな物よりも、こんな光景を見逃したのがちょっと悔しい。
俺は隣にいたヴィデロさんの服の裾をきゅっと握った。
「心配かけて、ごめんね」
やっぱりあんな顔をさせちゃった。ヴィデロさんにはいつでも笑っていて欲しいのに。ダメだなあ俺、未だに詰めが甘い。成長してないよね……。
視線を落とすと、ふわりと頭に手が置かれた。
「守りたいと言いながら、何度も目の前でマックを失った俺が、まだまだ弱いだけだ」
見上げたヴィデロさんも、少しだけシュンとした顔をしていた。
その顔に胸が高鳴る。もう! ヴィデロさん、好き! 弱くないよ! 俺がめためたに弱いだけだよ! 自分の身も守れないほど弱くてごめんね、ホントは俺がヴィデロさんを守りたいくらいなのに。
プツンと映像が切れて、佐久間さんが振り返る。
手にはパソコンから抜き取ったUSBメモリがあり、それをフリフリと見せつけている。
「ヴィル、この映像、どうするんだ? 社長に売りつけるのか?」
「そうだな。編集して、関係者の許可を取ったら売りつける。それをどうADOに生かすかは、母次第だな」
「社長ならめっちゃ高く買い取ってくれそうだよな。弟君一人養えるくらいの金はポンと出しそう」
「出すだろうな。向こうでも健吾経由で小遣いを渡そうと必死だったからな。ヴィデロの母でありたいんだろ」
「ヴィルの母親でもあるだろ」
「俺には俺の距離とスタンスがあるから問題ないな」
「お前弟溺愛だもんな。健吾含め」
「いいだろ。いいお兄ちゃんになるのが夢だったんだよ。佐久間から見てもいいお兄ちゃんしてるだろ、俺は」
「はいはい、してるしてる。でも上司としてはどうかなあ。部下である健吾を朝から晩までこき使ってるだろ。飯づくりとか。あ、健吾、明日の朝飯はホッケの焼き魚がいい。在庫なければ車出すけど」
ちゃっかり朝食リクエストしてきた佐久間さんは、チラリとヴィデロさんを見た後「まあ今日の夜は弟君の好きなの作ってやれよ」と珍しく夕食のメニューを譲った。
そっか。そうだ。ヴィデロさんにとってはこっちでの初ご飯になるんだ。味覚に合うといいんだけど。
「ヴィデロさんは、何食べた……」
ヴィデロさんにそう聞いている途中に、俺の携帯端末がけたたましく音を立てた。
ドキッとしながらポケットから携帯端末を取り出すと、画面には『雄太』と出ていた。メールじゃなくて通話って珍しい。
「はい」
通話オンにして電話に出た瞬間、雄太の『おい健吾!』という怒鳴り声に近い声が聞こえてきた。
漏れ出た音が、フロアに響く。
『おま、何爆弾投げ付けたままトンズラこいてんだよ』
皆、俺に注目していた。電話越しに怒鳴られてるからかな。
ヴィルさんに連れられて、職場に行くと、佐久間さんがよ、と手を上げた。それにヴィデロさんが同じようにして応えたのを見て、すでに佐久間さんと仲良くなってるヴィデロさんはやっぱり門番さんが天職だったのかなとかふと思う。
俺のせいで職場どころか住む世界まで変わっちゃって、ほんとによかったのかな、とヴィデロさんを見上げると、ヴィデロさんは俺の視線に気付いたのか、俺を見下ろしてフワッと笑った。
「おーおー顔緩めちゃって。イケメンが台無しだぞ」
「ケンゴの前だから仕方ない」
佐久間さんの揶揄いにきりっと答えたヴィデロさん。ヴィルさんは楽しそうに笑って、佐久間さんもヴィデロさんの答えに吹き出した。
「聞きしに勝るラブラブっぷりで。まあ、普段の健吾の言動からわかってたけどな。独り身には堪えるよな、ヴィル」
「俺に振らないでくれ。俺は別に一人でも問題ないからな」
「お前ら足して二で割ったら丁度いいんじゃねえの?」
取り合えずこっち来いよ、と佐久間さんに先導されて、比較的広い机のモニターの前に移動すると、佐久間さんがモニターを起動した。
「とりあえず健吾がやられたあとの映像を見せてやるから。ほんと健吾面白いくらいいいところ見逃してるぞ」
「言わないでください!」
映された画面の中では、ヴィデロさんがめちゃくちゃ焦った顔をしていた。
そして、ヴィルさんが宥める声と、クラッシュが宥める声が入っている。
『ヴィデロ、落ち着きなよ! マックはすぐ生き返るんだろ!』
『っ、そうだけど……っ!』
『ヴィデロ、もう勇者が止めを刺した。ここで君まで離脱したら、君まで経験値とドロップアイテムが手に入らなくなる。経験値は仕方ないにしても、せめて健吾に魔王討伐のドロップアイテムを渡したくはないか? 迎えに行くよりもよほど有意義だ』
『……っ、くそ、何でこんな平然と……!』
『君だってもう死に戻り出来るんだ。君よりよほど健吾は慣れているから、大丈夫だ』
『迎えに』
『マックは一人で転移できるから。ヴィデロ、見てよ。この光景、マックに教えてあげなくていいの? 魔王が、斃れたよ』
クラッシュが指さした方向には、ブワッと黒い靄になる魔王と、クリアオーブを取り出したセイジさんが映っていた。
勇者が覇王の剣を振り抜き、魔王の身体が真っ二つになる。
途端に黒い霧になった魔王は、セイジさんの魔法陣魔法により、宙に消えることはなかった。そして、光を纏いながら宙に浮くクリアオーブに吸い込まれていく。
まるで雲の切れ間から光が溢れる様に、靄がかすんでいく。
透明だったクリアオーブは、段々と黒くなり、最後は黒曜石のオーブみたいに真っ黒な球になった。
光り輝いてクリアオーブを包み込んでいた魔法陣がゆっくりと光を失い、オーブもまた、静かに光を消していった。
そこからは、俺が見た光景だった。この時すでに経験値とドロップアイテム貰ってたんだね。それにしても三人のやり取りが。
めちゃくちゃ凄い光景だった。
あの魔法陣の光とオーブの光が、なんかどこかのテーマパークのプロジェクションマッピングみたいだった。経験値とかそんな物よりも、こんな光景を見逃したのがちょっと悔しい。
俺は隣にいたヴィデロさんの服の裾をきゅっと握った。
「心配かけて、ごめんね」
やっぱりあんな顔をさせちゃった。ヴィデロさんにはいつでも笑っていて欲しいのに。ダメだなあ俺、未だに詰めが甘い。成長してないよね……。
視線を落とすと、ふわりと頭に手が置かれた。
「守りたいと言いながら、何度も目の前でマックを失った俺が、まだまだ弱いだけだ」
見上げたヴィデロさんも、少しだけシュンとした顔をしていた。
その顔に胸が高鳴る。もう! ヴィデロさん、好き! 弱くないよ! 俺がめためたに弱いだけだよ! 自分の身も守れないほど弱くてごめんね、ホントは俺がヴィデロさんを守りたいくらいなのに。
プツンと映像が切れて、佐久間さんが振り返る。
手にはパソコンから抜き取ったUSBメモリがあり、それをフリフリと見せつけている。
「ヴィル、この映像、どうするんだ? 社長に売りつけるのか?」
「そうだな。編集して、関係者の許可を取ったら売りつける。それをどうADOに生かすかは、母次第だな」
「社長ならめっちゃ高く買い取ってくれそうだよな。弟君一人養えるくらいの金はポンと出しそう」
「出すだろうな。向こうでも健吾経由で小遣いを渡そうと必死だったからな。ヴィデロの母でありたいんだろ」
「ヴィルの母親でもあるだろ」
「俺には俺の距離とスタンスがあるから問題ないな」
「お前弟溺愛だもんな。健吾含め」
「いいだろ。いいお兄ちゃんになるのが夢だったんだよ。佐久間から見てもいいお兄ちゃんしてるだろ、俺は」
「はいはい、してるしてる。でも上司としてはどうかなあ。部下である健吾を朝から晩までこき使ってるだろ。飯づくりとか。あ、健吾、明日の朝飯はホッケの焼き魚がいい。在庫なければ車出すけど」
ちゃっかり朝食リクエストしてきた佐久間さんは、チラリとヴィデロさんを見た後「まあ今日の夜は弟君の好きなの作ってやれよ」と珍しく夕食のメニューを譲った。
そっか。そうだ。ヴィデロさんにとってはこっちでの初ご飯になるんだ。味覚に合うといいんだけど。
「ヴィデロさんは、何食べた……」
ヴィデロさんにそう聞いている途中に、俺の携帯端末がけたたましく音を立てた。
ドキッとしながらポケットから携帯端末を取り出すと、画面には『雄太』と出ていた。メールじゃなくて通話って珍しい。
「はい」
通話オンにして電話に出た瞬間、雄太の『おい健吾!』という怒鳴り声に近い声が聞こえてきた。
漏れ出た音が、フロアに響く。
『おま、何爆弾投げ付けたままトンズラこいてんだよ』
皆、俺に注目していた。電話越しに怒鳴られてるからかな。
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手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。