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707、テンション上がる!
「ヴィデロさん、どうしよう。皆を呼ぶにしても一人足りないし、下を手薄にするとガンガン魔物が柱を壊しに来るし」
ちらりと下を覗いて、あまりの高さに身震いしながら様子を見ると、下はもう一人も上に来れないような状態だった。魔物がどんどん生み出されていくんだもん。あの羽根、魔素だまりと一緒かな。迷惑な。
ひええ、と思いながら頭を引っ込めると、ヴィデロさんはフッと口元を上げた。
「もしよければ、マックのその手についているドイリーを貸してもらえないか? それがあれば何とかなるかもしれない」
「え、うん。どうするの?」
首を傾げながら腕のドイリーを外して、ヴィデロさんの腕に回……そうとして、二の腕には回せなかったので手首部分につける。鎧を着ているとはいえ、俺の腕とヴィデロさんの手首が同じ……いや、俺の腕の方が細いとか。なんてかっこいい腕なんだ。好き。
巻き終えると、ヴィデロさんは指を動かして宙を見た。
「ああ、こういう風に表されるのか。よし」
一人頷いて、スキル名を呟く。するとまた背中にふわっと羽根が生えた。
「この世の半分を司る闇よ、その闇に俺を映し、力となれ。『闇人形シャドウパペット』」
詠唱した瞬間、ヴィデロさんが増えた。
足場が狭かったのか、羽根を動かして宙に浮いてるヴィデロさんもいる。
その数、8人。
はちにんのヴィデロさん!!
羽根の生えた8人のヴィデロさんに囲まれて、俺のテンションも一気に上がった。
「すごい! これなら一気に取れるね! ヴィデロさん凄い! かっこいい! いっぱいヴィデロさんがいて最高!」
俺のテンション高めの叫びに、ヴィデロさんが笑う。皆影だから黒いんだけど、もともと鎧が黒いせいか全員雰囲気は一緒。皆一斉に笑ったよ。最高だよ。ここに来たかいがあったよ!
「マックはあの広い場所にいてくれ。今運ぶから」
そう言うと、本体のヴィデロさんが俺を抱き上げて、入り口の上の文字があるところに連れて行った。棚があるから、余計に下からは見えなかったんだ。なるほどと思いながら下の様子を見る。
不思議と、ヴィデロさんの腕の中にいる時は、下を見ても怖いとは思わなかった。
文字が光る目の前に俺を下ろすと、ヴィデロさんは一斉に柱に向かって飛んでいった。壮観だ。録画録画。
全員がスタンバイして、何の合図もなく一斉に持ち上げる。
すると、欠片の下にあった魔法陣が浮き上がり始めて、ヴィデロさんの手にした欠片に纏わりついた。なるほど、力失われないってことか。これ、飛べる人がいなかったらその場で詰んでた仕掛けだよな。幸いにも俺とユキヒラ以外全員跳べるけど。そして俺とユキヒラ以外全員分身出来るけど!
もしかして下でも分身して一斉にフルボッコにすれば簡単に終わるんじゃないかな!
そっと雄太にそうチャットを送ると、雄太が上を向いて「こんな時にチャット送るなよ!」と怒鳴りながら目の前の魔物を叩き潰した。
そして、あっという顔をして、ヴィデロさんが唱えたのと同じ詠唱を口にして、雄太が3人になった。
手につかなかった魔物を雄太3人が追い詰める。おお。一気に形勢逆転してる。
雄太の行動を見ていた海里とブレイブも同じことをし始めて、一気に下はカオスと化した。
そんなことをしている間にも、ヴィデロさんが次々と俺の周りに降り立った。何この幸せ空間。戦闘中なのにこんなに幸せでいいのかな俺。
ヴィデロさん一人一人におかえりを言っていると、全員が肩を震わせた。
欠片を全て組み合わせると、丁度俺が使ってる錬金釜の大きさになった。
でもこれをどうやって元の姿に戻すんだろ。
俺はもう一度クエスト欄を開いて、じっくりと読んでみた。
『魔王が倒れた今 根源の『神の御使いの欠片』が新たなる力を求めようとしている
『神の御使いの欠片』の力を削ぎ 新たなる魔王誕生を阻止せよ』
欠片はこれで合ってるんだろ。下のあの女神はどの立ち位置なんだろ。力を集めてるのがあれなのかな。倒していいのかどうかもわからないのが痛いところだ。
一応鑑定眼で見てみると、なんだかすごくヤバいことが書かれていた。
『上級錬金釜の欠片:神の御使いの欠片と呼ばれる世界に禍をもたらした欠片 人の欲望を読み解く力に長けその力を利用し自らの糧としてきた釜の欠片 闇に染まっており今なお力を貯めている 浄化しない限り本来の力を発揮することはない 分身浄化によりこの欠片も浄化される 錬金素材』
ヤバい。これ、錬金素材だ。なんだってこんなものが錬金素材なんだ。
しかも分身を浄化するって……下のあの女神を浄化しないとこれ自体何をしても意味がないってことじゃないか。
下に降りると容赦なく魔物が襲ってくるから、悠長に浄化なんて出来ない気がするんだけど。どうしよう。
「もう、聖水でもぶっかけてみようかな!」
やけになって魔法陣魔法を描いて、女神の上に飛ばす。
高濃度の雨はちゃんと女神の上に降りそそぎ、女神を濡らしていく。
女神は特に攻撃じゃない雨は気にしてないのか、雨をどうにかすることもせずに魔物を生み出している。
ちょっと遠いけど、大丈夫かな。
そう思いながら、俺は手を組んで、祈りを唱えた。
雨がキラキラと光りはじめる。
くらえ、聖水ランクSの雨!
と祈りを唱えながら女神を見たら、心なしか気持ちよさそうな顔をした。あああ、女神の眷属! 羽根は黒いままだけど、表情がなんか恍惚としたものになってる!
「そのまま祈ってろ!」
組んだ手を離そうとした瞬間、ユキヒラが叫ぶ。
え、聖水雨、もっとした方がいいの? 魔物も変わらず生み出してるし、女神嬉しそうなんだけど。
戸惑いながら祈りを続けると、今度はユキヒラが詠唱を始めた。次々生み出される魔物は、増殖した『高橋と愉快な仲間たち』によって生まれた瞬間から消されている。
ユキヒラは、俺が聞いたこともない聖魔法の詠唱を続けている。こんなに詠唱が長いってどういうこと。
ドキドキしながら祈りを続けていると、ユキヒラが聖剣を構えて上に突き出した。
「『絶対聖域アブソリュートサンクチュアリ』!」
聖剣がその言葉に応えるように強い光を発し、薄暗かった部屋を眩しいほどに照らす。
パアッと闇が消え、なんだかトレの街にいるような心地よさが辺りを包む。
眩しい光が消えても、明るさは変わりなく、部屋の中に電気がついたような感じになった。
「何したの?」
「すげえ今の!」
「俺有利な空間に替える魔法を使った。聖水を媒体にする聖騎士特有の魔法だけど……なんだよこの壊れ性能な聖水はよ……」
興奮する雄太たちにユキヒラが説明してるんだけど、増殖していた『高橋と愉快な仲間たち』はすっかり元に戻っていた。
ってことは……。
俺が恐る恐る後ろを振り向くと、ヴィデロさんも一人になっていた。
ああああ、沢山のヴィデロさんが……消えて……。
がっくりしていると、ヴィデロさんが苦笑しながら「俺一人では満足できないか?」と囁いたので、ぶんぶん首を振ってヴィデロさんの鎧にへばりついた。
一人でも沢山でも大満足です。大好きです。
-・‐・‐・‐・‐・‐・‐・‐
(誰かさんは)忘れてるかもしれませんが、結構緊迫したボス戦最中です
ちらりと下を覗いて、あまりの高さに身震いしながら様子を見ると、下はもう一人も上に来れないような状態だった。魔物がどんどん生み出されていくんだもん。あの羽根、魔素だまりと一緒かな。迷惑な。
ひええ、と思いながら頭を引っ込めると、ヴィデロさんはフッと口元を上げた。
「もしよければ、マックのその手についているドイリーを貸してもらえないか? それがあれば何とかなるかもしれない」
「え、うん。どうするの?」
首を傾げながら腕のドイリーを外して、ヴィデロさんの腕に回……そうとして、二の腕には回せなかったので手首部分につける。鎧を着ているとはいえ、俺の腕とヴィデロさんの手首が同じ……いや、俺の腕の方が細いとか。なんてかっこいい腕なんだ。好き。
巻き終えると、ヴィデロさんは指を動かして宙を見た。
「ああ、こういう風に表されるのか。よし」
一人頷いて、スキル名を呟く。するとまた背中にふわっと羽根が生えた。
「この世の半分を司る闇よ、その闇に俺を映し、力となれ。『闇人形シャドウパペット』」
詠唱した瞬間、ヴィデロさんが増えた。
足場が狭かったのか、羽根を動かして宙に浮いてるヴィデロさんもいる。
その数、8人。
はちにんのヴィデロさん!!
羽根の生えた8人のヴィデロさんに囲まれて、俺のテンションも一気に上がった。
「すごい! これなら一気に取れるね! ヴィデロさん凄い! かっこいい! いっぱいヴィデロさんがいて最高!」
俺のテンション高めの叫びに、ヴィデロさんが笑う。皆影だから黒いんだけど、もともと鎧が黒いせいか全員雰囲気は一緒。皆一斉に笑ったよ。最高だよ。ここに来たかいがあったよ!
「マックはあの広い場所にいてくれ。今運ぶから」
そう言うと、本体のヴィデロさんが俺を抱き上げて、入り口の上の文字があるところに連れて行った。棚があるから、余計に下からは見えなかったんだ。なるほどと思いながら下の様子を見る。
不思議と、ヴィデロさんの腕の中にいる時は、下を見ても怖いとは思わなかった。
文字が光る目の前に俺を下ろすと、ヴィデロさんは一斉に柱に向かって飛んでいった。壮観だ。録画録画。
全員がスタンバイして、何の合図もなく一斉に持ち上げる。
すると、欠片の下にあった魔法陣が浮き上がり始めて、ヴィデロさんの手にした欠片に纏わりついた。なるほど、力失われないってことか。これ、飛べる人がいなかったらその場で詰んでた仕掛けだよな。幸いにも俺とユキヒラ以外全員跳べるけど。そして俺とユキヒラ以外全員分身出来るけど!
もしかして下でも分身して一斉にフルボッコにすれば簡単に終わるんじゃないかな!
そっと雄太にそうチャットを送ると、雄太が上を向いて「こんな時にチャット送るなよ!」と怒鳴りながら目の前の魔物を叩き潰した。
そして、あっという顔をして、ヴィデロさんが唱えたのと同じ詠唱を口にして、雄太が3人になった。
手につかなかった魔物を雄太3人が追い詰める。おお。一気に形勢逆転してる。
雄太の行動を見ていた海里とブレイブも同じことをし始めて、一気に下はカオスと化した。
そんなことをしている間にも、ヴィデロさんが次々と俺の周りに降り立った。何この幸せ空間。戦闘中なのにこんなに幸せでいいのかな俺。
ヴィデロさん一人一人におかえりを言っていると、全員が肩を震わせた。
欠片を全て組み合わせると、丁度俺が使ってる錬金釜の大きさになった。
でもこれをどうやって元の姿に戻すんだろ。
俺はもう一度クエスト欄を開いて、じっくりと読んでみた。
『魔王が倒れた今 根源の『神の御使いの欠片』が新たなる力を求めようとしている
『神の御使いの欠片』の力を削ぎ 新たなる魔王誕生を阻止せよ』
欠片はこれで合ってるんだろ。下のあの女神はどの立ち位置なんだろ。力を集めてるのがあれなのかな。倒していいのかどうかもわからないのが痛いところだ。
一応鑑定眼で見てみると、なんだかすごくヤバいことが書かれていた。
『上級錬金釜の欠片:神の御使いの欠片と呼ばれる世界に禍をもたらした欠片 人の欲望を読み解く力に長けその力を利用し自らの糧としてきた釜の欠片 闇に染まっており今なお力を貯めている 浄化しない限り本来の力を発揮することはない 分身浄化によりこの欠片も浄化される 錬金素材』
ヤバい。これ、錬金素材だ。なんだってこんなものが錬金素材なんだ。
しかも分身を浄化するって……下のあの女神を浄化しないとこれ自体何をしても意味がないってことじゃないか。
下に降りると容赦なく魔物が襲ってくるから、悠長に浄化なんて出来ない気がするんだけど。どうしよう。
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高濃度の雨はちゃんと女神の上に降りそそぎ、女神を濡らしていく。
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と祈りを唱えながら女神を見たら、心なしか気持ちよさそうな顔をした。あああ、女神の眷属! 羽根は黒いままだけど、表情がなんか恍惚としたものになってる!
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組んだ手を離そうとした瞬間、ユキヒラが叫ぶ。
え、聖水雨、もっとした方がいいの? 魔物も変わらず生み出してるし、女神嬉しそうなんだけど。
戸惑いながら祈りを続けると、今度はユキヒラが詠唱を始めた。次々生み出される魔物は、増殖した『高橋と愉快な仲間たち』によって生まれた瞬間から消されている。
ユキヒラは、俺が聞いたこともない聖魔法の詠唱を続けている。こんなに詠唱が長いってどういうこと。
ドキドキしながら祈りを続けていると、ユキヒラが聖剣を構えて上に突き出した。
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パアッと闇が消え、なんだかトレの街にいるような心地よさが辺りを包む。
眩しい光が消えても、明るさは変わりなく、部屋の中に電気がついたような感じになった。
「何したの?」
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興奮する雄太たちにユキヒラが説明してるんだけど、増殖していた『高橋と愉快な仲間たち』はすっかり元に戻っていた。
ってことは……。
俺が恐る恐る後ろを振り向くと、ヴィデロさんも一人になっていた。
ああああ、沢山のヴィデロさんが……消えて……。
がっくりしていると、ヴィデロさんが苦笑しながら「俺一人では満足できないか?」と囁いたので、ぶんぶん首を振ってヴィデロさんの鎧にへばりついた。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。