文字の大きさ
大
中
小
645 / 706
連載
766、意外なゲスト
鳥は水を飲んで満足すると、パタパタと翼をはためかせて飛び立ち、ちょこんとヴィデロさんの肩に乗った。
すごく人に慣れてるのが可愛い。
ヴィルさんも見たことあるみたいだし。でもすごく距離のあるあの神社からここまで来るのって大変じゃなかった? どうやって来たんだろう。
それとも魔素ポイントなら好きに来れるってことかな。でもまた抜け出たってことは、卵の方はどうなってるんだろう。大丈夫なのかな。ヴィデロさんの水で回復してるならいいけど。
ヴィデロさんの肩に乗った鳥を指で撫でると、母さんと父さんが驚いたような顔をしていた。
「すごく懐っこい鳥ねえ。綺麗な色。なんていう鳥かしら」
「青い鳥って言ったら『ルリビタキ』だろう。目もくりくりしていて可愛いなあ」
俺たちも触っていいかな、と父さんが手を伸ばすと、鳥がピィ、と鳴いて、そっとヴィデロさんの首の方に寄り添った。ちょっと怖がってるのかな。はじめましてだもんね。
巫女さんが「よろしいでしょうか」と俺たちを促してきたので、慌てて父さんと母さんが未だハンカチを握りしめているアリッサさんの手を取って外に向かい、皆が出そろったところで、俺たちも白鼻緒の雪駄に足を通した。
石畳に沿って、参列してくれた皆がずらっと並んでいる。
奥の方には正装していない人もいたりするのが目に入るので、その他の人も見に来たんだろうなと思うとちょっと気恥ずかしい。
おめでとうの声を浴びせられながら、ゆっくりとヴィデロさんと共に進んでいく。
ふと、ヴィデロさんの肩に止まっていた鳥が、何かに気付いたようにぴ、と鳴いた。
バサッと羽根を広げて、飛び立っていく。
上空を一度旋回すると、もう一度降りてきた。列の中の一人の元に。
目で追っていると、鳥が下りたのは、高校の担任の先生の肩の上だった。
先生は驚いたような顔をして、肩の鳥を見ている。その手には可愛い赤ちゃんが抱っこされていた。
鳥は一生懸命先生にピィピィ声を掛けていて、傍から見て喋っているように見える。皆携帯端末でその様子を動画で取ってるみたいだけど、俺も手元にあったら是非撮りたかった。
先生はフッと目を細めて鳥を見ると、そのまま赤ちゃんを抱き直して俺の方に視線を向けた。
「本当に年上の美人だったな、郷野。おめでとう。高橋から今日の良き日のことを聞いて、散歩がてら見に来てみたんだ」
「ありがとうございます。先生の子、可愛い」
「おー。サンキュ。それにしても……」
先生はじっとヴィデロさんを見て、何かを言いかけたあと、何も言わずに口を閉じて苦笑した。
「この度はおめでとうございます。今日の良き日にお会いすることが出来てよかったです。ささやかですが、受け取ってください」
先生はヴィデロさんにそう言うと、肩から下げた大きめのカバンから、ご祝儀袋を取り出して、ヴィデロさんに渡した。
ヴィデロさんは微笑しながらその袋を受け取った。
鳥は先生の肩でじっと俺たちを見ている。
ヴィルさんの時はあんなに楽しそうに攻撃していたのに、今はすごく大人しい。
鳥と目が合うと、鳥はピィ、と一声鳴いて、俺の肩に飛んできた。そして、頬にその羽根を摺り寄せた。う、可愛い。
思わずデレっとすると、鳥は可愛い声でピィピィと何かを俺に話しかけるようにして鳴いてから、羽根を広げた。
旋回する様によく晴れた空を飛び、そして、はるか上空に飛んで行ってしまった。
「それにしても……世の中面白いな」
ぽつり、と先生が呟く。
「先生やっぱ来たんじゃん。っつうかかっわいい! 先生の子? 生まれたばっか? 女の子だよな? おー先生に似なくてよかったな。奥さんの美人さが赤ちゃん見てるとわかるぜ」
「高橋。お前もスーツがなかなか様になってるな。どうだ、郷野に先を越された気分は」
「目出度い一択だろ」
豪快だな、と先生は声を出して笑った。
そして、俺の肩にポンと手を置いた。
「……色々大変なことがあるかもしれないが、郷野だったら笑顔で乗り切れると確信してる。遠くから応援することしかできないが……頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」
「おう。んじゃ、俺はそろそろ帰るかな。かみさんが心配してるから」
「わざわざありがとうございました」
「あくまで散歩のついでだよ」
先生は、雄太に記念撮影をせがまれて、俺たちと共に写真を撮ってから帰っていった。
神社の鳥居近くまで歩くと、最後のほうは私服姿の人たちがまばらに立っていて、俺たちに視線を向けてお祝いを口にしてくれた。初めて見る顔なので、きっとご近所の人とか参拝の人たちだと思う。ありがとう、と笑顔を返していると、目の前に可愛らしい色合いのブーケが差し出された。
『おめでとうございます』
ブーケを差し出してくれたのは、とても上品な感じの老婦人だった。その一歩後ろにはいかにも外国紳士って感じの老人が立っていて、俺たちをじっと見ていた。
老婦人の口から聞こえてきたのは、流暢な外国語。英語じゃないっぽいニュアンスが、どこの国かいまいちわからない。
戸惑っていると、隣からヴィデロさんがやっぱり流暢な言葉でお礼らしき言葉を返してくれた。
ちょっとホッとしていると、『ママン!?』『おばあ様!?』というアリッサさんとヴィルさんの驚いたような声が聞こえてきた。
俺たちの横に二人が慌ててやってくると、老婦人は口元を緩めて、腕を広げた。
『あなたったら、ようやく生きて戻って来たと思ったら、単なるメールだけで済ますんですもの。こんな薄情な娘を持った覚えはないわ』
『ママン、ごめんなさい。どうしてもやりたいことがあったの。顔を見せなくてごめんなさい。そして、ヴィルフレッドをありがとう。とても素敵な紳士に育ったわ』
『当たり前でしょう。私の可愛い孫ですもの。立派な紳士になるよう手は抜いてないわ。ヴィルフレッドも。久しぶりね。全然顔を見せなくなって、本当に薄情な孫。でも、便りがないのは元気な証拠、ってこの国では言うのでしょう。あなたのことはあまり心配はしていなかったわ』
『ははは、そう言ってもらえると誇らしいよ。久しぶり、おばあ様』
二人が老婦人に交互にハグしているのを見ながら、俺とヴィデロさんは顔を見合わせた。
挨拶を終えた老婦人は、微笑みを浮かべたままヴィデロさんに視線を向けると、じっと見上げた。
そして、『私があなたの祖母よ』と両手を広げた。
ヴィデロさんは戸惑いながら、そっと老婦人にハグし、アリッサさんとヴィルさんに視線を彷徨わせた。
「祖母ってことは、母さんの?」
「そうよ、私の母よ。海外から跳んできてくれたみたい。最近身体の調子が良くないって言ってたのに無理するんだから」
上品な老婦人は、アリッサさんのお母さんだったらしい。後ろに立っているのは、アリッサさんのお父さん。ヴィルさんを育てた人たちでもあるらしく、ヴィルさんもアリッサさんもとても気安い態度を取っていた。って、ヴィデロさんの身内ってことになるのか。
ドキドキしながらたどたどしい英語で挨拶をすると、お祖母さんはにこやかに英語で返してくれた。流暢すぎて聞き取り難しいんだけど。
うちの両親も揃って皆の紹介が終わると、ずっと口を閉じていたヴィデロさんのお祖父さんがお祖母さんを支えるようにして横に立って、深々と頭を下げた。
そしてやっぱり聞き取れない外国語で挨拶をして、俺とヴィデロさんに交互にハグをした。こんな紳士なおじいさんにハグとか、慣れなすぎて緊張でドキドキするんだけど。
お祖父さんは満足そうにヴィデロさんと俺を見ると、視線をヴィルさんに移した。
『打診されていた話、丁度わしらも来たことだし、今日のうちに話し合おうか、ヴィルフレッド』
『おお! お祖父様、とうとう乗り気に! ぜひ話し合いましょう。形だけは少しずつ整えているんですよ』
『どこまで進めたかによるが……そうだな、ヴィルフレッドの手腕次第、というところかな』
『これは手厳しい』
ヴィデロさんがそっと通訳してくれて、二人で何かをしようとしているってことを教えてもらったんだけど。
もしかしてヴィルさん、今やってることをお祖父さんを巻き込んでやろうとしてるのかな。段々と大事になってない?
ちらりとヴィデロさんを見上げると、目が合う。ヴィデロさんもわけが分からないという様に、肩を竦めた
感想 555
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結済。
おまけのお話を時々更新したりしています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
ふたりの動画をつくりました!
もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!
表紙や動画にはAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
【8月書籍化♡】キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
※表紙その他のイラストはAIにて作成致しております。(文字指定のみで作成しております)
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】憧れの先輩アルファに告白されたんだがどうやら罰ゲームだったらしい
ある日の放課後、校舎裏で花壇の手入れをしていた上田凛斗に告白してきたのは、憧れの先輩であり校内の人気者でもある上條蘭世だった。
目付きの悪さと暗い性格のせいで恋人どころか友達もいない凛斗は、戸惑いながらもお試しで蘭世との交際をはじめたのだが……
美形溺愛アルファ×三白眼平凡オメガ
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました
ごく普通のベータとして生きてきた村井圭太(むらいけいた)は、ある日突然、希少な「後天性オメガ」に転化してしまう。
不安な日々が始まる……かと思いきや、幼馴染アルファの白河泰雅(しらかわたいが)とはまさかの両思い。
早々に『番(つがい)』となり、幸せな日々を送っていた。
「オメガになっても俺は俺」と持ち前のポジティブさで新しい生活に向き合っていく圭太。
だが、晴れて番となった泰雅は、今まで以上に過保護になっていく。
どんなトラブルも二人なら大丈夫!
過保護で執着強めなスパダリ幼馴染攻め(α) × ポジティブで男前な元ベータ受け(β→Ω)
明るくて幸せいっぱいオメガバース!
私の大好きなオメガバース。
愛をたくさん詰め込んだので、みなさまにも楽しんでいただけますように。
辺境食堂の隠れΩなのに、拾った皇帝陛下が嫁になれと迫ってくる
元宮廷料理人で隠れΩの青年レオは、帝国の辺境で小さな食堂兼農園を営みながら、誰にも縛られない平穏なスローライフを送っていた。
ある日、レオは裏庭の不思議な洞窟で、血まみれになって倒れていた大柄な青年アレクを拾う。
彼の正体は、お忍びで辺境を訪れていた帝国最強のα皇帝だった。
身分を隠してレオの家に居候することになったアレクは、レオの作る絶品の手料理と、彼から漂う穏やかな香りに冷え切った心を溶かされていく。
一緒に土を耕し、美味しいご飯を分け合ううちに、相反するはずの二人のフェロモンは心地よく調和していくが、やがて帝都からの追手が迫り……。
手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。