文字の大きさ
大
中
小
689 / 706
番外編4
第三の神の御使いの欠片を求めて 7
合格者は結局輪廻とサリュの二人だけだった。
じゃあ次に行くか、と皆でギルドの転移魔法陣でセィ城下街に移動すると、丁度ヴィデロさんたちが今まさに適合者を探しているところだった。
セッテよりも沢山の冒険者がずらりと順番待ちしている。俺たちはそこを迂回して、奥の部屋に向かった。
エミリさんたちは向こうの様子を見つつ、少しだけ打ち合わせをするからと別室に行ってしまい、師匠たちは腹が減ったからと食料を調達に向かったので、俺と輪廻が案内された部屋に入ると、そこには一人のプレイヤーが待機していた。
俺も知っているプレイヤーだった。
「……セブン」
「……あ、マック、か」
かなり前に一度フレンドになって、その後俺が一方的にフレンド解除したプレイヤーだった。
あの時はヴィデロさんから貰ったアクセサリーを壊されて、頭にカッと血が上ってしまって、フレンドを解除してしまったんだ。
頭が冷えてから、流石に言い過ぎたと反省したけれど、その後一度も会うことがなかったし、謝る機会を作ることもしなかったセブン。
ここに居るってことは、もしかして。
「錬金釜の、適合者……?」
「ここで待機してろって、門番さんに言われてさ」
とても気まずい空気が流れる。
でも、ここで会ったのも何かの縁。
俺はようやく謝れる、と口を開いた。
「あの」
「あのさ」
同時くらいにセブンも俺に声を掛けて来たので、また気まずくなる。
そっちからいいよ、先にどうぞ、と譲り合いをしていると、輪廻が呆れた様に「何やってんの」とツッコんできた。
「あのさ、俺、マックにもう一回ちゃんと謝りたくて……フレンド解除しちゃったから連絡取るのもどうかなって、ずっと気になってて……」
「俺こそ、あの時はすごくキツく言いすぎて、ごめん……」
頭を下げると、セブンが「マックは悪くないって」と慌てた。
「あの時は、あのアクセがどれだけ大事な物だったのか、俺、理解してなくてさ。でも、上級職になった時、師匠からこれでお前も一人前だって師匠が作った物を貰った時、その大事さが分かって……ああ、俺はこんな大事な物を壊しちゃったんだって……ほんと、ごめん」
「セブン……あのアクセサリー、ちゃんと直ったんだ。すぐに直してもらえて、ほらこれ」
俺がマント留めを見せると、セブンはようやくホッとしたように息を吐いた。
その顔を見て、俺もホッとした。
セブンとフレンド解除したことは、ふとした折に、例えば、誰かとフレンド登録するたびに、フッと思い出していた。けれどそれは怒りを伴ったものじゃなくて、あんな言い方しなくてもよかったんじゃないか、という苦い後悔。ネットゲームはそんなことの繰り返しだ、なんて雄太は言ってくれたけれど、でもやっぱり思い出せば後悔していて、けれど謝りに行くきっかけがなかった。
同じような顔をしているセブンが俺のことをどう思っていたのかはわからないけれど、それでも、また言葉を交わせたことは、俺にとってはよかったと思う。
「あのさ、今更だけど、改めてフレンド登録してくれないかな」
セブンは、おずおずとそう切り出してきた。俺は頷いて、こっちからフレンド申請を飛ばした。ピロン、と承認の通知音が鳴るのを聞いて、自然と顔がほころんだ。
輪廻もセブンと自己紹介して、まだまだ続きそうな列をその部屋で待っていると、ガチャリとドアが開いた。
入ってきたのは、ヴィデロさんとヴィルさんとクラッシュだった。
皆も疲れ切った顔をしていた。そりゃそうだよね。今日ログインしている人たちで、話を聞いたプレイヤーの対応をずっとしていたんだから。運営から一斉告知もされていて、今日限定のクエストとして、皆一斉に集まったらしい。
「マック、お疲れさん。こっちはそこに居るセブンというプレイヤー一人だけだ」
「お疲れ様です。こっちは輪廻とサリュの二人だけでした。サリュは今、師匠たちと買い物に行ってます。さっき沢山果物食べたんですけど……」
ヴィデロさんにそそそ、と近寄りながらヴィルさんと情報を交わす。
ヴィデロさんの手には俺からヴィデロさんに受け継がれた錬金釜があったので、気を使いながらヴィデロさんを見上げると、ヴィデロさんはフワッと笑みを見せてくれた。
「緊急で呼び出された時はどうしたのかと思ったが。思ったよりも大事だったんだな。マック、お疲れ」
「ヴィデロさんこそ。プレイヤーが投げ出されたりするのを見たけど、ヴィデロさんもあれやったの?」
「三人ほど放り出したな」
真顔でそんなことを言うので、思わず笑ってしまう。
ヴィデロさんはそんな俺を見てから、セブンに視線を移した。
そして目を細めた。
「マック、フレンドの再登録、したのか?」
「え……」
ハッと顔を上げると、ヴィデロさんがすべてをわかっているような顔で口もとを緩めていた。
「セブンと、仲直りしたのか」
「えっと、う、うん。何で知ってるの」
驚いてセブンに視線を向けると、セブンはバツが悪そうな顔をして、視線を逸らした。
「あのあと、その門番さんがマックにアクセをプレゼントしたんだってことを聞いて、謝りに行ったんだよ……大分後だけど……」
「ああ。セブンの師匠に連れられてトレの門に来たんだ」
「そうなんだ……」
ヴィデロさんは今までそんなそぶり見せたこともなかったので、驚いて二人を見比べていると、セブンが口を尖らせた。
「俺さ、鍛冶の師匠が出来たんだよ。で、弟子入りの条件に『心に棘が刺さっていると目が曇る』とか言って、その心に引っかかっていることを解消して来いって。無理だって思ってたら、師匠に首根っこ掴まれて門番さんの前に引き摺られて。そこで謝ったら、よし、って弟子にしてもらったんだ」
「すごい師匠だね、セブンの師匠。俺鍛冶師は全然詳しくないけどさ、なんか話聞いてるだけで腕がよさそう」
はー、と感心していると、部屋のドアが開いてエミリさんたちが入って来た。
そこまで広くない部屋は、ちょっと手狭になった。
エミリさんの後ろから来た勇者が、セブンを見て「お」と声を出す。
「セブンじゃねえか。ここに居るってことは、釜に気に入られたか」
「気に入られた……って言うんですかあれ」
「ああ。使えるやつは本当に少ないし、特殊だからな。な、サラ」
勇者がサラさんに話を振ると、サラさんも笑顔で頷いた。
なるほど。辺境の鍛冶師だったら、勇者もおなじみだよね。ってことは、長光さんは知ってるってことかな。
鍛冶師はほぼ長光さん以外交流がないからな、と親密そうな勇者とセブンを見た。
あれだけ周りの人たちを見ていなかったセブンが、鍛冶師に師事して勇者たちと交流しているのを見るのはとても不思議な気分だった。
獣人たちが帰ってくると、既に部屋は満員御礼状態。きりがないので、皆でエルフの里に飛ぶことにした。まとめてクラッシュとルーチェさんが連れて行ってくれるらしい。
すぐにエルフの里に戻ると、ロウさんが出迎えてくれた。
候補の三人を見て、険しい顔を少しだけ緩めた。手には、錬金素材が山ほど載せられたざるを持っている。
「よかった。そろそろ長老様の体力が切れそうだったのだ」
それはいけない、と皆で急いで奥の屋敷に走った。
奥の屋敷に通じる細い道を抜けると、そこはやっぱり物々しい雰囲気を醸し出していた。
あのフルオープンの障子戸が閉められているだけでこんなにも雰囲気が変わることに、胸が痛くなる。長老様は大丈夫だろうか。
心配しながら、案内のロウさんに付いていくと、
ロウさんが屋敷の入り口で、釜を扱える者だけを中に通す許可が下りていると俺たちに伝えた。
師匠ズと勇者たちも、何かあった時にいてくれると心強いから、と待機してもらって、候補の三人と、サラさんとヴィデロさんと俺が中に入ることになった。
これで適合者がいなければ、釜は壊されるらしい。そして異空間に廃棄するんだって。
通された部屋に入ると、そこは何やら空気が重かった。
肌に空気が粘りつくような何とも言えない感覚を味わいながら部屋に入ると、長老様がいつもの所で座っていた。
けれど、顔色は悪い。
奥の守護樹へ通じる障子まで閉めているので、閉塞感が物凄かった。何十帖もありそうな広い部屋のはずなのに。
「よくきてくださいました、皆様」
長老様は、笑顔で迎えてくれた。
けれど、それを喜ぶことが出来なかった。
長老様の後ろにある床の間に置かれている錬金釜が、誰も手を触れていないのに謎液体を溢れさせ、ボコボコと反応しているから。素材すら入っていないあの状態は、かなりの異常事態だった。
感想 555
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結済。
おまけのお話を時々更新したりしています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
ふたりの動画をつくりました!
もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!
表紙や動画にはAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
【8月書籍化♡】キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
※表紙その他のイラストはAIにて作成致しております。(文字指定のみで作成しております)
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】憧れの先輩アルファに告白されたんだがどうやら罰ゲームだったらしい
ある日の放課後、校舎裏で花壇の手入れをしていた上田凛斗に告白してきたのは、憧れの先輩であり校内の人気者でもある上條蘭世だった。
目付きの悪さと暗い性格のせいで恋人どころか友達もいない凛斗は、戸惑いながらもお試しで蘭世との交際をはじめたのだが……
美形溺愛アルファ×三白眼平凡オメガ
ベータだった俺が後天性オメガになったら、幼馴染アルファがもっと過保護になりました
ごく普通のベータとして生きてきた村井圭太(むらいけいた)は、ある日突然、希少な「後天性オメガ」に転化してしまう。
不安な日々が始まる……かと思いきや、幼馴染アルファの白河泰雅(しらかわたいが)とはまさかの両思い。
早々に『番(つがい)』となり、幸せな日々を送っていた。
「オメガになっても俺は俺」と持ち前のポジティブさで新しい生活に向き合っていく圭太。
だが、晴れて番となった泰雅は、今まで以上に過保護になっていく。
どんなトラブルも二人なら大丈夫!
過保護で執着強めなスパダリ幼馴染攻め(α) × ポジティブで男前な元ベータ受け(β→Ω)
明るくて幸せいっぱいオメガバース!
私の大好きなオメガバース。
愛をたくさん詰め込んだので、みなさまにも楽しんでいただけますように。
辺境食堂の隠れΩなのに、拾った皇帝陛下が嫁になれと迫ってくる
元宮廷料理人で隠れΩの青年レオは、帝国の辺境で小さな食堂兼農園を営みながら、誰にも縛られない平穏なスローライフを送っていた。
ある日、レオは裏庭の不思議な洞窟で、血まみれになって倒れていた大柄な青年アレクを拾う。
彼の正体は、お忍びで辺境を訪れていた帝国最強のα皇帝だった。
身分を隠してレオの家に居候することになったアレクは、レオの作る絶品の手料理と、彼から漂う穏やかな香りに冷え切った心を溶かされていく。
一緒に土を耕し、美味しいご飯を分け合ううちに、相反するはずの二人のフェロモンは心地よく調和していくが、やがて帝都からの追手が迫り……。
手料理が繋ぐ心と体。身分差を越えた、最強α皇帝と隠れΩ料理人の美味しくて甘い辺境スローライフが幕を開ける!
※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。