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番外編5
魔大陸開墾編 3
まるで今にも朽ち果てそうな見た目の店の前に立つと、俺はノッカーをコンコンとドアに軽く打ち付けた。
すぐに中からドアが開いて、イケメンモノクルの執事風レガロさんが顔を出して、俺を店の中に招いてくれた。
「ご無沙汰しておりました。マック君のご活躍は随時お聞きしておりましたよ」
「誰から聞いたのかちょっと気になりますけど。活躍って言っていいのかなあ」
「勿論。他の誰でも成せることではありません」
店の中に足を踏み入れると、そこには数人のプレイヤーがいた。
大分『呪術屋』がポピュラーになったらしい。というか、今回のクエスト、ここ発祥のクエストもあるのかもしれない。
俺に来たクエストもそうだから。錬金術関係の。
「素材を売って欲しいんです」
「はい」
何を、と言わなくても希望の物を出してくれるレガロさん。相変わらず全能感が凄い。
目の前に出された深層塩藻をゲットして、ふと視線を動かすと、店の一角には前に見たことのある石を使ったアクセサリーが多数売っているのが見えた。
まるで爬虫類の目のような縦の模様の入った、蛇紋石を使ったアクセサリーに、思わず目を見開く。
あれ、もしかしてももしかしなくても前にブレイブが買った『シークレットダンジョン』を見つけるためのアクセサリーだ。
そのアクセサリーは、壁に打ち付けられた釘にまるで普段使いのネックレスのような状態で売られていた。
どうしてあんな普通のアクセサリーのように売ってるんだろう。値段は書かれていないけれど、あんな風にそこらへんで売ってるような状態で売っていい物なんだろうか。
俺が何を凝視しているのか気付いたレガロさんは、にこやかに「今は加工技術の向上著しくて素晴らしいですね。職人の皆様、とても頑張っておられます」と教えてくれた。
うん。それはわかるよ。皆レベル上げ楽しいし。でも、でもだよ。
「魔大陸は、たった一人や二人ですべてのエンブレムを集められるほどには狭くないのですよ……マック君たちの世界と比べたらとても狭いですけれど」
「……まあ、そうですけど」
「あのアクセサリーは、視力系上位スキルを手に入れていないと売れないものです。けれど、手に入れただけでは入る術がない。という訳で、すぐ横に古代魔道語と魔法陣の基本書を置いてみました。これで売り上げも倍増間違いなし!」
まるでクラッシュのようなことを言いながらも、レガロさんは本当に必要な人以外には売る気はないようだった。
そんな中、またカランと店のドアが開く。
一組のパーティーが入ってきて、「あのー」とレガロさんに声を掛けた。
前にクラッシュと共に魔大陸で即売会をした時に見たことがあるけれど、交流はしたことがないパーティ―だった。
「なんかクエストで、この店で買い物をするよう指示が出てたんですけど、何を買えばいいですか」
キョロキョロしているところを見ると、この店は初めて来たらしい。
レガロさんはすぐに近付いて行って、優雅にお辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいました。この店ではお好きな物をお買い上げいただければ、依頼達成となります。どうぞお心の向くままに、店の中を歩いてみてくださいませ」
そう言うと、レガロさんはそっとその人達から離れた。
ちょっと気になってみていると、その人達はある程度店を回って、さっき俺が驚いたアクセサリーの並んだ場所で、足を止めた。
「……リーダー。見て見て、なんでもいいならあたしこれ欲しい。超綺麗じゃん」
「それか? 値段書いてねえな……お、これ古代魔道語辞典? 古代魔道語って、雑貨屋店主とか薬師マックとかが使ってる魔法陣の元になる文字だっけ。俺覚えたいと思ってたんだよな」
「あ、横に魔法陣の本もあるよ。リーダーこれも一緒に買ったら? リーダーが魔法陣覚えたら俺ら勝ち組じゃん!」
「あ―そうだな。パーティー資金から出していいなら」
「だねーいいよー」
何とはなしに聞いていた会話は、確かに売り上げ倍増効果があった。思わずレガロさんに視線を向けると、レガロさんは俺にウィンクを投げて来た。
ということは、あのパーティーはシークレットダンジョン第一人者になるってことか。
支払いを済ませて「スキル覚えた!」という声をバックに、俺は更に必要な素材を見繕っていくのだった。
場所は変わってエルフの里。
前よりも更にプレイヤーたちでにぎわっていた。
中にはマッドライドもいて、久しぶり、と挨拶しつつ、素材採取に勤しむ。
ついでにこの間新しく作ったスイーツを長老様に届けてから帰ろう、と林の間に入っていくと、後ろから「うわああ」という悲鳴が聞こえて来た。
思わず振り返ると、俺の後をついてきただろうプレイヤーが、周りの木々に攻撃されて、キラキラと消えていく所だった。
何気なく通って来た道だけれど、これはちょっと怖いかもしれない。思わず足を速めて、木々の間を抜けた。
いつもと同じようにすべての襖を開けて、長老様は座っていた。
俺を見つけるとにこやかに手招きする。
「こんにちは。この間はありがとうね。あの子も立派な主人の元に行けて、落ち着いた様ね。今日はどうしたのかしら。少しゆっくりして行かない?」
「こんにちは。今日は素材採取をさせて貰おうと思って来ました。
お邪魔します、と畳の部屋に靴を脱いで上がり込むと、すぐにいつものエルフさんがお茶を持ってきてくれた。
インベントリから新鮮果物で作ったお菓子を取り出して、長老様とエルフさんに差し出すと、エルフさんが「いつもありがとうございます」と本当に嬉しそうに頭を下げた。
ここに来たのは新しい錬金釜が見つかって、ひと騒動起きた時が最後だったから、何やらすごく前のことのように思う。
長老様のお館はとても時がゆっくり流れているような錯覚に陥りそうなほど、とても心地よくてゆったりしている。それはきっと長老様がいつも泰然と構えているからなんだと思う。なんだかんだでまだ代替わりはしていないようだ。
うちの温室の守護樹を通じて守護樹とは結構話をするんだけれど、ここに来ると気分転換にもなっていいかも。
花の浮いているお茶を頂き、出されたお菓子と俺が持参したお菓子を長老様と一緒に食べながら、しばしの休息を味わったのだった。
必要な物をゲットして、長老様にまた遊びに来る約束をしてから工房に帰る。
錬金の部屋でアイテム整理をしていると、温室の方からヒイロ師匠が顔を出した。遊びに来ていたらしい。
「マックー。ちょいとここで育ってる薬草貰っていいか?」
「どうぞー。少しは残しておいてくださいね」
「わかった。サンキュー。お礼に新しい辛い奴植えてくな」
「おお! ありがとうございます!」
新種の種を植えてくれるらしいのでテンション上がりながら、錬金釜をテーブルにセットした。
最初に使っていた錬金釜とは違って、これは俺の力でも掻き混ぜられないということがほぼない。抵抗らしい抵抗がないので、とてもスムーズに錬金できる。
今回俺のクエスト欄に舞い込んだのは、魔大陸の水を浄化するための『浄水石』という物の納品。
『【NEW】魔大陸の井戸を浄化しよう
魔大陸の水が穢れていて使えない
指定のアイテムを特定の人物に納品して井戸水を浄化しよう
浄水石の制作……120
浄水石の納品……魔大陸行商人に納品
クリア報酬:新種の種 魔大陸井戸水使用開始 村施設使用開始 井戸水使用時手数料
取得権 150万ガル
クエスト失敗:特定の数以上の浄水石を納品出来なかった 井戸水の使用不可 魔大陸開拓17%低下』
これは出来上がり次第ルーチェさんたちに納品して、浄化して使えるようになった村の井戸に投げ込むという流れらしい。
ちょっと気になるのは、井戸水使用時手数料取得権の欄。
浄水石を投げ入れた井戸に使用料を設定すればいいのか。それともそこら辺は適当に決まるのか。まあ、出来上がってからそこらへんはルーチェさんに確認してみよう。
とりあえず一回で石が何個出来るかをやってみて。
素材を並べて確認する。
浄水石のレシピは前に王宮でレシピを調べ回った時に例の小部屋で見つけてゲットしていたので、問題なし。
「まずは謎液体に深層塩藻、と」
口に出しながらチラチラレシピを確認して混ぜていく。
深層塩藻を使うと、調薬にしろ錬金にしろ料理にしろ鮮やかな青になる率が高い。
今回も薄い紫色の謎液体が鮮やかな青に変わって、それ以後何を入れてもほぼ色が変わらなかった。
最後まで入れ終わり、グルグルと掻き混ぜると、段々と粘度が増して来て気合いが入る。けれどそこまで力を入れることなく、釜の中ではコロンと石が出来上がった。
「一回に一つかあ……先は長いね」
成功した『浄水石』を取り出して、苦笑する。
でもこういう作業は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
さくさくと時間の許す限り進めて、その日の夜には既定の数が出来上がった。
さ、魔大陸に行ってルーチェさんを探そう。
すぐに中からドアが開いて、イケメンモノクルの執事風レガロさんが顔を出して、俺を店の中に招いてくれた。
「ご無沙汰しておりました。マック君のご活躍は随時お聞きしておりましたよ」
「誰から聞いたのかちょっと気になりますけど。活躍って言っていいのかなあ」
「勿論。他の誰でも成せることではありません」
店の中に足を踏み入れると、そこには数人のプレイヤーがいた。
大分『呪術屋』がポピュラーになったらしい。というか、今回のクエスト、ここ発祥のクエストもあるのかもしれない。
俺に来たクエストもそうだから。錬金術関係の。
「素材を売って欲しいんです」
「はい」
何を、と言わなくても希望の物を出してくれるレガロさん。相変わらず全能感が凄い。
目の前に出された深層塩藻をゲットして、ふと視線を動かすと、店の一角には前に見たことのある石を使ったアクセサリーが多数売っているのが見えた。
まるで爬虫類の目のような縦の模様の入った、蛇紋石を使ったアクセサリーに、思わず目を見開く。
あれ、もしかしてももしかしなくても前にブレイブが買った『シークレットダンジョン』を見つけるためのアクセサリーだ。
そのアクセサリーは、壁に打ち付けられた釘にまるで普段使いのネックレスのような状態で売られていた。
どうしてあんな普通のアクセサリーのように売ってるんだろう。値段は書かれていないけれど、あんな風にそこらへんで売ってるような状態で売っていい物なんだろうか。
俺が何を凝視しているのか気付いたレガロさんは、にこやかに「今は加工技術の向上著しくて素晴らしいですね。職人の皆様、とても頑張っておられます」と教えてくれた。
うん。それはわかるよ。皆レベル上げ楽しいし。でも、でもだよ。
「魔大陸は、たった一人や二人ですべてのエンブレムを集められるほどには狭くないのですよ……マック君たちの世界と比べたらとても狭いですけれど」
「……まあ、そうですけど」
「あのアクセサリーは、視力系上位スキルを手に入れていないと売れないものです。けれど、手に入れただけでは入る術がない。という訳で、すぐ横に古代魔道語と魔法陣の基本書を置いてみました。これで売り上げも倍増間違いなし!」
まるでクラッシュのようなことを言いながらも、レガロさんは本当に必要な人以外には売る気はないようだった。
そんな中、またカランと店のドアが開く。
一組のパーティーが入ってきて、「あのー」とレガロさんに声を掛けた。
前にクラッシュと共に魔大陸で即売会をした時に見たことがあるけれど、交流はしたことがないパーティ―だった。
「なんかクエストで、この店で買い物をするよう指示が出てたんですけど、何を買えばいいですか」
キョロキョロしているところを見ると、この店は初めて来たらしい。
レガロさんはすぐに近付いて行って、優雅にお辞儀をした。
「ようこそいらっしゃいました。この店ではお好きな物をお買い上げいただければ、依頼達成となります。どうぞお心の向くままに、店の中を歩いてみてくださいませ」
そう言うと、レガロさんはそっとその人達から離れた。
ちょっと気になってみていると、その人達はある程度店を回って、さっき俺が驚いたアクセサリーの並んだ場所で、足を止めた。
「……リーダー。見て見て、なんでもいいならあたしこれ欲しい。超綺麗じゃん」
「それか? 値段書いてねえな……お、これ古代魔道語辞典? 古代魔道語って、雑貨屋店主とか薬師マックとかが使ってる魔法陣の元になる文字だっけ。俺覚えたいと思ってたんだよな」
「あ、横に魔法陣の本もあるよ。リーダーこれも一緒に買ったら? リーダーが魔法陣覚えたら俺ら勝ち組じゃん!」
「あ―そうだな。パーティー資金から出していいなら」
「だねーいいよー」
何とはなしに聞いていた会話は、確かに売り上げ倍増効果があった。思わずレガロさんに視線を向けると、レガロさんは俺にウィンクを投げて来た。
ということは、あのパーティーはシークレットダンジョン第一人者になるってことか。
支払いを済ませて「スキル覚えた!」という声をバックに、俺は更に必要な素材を見繕っていくのだった。
場所は変わってエルフの里。
前よりも更にプレイヤーたちでにぎわっていた。
中にはマッドライドもいて、久しぶり、と挨拶しつつ、素材採取に勤しむ。
ついでにこの間新しく作ったスイーツを長老様に届けてから帰ろう、と林の間に入っていくと、後ろから「うわああ」という悲鳴が聞こえて来た。
思わず振り返ると、俺の後をついてきただろうプレイヤーが、周りの木々に攻撃されて、キラキラと消えていく所だった。
何気なく通って来た道だけれど、これはちょっと怖いかもしれない。思わず足を速めて、木々の間を抜けた。
いつもと同じようにすべての襖を開けて、長老様は座っていた。
俺を見つけるとにこやかに手招きする。
「こんにちは。この間はありがとうね。あの子も立派な主人の元に行けて、落ち着いた様ね。今日はどうしたのかしら。少しゆっくりして行かない?」
「こんにちは。今日は素材採取をさせて貰おうと思って来ました。
お邪魔します、と畳の部屋に靴を脱いで上がり込むと、すぐにいつものエルフさんがお茶を持ってきてくれた。
インベントリから新鮮果物で作ったお菓子を取り出して、長老様とエルフさんに差し出すと、エルフさんが「いつもありがとうございます」と本当に嬉しそうに頭を下げた。
ここに来たのは新しい錬金釜が見つかって、ひと騒動起きた時が最後だったから、何やらすごく前のことのように思う。
長老様のお館はとても時がゆっくり流れているような錯覚に陥りそうなほど、とても心地よくてゆったりしている。それはきっと長老様がいつも泰然と構えているからなんだと思う。なんだかんだでまだ代替わりはしていないようだ。
うちの温室の守護樹を通じて守護樹とは結構話をするんだけれど、ここに来ると気分転換にもなっていいかも。
花の浮いているお茶を頂き、出されたお菓子と俺が持参したお菓子を長老様と一緒に食べながら、しばしの休息を味わったのだった。
必要な物をゲットして、長老様にまた遊びに来る約束をしてから工房に帰る。
錬金の部屋でアイテム整理をしていると、温室の方からヒイロ師匠が顔を出した。遊びに来ていたらしい。
「マックー。ちょいとここで育ってる薬草貰っていいか?」
「どうぞー。少しは残しておいてくださいね」
「わかった。サンキュー。お礼に新しい辛い奴植えてくな」
「おお! ありがとうございます!」
新種の種を植えてくれるらしいのでテンション上がりながら、錬金釜をテーブルにセットした。
最初に使っていた錬金釜とは違って、これは俺の力でも掻き混ぜられないということがほぼない。抵抗らしい抵抗がないので、とてもスムーズに錬金できる。
今回俺のクエスト欄に舞い込んだのは、魔大陸の水を浄化するための『浄水石』という物の納品。
『【NEW】魔大陸の井戸を浄化しよう
魔大陸の水が穢れていて使えない
指定のアイテムを特定の人物に納品して井戸水を浄化しよう
浄水石の制作……120
浄水石の納品……魔大陸行商人に納品
クリア報酬:新種の種 魔大陸井戸水使用開始 村施設使用開始 井戸水使用時手数料
取得権 150万ガル
クエスト失敗:特定の数以上の浄水石を納品出来なかった 井戸水の使用不可 魔大陸開拓17%低下』
これは出来上がり次第ルーチェさんたちに納品して、浄化して使えるようになった村の井戸に投げ込むという流れらしい。
ちょっと気になるのは、井戸水使用時手数料取得権の欄。
浄水石を投げ入れた井戸に使用料を設定すればいいのか。それともそこら辺は適当に決まるのか。まあ、出来上がってからそこらへんはルーチェさんに確認してみよう。
とりあえず一回で石が何個出来るかをやってみて。
素材を並べて確認する。
浄水石のレシピは前に王宮でレシピを調べ回った時に例の小部屋で見つけてゲットしていたので、問題なし。
「まずは謎液体に深層塩藻、と」
口に出しながらチラチラレシピを確認して混ぜていく。
深層塩藻を使うと、調薬にしろ錬金にしろ料理にしろ鮮やかな青になる率が高い。
今回も薄い紫色の謎液体が鮮やかな青に変わって、それ以後何を入れてもほぼ色が変わらなかった。
最後まで入れ終わり、グルグルと掻き混ぜると、段々と粘度が増して来て気合いが入る。けれどそこまで力を入れることなく、釜の中ではコロンと石が出来上がった。
「一回に一つかあ……先は長いね」
成功した『浄水石』を取り出して、苦笑する。
でもこういう作業は嫌いじゃない。むしろ好きだ。
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※本作にはボーイズラブ要素およびオメガバース設定(α、β、Ωの概念やフェロモンに関する描写)が含まれています。苦手な方は閲覧にご注意ください。