744 / 744
番外編5
魔大陸開墾編 14
しおりを挟む「すごいな……さっきまでと全然違う」
陽炎さんが、足元の花を摘んで、匂いを嗅ぎがならそんなことを言う。その後、詰んだ花はリザの口元に持って行って食べさせている。
リザもちゃんと食べられるとわかっているかのように、躊躇いなく口に含んでいる。
「お、ステータスに『所属国:ソレイル』って追加されてる」
「ほんとだ」
三人が宙を睨み、声を上げる。
俺も一応開いてみるけれど、メダルを持っていない俺はどこ所属でもなかった。
「これからは開拓ゲームの始まりかな」
それもまた楽しそうだな、と笑う三人は、今度は農業シュミレーションゲームでもはじめるんだろうか。
「とりあえず所属の街とか村とか、希望できるらしいぞ。とことん探すぞ!」
「「おー!」」
気合十分の三人は、何やら運営からメールを貰ったらしく、所属国が復活したら所属の街や村に登録できるようになることを教えてくれた。
すっかりソレイル国を探索したそうにしている『リターンズ』に現地解散を提案して、俺は転移でソレイルの中央まで跳んだ。
そこから始まりの村に跳び、ソレイル復活に盛り上がるクラッシュの店を覗いてからトレの工房に戻った。
「でさ、『リターンズ』がメダルをゲットして出た瞬間、いきなり周りの雰囲気が変わってさ。あれはグランデと変わりない空気だったよ」
「そうか。俺も鎧で姿を隠して『エピ』まで行ってきたんだが。もう大丈夫そうだな。このままプレイヤーたちが頑張ってくれるのが、ありがたい」
「皆今度は国を作るって張り切ってたけど」
「じゃあ今度はおかしな行動をする奴を止めるのが仕事になるかもな」
マンションの一室、俺とヴィデロさんの部屋で、テーブルを囲みながら、今日の報告をする。なんだ、ヴィデロさんはエピに行ってたのか。
「一緒に行きたかったな」
「俺も、マックと一緒に行きたかった」
二人で顔を見合わせてふふっと笑う。
運営は今度、国が復活したらその国の特産品や農作物などを使った交易イベントを考えているらしく、早く全部の国が復活するのを今か今かと待っているらしい。
さすがアリッサさんだな、と思いながら、二人きりの晩餐を堪能した。
こうして夜に二人でゆっくりできるのもなかなかない。
広めのバスルームで二人湯船につかりながら、ギュッとしまったヴィデロさんの身体を指でなぞる。
「誘ってるのか?」
「うん」
笑っているヴィデロさんに、素直に答えると、ヴィデロさんの大きな手が俺の貧相な身体を這い始める。
「ここだけ柔らかくしたら、のぼせる前にベッドに行こうか」
セクシーに耳元で囁かれて、その声だけで蕩けそうになった。
おざなりに身体を拭いて、ヴィデロさんにベッドまで裸で運ばれてしまう。
相変わらず俺を軽々持ち上げるヴィデロさんの力強さにキュンキュンしながら、我慢できなくて歩いている間にもヴィデロさんの顎にキスの悪戯を繰り返した。
ベッドに降ろされた瞬間、深く唇を重ねられる。
絡んだ舌がすっかり蕩けた俺のナカを更にぐずぐずにさせる。
「そのままもう、挿れて……」
我慢できない、と暴露すれば、ヴィデロさんのヴィデロさんが蕩けた場所に触れた。
挿れられる前にイっちゃいそう……
俺の呟きで、触れていたヴィデロさんのヴィデロさんが更に質量を増したのがわかって、胸がときめいた。
「あ、あぁあ……っ」
挿入と同時に声と白濁が零れる。
ナカがギュッと締まると、ヴィデロさんの形がリアルにわかって胸が熱くなる。
ゆっくりと抜けていき、ゆっくりと内壁を割り開いて挿入されるその熱は、すぐまた俺を天国に導いていった。
次第に早くなるヴィデロさんの動きに身体を揺すられながら、奥を突かれる度に声が切羽詰まった者になっていく。
自分でもどうにもできない嬌声をどうしようもなくて、ヴィデロさんの首に抱き着いて引き寄せ、キスを強請る。
舌を絡められて吸われると、今度は悩まし気な吐息が漏れる。
「健吾……最高」
「俺も……っ、ヴィデロさん好き……っ、あん、あ、んン……」
だめ、待って、また、イっちゃう……
吐息と共にそう零した瞬間、腰を掴まれてヴィデロさんの動きが激しくなった。
グリッと奥を抉られて、頭が真っ白になる。
抜けるギリギリまで引き抜かれて、下腹部がギュッと締まる。
すぐにまた最奥にぐっと熱を押し込まれて、全身が痙攣する。
口から洩れる甘い声が止まらない。
自分でも何を言ってるのかわからないくらい、いい、気持ちいい、好き、をただひたすら繰り返して、ヴィデロさんの熱を身体の奥で堪能した。
ヴィデロさんが俺の最奥で熱を放出した時には、俺の身体は力が入らないくらい疲労困憊になっていた。
それでも身体は敏感で、抜かれる感触にも汚れたところを拭かれるときにも触れられたそこに熱がこもる気がした。
綺麗に整えてくれたヴィデロさんが俺の横に潜り込んでくると、俺はその身体に引っ付いた。
ヴィデロさんも素晴らしい腕枕をしてくれる。
心地よい疲れにまどろんでいると、ぽつりとヴィデロさんが呟いた。
「健吾も、どこかの国に所属したいか……?」
正直半分以上頭に入ってこないくらい睡魔に襲われていた俺は、なんて返事をしたのかも認識しないまま、深い眠りに吸い込まれていった。
次の日、またしても運営からの通知で皆が沸いた。
蛇紋石のアクセサリーのことがどこかのスレッドに上がって、それでも話題が高騰しているんだとか。
あの石を売っている店に行けるのは、本当に一握りのプレイヤーだけなんだけど、レガロさんは相変わらず朽ち果てそうな外観の店でのんびり店主さんをやっている。
「それでもだいぶ売れているんですよ。ありがたいことです」
そのありがたいは、商品が売れたことなのか蛇紋石を使える人が増えたことなのかどっちなんだろう。
じっとレガロさんに視線を向ければ、いつもと同じような楽し気な笑顔を返されてしまった。
「このまま行きますと、大陸の復活も目前ですね」
いつもと同じ表情なのに、その言葉には何やら安堵の感情が乗っている気がした。俺はレガロさんじゃないからハッキリとわかるわけじゃないけどね。
必要素材をゲットして、他の欲しいものは見つからずに呪術屋を後にする。
きっと近いうちに他の国が復活したことも告知されるんだろうな。
全部の国が復活したら……
頭の中で、戦国時代のシュミレーションゲームが浮かんでくる。
自由をうたったVRMMOゲーム『アナザーディメンションオンライン』通称『ADO』
シナリオも何もない、けれど、NPCと呼ばれる人たちと心を通わすと、心揺さぶられるような展開が沢山でてくるADO。
魔大陸が復活したら、今度はジャンル転向しそうな予感に、笑いがこみ上げて来て止まらなかった。
おわり。
2,997
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(535件)
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ついについに書籍化おめでとうございます!
2巻とも購入させて頂きました!
投稿されてた頃から作品が大好きで、、ヴィデロさん、マックのイチャイチャが大好きです。
最終話を読見終わった時のあの虚無感というか何とも言えない感情が何度読み返してもあり、なんて言うか、マックたちが幸せになって嬉しい気持ちと、これでもう終わったんだという悲しみが一気くる感覚です。
定期的に読んで、その度になんで書籍化されないだという気持ちで一杯でしたが、やっとされてファンとして嬉しいです。
書籍化も大変嬉しいですが、コミカライズもして頂けると大変嬉しいです。
すぐにじゃなくても何年でも待ちます。
なので、出版社様考えて頂けると嬉しいです。
最後に本当に本当におめでとうございます。
続編も配信版を見ながら楽しみに待ってます。
うわ~ん!ご無沙汰なのです!
書籍化知らんかったおめでとう!!!!ございます!
友達に推すし、買うし、ここでも読むよー!
本当におめでとうございます(人*´∀`)。*゚+
書籍版1、2からこちらで続きを読める事を知り、最後まで一気読みしてしまいました!
ここ最近で1番好きなお話で、この長編を描ききられた作者さんには感謝と尊敬の念しかありません!
番外編も読ませていただくのを楽しみにしています
続きが書籍で出たらもちろん購入させていただきますし、番外編を読みきったらまた一から読み直すと思います!
素敵なお話をありがとうございました!