忘れじの契約~祖国に見捨てられた最強剣士、追放されたので外国でバトル系配信者を始めます~

朝露ココア

文字の大きさ
25 / 105
2章 氷王青葉杯

13. ケビン・ジェード

しおりを挟む
 才能がない。
 それは不幸なことではない。人間は上澄みの奴らが支配し、利益をすすり、下々の人間は従うだけ。

 俺……ケビン・ジェードもまた非才の一人。
 だが、俺は大きな間違いを犯してしまった。才覚溢れるバトルパフォーマンスの業界に飛び込んでしまった。

 憧れていたんだ。
 華麗に舞い、視聴者を魅了し、強敵を翻弄する一流のバトルパフォーマー。小さい頃から、強い剣士に憧れていたから。
 俺は無様にも道を踏み外した。実家を飛び出して、家族との縁を断って、バイトで稼いだ金をつぎ込んで、勢いのままに養成所に通って。

 『すげえよ、ケビン! お前……適性Dなのに、すげえ!』

 数年前。デビューしたばかりの頃、順風満帆に活動は進んだ。
 チームメンバーの一人が俺を褒め称える。小さい頃から棒振りが趣味だっただけあって、剣術は得意なつもり・・・だった。

 周囲のアマチュア級パフォーマーを薙ぎ倒し、獅子奮迅の活躍を見せる。
 おまけに戦績に呼応するように、知名度もグングンと上がって……いつしか俺はアマチュアを代表するパフォーマーになっていた。

 希望。羨望。大望。
 望みに満ちていた。俺の選択は成功だったと。バトルパフォーマーこそが天職なのだと思ってしまうのも仕方ないだろう。

 『決まったー!
 ケビン・ジェード! みごと昇格戦に勝利し、プロ級へ昇格を決めましたー!』

 そこが人生の頂点だった。
 昇格戦の試験官をブッ倒して、プロ級になった日。

 ケビン・ジェードの生涯における、最も幸福な瞬間。俺の勝利を告げる実況の声が、まさに天使の福音のように聞こえて。
 とうとう俺は世界に認められたのだと思い込んだ。

 一寸先は闇だとも知らずに。

 ー----

 「……どうして」

 勝率12%。
 プロになって三ヶ月経った俺の戦績だ。

 まるで勝てない。勝てるビジョンが浮かばない。光の欠片すら見えない暗黒だ。
 マズい。視聴者からの支持も急速に落ちてきている。そりゃ当然だ。何度も何度も、バトル配信で無様に負け姿を晒しているのだから。

 控え目に言って、プロの連中は化物だ。
 俺が来るべき場所じゃなかった。適正Dランクの奴なんて、俺以外に一人もいなかった。
 今までの出来事はすべて偶然、幸運。認めたくはないが、それが俺の出した結論だ。まともに張り合って勝てる相手じゃねえ。

 「どうにか、しねぇと……」

 焦燥。
 俺の心を焦りだけが支配していた。このままじゃ暮らしていけない。
 いまさらバトルパフォーマーなんて辞められるか。家族とも縁を切り、帰る場所もなく。俺の居場所はここだけだ。

 何としても居場所を守らなければ。
 才能のない俺にできることは何だ?

 考えろ。バトルパフォーマー以外の配信者を探って、せめて視聴者を惹きつける手法を編み出せ。

 「……そうだ」

 俺だけが知っている情報がある。
 それは同僚のバトルパフォーマー連中の情報だ。注目を集めるには、過激な内容を取り扱えばいい。

 モラルなんて知るか。もはやなりふり構ってられない。
 まずは腹いせに、俺を負かしたプロの連中の情報を探る。アテはある。浮気してる奴、詐欺まがいのことをしてる奴……数多のネタが転がっていた。
 まだ未開拓の領域だ。配信者の暴露はあるが、バトルパフォーマーの暴露は一人もやってない。

 「…………」

 最初はまだ後ろめたさがあった。
 炎上しないギリギリのラインを攻めて暴露してみたが……期待以上に数字が出た。出てしまったんだ。

 味をしめた俺の暴露はエスカレートしていく。数字が出ないととにかく不安で、自分が必要とされていない気がして。
 次第に暴露だけではなく、迷惑行為までするようになった。

 「──嫌だ」

 いつの日か、本音がこぼれ出た。
 こんな日々は嫌だ。

 自分の夢が汚れて、壊れて、ボロボロになっていく。
 腐りかけの希望を握りしめて……俺はいつまで抗おうとしていたんだっけな。そのうちバトルも全くしなくなった、どうせ勝てないから。

 見かねた協会は、俺にアマチュアへの降格処分を下した。
 逆に救われた心地だったよ。また……あのぬるま湯に戻れるんだからな。それでも、居ついた視聴者はなかなか変えられない。

 俺は依然として迷惑系パフォーマーとして君臨し続け、気がつけば第一拠点ファーストリージョンの厄介者になっていた。
 なら、それでいい。俺みたいな勘違い野郎を振るい落とす役割を果たしてやろう。

 勘違いした自信家を正しき道に放り出してやるのは、新人狩りを堂々とできる俺の役割だ。お節介、余計なお世話。何とでも言え。
 俺は、俺の信念に準じて──壁となる。

 警告を。妨害を。
 俺、ケビン・ジェードは……迷惑系パフォーマーで構わない。

 ー----

 青葉杯当日、対戦カードを見たガフティマは笑いがこみ上げるのを抑えきれなかった。

 「ク……ハハハッ! おいグルッペ! これ見ろよ、あの生意気なガキが相手だぜ!?」

 彼の取り巻きの一人である魔導士、グルッペに対戦相手を見せる。
 グルッペもまた、ニタリと不気味に笑う。

 「フへへ……こりゃまた、奇遇ですねえ」

 彼らの傍には、二人の男がいた。
 分厚いコートに身を包んだ迷惑系パフォーマー、ケビン。
 そして、ケビンの右腕ポジションのトシュア。

 「ケビン先輩、トシュア先輩! こいつが生意気な新入りですよ!」

 ケビンはレヴリッツの名を見て頷く。
 曰く、ガフティマはレヴリッツに大負けしたらしい。生意気な初心者を狩ろうとして、逆に狩られた形だ。
 だが、ケビンは気づいている。レヴリッツは比類なき精神と武力の持ち主……化物であると。故に、ケビンが妨害することはない。彼が立ちはだかるのは、才能のないパフォーマーの道だけなのだから。

 「……レヴリッツ・シルヴァの相手は手前に譲ってやるよ、ガフティマ。
 俺は──」

 ──リオート・エルキス。
 ケビンの眼中には彼の名前しか入ってこなかった。

 これが最後の試合だと、リオートは告白した。だからこそケビンも全力で送り出さねばならない。
 才能なき新人が再びバトルパフォーマーの道へ踏み込まないように、かつての自分と同じく絶望しないように、完膚なきまでに叩きのめす。

 PPを稼いで成績を伸ばすことなど、もはや彼の眼中にない。

 「おい、ケビン? 熱くなるのはわかるが、チームの勝利も考えろよ。これだけ熟練者が揃っていながら、新人が三人もいるチームに負けるわけにもいかないだろう?」

 ケビンの肩をトシュアが叩く。
 トシュアもまた迷惑系パフォーマーの一人であり、よくケビンと合同で企画を組んでいた。プロ級の実力はないが、アマチュアの経験年数も長いので実力は折り紙つきだ。

 「わかってる。警戒すべきはペリシュッシュだが、あの女はどうでもいい。どうせタワーに籠って怠けてるだけだろうからな。本気を出せば俺より強いと思うんだが……才能はある癖にやる気がねえ。
 グルッペ、手前は指揮官。トシュア、手前はタワー制圧。リオート・エルキスは俺が狩る。作戦は以上だ」

 ケビンの言葉を聞き、ガフティマは口元を吊り上げる。

 ──雪辱。
 彼の目に昏い光が宿った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス
ファンタジー
【赤魔道士】 それは…なりたい者が限られる不人気No. 1ジョブである。 剣を持って戦えるが、勇者に比べれば役に立たず… 盾を持ってタンクの役割も出来るが、騎士には敵わず… 攻撃魔法を使えるが、黒魔道士には敵わず… 回復魔法を使えるが、白魔道士には敵わず… 弱体魔法や強化魔法に特化していて、魔法発動が他の魔道士に比べて速いが認知されず… そして何より、他のジョブに比べて成長が遅いという… これは一般的な【赤魔道士】の特徴だが、冒険者テクトにはそれが当て嵌まらなかった。 剣で攻撃をすれば勇者より強く… 盾を持てばタンクより役に立ち… 攻撃魔法や回復魔法は確かに本職の者に比べれば若干威力は落ちるが… それを補えるだけの強化魔法や弱体魔法の効果は絶大で、テクトには無詠唱が使用出来ていた。 Aランクパーティーの勇者達は、テクトの恩恵を受けていた筈なのに… 魔物を楽に倒せるのは、自分達の実力だと勘違いをし… 補助魔法を使われて強化されているのにもかかわらず、無詠唱で発動されている為に… 怪我が少ないのも自分達が強いからと勘違いをしていた。 そしてそんな自信過剰な勇者達は、テクトを役立たずと言って追い出すのだが… テクトは他のパーティーでも、同じ様に追い出された経験があるので… 追放に対しては食い下がる様な真似はしなかった。 そしてテクトが抜けた勇者パーティーは、敗走を余儀無くされて落ち目を見る事になるのだが… 果たして、勇者パーティーはテクトが大きな存在だったという事に気付くのはいつなのだろうか? 9月21日 HOTランキング2位になりました。 皆様、応援有り難う御座います! 同日、夜21時49分… HOTランキングで1位になりました! 感無量です、皆様有り難う御座います♪

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...