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三章
3-13 ほらね、息ぴったり
しおりを挟む「スティア後ろ! 精術でサポートが出来るだろ」
「ふん、その男ではやはり精術のサポートという意味では心もとないか」
「そうじゃなくて」
何を言っても好意的な方へと転がらない。
「テロペアは強いから、前にでてガンガン攻撃してほしいんだって」
「うん! ベユの作戦だもん。おれはその作戦がいいにゃー」
ほとほと参ってしまいながらもテロペアにお願いすれば、彼はわざとらしい位の笑顔で、にこにことミリオンベルを見た。
「で、大将はベユにしよ。やっぱりおれかベユがいいと思うんだよね。ルーシュの事もあるし。どうせあいつは数合わせだし? 前衛でも大丈夫だよ。おれがベユを守るから」
「ふん、数合わせであっても戦力は戦力だ。貴様のようにどの程度使えるのかもわからぬ輩には何も言われたくないな」
ついにミリオンベルは、大きく息を吐く。
「二人とも……」
「ミリィ、良い事を教えてあげよう」
ぐったりとしている彼の肩をポンと叩いたのは、ネメシアだ。
「二人とも人見知りだから、これが最大のコミミ……コミュニュ……コニュミ……」
「コミュニケーション?」
「それ。それだから」
『違う!』
否定したのは同時だった。
ネメシアが噛みながらも伝えたそれは、二人にとっては不服だったのだろう。だが彼女は、にっこりと笑う。
「ほらね、息ぴったり」
そして指差しながらミリオンベルに伝えた。
「そっか。じゃあ仕方がないな」
彼は彼ですんなりと信じると、こくりと大きく頷く。
「いいなー、テロペアくんとスティちゃん、仲良しで」
「誤解するなアリア。私がこれと仲がいいはずがないだろう」
「しょーだよ。こんな女と仲良くするわけにゃいでしょ?」
どこから出したのか、いつの間にか手にピンクのリボンを持っているアルメリアが羨望の眼差しを向けると、二人は首を左右に振った。
「二人とも、仲良くしてくれないのか?」
待ったをかけたのはミリオンベルだ。このタイミングを逃してなるものかと、チームとしての結束を強くする為に間に入る。
「……仕方にゃいなー。大会中だけね」
「ああ。大会の、試合中だけは仲良くしてやろう」
結果として彼の行動は功を奏し、距離はあるものの一応の譲歩が見えた。
「ミリィ、二人はちょっとずつ距離を詰めないと受け入れられないんだよ」
「なるほど、わかった」
「ええ、わたしもわかったわ」
天然暴走娘が説明をすると、ミリオンベルとアルメリアはこくこくと頷く。
『……もう、それでいい……』
険悪な二人はまた、大きく妥協をしてから息を吐き出した。こうなってしまっては、もうネメシアのペースに巻き込まれる。
「作戦もアレだ。ベルが言ったやつでいい」
「しょーしょー。ベユが大将。前衛は俺とベユ。後衛がコレ」
「人をこれ扱いするな! 私はスティアだ!」
「えー、でもー、あんただっておれの事、貴様って呼ぶじゃん。おれ、貴様さんじゃないですしー?」
再びミリオンベルがおろおろとし始めると、ネメシアは彼の袖をちょいちょい引っ張った。
「ね、戯れてるでしょ?」
『違う!』
「息ぴったりー」
結局上手い反論も見つからず、二人は「わかった」だの「もう作戦会議終わり!」だのと話を打ち切った。おろおろしていたミリオンベルだったが、最終的には「こういう仲良しの形だよ」というネメシアの言葉に大きく頷く。彼の中では納得がいったらしい。
「スティちゃん、おしまいなのよね?」
「その言い方だと、私が終わっているようなのだが」
アルメリアのキラキラとした視線を受け、スティアは表情を引きつらせた。
「おそろい、しましょ?」
「しーましょ!」
アルメリアの手にはリボン、ネメシアは何も持っていないが、わしわしと手を動かしている。
「くっ……す、好きにしろ!」
結局この二人に敵うはずもなく、スティアは髪の毛を触らせる事を決意した。
目の前のテロペアが「あーあ、ご愁傷さまー」と鼻で笑いながら言ったのに腹は立つものの、そのテロペアもすぐにミリオンベルに「別に喧嘩じゃないよー」とフォローに回ったあたり、彼にも受難が訪れているようだ。
どうも作戦会議よりももっと大変な事が起こりそうな状況のまま、時間は進む。
***
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