精術師と魔法使い

二ノ宮明季

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三章

3-19 勝てたらおめでとう、負けたら残念会にすればいいや、って

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 結果から言えば、オレのチームも、ベルのチームも勝ち抜けて、本戦に進める事になった。これでどちらもクヴェルの代表だ。
 全試合が終わって発表されたあと、一度何でも屋に戻ってわーわーと盛り上がる。何故かテロペアだけは先にさっさと帰ったが、用事があったのだろうか。

「さて、じゃ、全員汗を流して、着替えておいで」
「何で?」

 所長は盛り上がっているオレ達に、次なる指令を出した。

「夕食はレストランに行くからだよ」
「レストラン!?」
「そう。レストラン・ヴァイスハイト。今日は貸し切りにしてあるから」

 ヴァイスハイトって、テロペアの家か! あれ、高級なところじゃなかったっけ!?

「前から予約しておいてたんだよね」

 す、すげぇ。そんな事ってあるのか。
 高級なご飯……高級なご飯を食べるのか!? どうしよう、マナーとか怪しいかも!

「勝てたらおめでとう、負けたら残念会にすればいいや、って」

 所長はさらっと続きを口にしてから、ディオン達の方も見た。

「あ、君達もシャワー浴びておいで。一緒に行くよ」
「えっ、俺達もですか?」
「そうだよ。君達もクルトと同じチームなんだから」

 皆一緒に行くのか! すげぇ……。これ、給料から天引きって事、ないよな?

「所長、奢りですか」

 オレの疑問は、オレが口にするよりも先にスティアが聞いた。だ、だよな!

「何を当たり前の事を言ってるの。君達に財布を出させるような事はないよ」
「ありがとうございます。メニューの高い順に頼んでもいいんですね」
「値段を見ずに、食べたいものを頼みなさい」

 えっ……ふ、太っ腹。凄い。なにそれ。

「所長、スープだけでもいいですか?」
「駄目です。スープ以外も食べなさい」

 アリアさん、ちゃんと食事はとって下さい。
 アリアさんは美人で可愛いという天使っぷりを発揮するが、小食だ。事あるごとに食事の量を減らそうとし、毎回失敗している。
 それでも、今回はスープだけでも飲む気があるからマシな方か。好きなのかな、スープ。

「所長、デザートは何品までですか!」
「ご飯を食べた後の胃袋の余力を見て調整しなさい」
「はーい!」

 で、デザート……。匂いが強いものがありませんように。シャーベットとか、そういうやつ多めだといいな。オレの為に。

「所長、厨房に入ってきてもいいですか?」
「ヴァイスハイトの皆さんに聞いて許可が出たらね」

 で、ベルは厨房入る気満々か。入って何するんだ。あ、料理か。

「あ、あの、本当に俺達も?」
「そうですよ。お高いんじゃないですか?」
「君達だけ置いて行って、何がおめでとう会なの。いいから黙ってついてきて、しっかりご飯を食べなさい」

 おお、所長、凄い。皆まとめてご飯を食べさせるつもりだ。

「あの、これ、依頼料には」
「含まれません。ご馳走するから、身だしなみ以外は何も気にしないように」

 この汗臭い恰好はやめろ、っていう事か。それに関しては納得だ。

「他に質問は?」

 所長がオレ達をぐるっと見ると、皆めいめいに「ないです」と答えた。

「はい、じゃあ、順番にシャワー浴びて、身支度整えて。試合の後で汗かいてるだろうし」

 所長がそう締めると、今度は各々動き始めた。このタイミングでコスモスが「シャワーならうちにもあるわ! 使いなさい!」などと入ってきたものだから、仕度は思ったよりも早く終わりそうだ。

   ***

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