俺は大型トラックになった~トラックで無双する異世界旅~

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6 ジェーンを雇うことにする

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 俺は人体生成により、ジェーンを説得? して、トラックの車内に招き入れることにした。

 ジェーンはトラックのドアを開けた時、びくっと震えた。ドアアタックのトラウマがあるのだろう。

「大丈夫だよ! 何もしないよ!!」

「う、うむ。しかしな。そうだな。ううむ」

 悩むジェーン。

 そりゃそうだ。いきなり分からない奴にトラックに乗れと言われて、乗る奴はいない。

 俺が子供だから、危険性が低いと思ってくれるのが、唯一の救いだな。やっぱり子供ってずるいな。いろいろと優遇されるし。

 そうなると、某探偵少年は、やりたい放題じゃないのか? 

 見た目は子供、頭脳は大人! 真実はいつも一つ! などと言っている探偵少年だが、なぜ彼はいつも事件に巻き込まれるのだろうか? 奴が物語の黒幕ではないのだろうか?

 俺はどうでもいいことを考えていると、ジェーンから聞かれた。

「おい。本当に何もしないんだな? 魔族の装甲車じゃないんだな?」

「違うよ! 乗り込めば分かるから! 魔国なんて知らないし!!」

「そ、そうか。分かった。乗り込むだけだぞ。何もするなよ」

 ジェーンは俺のドリルを見つめ、渋々乗り込んでくれた。どうやら彼女はかなり初心なようだ。子供のドリルでもこんなに反応するのだからな。もしかして処女だろうか?

「えっと、どうやって乗り込むんだ? ここに手をかけるのか?」

「ここに足を乗せて、ここの取っ手を持って乗り込むんだ」

 俺はジェーンに親切に説明しながら、トラックをよじ登る。キマイラの引っ張り出す作業で何度もトラックに乗り込んだが、5歳児に大型トラックの乗り降りはつらい。踏み台がないとつらい。

 最後はジェーンに引っ張り上げてもらい、運転席に到着。ジェーンは視界が変わったことや、見たこともないトラックの装備品に目を輝かせている。

「すごい。中は魔導具だらけではないか。魔物ではなく、装甲車だったのか」

 違う。大型トラックだ。装甲車ってのは、自衛隊が乗るようなごつい奴だ。

「この計器はなんだ? 見たこともないな。すごいぞこれは。一体どんな技術だ。どこの国が作ったのだ」

 最初こそ怯えていたが、俺が危険なものではない、安全だと何度も説明するうちに、ジェーンも理解を示してくれた。

 危険なものではないと分かってからのジェーンは、まるで子供のようだった。

 これはなんだ、あれはなんだと、質問ばかりしてくる。

 機械騎士というだけに、機械類が好きなのだろうか? とにかく、ジェーンが俺へ攻撃してくることはなくなった。むしろ興味対象に変わった。最初の攻撃的な態度がウソのようだ。

 ジェーンにナビの使い方や、アクセルやハンドルなど、様々な質疑応答をした後に、俺自身のことを答えた。

 俺はトラックが生み出した、魔力の塊だと説明した。俺自身、夢でも見ているのかと思うが、現実に魔力というものがあって、俺が生み出されるのだから仕方ない。

 時間的に俺はあと30分くらいで消えるということも伝えた。継続してこの体を維持することもできるが、ガソリンがもったいない。ジェーンに時計を見せ、この数字が12時を示したら消えると伝えた。

 ジェーンは懐疑的な目を俺に向けていたが、とりあえずは納得した。

 一応問題もあり、ジェーンはアラビア数字は読めたが、日本語は読めなかった。言葉は通じるが、日本語は読めないらしい。

 トラックに装備されていた整備マニュアルや、ナビのボタンが、ジェーンには読めなかったことで発覚した。

 一応、世界共通の言語、ルイン語というものがこの世界にはあるらしい。アラビア数字はこの世界でも通じるようで、俺はびっくりした反面、安心した。

 ルイン語だが、メモ帳が近くにあったのでボールペンで書いてもらったが、ミミズがのたくったような文字で、何を書いているのかさっぱりわからない。

「これはなんて書いたの?」

「初めまして、だ!」

「ふーん」

 全く読めない。むしろ、ジェーンは真っ白いメモ帳と、ボールペンに驚いていた。ジェーンの属している国には、同じような筆記用具はあるらしいが、俺が出したメモ帳とボールペンは高級品らしい。俺がポンと渡したことに、驚いたようだ。

 俺はジェーンの書いてもらったルイン語を見るが、地球にはない文字に見える。地球には何百という言語があるだろうし、俺の知らない言葉はたくさんあるが、ルイン語は今までに見たことがない。しいて言うなら、英語の筆記体に似ている。

 結論をいうと、俺が喋る言葉は日本語のようで日本語ではないようだ。何かに自動変換されているらしい。

 ジェーンのおかげでいろいろわかったが、ジェーンは俺に言った。

「何か着る服はないのか? 裸でウロウロされると落ち着かない」

 俺はトラックのことをジェーンに説明していたが、ジェーンは俺の股間を見ると突然言ってきた。どうやらプルプルと揺れる俺のドリルが我慢できないらしい。バクッと食べそうになる。そんな感じで凝視している。

 俺はあと少しで光になるから、服を着ても意味がないと説明した。

「その光になるというのも、嘘くさいが、このトラックを見た後だ。信憑性はある。それは分かるが、その全裸でいるのは止めてくれ。いくら子供でも、君みたいな美少年では私もおかしくなりそうだ」

 機械騎士のジェーンは、聞くところによると、定義的にはホムンクルスに近いそうだ。ホムンクルスという単語がこの世界になかったことから、ジェーンは人造人間や、機械騎士と呼ばれているそうだ。

 彼女らは人間の遺伝子を組み込まれているので、限りなく人間に近い。精神や心も人間に酷似しているし、性に対する反応も人間と同じだ。

 美幼児である俺のドリルは、ジェーンに毒らしい。

 説明しているうちに、俺の顕現時間はすでに20分を切っている。

 服を着ても意味ないが、ジェーンの要望だ。逆レイプされても困るし、取り合えず着よう。確か荷台のダンボールに、子供服が山ほどあったはずだ。

 俺はジェーンについて来るように言う。運転席の後部座先は広い寝台になっている。その寝台の足元の横に小さなドア、ハッチがある。キマイラを捨てる時に使ったドアだ。

 俺はジェーンを案内しつつ、荷台に移動する。荷台はウイングを閉じているので真っ暗だ。俺は蛍光灯のスイッチを押して、荷台を照らす。

「な!! なんだこれは!! す、すごい!! 我が帝国にも、こんな装備の車はないぞ。将軍たちが乗る飛空艇クラスだ」

「え。飛空艇?」

「ああ。飛空艇だ」

「飛空艇って、飛行機?」

「飛行機だと? 飛空艇だよ」

 飛行機はないらしいが、飛空艇はあるらしい。うまく言葉が通じない。

 空を飛ぶマシンはあるようだ。この世界はそれほど技術が低くないということか。

 俺はうずたかく積まれたダンボールを上ると、子供服を発見した。少しサイズが大きいが、着れないことはない。

 俺が発見したのは、女児が着るワンピースだった。男物を探したが、どうやらこのダンボールの山を一度崩さなくては見つけられないようだ。

 仕方ないので、俺はワンピースを着る。ヒラヒラとした、フリルが付いた真っ白いワンピースだ。

 どうせ10数分後には消えるし、別にいいいだろう。見せる相手は機械騎士という、ジェーンだ。今のところ、見ず知らずの他人なわけだし、恥ずかしさなどあまりない。

 俺はワンピースを頭からかぶると、ピョンッとダンボールの山を飛びおりた。

 俺はドヤ顔でジェーンの前に着地する。
 
「これで文句あるまい」

 ジェーンは口を開けて驚いていた。

「どうしたんだ。ジェーンが言うから着たんだぞ。服がこれしかなかったんだ」  

 ジェーンは俺を見るなり、こう言った。

「皇帝の姫様より可愛い。初めてこんな美しい人間を見た」

 皇帝の姫だって? 俺は男だぞ。姫じゃないぞ!!

「やはり君は妖精の類か? 魔力で動くと言っていたし、人間よりも私や、魔物に近いぞ」

 ジェーンが俺の頭を撫でてくる。

「うーむ。髪もサラサラ。まるでお日様のようないい匂い」

 ジェーンはフガフガと俺の頭の匂いを嗅いでくる。やめんかい。

「そうだジェーン。ここに来るまでの道中で、化け物をいっぱい倒したんだが、見つけたものが少しあるんだ」

 俺はキマイラの魔石? とか、ジャッカルの魔石をジェーンに見せる。壊れずに、運よく回収できた魔石たちだ。

 俺は100均製と思われる、小さなアクリルケースに、魔石を入れていた。俺はそれをジェーンに見せる。

「なんだこれは!!!!! なんだこれはッ!!!!!!!」

 ジェーンはここ一番で驚いた。荷台に、ジェーンの叫び声が響いた。

「うわ、なんだよ。急に叫ぶなよ」

「この巨大な魔石はいったい何の魔物から。いやそれよりもこの純度。相当高レベルな魔物だ。この小さな魔石もすごい。草原地帯の危険な魔物たちの魔石だ。こんなにいっぱい」

「そうなのか? やっぱり取っておいてよかったな。お金になるか?」

「これだけで数年は豪遊出来るだろう」

「へぇー。そうか。拾っといて正解だな。そうだな。ジェーン。いろいろ教わったし、出会った記念に、一番大きな魔石、やるよ。俺には使い道ないし」

 どうせこの先、いくらでも手に入りそうだ。ガソリンもなんとかなりそうだし、俺にはリペアという必殺技がある。食べ物を食べたことはないが、今のところ俺はガソリンで生きている。食い物も必要なさそうだ。まぁ、食い物、ガソリンっていうか、正確に言うと、液体の魔素だけど。

 とにかく、俺には魔石の使い道が思い浮かばない。今のところは。

「なんだと? やる? 今、私にくれるといったのか?」

「うん。やるよ。今のところ必要ないし」

「いやいやいや。私のような低級の機械騎士にこんな巨大な魔石など。ありえない。いやでもこれがあれば私は中級下位のナイトクラスに……。いやでも、こんな子供から魔石をだまし取るような真似は。この価値をきちんと教えるべきでは……」

 なにやらブツブツと言い始めるジェーン。俺は面倒くさいので、ジェーンに魔石を握らせる。キマイラの、大きな魔石をだ。

「いいからやるよ。この先、ジェーンの手が必要になるし」

「なんだと? 私の?」

 ジェーンの目の色が変わる。俺はこのままなし崩し的に、ジェーンをトラックに乗り込ませたい。この世界の情報がもっと必要だ。

「ああ。俺はここら辺の地理や、世界がまったく分からない」

「分からない?」

「言わなかったか? 俺はこの世界に突然現れた。トラックとして。だからこの世界のことは分からない。協力者が必要なんだ。第一村人は死んでたから、頼りはジェーンだけなんだ。それをあげるから、とりあえず俺に雇われてよ。近くの街まででもいいからさ」

 ジェーンは俺の瞳をじっと見ると、何かを決心したらしい。

「いいだろう。君のことは上に報告が必要だしな。私が所属している街まで案内しよう。これは、この魔石だが、私が君からの報奨金として、その、いただくことにするが、いいか?」

 もじもじしながら、魔石を欲しがるジェーン。

「あげるって言っただろ。気にするな」

「ほほぉぉぉ。うほぉおお。こ、こ、これはすまない。ああ。私にも遂に成り上るチャンスが。ありがとう子供」

「子供じゃない。エルヴだ。エルって呼んでくれても構わない」

 俺の本名は思い出せない。エルヴという単語しか、俺の名前は思い浮かばない。ならばもう、ずっとエルヴでいい。

「そうか。エル。これから少しの間、世話になるぞ」

「うん」

 俺はジェーンと握手をしようと手を伸ばしたとき、俺は光になって消えた。

 その場には、真っ白いワンピースだけが残された。

「え!!!!」

 ジェーンは驚愕。

「ど、どこにいった!!」

 あわてふためくジェーン。

 俺は車内にあるスピーカーから、機械的な男性な声を出す。低く、安心するオジサマボイスだ。

「俺は消えてない。この車に戻っただけだ」

「……え」

 ジェーンはまたまた驚愕する。

「今さら驚くなよ。俺はトラックだって言っただろ?」

「いや、でも、その声がな? 可愛い少年の声だったのに、いきなり男性の低い声ではギャップが。なかなか信じられん。あまりに驚きの連続で」

 ああそれか。仕方ないな。俺のボイスパターンは男性しかないんだ。この先レベルアップすればボイスチェンジできるかもしれんが。

「とにかく、出会ってしまったんだから慣れてくれ。魔石も渡したし、契約成立だろ?」

「そ、そうだな。うむ。そうだ。よくわからないが、これは私のチャンスなんだ」

 そうだそうだと言うジェーン。

 ジェーンは無理に自分を納得させ、運転席に戻って行った。
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