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第二章
81 魔法訓練2
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俺は水魔法。リザは火魔法。
まったく異なる属性を混ぜ、協力して魔法を発動することになった。
リザが言うには、『今のアオ君なら、魔力の波長を合わせて他人と魔法を合成できると思う』と言っていた。
一人で混合魔法を使うだけでも高難易度なのに、他人と魔法を混合させるのはさらに難しい。そんなことが本当に出来るのか疑問に思ったが、俺はリザの言うとおりにした。
「じゃぁアオ君。いつものように水魔法を使って、水弾を作ってくれ」
「え? いきなり魔法を使うのか? もっとこう、魔力調整の練習とかしなくていいのか?」
「アオ君はすでに私よりも魔力操作がうまいだろ。そんな練習は必要ない。もとよりこの魔法は、体で覚えるしかないんだ」
リザが真剣な目で俺を見つめてくる。なにか、覚悟を決めたような目だ。俺はまだ覚悟を決めていなかったが、仕方ない。
「…………わ、分かった」
掌に魔力を集中させ、人の頭ほどの水弾を作り出す。それを空中に浮かべて待っていると、リザが火の魔法を使った。俺の水弾と同じように、火炎弾が空中に浮かぶ。
「ふっ! はぁ! うぉぉぉぉ!」
リザが何だか雄たけびを上げている。普段、魔法を使う時、そんな声を出していたか?
「というか、リザ。その火の球、ずいぶん形がいびつだぞ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。私を信じろ」
「…………」
リザの創った火炎弾は火力が安定していない。ろうそくの火のように、ゆらゆらしている。轟々と燃え盛る火炎弾ではない。対して俺は、真円の水弾を生成している。水に圧力をかけているので、球状を保っているのだ。
リザの不安定な火炎弾を見て、俺は心配になる。こんなんで魔法を混ぜ合わせて大丈夫なのだろうか?
「よしアオ君。君が私の魔力に合わせてくれ」
「え? 俺だけで? リザは何もしないのか? そんなこと急に言われても困るぞ」
「心配するな。アオ君なら出来る」
「な、なんだと?」
いきなり無理難題を言われる。他人と魔力の波長を合わせたことなどない。こういうのはもっと、小さなことからコツコツやって、魔力の波長を合わせる練習をするんじゃないのか? ぶっつけ本番かよ。
俺はリザの火炎弾に水弾を近づけてみるが、何も進展が無い。ただ、水と火が近づいただけだ。
「アオ君。もっと水弾の魔力量を下げてくれ。それじゃ水が冷たすぎる」
「水が冷たい? 常温にしろってことか?」
水の温度変化などうまく出来ない。それが出来たら火魔法と合成させたりしていない。
俺は必死に水の温度調整を行なってみるが、うまく行かない。リザの火炎弾が逆に俺の水弾で消えそうだ。だが、時々俺の水弾がボコボコと音を立てているので、部分的に沸騰しているっぽい。このまま火炎弾と水弾を混ぜて大丈夫なのだろうか? 爆発しないよな?
「ちょ、待てよおい。こ、これは、ど、どうすればいいんだ?」
俺は慌てる。混合魔法、怖すぎる。一人でやるのも怖いのに、他人と魔法を合成させるとか、無理すぎる。
「アオ君、慌てるな。水弾の位置は今のままでいい。落ち着いて、私の手を握るんだ」
リザは空いている左手を差し出す。俺は言われるがまま、リザの手を握り返す。すると、リザの魔力が俺に流れ込んでくるのが分かった。
「おっ。リザの魔力を直接感じるぞ」
相手が魔法発動状態だと、魔力の流れを鋭敏に感じ取れた。イメージで言うと、冷たい牛乳を一気飲みして、胃の中にたまっていく感じだ。
「そうだ。その感覚を覚えるんだ。怖がるな」
リザは至って自然だ。額に汗を浮かべているが、冷静だ。混合魔法の経験があるのだろうか? なんでこんなに落ち着いているんだ? ぶっつけ本番なんて、下手したら大怪我だぞ。
「アオ君。私も君の魔力を感じるが、もやっとしていて、正確じゃない。だけどアオ君は違うだろ?」
俺はリザの魔力を全身で感じ取っている。握った手から、リザの体温と魔力を感じる。ものすごく正確に。
「あぁ。リザの魔力を感じる」
「そうだ。君は天才だ。別に失敗しても大丈夫だから、怖がらずに私の魔法に合わせてくれ」
リザの手を握りながら、「天才」と言われる。少しむず痒い気持ちになる。
「大丈夫だ。君なら出来る」
リザは俺を見てものすごい笑顔だ。信頼と期待を寄せてくれている顔だ。
「わかったよ。なんの根拠があって言っているのか分からんが、頑張ってみる」
「そうだ。頑張れ」
出来る出来る、君なら出来ると、元テニスプレイヤーの松岡〇三みたいに何度も言われると、本当にできる気分になってくる。
しかも俺とリザが魔法を使い始めたからか、訓練所にいた兵士たちが興味を示して群がってくる。みんな「御使い様頑張れー!」と応援してくれる。もはや魔法大会みたいになっている。
水弾と火炎弾が徐々に近づいていき、俺の水弾が火炎弾に飲み込まれた。水は消えることなく、火の魔法で徐々に加熱されていく。急激な温度変化を起こさず、水を熱湯に変えていったのだ。
次第に湯気が訓練所内に立ち込めて、気温がどんどん上がっていく。気づけば、俺の水弾はリザの火炎弾と混ざり合い、100度を超える温度に到達。灼熱の水弾が完成した。ただし、大きさが手のひらサイズまで縮んでおり、戦闘ではあまり役に立たないレベルだった。
「アオ君。やっぱり君は天才だな。初めてでこれほどまでの成果をだすとは」
「でも、こんな大きさじゃ、人ひとり倒すことも出来ないぞ」
「それはこれから練習して頑張ろう」
周りにいた兵士たちから大きな歓声があがり、第一回魔法訓練は終わった。これから戦争開始まで、毎日リザと訓練を行うことになった。リザ以外の人間とも混合魔法の練習をする。どんどん俺が強くなっていくのを感じた。
あと、これは余談になるが、時々プルウィアやクーが嫉妬深い目で見てくるのが気になった。リザとばかり一緒にいるから、怒ったらしい。
モテる男はつらいね! と、思っていたら、プルウィアに腐ったマンドラゴラを食わせられ、クーからは履き古した汚いふんどしをプレゼントされた。俺とリザに対する、彼女たちなりの反撃だった。
ハーレムを築くのは、案外難しいかもしれない。
まったく異なる属性を混ぜ、協力して魔法を発動することになった。
リザが言うには、『今のアオ君なら、魔力の波長を合わせて他人と魔法を合成できると思う』と言っていた。
一人で混合魔法を使うだけでも高難易度なのに、他人と魔法を混合させるのはさらに難しい。そんなことが本当に出来るのか疑問に思ったが、俺はリザの言うとおりにした。
「じゃぁアオ君。いつものように水魔法を使って、水弾を作ってくれ」
「え? いきなり魔法を使うのか? もっとこう、魔力調整の練習とかしなくていいのか?」
「アオ君はすでに私よりも魔力操作がうまいだろ。そんな練習は必要ない。もとよりこの魔法は、体で覚えるしかないんだ」
リザが真剣な目で俺を見つめてくる。なにか、覚悟を決めたような目だ。俺はまだ覚悟を決めていなかったが、仕方ない。
「…………わ、分かった」
掌に魔力を集中させ、人の頭ほどの水弾を作り出す。それを空中に浮かべて待っていると、リザが火の魔法を使った。俺の水弾と同じように、火炎弾が空中に浮かぶ。
「ふっ! はぁ! うぉぉぉぉ!」
リザが何だか雄たけびを上げている。普段、魔法を使う時、そんな声を出していたか?
「というか、リザ。その火の球、ずいぶん形がいびつだぞ。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だ。私を信じろ」
「…………」
リザの創った火炎弾は火力が安定していない。ろうそくの火のように、ゆらゆらしている。轟々と燃え盛る火炎弾ではない。対して俺は、真円の水弾を生成している。水に圧力をかけているので、球状を保っているのだ。
リザの不安定な火炎弾を見て、俺は心配になる。こんなんで魔法を混ぜ合わせて大丈夫なのだろうか?
「よしアオ君。君が私の魔力に合わせてくれ」
「え? 俺だけで? リザは何もしないのか? そんなこと急に言われても困るぞ」
「心配するな。アオ君なら出来る」
「な、なんだと?」
いきなり無理難題を言われる。他人と魔力の波長を合わせたことなどない。こういうのはもっと、小さなことからコツコツやって、魔力の波長を合わせる練習をするんじゃないのか? ぶっつけ本番かよ。
俺はリザの火炎弾に水弾を近づけてみるが、何も進展が無い。ただ、水と火が近づいただけだ。
「アオ君。もっと水弾の魔力量を下げてくれ。それじゃ水が冷たすぎる」
「水が冷たい? 常温にしろってことか?」
水の温度変化などうまく出来ない。それが出来たら火魔法と合成させたりしていない。
俺は必死に水の温度調整を行なってみるが、うまく行かない。リザの火炎弾が逆に俺の水弾で消えそうだ。だが、時々俺の水弾がボコボコと音を立てているので、部分的に沸騰しているっぽい。このまま火炎弾と水弾を混ぜて大丈夫なのだろうか? 爆発しないよな?
「ちょ、待てよおい。こ、これは、ど、どうすればいいんだ?」
俺は慌てる。混合魔法、怖すぎる。一人でやるのも怖いのに、他人と魔法を合成させるとか、無理すぎる。
「アオ君、慌てるな。水弾の位置は今のままでいい。落ち着いて、私の手を握るんだ」
リザは空いている左手を差し出す。俺は言われるがまま、リザの手を握り返す。すると、リザの魔力が俺に流れ込んでくるのが分かった。
「おっ。リザの魔力を直接感じるぞ」
相手が魔法発動状態だと、魔力の流れを鋭敏に感じ取れた。イメージで言うと、冷たい牛乳を一気飲みして、胃の中にたまっていく感じだ。
「そうだ。その感覚を覚えるんだ。怖がるな」
リザは至って自然だ。額に汗を浮かべているが、冷静だ。混合魔法の経験があるのだろうか? なんでこんなに落ち着いているんだ? ぶっつけ本番なんて、下手したら大怪我だぞ。
「アオ君。私も君の魔力を感じるが、もやっとしていて、正確じゃない。だけどアオ君は違うだろ?」
俺はリザの魔力を全身で感じ取っている。握った手から、リザの体温と魔力を感じる。ものすごく正確に。
「あぁ。リザの魔力を感じる」
「そうだ。君は天才だ。別に失敗しても大丈夫だから、怖がらずに私の魔法に合わせてくれ」
リザの手を握りながら、「天才」と言われる。少しむず痒い気持ちになる。
「大丈夫だ。君なら出来る」
リザは俺を見てものすごい笑顔だ。信頼と期待を寄せてくれている顔だ。
「わかったよ。なんの根拠があって言っているのか分からんが、頑張ってみる」
「そうだ。頑張れ」
出来る出来る、君なら出来ると、元テニスプレイヤーの松岡〇三みたいに何度も言われると、本当にできる気分になってくる。
しかも俺とリザが魔法を使い始めたからか、訓練所にいた兵士たちが興味を示して群がってくる。みんな「御使い様頑張れー!」と応援してくれる。もはや魔法大会みたいになっている。
水弾と火炎弾が徐々に近づいていき、俺の水弾が火炎弾に飲み込まれた。水は消えることなく、火の魔法で徐々に加熱されていく。急激な温度変化を起こさず、水を熱湯に変えていったのだ。
次第に湯気が訓練所内に立ち込めて、気温がどんどん上がっていく。気づけば、俺の水弾はリザの火炎弾と混ざり合い、100度を超える温度に到達。灼熱の水弾が完成した。ただし、大きさが手のひらサイズまで縮んでおり、戦闘ではあまり役に立たないレベルだった。
「アオ君。やっぱり君は天才だな。初めてでこれほどまでの成果をだすとは」
「でも、こんな大きさじゃ、人ひとり倒すことも出来ないぞ」
「それはこれから練習して頑張ろう」
周りにいた兵士たちから大きな歓声があがり、第一回魔法訓練は終わった。これから戦争開始まで、毎日リザと訓練を行うことになった。リザ以外の人間とも混合魔法の練習をする。どんどん俺が強くなっていくのを感じた。
あと、これは余談になるが、時々プルウィアやクーが嫉妬深い目で見てくるのが気になった。リザとばかり一緒にいるから、怒ったらしい。
モテる男はつらいね! と、思っていたら、プルウィアに腐ったマンドラゴラを食わせられ、クーからは履き古した汚いふんどしをプレゼントされた。俺とリザに対する、彼女たちなりの反撃だった。
ハーレムを築くのは、案外難しいかもしれない。
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