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第一章 伝説の水魔法使い
27 ダーナの泉
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ヌアザに案内されて、教会の地下に降りる。松明の明かりを頼りに地下に降りたが、特に期待したものはなかった。ダンジョン的な、底のない迷宮を期待したのだが、降りてみると広い地下室があるだけだ。カビ臭く、ネズミの糞がそこら中に落ちている。古い銀食器なども積み重ねてられているが、使えるようなものは何もない。
「アオ様。こちらがダーナ様の泉です」
ヌアザが俺に教えてくれる。松明で照らして見せてくれるが、そこにはとても泉とは思えないものが広がっていた。
「これが泉?」
「はい。今は干上がっていますが、300年以上前は、綺麗な水が流れていたとか」
「いや、これってプールだろ」
「プール? なんですかそれは」
「あぁ。えーと。なんていうか、人が泳ぐ場所だよ」
「泳ぐ? なぜ泳ぐのですか?」
ヌアザはなぜと聞いてくるが、そんなことを言われても困る。泳ぎたいから泳ぐのだろう。地球では海水浴は普通にあるし、泳げない人間の方が逆に少ないぞ。
「アオ様。どうして泳ぐのですか?」
「ヌアザ。水が大量にあれば、人間泳ぎたくなるものだ。暑い夏の日に、プールは最高だぞ」
「暑い夏の日。確かに、暑い日に水に浸かるのは悪くないかもしれません」
水が無い世界だし、プールなんて王侯貴族でも入れないか? というか、プールなら排水設備があるはずだ。どこかに流す穴があるはずだが、どこにも見当たらない。
プールの大きさだが、15メートル四方の正方形で作られている。棺はどこにあるのかと思ったら、プールの真下に設置されているのだという。本当にミイラが入っているか分からないが、もし入っていたら、死体のエキスが水に流れ込みそうだ。
「まぁいい。そんなことより水魔石を入れよう。ここに入れれば時間稼ぎになるだろう」
俺は持ってきた水魔石をプールの中央に設置する。一体どれくらいの水が出るか分からないが、ひとまずここに置いておこう。
次々とあふれてくる水に不安を覚えるが、地下室まで水没することはないはずだ。きっといっぱいになる前に止まるさ。魔石と言うのは、魔力がなくなれば石に戻るからな。
俺はそう思って、何気なくプールから出ようとした。
その時。
『ありがとう』
少女の声が突然聞こえた。
え? 俺は振り返るが、そこに少女はいない。ヌアザやシスター、リザがいるだけだ。俺はきょろきょろ周りを見ていると、また聞こえた。
『この世界を、お願いします』
「え?」
また聞こえた。頭の中に、直接響くような、透き通る声だ。
「リザ? 何か言ったか?」
「え? 私? 何も言っていないが。どうしたんだ?」
「いや、何か聞こえたような」
「ははは。それはミイラの幽霊じゃないか?」
リザはおどけてみせるが、確かにその声は聞こえた。
この世界をお願いしますと。そう聞こえた。
「ちっ。なんだか嫌な予感がするな。俺は自由気ままに生きる為、村を飛び出たんだぞ」
俺はプールから上がる。しばらく水魔石の状態をみんなで眺めたが、水が止まる気配が無い。仕方ないので、時間を置いてからまた来ることになった。地下室に鍵をかけて教会に戻るが、俺は水魔石よりも、少女の声が気になった。
なんだか、聞いたことのあるような声だった。一体どこだった? どこで聞いた?
可能性があるのは日本にいた時だが、記憶が曖昧だ。もしかして、俺が生まれ変わる時に聞いた声か?
「…………」
考えるが、思い出せない。
「しょうがない。とりあえず買い物を済ませてから、また地下室に来るか」
あぁ。今日中にこの街から出るつもりだったが、無理そうだ。街中で変な奴らに絡まれなければいいが。そう言えばあのライドとかいう商人。あいつは大丈夫だろうか? ちゃんと水を売ったんだろうな? 誰かに追われるようになったら大変だぞ。
「はぁ」
この世界は危険で、先行きが全く読めない。俺の楽園は、遥か先にありそうだった。
「アオ様。こちらがダーナ様の泉です」
ヌアザが俺に教えてくれる。松明で照らして見せてくれるが、そこにはとても泉とは思えないものが広がっていた。
「これが泉?」
「はい。今は干上がっていますが、300年以上前は、綺麗な水が流れていたとか」
「いや、これってプールだろ」
「プール? なんですかそれは」
「あぁ。えーと。なんていうか、人が泳ぐ場所だよ」
「泳ぐ? なぜ泳ぐのですか?」
ヌアザはなぜと聞いてくるが、そんなことを言われても困る。泳ぎたいから泳ぐのだろう。地球では海水浴は普通にあるし、泳げない人間の方が逆に少ないぞ。
「アオ様。どうして泳ぐのですか?」
「ヌアザ。水が大量にあれば、人間泳ぎたくなるものだ。暑い夏の日に、プールは最高だぞ」
「暑い夏の日。確かに、暑い日に水に浸かるのは悪くないかもしれません」
水が無い世界だし、プールなんて王侯貴族でも入れないか? というか、プールなら排水設備があるはずだ。どこかに流す穴があるはずだが、どこにも見当たらない。
プールの大きさだが、15メートル四方の正方形で作られている。棺はどこにあるのかと思ったら、プールの真下に設置されているのだという。本当にミイラが入っているか分からないが、もし入っていたら、死体のエキスが水に流れ込みそうだ。
「まぁいい。そんなことより水魔石を入れよう。ここに入れれば時間稼ぎになるだろう」
俺は持ってきた水魔石をプールの中央に設置する。一体どれくらいの水が出るか分からないが、ひとまずここに置いておこう。
次々とあふれてくる水に不安を覚えるが、地下室まで水没することはないはずだ。きっといっぱいになる前に止まるさ。魔石と言うのは、魔力がなくなれば石に戻るからな。
俺はそう思って、何気なくプールから出ようとした。
その時。
『ありがとう』
少女の声が突然聞こえた。
え? 俺は振り返るが、そこに少女はいない。ヌアザやシスター、リザがいるだけだ。俺はきょろきょろ周りを見ていると、また聞こえた。
『この世界を、お願いします』
「え?」
また聞こえた。頭の中に、直接響くような、透き通る声だ。
「リザ? 何か言ったか?」
「え? 私? 何も言っていないが。どうしたんだ?」
「いや、何か聞こえたような」
「ははは。それはミイラの幽霊じゃないか?」
リザはおどけてみせるが、確かにその声は聞こえた。
この世界をお願いしますと。そう聞こえた。
「ちっ。なんだか嫌な予感がするな。俺は自由気ままに生きる為、村を飛び出たんだぞ」
俺はプールから上がる。しばらく水魔石の状態をみんなで眺めたが、水が止まる気配が無い。仕方ないので、時間を置いてからまた来ることになった。地下室に鍵をかけて教会に戻るが、俺は水魔石よりも、少女の声が気になった。
なんだか、聞いたことのあるような声だった。一体どこだった? どこで聞いた?
可能性があるのは日本にいた時だが、記憶が曖昧だ。もしかして、俺が生まれ変わる時に聞いた声か?
「…………」
考えるが、思い出せない。
「しょうがない。とりあえず買い物を済ませてから、また地下室に来るか」
あぁ。今日中にこの街から出るつもりだったが、無理そうだ。街中で変な奴らに絡まれなければいいが。そう言えばあのライドとかいう商人。あいつは大丈夫だろうか? ちゃんと水を売ったんだろうな? 誰かに追われるようになったら大変だぞ。
「はぁ」
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